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朝ドラ『ばけばけ』出演・佐野史郎が語る、小泉八雲の“オタク気質”な底知れなさ

朝ドラ『ばけばけ』出演・佐野史郎が語る、小泉八雲の“オタク気質”な底知れなさ

俳優の佐野史郎が、出演するNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の裏話や、小泉八雲の魅力について語った。

佐野が登場したのは、クリス智子がお届けする『TALK TO NEIGHBORS』。この番組は毎週ひと組、クリスが今、声を届けたい人を迎える30分のトークプログラム。月曜から木曜はラジオでオンエアし、翌金曜には放送した内容に加えて、限定トークも含むポッドキャストを配信している。

ここでは、3月2日(月)にオンエアしたトーク内容をテキストでお届けする。

・ポッドキャストページ

『ばけばけ』は、今のことのようにも感じられる作品

佐野は、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』に出演中。佐野の地元である島根県松江市を舞台に、明治時代の小泉セツと八雲(ラフカディオ・ハーン)夫妻をモデルにした物語が描かれ、佐野は島根県知事・江藤安宗役を演じている。

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佐野:実際の話としては、その当時(八雲が来日したころ)、明治23年(1890年)は籠手田安定(こてだ やすさだ)さんという方が知事だったのですが、この方は本当に立派な方で。武術の達人で柔和な方で、八雲も「これほど立派な人は見たことがない」と言うぐらい信頼を寄せていた大人物のようです。長崎出身の方で、滋賀の県知事にあたる役職も務められていたり。なので、あまり出雲の言葉はしゃべってなかったと思うんです。『ばけばけ』は八雲とセツをモデルにした物語ではあるのですが、要所要所は史実に正確に、けれどもそれ以外は想像力を膨らませて。なので、知事のキャラクターはすっかり変わってますね(笑)。

クリス:見ていて面白いというか、いろんな事件もあり。

佐野:この方が八雲を島根県に招聘しようとしたのは事実ですし、僕が松江出身の俳優ということもあって水先案内人的な、虚実を超えてというか。松江の人間としてもですし、長く八雲の朗読を続けていたり、実際の松江の物語とドラマ上の物語と、それから放送されている舞台の明治20年代とを重ねて、昔の話っていうより今よく言うパラレルワールドみたいにして、同時に味わって楽しんでいただければなと。だから、フィクションなんだけれども、今の現実と重なるところがとても多いから、今のことのようにも感じられませんか? っていうふうな問いかけもありますね。

八雲とセツの物語は、自分たちも作品化をたくらんでいた

佐野にとって、NHK連続テレビ小説への出演は今回が初めてだった。

クリス:「あれ、初めてだったかな?」って。もう出てらっしゃる気がしてるのは何なんでしょうかね。大河ドラマは何度か出演されているんですよね。

佐野:大きな役を含めると5本ぐらいは出演してきたんじゃないかな。最近だと『西郷どん』とかありますし、若いころだと『翔ぶが如く』とか出たんですけど。

クリス:今回は八雲の『ばけばけ』ということで、松江出身の佐野さんは、お話がきたとき「やっとだ」っていう。

佐野:ものすごくうれしかったです。それ以前に、昔からNHK松江放送局の方とは、八雲とセツの物語を朝ドラじゃなくてもご当地のドラマでできたらいいですよね、なんて話はもう何度もしてたんです。だけど、なかなか実現せず。もっと昔にはNHKで、ジョージ・チャキリスさん、檀 ふみさん、小林 薫さんたちで『日本の面影』のドラマ化がされてはいるんです。

クリス:『日本の面影』は、八雲が来日したときのいろんなお話を描いている、怪談とはちょっと違うかたちですかね。

佐野:『ばけばけ』にも登場する「日本滞在記」にあたるものですよね。

クリス:昔から佐野さんは心の中に、八雲にまつわる何かをしてみたらいいんじゃないかっていうのはあったわけですね。

佐野:なぜ自分が映像作品として八雲をやってみたいって思ったかって、あらためて問われると……まあ、ずっと朗読を続けているので映像であれなんであれ、そういう世界が好きだったことは事実ですね。

