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アカデミー賞4冠『罪人たち』 音楽の魅力は…ストーリーと絡み合う“聴きどころ”を市川紗椰が語る

アカデミー賞4冠『罪人たち』 音楽の魅力は…ストーリーと絡み合う“聴きどころ”を市川紗椰が語る

第98回アカデミー賞で「作曲賞」を受賞した、映画『罪人たち』の音楽に注目した。

この内容をお届けしたのは、3月24日(火)放送のJ-WAVE『MIDDAY LOUNGE』(ナビゲーター:市川紗椰)の「MUSIC EXPLORER」。世界の音楽シーンのムーブメントを“今”の視点で考察するコーナーだ。

『MIDDAY LOUNGE』はグローバルなルーツを持つ国際色豊かなナビゲーターたちが、リスナーと一緒に「新しい自分、新しい世界と出会う」3時間のプログラム。ナビゲーターは、月曜 ハリー杉山、火曜 市川紗椰、水曜 クリス・ペプラー、木曜 ジョン・カビラが日替わりで担当している。

ストーリーを引き立たせる『罪人たち』の音楽

全世界で大ヒットを記録し、第98回アカデミー賞では史上最多となる16部門にノミネートされた映画『罪人たち』。今回は、そのなかでも「作曲賞」を受賞したサウンドトラックに注目する。

【悪と踊り狂え】映画『罪人たち』予告|2025年6月20日(金)劇場公開

『罪人たち』は、アメリカでは2025年4月、日本では同年6月に公開され、世界的な成功を収めた作品だ。2026年3月15日(現地時間)に開催された第98回アカデミー賞においては、監督/脚本を務めたライアン・クーグラーが脚本賞、主演のマイケル・B・ジョーダンが主演男優賞を受賞。さらに、撮影監督のオータム・ドゥラルド・アーカポーが撮影賞に輝き、女性として初の受賞という快挙を成し遂げた。

そして、サウンドトラックを手がけたルドウィグ・ゴランソンが作曲賞を受賞。クーグラー監督とは『クリード チャンプを継ぐ男』『ブラックパンサー』でもタッグを組んでおり、その音楽的手腕は厚い信頼を得ているという。

市川:まずは、映画の簡単なあらすじです。舞台は1930年代のミシシッピ。双子の兄スモークと弟スタックは、暗黒街シカゴで稼いだお金を元に、一攫千金を狙ってある計画を立てます。それは、当時禁じられていた酒と音楽を提供するダンスホールを開くことでした。この世の欲望が詰め込まれたようなダンスホールは、オープン初日の夜、招かれざる来客によって事態が一変し、歓喜は絶望へと変わっていきます。ただ、この作品は単なるギャングの抗争や人種対立を直接的に描いているわけではありません。宣伝コメントにもあるとおり、「誰も見たことのない新たな恐怖を描くサバイバルホラー」ですが、その中心にあるのが音楽です。

市川は『罪人たち』のサウンドトラックの特徴について語る。

市川:序盤から中盤、そして後半へと進むにつれて、ストーリーとともにその印象を大きく変化させていく作品なのですが、全編を通して、絶えず音楽が流れ続けている感覚があります。たとえば、冒頭の教会のシーンではゴスペルが流れ、物語の鍵を握るブルースシンガーのサミーはブルースを歌い上げる。さらにダンスシーンでは、リズム&ブルースやカントリー、ジャズといった多彩な音楽が鳴り響き、一方で敵対する存在であるヴァンパイアたちは声を揃えてフォークミュージックとかアイリッシュフォークを歌います。映画自体はミュージカル作品というわけではありませんが、ストーリーが音楽とともに展開していくので、私は音楽映画と言えるのではないかと思います。

『罪人たち』では音楽史も表現されている?

