演出家でバンド・yahyelのメンバーでもある山田健人が、Oasisについて語り、お気に入りのアルバムを3枚セレクトした。
Oasisを特集したのは、10月10日(金)放送のJ-WAVE『THE PLAYBACK』(ナビゲーター:山田健人)。演出家でミュージシャンの山田が、MVなどさまざまな“見る”を言語化するプログラムだ。
山田:さすがにOasisのアルバムのなかでいちばん有名なんじゃないですか? 1995年10月2日にリリースということで、ちょうど30年前ぐらいです。収録曲は有名どころでいうと『Wonderwall』。イギリスで2位、アメリカのビルボード8位で世界的にもっとも知られるOasisの曲ですかね。シンプルな曲の作りだし、30年経ってもなお、いろいろなミュージシャンがずっとカバーしているイメージです。あとは『Don't Look Back in Anger』。これが同じアルバムに入ってることがすごい、ヤバいアルバムだな本当に(笑)。『Don't Look Back in Anger』はギターのノエル・ギャラガーがリードボーカルで、そもそもOasisは兄弟で歌う曲がけっこうあって。余談だけど、兄弟でサビとそれ以外で分けている『Acquiesce』という曲がありますが、それも好きで。ノエルのほうが高音がきらびやかというか、伸びやかで澄んでいるようなイメージがあります。
山田は収録曲の『Don't Look Back in Anger』を「世界一有名なロックアンセムなのでは」と紹介した。
山田:世界中で「Oasisの雰囲気しか知らないけど、この曲は知っている」という人はたぶんめちゃめちゃいると思うし、それこそ後世に多大なる影響を与え続けてる。そもそも、この曲自体は実際にThe Beatlesとかの影響を強く感じるけれども、やはりUKロックイズムの“ザ”という感じの曲です。アルバムの最後の曲『Champagne Supernova』ですが、7分ぐらいあるのかな? めちゃいいんだよな。正直、アルバムでいちばん好きなのを選ぶとしたら『Champagne Supernova』か『Some Might Say』。『Champagne Supernova』のよさがわかったのは、大人になってからかな。ちょっとミドルテンポな感じの楽曲で、シンガロングっぽい展開もあって、それこそドームとかスタジアムのサイズにすごく映えるような楽曲だなと思う。進行がしゃれてるんだよね。エモーショナルで切ない感じというか。僕はたぶん中学生のときにこのアルバムを聴いていて、それこそ表題曲とも言える『Morning Glory』がOasisの入り口だったかもしれないです。
同アルバムはプロデューサーのオーウェン・モリスによると、1日1曲のペースで録音したという。
山田:だから、だいたい15日で仕上がったということで、一気に勢いで録ったという感じなんでしょうね。まあでも、この質感の統一感っていいよね。どの曲も味が、似たような味もするし、ちゃんと違う味もするというかね。アルバムからの1stシングルは『Some Might Say』で、そのバックトラックはスピードをちょっと上げすぎたテイクが使われたんですけれども、リアム・ギャラガーの歌がよかったので、そのミスを隠す方向でミックスされたと。対外的評価として、UKでは初週34.5万枚を売り上げてチャートは当然1位。イギリス国内でもっとも売れたアルバムのひとつとなって、世界累計売上は2,000万枚以上と、まあ名盤だね。さすがに、このアルバムに触れないわけにはいかなかったというレベルです。
山田:5枚目なので、たぶん紆余曲折というか、いろいろなものが転じて、大人にもなってきて、みたいなタイミングで。切ない曲や、逆に軽やかな感じの曲があるイメージです。『The Hindu Times』という曲はUKシングルチャートで1位になってるし、『Stop Crying Your Heart Out』はこのアルバムでいうと僕のイチオシです。2002年の日韓ワールドカップでイングランドが負けたときに国民を慰めた曲なんですね。
Oasisはサッカーファンとしても知られている。
