音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
「ちゃし」の使い方を間違えると、大変なことになる!?  「大相撲の業界用語」を市川紗椰&関取 花が紐解く

「ちゃし」の使い方を間違えると、大変なことになる!? 「大相撲の業界用語」を市川紗椰&関取 花が紐解く

大相撲について、シンガーソングライター・関取 花と、モデル/タレントの市川紗椰が語り合った。また、元大相撲十両力士・彩 尊光の松本 豊さん、元力士で現在は純烈のメンバーの白川裕二郎が、コメントで出演した。

この内容をお届けしたのは、5月23日(金)放送のJ-WAVE『THE NICHE WORKBOOK』。ナビゲーター・市川紗椰がゲストとともに、業界用語を入り口に世の中の“いろいろ”をニッチな視点からのぞき見る番組だ。なお、トークの模様はポッドキャストでも配信中。

・ポッドキャストページ

「ちゃし」を使う後輩は、「はーちゃん」…?

前回、「えびすこ」という業界用語を入り口に、相撲について考察した市川と関取。



この日は「ちゃし」というキーワードから、力士の挨拶や四股名を深掘りしていく。

「ちゃし」が何を指す言葉か想像がつかない様子のふたりに、元大相撲十両力士・彩 尊光の松本さんが解説した。

松本:「ちゃし」は「ごっちゃんです」が崩れた言い方で、簡単に言うと「ありがとう」という意味ですね。「あざーす」とか「うぃーす」みたいなニュアンスだと思います。たとえば、「ちょっとそこの醤油を取ってくれる?」といって取ってもらったら、「ちゃし」と(お礼を)言う感じです。挨拶でも崩した言い方があって、「お疲れさんでございます」が本当に崩れたり適当になったりすると「スー」となります。でも、これを先輩などに言うとすごく怒られます。「ちゃし」も相撲界のタメ口なので、先輩には使わないほうがいいですね。

元力士の純烈・白川も、「ちゃし」の使い方を間違えると「大変なことになる」と語る。

白川:「ごっちゃんです」はけっこうポピュラーで、一般の人も知っていると思います。僕自身も使っていて、「ありがとうございます」や、ごはんをごちそうになったら「ごちそうさまです」という意味合いがあるのですが、短く簡略化すると「ちゃし」になります。「ちゃし」は、基本的には番付が下とか年下の人が目上の人に使うことはありません。だけど新弟子の人や、ちょっと調子に乗ってしまっている若い力士とかは、兄弟子とかに「ちゃし」と言ってめちゃくちゃ怒られたりします。だいたい、そういった人たちは周りの兄弟子たちに「あいつ、はーちゃんか」と言われます。

関取:はーちゃん……?

市川:新しい用語が出てきましたね。「(『ちゃし』を)目上に使うのは要注意」というのは一緒でしたが、「はーちゃん」って言われちゃうの?

関取:はーちゃんとは?

市川:はーちゃんとは、抜けている人やいい加減な人、おっちょこちょい、お馬鹿な人を言うそうです。

方法はさまざま! 四股名の決め方

前回に引き続きコメントで出演する松本さんの四股名は「彩 尊光」。これは、どのように決まったのだろうか。

松本:僕は埼玉県出身で、「彩の国・埼玉」というキャッチフレーズのなかから「彩」という漢字をつけたくて師匠に相談しました。「彩」は、ほかの漢字との相性があまりよくなくて悩んでいたのですが、師匠と、そのときにいた豊真将関が「シンプルだけど、『彩』っていう一文字でいいんじゃない?」と言ってくれてすごくしっくりきたので、この四股名になりました。そして、上の漢字の字画との兼ね合いで、運勢が上がるようにという理由で「尊光」という名前をつけました。

続いて、純烈・白川の力士時代の四股名が「綱ノ富士」に決まった経緯も教えてもらった。

白川:僕たちが小さいときに、“小さな巨人”と言われていた千代の富士という大横綱がいました。千代の富士は僕のなかでアイドルで、当時、小学校の友だちとかは「おニャン子クラブの誰々」とか、アイドルを推す子が多かったんですけど、僕は千代の富士がめちゃ好きだったんですよ。そして、いざ相撲部屋に入ったときに「千代の富士の名前をちょっともらいたい」と思いました。僕は横浜市の「綱島」出身で、「地元に育ててもらった」という気持ちから地元の名前もつけたかったので、綱島の「綱」と、千代の富士の「の富士」を取って「綱ノ富士」という、横綱みたいな名前をつけたんですよね(笑)。

関取:けっこう、希望でつけられるんですね。

市川:相談しながらとか、「ある日、言われたから」とか、部屋にもよりますね。彩関が自ら「彩」を使いたいと言ったというのは、初めて聞きました。一文字は珍しいからすごく目立ちますし、彩関が活躍していた当時は「勢(いきおい)関」もいて「○年ぶりの一文字対決」みたいになっていました。

