シンガーソングライターの森山直太朗が、10月にリリースしたふたつのコンセプトアルバム『弓弦葉』(ゆづるは)と『Yeeeehaaaaw』への想いを語った。また、同作のデザインを担当したサイトヲヒデユキも登場し、アートワークについて森山と語り合った。
森山が登場したのは、クリス智子がお届けする『TALK TO NEIGHBORS』。この番組は毎週ひと組、クリスがいま声を届けたい人を迎える30分のトークプログラムだ。月曜から木曜はラジオでオンエアされ、翌金曜には放送された内容に加えて、限定トークも含むポッドキャストが配信される。
ここでは、11月19日(水)にオンエアしたトーク内容をテキストでお届けする。
・ポッドキャストページ
クリス:両方のアルバムに『あの世でね』が入ってるんですけど、「同じ曲なのか?」というくらい違ってますよね。
森山:この曲ができた背景には、父親が2年前に他界して。亡くなったあとに遺言が出てきたんです。そこに「葬式は無用です」とか「散骨してください」とか「香典はちょっとだけもらってね」とか、ちょっとかわいらしいことも書いてあったりとかして、最後の最後に「直太朗、またな」って書いてあったんです。「またな? えっ!?」って思って。父とは離れ離れで暮らしていたりとかいろいろあったんですけど、最後の最後ですべてわかり合えたような気がして。この曲自体もきっと「またな。あの世でな」みたいな、「路地裏を曲がったところにあるタバコ屋の先のコンビニでね」みたいな感覚で「あの世」が僕たちにとって存在したら、きっといま生きている目の前にある景色って違ってくるんじゃないかなっていう想いからできた曲です。
森山は今回、2枚のアルバムを作るにあたり「この対極にあるような作品をつなぐ何かがほしかったんだと思う」と話す。
森山:それぞれ受け皿は違うアレンジなんだけど、「あの世でね」っていうことのひとつのテーマ。『弓弦葉』と『Yeeeehaaaaw』も同じドアがあって、それがきっとあの世とこの世の境をなくすような。「僕たちが生きている世界があの世なのかもしれないじゃない?」って。「This」とか「That」って捉え方で全然違うよね。それって、もしかしたら人間の目に見えているものに対する疑いのなさとか欺瞞だったりとか、あるいは思い上がりだったりするかもしれないし。でも、僕はこの世に生きている。だけど、もしかしたら僕たちはあの世にいるかもしれないんだよって。
クリス:面白いですね。
森山:あの世で社会とか経済とかに縛られながら生きているかもしれないって。そうしたら、本当のこの世で生きている人たちが「大変そうだな」って見てるかもしれないぜって。それはあくまで設定とか仮定の話なんだけど、少なくともこのふたつのアルバムをつなぐひとつの架け橋になっているし、さらにその架け橋の境さえなくしてしまうのが今回のツアー(「森山直太朗 Two jobs tour 2025~26『あの世でね』」)だなって、いま話していて思いました。
森山:この曲はカントリーの少しメロウな世界観の曲なんですけど、僕が自我が目覚める前からこういう曲に触れていたのって、母だったり父の影響が強いなと思って。そういうふうに作っていくと、「赤い鳥」の存在そのものが母にも感じるようなところもあったりして。声も聞こえてくるんですよね。すると、良子さんに声で参加してもらったほうがきっと興が乗るなって。それで、忙しいから遠慮がちに頼んで。そうしたら、意外と食い気味に「いいわよ」って言われてノリノリで(笑)。
クリス:そうでしたか(笑)。
森山:普通、コーラスってメインを立てるというか。でも、ガンガン森山良子っていう。
クリス:やっぱり、もっていかれちゃいましたか。
森山:大外からグッとまくられた感じで、森山良子さんってやっぱりすごいなと思いましたね。
森山:サイトヲさんとの出会いは……。
サイトヲ:たぶん5年前くらい。
森山:グッと急接近したのがここ4年くらいだと思うんですけど、サイトヲさんといると、少し落ち着くわけなんです。
クリス:わかります。以前、サイトヲさんが番組に来てくださるんですよって直太朗さんに言ったら、「サイトヲさん、小声で話しますよ」って(笑)。
サイトヲ:そうですね。極端に声が小さいんですけど。