山田:プレミアリーグのマンチェスターシティの熱狂的なファンというイメージがあります。だから、服でいうとアディダスとかのイメージですね、アディダスのジャージとか。僕のなかのファッション的なイメージは、彼らはサッカー寄りだからアディダスジャージとかで、でも腕時計はロレックスなんだ、みたいに思ったこともあって。あとはカーキのモッズっぽいコートとかをよく着ていて、マッシュルームみたいな髪型で。彼らはファッション的にも多大なる影響を世界中に与えているんですよね。『Stop Crying Your Heart Out』は入りが寂しい感じの進行で始まるんですが、サビはちょっとだけ開放的になる感じで、まさに泣いていたら慰められるような感じの曲ですごくおすすめです。
『Heathen Chemistry』は新メンバーのギタリスト、ゲム・アーチャーとベーシスト、アンディ・ベルを迎えて5人体制で制作された。
山田:ゲム・アーチャーがいいんだよね、『Morning Glory』のいちばん有名なフレーズはライブでは彼が弾いてます。意外と役割が明文化されているイメージで、とにかくゲム・アーチャーが好きなんだよな。中学ぐらいのときにゲム・アーチャーのことも知って「この渋い感じいいな」みたいな。軸の兄弟が強すぎるから、キャラ的にも。でも、そこを支えるでもなく目立ちすぎるわけでもなくという感じで、安定感があるイメージで本当にいいギタリストだと思います。そんな新しいメンバーも入ってみんなで作曲していて、だからバラエティ豊かにも感じるのかなと。『Songbird』はリアムが書いた最初のシングル曲なんですよね。
また、『Heathen Chemistry』は世界的な評価では「Oasisの中期以降のアルバムで、再びファンや評論家の期待を取り戻す試みと見られる作品」とされている。
山田:過去の売上とかの実績のベースで比較すると、完ぺきではないけれども『Be Here Now』や『Standing on the Shoulder of Giants』といったアルバムと比べると、曲調や構成の面で「戻ってきた」と感じる人が多いと。『Be Here Now』はたしかに、ちょっと電子音っぽい音とか入ったりしている気がします。
山田:収録曲でいえば『Lyla』が有名かな? ソニーの「ウォークマン」のCM曲になっていたはずです。ライブでもアンセミックで盛り上がるイメージです。これが先行シングルでリード曲的な位置づけでしょうか。当然のようにUKシングルチャート1位ということで、さっきの『Heathen Chemistry』から“Oasisイズム”みたいなのがさらにグッと戻ってきたような感じが僕はしています。いまだにライブとかでもやっているような、復活作とも言われているような作品になるのかな。アンセムがいっぱい入っている感じのイメージです。
山田は収録曲のなかでも『The Importance of Being Idle』が特に好きだという。
山田:『The Importance of Being Idle』はOasisのなかでも1位ぐらいに好きかもなあ……決めづらいけどかなり好きですね。特に大人になってきてから、なおさら好きになった曲です。この曲はアルバム『Don't Believe the Truth』の2ndシングルとしてリリースされて、UKシングルチャート1位、さらに音楽雑誌『Q』主催の音楽賞「Q Awards Best Track」を受賞しています。ノエルが歌っている曲ですが、なんかしゃれてるんだよね。なによりギターソロがめちゃめちゃかっこよくて、尺としては長めのギターソロなんですけど、渋さがめちゃめちゃ好きで。あと、『Let There Be Love』はリアムとノエルのツインボーカルバラードです。ふたりの組み合わせのこういう歌はかなり珍しいので、まだ仲がよかったころなのかもしれないです。
アルバムの制作は、当初はエレクトロロックユニット・Death in Vegasと一緒に行ったセッションから始まったものの、思わぬ展開を迎えたそう。
山田:ノエルが「録ったものが気に入らねえ」「アルバムにはできねえ」みたいなことを言って、そのセッションで作った素材の大部分を破棄したそうです。“スクラップアンドビルド”みたいな感じですよね。それで、あらためてデイヴ・サーディとの共同プロデュースで制作されますが、2004年はじめにドラマーのアラン・ホワイトがバンドを離れてしまいます。その代わりにビートルズのドラマーであるリンゴ・スターの長男、ザック・スターキーが録音とツアーに参加したときのアルバムでもあります。
アルバムからどの曲を最初にシングルとして出すかは、Oasisとレーベルのあいだで話し合いが行われたという。