関取:番付表に名前があったら、すごく目立ちますよね。

市川:そして白川さんは「綱ノ富士」だった。

関取:お相撲の「綱」かと思ったら出身地でしたね。

市川:「~の富士」は、いまだと照ノ富士や熱海富士、翠富士、尊富士など、伊勢ヶ濱部屋のイメージが強いので「なんでなんだろう?」と思ったら、「千代の富士関に憧れて」ということだったのですね。

関取:私も勝手に「『~の富士』は、この部屋の伝統で」という感じだと思っていました。

市川:「千代」がつくのは九重部屋、「琴」がつくのは佐渡ヶ嶽部屋など、所属部屋による字も多いですよね。ちなみに、彩関の師匠の寺尾関は昔、「『寺尾』という名前を誰かにあげたい」という話をしていたのですが、一番弟子の阿炎(あび)は寺尾関の子どもの頃のあだ名が由来だそうです。「あび」は「a baby」から来ているのだとか(笑)。

関取:え~! でも、幼少期のあだ名がもらえるのもうれしいですよね。少年漫画的なアツさを感じます。

市川:ほかにも、けっこう面白い四股名は多いです。たとえば白熊。

関取:それは、ご自身でつけられたんですか?

市川:元横綱・稀勢の里(二所ノ関親方)が、フィーリングでつけたそうです。

「金星」に隠された、もうひとつの意味

市川:最後に、2週にわたってコメントをいただいた純烈・白川さんと、元十両・彩 尊光の松本さんに「よく使っていた相撲業界用語」を聞いたところ、同じ言葉を挙げてくださいました。

白川:僕も兄弟子と一緒によく使っていた「金星」という相撲用語があるんですよ。一般的には、平幕の力士が横綱に勝ったときに「金星」と使われることが多いのですが、ほかにも意味があって、たとえば街を歩いているきれいな女性やかわいい女性を「前から金星来たよ」と言うこともあります。ちなみに、平幕の人が横綱から金星を上げると、給料とは別に4万円もらえるんですよ。(支給日は)年6回あるので、ひとつ勝っただけで年に24万円、それが引退するまで続きます。だから、金星をいくつも取ると、辞めない限りはずっとお金が入ってくるという感じです。

松本:金星は、平幕力士が横綱を倒すことでもらえる星のことですが、容貌的には美人な女性のことを表します。いまでも力士仲間といたら「見てみて! 金星」みたいな感じで使います。

ふたりのコメントに「男子っぽい」と思わず笑ってしまう関取。そんな彼女はデビュー15周年となる今年独立し、「NOKOTTA RECORDS」を設立した。

関取:もともと「DOSUKOI RECORDS」でやっていて、今回は相撲の「のこった、のこった」が由来しています。ファンクラブ名も「関取 花の支度部屋」なんですよ(笑)。けっこう相撲にかけたワードを使ってきたなかで、「新しくレーベルを作るなら、関取にかけた部分を引き継ぎたいな」と思って、私が調べたかぎり「のこった、のこった」には「まだ土俵の中にいる」という意味なので、「独立して小さいところからゆっくり初めていくけれど、まだ音楽という土俵の中で戦っていく」という気持ちを込めて、「NOKOTTA RECORDS」という名前にしました。

関取 花は、5月7日(水)に「NOKOTTA RECORDS」よりニューアルバム『わるくない』をリリースした。そのほか、最新情報は公式サイトまで。

また、2週にわたってコメント出演した白川が所属する音楽グループ・純烈も、関取と同じくデビュー15周年を迎えた。4月23日(水)にリリースした『奇跡の恋の物語』に続き、6月11日(水)には新曲『二人だけの秘密』も発売となる。そのほか、純烈の最新情報は、公式サイトまで。

ニッチな視点で覗き見、知識を深める

市川紗椰がお届けする『THE NICHE WORKBOOK』では、業界用語を入り口に、世のなかのいろいろをニッチな視点から覗き見し、知識欲の渦に巻き込まれていく、未知を愛でる30分。放送は毎週金曜25時30分から。

・#1ハンバーグ Part1/「ひきざい」とは


・#2ハンバーグ Part2/「スュックとデグラッセ」


・#3 相撲Part1/「えびすこ」


・#5-1 ゲーム配信Part1 /「ストリーマー」前編


・#5-2 ゲーム配信Part1 /「ストリーマー」後編


・#6 ゲーム配信Part2 /「メタ」


・#7-1 カラオケPart1/「一般背景画像」


・#7-2 カラオケPart1/「七語調」

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン
番組情報
THE NICHE WORKBOOK
毎週金曜
25:30-26:00