『罪人たち』の作曲を手がけたゴランソンは、2019年に『ブラックパンサー』、2024年に『オッペンハイマー』でも作曲賞を受賞しており、本作で3度目のアカデミー賞受賞を果たした。

スウェーデン出身で現在41歳。2007年にロサンゼルスへ移住し、映画やテレビの分野でキャリアを築いてきた作曲家だ。受賞スピーチでは、ブルースを教えてくれた父親への感謝を述べ、7歳のときにギターを与えてくれたことなどを語っていた。

市川:彼は、チャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーと、2018年の楽曲『This Is America』を共作しています。『罪人たち』ではゴランソンの手によって、ブルースを中心にさまざまな音楽が展開されていきます。物語が進むにつれて、音楽も変化していくのが特徴です。

番組では、アカデミー賞で主題歌賞にノミネートされ、ステージでも披露された、サミー役のマイルズ・ケイトンの『I Lied to You』をオンエアした。

Miles Caton - I Lied to You | Sinners (Original Motion Picture Soundtrack)

続いて、市川はキャストについても触れていく。

主人公である双子、兄スモークと弟スタックを演じたのは、主演男優賞を受賞したマイケル・B・ジョーダン。ひとりで双子を演じており、撮影は非常に困難だったという。

市川:苦労してまで同一人物に双子を演じさせることにこだわったのは、ドラマ上の仕掛けというよりも、「ひとりのなかにある、ふたつの側面」をわかりやすく見せるためだったのかなと思います。創造と搾取、純粋さと商業性、被害者と加害者といった相反する要素ですね。音楽史、文化の歴史を考えるとオリジナルとコピー、ルーツと消費という関係に重ねられるのかなと思いながら観ていました。音楽を生み出す人と、それを広めて利益を得る人っていう構造は、作品テーマのひとつなのかなと感じましたね。

さらに市川は、音楽の歴史的背景と重ね合わせながら考察していく。

市川:ブルースやジャズ、ロックンロールといったジャンルの歴史に思いを馳せると、もともと社会的に弱い立場に置かれた人々から生まれた音楽であって。それが、別の誰かに利用されて、形を変えながら広まっていく。そこで出てくるのが、ヴァンパイア、吸血鬼という“他者の血を吸って生きる存在”。テーマ自体も、音楽史と重ねて考えると非常に面白い映画だなと思いました。

幅広いサウンドを展開した『罪人たち』

『罪人たち』では、サミーを演じたマイルズ・ケイトンの存在も印象的だ。彼はシンガーソングライター・H.E.R.のバックコーラスを務めた経験を持ち、そこから映画のオーディションを勧められ、本作の役を勝ち取ったそう。また、エンディングでは“ある伝説的ブルースシンガー”の存在を示唆する描写が用意されており、物語の余韻を深める要素のひとつとなっているという。

市川:サウンドトラックのスコアを確認すると、ジェームズ・ブレイクやブリタニー・ハワード、さらにアリス・イン・チェインズのジェリー・カントレル、メタリカのドラマーのラーズ・ウルリッヒもクレジットされていて、まだまだ発見がありそうなんですよね。激しいエレキギターが印象的なシーンにはヘヴィメタルのアーティストを起用したり、本当に適材適所というか必然性のあるキャスティングで面白いなと思いました。

最後に、市川は監督/脚本を務めたライアン・クーグラーが伝えたかったことについて語る。

市川:『罪人たち』という作品を通して、ライアン・クーグラーが何を伝えたかったのか。私は、音楽って誰かが苦労して作ったものなのに、別の誰かが利益を得ることもあるというか、音楽史の核心というものを身体的な恐怖として描いているのかなと感じています。ただ、作品の感じ方はさまざまあると思います。何を指して恐怖なのか、本当に恐るべきは何なのか、「罪人」とは誰を指すのか。みなさんもぜひ映画をご覧になってみてください。

J-WAVE『MIDDAY LOUNGE』のコーナー「MUSIC EXPLORER」では、世界の音楽シーンのムーブメントを「今」の視点で考察する。放送は月曜~木曜の14時ごろから。

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番組情報
MIDDAY LOUNGE
月・火・水・木曜
13:30-16:30