山田:バンドとしては別の曲、『Mucky Fingers』とかを先行シングルにしたいという意見もあったんですが、最終的には『Lyla』がファンや商業的判断などを考慮して選ばれました。たしかに、流行りそうですよね、キャッチーでね。レーベルとかはたしかにこれを推したいと、それこそラジオとかいろいろなチャートに入りそうな曲調だしね。でも、それに対してノエル自身は「シングルとして出すのはバンドの意図どおりではなかったけど、結果としては成功したんだけどね」みたいなことを発言していて、やっぱり素直には認められないみたいな感じかもしれません。
対外的な評価としては、『Don't Believe the Truth』はUKでその年にリリースされたアルバムとして商業的に成功を収めている。
山田:特にリードシングルの『Lyla』や『The Importance of Being Idle』がヒットして、どちらもUKチャート1位になっています。本当にファンや音楽シーンのなかでは当時、アルバムとして「これがOasisの復活作ですよね」と見なされていることが多いと。前作『Heathen Chemistry』の疲弊感、方向性のあいまいさからの脱却としても評価されています。
J-WAVE『THE PLAYBACK』は演出家・山田健人が、音だけの世界=「ラジオ」でその頭の中に浮かんでいる世界や作品について言語化していく。放送は毎週金曜の深夜26時から。
Oasisを特集したのは、10月10日(金)放送のJ-WAVE『THE PLAYBACK』(ナビゲーター:山田健人)。演出家でミュージシャンの山田が、MVなどさまざまな“見る”を言語化するプログラムだ。
多大なる影響を与える世界累計売上2,000万枚以上の名作
この日の『THE PLAYBACK』では、16年ぶりとなる来日公演を10月25日(土)、26日(日)に東京ドームで開催するOasisを特集した。自身もOasisの楽曲を聴き続けてきたという山田が1枚目に選んだアルバムは『(What's The Story) Morning Glory?』だ。Oasis - Wonderwall (Official Video)
山田は収録曲の『Don't Look Back in Anger』を「世界一有名なロックアンセムなのでは」と紹介した。
Oasis - Don't Look Back In Anger (Official Video)
Oasis - Champagne Supernova (Official Video)
山田:だから、だいたい15日で仕上がったということで、一気に勢いで録ったという感じなんでしょうね。まあでも、この質感の統一感っていいよね。どの曲も味が、似たような味もするし、ちゃんと違う味もするというかね。アルバムからの1stシングルは『Some Might Say』で、そのバックトラックはスピードをちょっと上げすぎたテイクが使われたんですけれども、リアム・ギャラガーの歌がよかったので、そのミスを隠す方向でミックスされたと。対外的評価として、UKでは初週34.5万枚を売り上げてチャートは当然1位。イギリス国内でもっとも売れたアルバムのひとつとなって、世界累計売上は2,000万枚以上と、まあ名盤だね。さすがに、このアルバムに触れないわけにはいかなかったというレベルです。
Oasis - Some Might Say (Official HD Remastered Video)
期待を取り戻す試みが見られる『Heathen Chemistry』
2枚目に山田がピックアップしたのは、2002年に発売された5枚目のアルバム『Heathen Chemistry』だ。Oasis - The Hindu Times (Official Video)
Oasis - Stop Crying Your Heart Out (Official Video)
山田:プレミアリーグのマンチェスターシティの熱狂的なファンというイメージがあります。だから、服でいうとアディダスとかのイメージですね、アディダスのジャージとか。僕のなかのファッション的なイメージは、彼らはサッカー寄りだからアディダスジャージとかで、でも腕時計はロレックスなんだ、みたいに思ったこともあって。あとはカーキのモッズっぽいコートとかをよく着ていて、マッシュルームみたいな髪型で。彼らはファッション的にも多大なる影響を世界中に与えているんですよね。『Stop Crying Your Heart Out』は入りが寂しい感じの進行で始まるんですが、サビはちょっとだけ開放的になる感じで、まさに泣いていたら慰められるような感じの曲ですごくおすすめです。