森山:サイトヲさんって非常に静寂を大事にされているんですけど、サイトヲさんに「なんでいつも小さい声でしゃべるんですか?」って訊いたら「自分より小さな声でしゃべってる人の声を拾うため」って言うの。僕はこれをしゃべるときに涙が出てくるんだけど。
クリス:泣けてくる。
森山:そこで、俺はそうだよなって。ものを作るって、静寂と同じくらいか、それ以上の孤独を抱えている人の声を聴くために……。ためにっていうか、聴くことの先にあるものに触れるためにきっとサイトヲさんの作品ってあるんだろうなって。サイトヲさんの作品がいつもそれを物語っているから……。すみません、サイトヲさんが来て3分で泣くっていう(笑)。
サイトヲは、『弓弦葉』と『Yeeeehaaaaw』のアートワークの制作過程についてこう話す。
サイトヲ:最初はまだ何もないマンションの一室に呼ばれて。「なんだここは?」ってところですよね。(森山が)『弓弦葉』の話をちょっと教えてくれて、「ここに古道具とか自分の好きなものを集めて、古道具屋のようなことをやりたい」みたいなことを言っていて。僕も骨董が好きなので、そういうものを運ぼうよっていう感じで。
クリス:直太朗さんはそういう場所を作っていましたよね。いろんな道具を置いて写真を撮ったり。
森山:そうですね。実験みたいなのをしてたけど、このアルバムを作るときも、とある古道具屋さんでかかっているであろう架空のアルバムってコンセプトだったので、そういう空間を作らないと、急に音を鳴らしても曲は作れないなと思って。ほとんどスケルトンの部屋でしたよね。そこに左官をしていって、古い家具を置いて。
サイトヲ:2度目に呼ばれたときはすでにいろんなものが運ばれていて、僕も何か運ぼうと思って、球体の古いものを持って行って。いよいよこのアルバムの話をしてくれて。そこからイメージを作り始めたんですけど。
クリス:古道具の楽器とかつぼとか絵とか、アルバム内の写真はその場所で撮られたものなんですね。それぞれの曲が1冊の本であったかのように、古い本の装幀のようなものがありますが、これはサイトヲさんが作ったんですか?
サイトヲ:はい。1曲1曲に物語があったであろうという設定で古本に1曲ずつ装幀していって、僕の幾何学的なドローイングを入れていきました。
森山直太朗の最新情報は公式サイトまで。
クリス智子がお届けする『TALK TO NEIGHBORS』は、J-WAVEで月曜〜木曜の13時よりオンエア。ポッドキャストでも配信中。
・ポッドキャスト限定のエピソードはこちらから
森山が登場したのは、クリス智子がお届けする『TALK TO NEIGHBORS』。この番組は毎週ひと組、クリスがいま声を届けたい人を迎える30分のトークプログラムだ。月曜から木曜はラジオでオンエアされ、翌金曜には放送された内容に加えて、限定トークも含むポッドキャストが配信される。
ここでは、11月19日(水)にオンエアしたトーク内容をテキストでお届けする。
・ポッドキャストページ
僕たちが生きている世界が、実はあの世なのかもしれない
森山は10月にふたつのコンセプトアルバム『弓弦葉』と『Yeeeehaaaaw』をリリースした。クリス:両方のアルバムに『あの世でね』が入ってるんですけど、「同じ曲なのか?」というくらい違ってますよね。
森山直太朗 /「あの世でね」Music Video
森山は今回、2枚のアルバムを作るにあたり「この対極にあるような作品をつなぐ何かがほしかったんだと思う」と話す。
森山:それぞれ受け皿は違うアレンジなんだけど、「あの世でね」っていうことのひとつのテーマ。『弓弦葉』と『Yeeeehaaaaw』も同じドアがあって、それがきっとあの世とこの世の境をなくすような。「僕たちが生きている世界があの世なのかもしれないじゃない?」って。「This」とか「That」って捉え方で全然違うよね。それって、もしかしたら人間の目に見えているものに対する疑いのなさとか欺瞞だったりとか、あるいは思い上がりだったりするかもしれないし。でも、僕はこの世に生きている。だけど、もしかしたら僕たちはあの世にいるかもしれないんだよって。
クリス:面白いですね。