朗読はプログレバンドのつもりで

佐野は2007年から、同郷で高校時代の同級生だったミュージシャンの山本恭司とともに、八雲にまつわる朗読と音楽のステージを継続して開催。公演には、八雲のひ孫にあたる民俗学者の小泉 凡も監修・講演などで参加している。

佐野:朗読はもう20年近くになりますね。(島根県)安来市の安来清水寺で八雲の100回忌法要を行ったのですが、そこで初めて朗読のご依頼を受けて『耳なし芳一』ほか、八雲が手がけた怪談の大作を4作ばかりやったことがあり、それが直接のきっかけでしたね。

クリス:佐野さんの朗読と山本恭司さんのギターで、というかたちでずっと続けているんですよね。

佐野:僕は俳優をやってるからどうしても演劇的な方向に行きそうなんだけど、もともとバンドをやっているし、僕もギター好きですし、なので「ふたりでプログレバンドやろうぜ」みたいな感じで。歌わないけど僕の声と(山本)恭司のギターで、まあプログレバンドのつもりでやってます(笑)。

クリス:ギターの音もけっこう強いですよね。でも、怪談ってちょっと静かなイメージもありますよね。

佐野:繊細ですからね。

クリス:八雲の朗読と、プログレバンドや音ってどんなふうにつながるのかなって。

佐野:僕は英語ができないので、もどかしいところもあるんですが、たとえば『むじな』という東京の赤坂通りの、のっぺらぼうのお話があって。江戸の人影がない坂道のところに、品のいい女性が佇んでいると。で、商人か何かが声をかけるわけですよ。「お女中」って。それは英語表記でもそのまま「O-jochu」なんですよ。そういう日本語の言葉使い、最初はアメリカ向けに英語で読者に向けて書いてますけど、それでも日本の怪談では「O-jochu」と呼びかけて、音を楽しんでもらう。『耳なし芳一』なんかでも亡霊の武士が「門を開けろ」っていうときに言う「開門」は、英語で「Kaimon」と表記している。「Open the door」じゃなくて。そういう音が言葉だっていうことを、八雲はとても大切にしてる方なんです。

小泉八雲はオタク気質?

さまざまな怪談を生み出した八雲。クリスは、八雲がもともと新聞記者だったことも関係があるのではないかと、佐野に尋ねる。

クリス:(八雲は)もともと新聞記者でいらして、日本の文化とか民族の研究といった視点はお持ちだったわけですよね。

佐野:ジャーナリストであり、民俗学者であり、作家なので常に観察してる、観察の方ですよね。怪談もですけれど、女の人の名前とか民謡とか虫の種類とか鳴き声とかお墓の戒名とか、気になったものは体系立ててコレクションする。だからオタクっていうか(笑)。

クリス:日本オタク(笑)? でも、そのおかげですものね。ジャーナリスティックな目線も、日本が好きという温かな目線の両方相まって。

佐野:現代で言うと、荒俣 宏さんとか水木しげるさんとか京極夏彦さんとか、僕がわりと親しくさせていただいている幻想怪奇好きの方々のお仲間と同じ精神構造というか。

クリス:今生きていらしたら、きっとそういうチームですよね。

佐野:いろんな文学も読んでらっしゃるし。八雲は学生時代にフランスでも学んでいるので、フランス語も堪能なんです。ニューオーリンズで10年ぐらい記者をやっていたのですが、その時代にフランス語のゴーティエとかの怪談を英訳して、それを出版していたりする。意外とこの方は、知れば知るほど影響力はものすごいですね。

クリス:佐野さんも研究されてるくらい、お話がすごい。

佐野:研究はしてないですよ。ただ、なんか好きなものが気になって、読んだり聞いたりしてるだけで。

佐野史郎の最新情報は公式サイトまで。

クリス智子がお届けする『TALK TO NEIGHBORS』は、J-WAVEで月曜~木曜の13時よりオンエア。ポッドキャストでも配信中。

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13:00-13:30