『Heathen Chemistry』は新メンバーのギタリスト、ゲム・アーチャーとベーシスト、アンディ・ベルを迎えて5人体制で制作された。
山田:ゲム・アーチャーがいいんだよね、『Morning Glory』のいちばん有名なフレーズはライブでは彼が弾いてます。意外と役割が明文化されているイメージで、とにかくゲム・アーチャーが好きなんだよな。中学ぐらいのときにゲム・アーチャーのことも知って「この渋い感じいいな」みたいな。軸の兄弟が強すぎるから、キャラ的にも。でも、そこを支えるでもなく目立ちすぎるわけでもなくという感じで、安定感があるイメージで本当にいいギタリストだと思います。そんな新しいメンバーも入ってみんなで作曲していて、だからバラエティ豊かにも感じるのかなと。『Songbird』はリアムが書いた最初のシングル曲なんですよね。
Oasis - Songbird (Official Video)
山田:過去の売上とかの実績のベースで比較すると、完ぺきではないけれども『Be Here Now』や『Standing on the Shoulder of Giants』といったアルバムと比べると、曲調や構成の面で「戻ってきた」と感じる人が多いと。『Be Here Now』はたしかに、ちょっと電子音っぽい音とか入ったりしている気がします。
Oasisの復活作とも言える『Don't Believe the Truth』
最後に山田が紹介したのは、2005年リリースの6枚目のオリジナルアルバム『Don't Believe the Truth』だった。Oasis - Lyla
山田は収録曲のなかでも『The Importance of Being Idle』が特に好きだという。
Oasis - The Importance Of Being Idle (Official Video)
Oasis - Let There Be Love (Official Video)
山田:ノエルが「録ったものが気に入らねえ」「アルバムにはできねえ」みたいなことを言って、そのセッションで作った素材の大部分を破棄したそうです。“スクラップアンドビルド”みたいな感じですよね。それで、あらためてデイヴ・サーディとの共同プロデュースで制作されますが、2004年はじめにドラマーのアラン・ホワイトがバンドを離れてしまいます。その代わりにビートルズのドラマーであるリンゴ・スターの長男、ザック・スターキーが録音とツアーに参加したときのアルバムでもあります。
アルバムからどの曲を最初にシングルとして出すかは、Oasisとレーベルのあいだで話し合いが行われたという。
山田:バンドとしては別の曲、『Mucky Fingers』とかを先行シングルにしたいという意見もあったんですが、最終的には『Lyla』がファンや商業的判断などを考慮して選ばれました。たしかに、流行りそうですよね、キャッチーでね。レーベルとかはたしかにこれを推したいと、それこそラジオとかいろいろなチャートに入りそうな曲調だしね。でも、それに対してノエル自身は「シングルとして出すのはバンドの意図どおりではなかったけど、結果としては成功したんだけどね」みたいなことを発言していて、やっぱり素直には認められないみたいな感じかもしれません。
Mucky Fingers
山田:特にリードシングルの『Lyla』や『The Importance of Being Idle』がヒットして、どちらもUKチャート1位になっています。本当にファンや音楽シーンのなかでは当時、アルバムとして「これがOasisの復活作ですよね」と見なされていることが多いと。前作『Heathen Chemistry』の疲弊感、方向性のあいまいさからの脱却としても評価されています。
J-WAVE『THE PLAYBACK』は演出家・山田健人が、音だけの世界=「ラジオ」でその頭の中に浮かんでいる世界や作品について言語化していく。放送は毎週金曜の深夜26時から。
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番組情報
- THE PLAYBACK
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毎週金曜26:00-26:30
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山田健人