森山:あの世で社会とか経済とかに縛られながら生きているかもしれないって。そうしたら、本当のこの世で生きている人たちが「大変そうだな」って見てるかもしれないぜって。それはあくまで設定とか仮定の話なんだけど、少なくともこのふたつのアルバムをつなぐひとつの架け橋になっているし、さらにその架け橋の境さえなくしてしまうのが今回のツアー(「森山直太朗 Two jobs tour 2025~26『あの世でね』」)だなって、いま話していて思いました。
赤い鳥の存在そのものが母にも感じた
『Yeeeehaaaaw』収録の『赤い鳥』には、森山の母・森山良子がコーラスで参加している。赤い鳥
クリス:そうでしたか(笑)。
森山:普通、コーラスってメインを立てるというか。でも、ガンガン森山良子っていう。
クリス:やっぱり、もっていかれちゃいましたか。
森山:大外からグッとまくられた感じで、森山良子さんってやっぱりすごいなと思いましたね。
サイトヲヒデユキの言葉に涙 その理由は…
番組後半には、森山直太朗の『弓弦葉』と『Yeeeehaaaaw』のデザインを手がけたサイトヲヒデユキが登場した。サイトヲ:たぶん5年前くらい。
森山:グッと急接近したのがここ4年くらいだと思うんですけど、サイトヲさんといると、少し落ち着くわけなんです。
クリス:わかります。以前、サイトヲさんが番組に来てくださるんですよって直太朗さんに言ったら、「サイトヲさん、小声で話しますよ」って(笑)。
サイトヲ:そうですね。極端に声が小さいんですけど。
森山:サイトヲさんって非常に静寂を大事にされているんですけど、サイトヲさんに「なんでいつも小さい声でしゃべるんですか?」って訊いたら「自分より小さな声でしゃべってる人の声を拾うため」って言うの。僕はこれをしゃべるときに涙が出てくるんだけど。
クリス:泣けてくる。
森山:そこで、俺はそうだよなって。ものを作るって、静寂と同じくらいか、それ以上の孤独を抱えている人の声を聴くために……。ためにっていうか、聴くことの先にあるものに触れるためにきっとサイトヲさんの作品ってあるんだろうなって。サイトヲさんの作品がいつもそれを物語っているから……。すみません、サイトヲさんが来て3分で泣くっていう(笑)。
サイトヲは、『弓弦葉』と『Yeeeehaaaaw』のアートワークの制作過程についてこう話す。
サイトヲ:最初はまだ何もないマンションの一室に呼ばれて。「なんだここは?」ってところですよね。(森山が)『弓弦葉』の話をちょっと教えてくれて、「ここに古道具とか自分の好きなものを集めて、古道具屋のようなことをやりたい」みたいなことを言っていて。僕も骨董が好きなので、そういうものを運ぼうよっていう感じで。
クリス:直太朗さんはそういう場所を作っていましたよね。いろんな道具を置いて写真を撮ったり。
森山:そうですね。実験みたいなのをしてたけど、このアルバムを作るときも、とある古道具屋さんでかかっているであろう架空のアルバムってコンセプトだったので、そういう空間を作らないと、急に音を鳴らしても曲は作れないなと思って。ほとんどスケルトンの部屋でしたよね。そこに左官をしていって、古い家具を置いて。
サイトヲ:2度目に呼ばれたときはすでにいろんなものが運ばれていて、僕も何か運ぼうと思って、球体の古いものを持って行って。いよいよこのアルバムの話をしてくれて。そこからイメージを作り始めたんですけど。
クリス:古道具の楽器とかつぼとか絵とか、アルバム内の写真はその場所で撮られたものなんですね。それぞれの曲が1冊の本であったかのように、古い本の装幀のようなものがありますが、これはサイトヲさんが作ったんですか?
サイトヲ:はい。1曲1曲に物語があったであろうという設定で古本に1曲ずつ装幀していって、僕の幾何学的なドローイングを入れていきました。
森山直太朗の最新情報は公式サイトまで。
クリス智子がお届けする『TALK TO NEIGHBORS』は、J-WAVEで月曜〜木曜の13時よりオンエア。ポッドキャストでも配信中。
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2025年11月26日28時59分まで
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番組情報
- TALK TO NEIGHBORS
-
月・火・水・木曜13:00-13:30