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料理研究家・土井善晴が伝授「ハンバーグのソースの歴史」「おいしい焼き方」 業界用語から魅力を紐解くラジオ番組

料理研究家・土井善晴が伝授「ハンバーグのソースの歴史」「おいしい焼き方」 業界用語から魅力を紐解くラジオ番組

ハンバーグについて、インターネットニュースメディア『The HEADLINE』編集長・石田 健と、モデル/タレントの市川紗椰が語り合った。また、料理研究家の土井善晴先生が「ハンバーグのおいしい焼き方」を伝授した。

この内容をお届けしたのは、5月9日(金)放送のJ-WAVE『THE NICHE WORKBOOK』。ナビゲーター・市川紗椰がゲストとともに、業界用語を入り口に世のなかの“いろいろ”をニッチな視点からのぞき見る番組だ。なお、トークの模様はポッドキャストでも配信中だ。



・ポッドキャストページ

ハンバーグソースを紐解くカギとなる“スュック”と“デグラッセ”

ゲストは、J-WAVE『JAM THE PLANET』の水・木曜ナビゲーターとしても知られる石田 健。そんな石田と、ナビゲーターの市川が石井と2週にわたって考察するのは「ハンバーグ」だ。前週のオンエアはポッドキャストで楽しめる。



前回はハンバーグの“挽き材”について掘り下げた。今回は“ソース”をテーマに考察していく。

市川:ハンバーグのソース、いろいろありますよね。特にどのソースが好きですか?

石田:王道のデミグラスも好きですし、和風のおろしハンバーグとか、チーズとか。あと、和風の塩っけがあるものも好きですね。

市川:いろいろなソースがありますが、家庭でハンバーグを作るときには、(ハンバーグを)焼いたあとのフライパンにケチャップとウスターソースを1対1で入れて作る……。わかります?

石田:わかりますよ。僕、あれはデミグラスソースを疑似的に再現したものだと思っていました。

市川:どの家庭にもあってみんな知っていますが、ふと「あのソースの名前って何だろう?」と思って、いろいろな人に聞いたり私のInstagramでも呼びかけたりしたところ、「偽デミグラス」みたいな人もいれば、「バーベキューソース」、お父さんが作るから「パパソース」などのネーミングもありました。「業界用語的な名称があるのか」ということを、私もスタッフさんもいろいろリサーチしてみましたが、なかなか答えが見つからなかったので「この方ならご存じなはず」ということで、料理研究家の土井善晴先生にお時間をいただいてお話を伺ってきました。

土井善晴先生が解説する、ハンバーグのソースの歴史

土井先生によると、“スュック”と“デグラッセ”という業界用語が、このソースのヒントなのだそうだ。

土井:日本では明治時代まで肉を食べなかったので、戦後はお肉のレシピがなかったんですよ。でも、日本人の健康(増進)や体力をつけるために肉料理を食べることが推奨されて、料理番組などでは西洋料理として肉料理を教えたり、あるいは中華料理ということで肉料理のレシピを広げたり、ということがありました。そんなところからできたのが、ひき肉を使った手軽に作れるハンバーグです。ヨーロッパではハンバーグを焼いたら、フライパンから焼いたあとの油を除いて、水やワイン、レストランなどではフォンドボーみたいなものも入れて煮詰めて、バターで仕上げるというような“焼け汁”というものを作ります。

ただ、それだと手が込んでいて家庭では難しいということになり、日本で簡単に作る方法を考えたそう。

土井:日本でもそのようなデミグラスソースみたいなものを簡単に作ろうということで、油を除いて、そこにケチャップ、ウスターソースを少々、赤ワインも入れて、あまり混ぜないで煮詰めていく。そうすると、トマトケチャップが焦げてコクが出て、色がカッコよくなる。そして、上がりに練りがらしを入れると、甘いケチャップソースをベースにしたものよりも味が引き立って広がりができるので、それをハンバーグの上にかける……そうやってできたものを、私たちは簡単に作るデミグラス風ソースということで、“ハンバーグソース”と言っています。

市川:50年以上前からあるレシピでは、「即席デミグラス風ハンバーグソース」というのが答えでした。このハンバーグソースの決め手になるのが、ハンバーグを焼いたあとのフライパンに残った焦げ目のうまみである“スュック”。そして“デグラッセ”というのは、鍋底についたスュックを「水分に溶かすこと」だそうです。

石田:ソースを作るときの手法というか、構成要素が“スュック”と“デグラッセ”ということなんですね。

「肉々しいハンバーグ」ブームが到来!

市川:前回、“挽き材”について教えてくれた吉澤畜産の吉澤直樹さんに好きなソースを伺ったら、「デミグラスと目玉焼き」だということでした。また、ゴロゴロ肉のハンバーグが絶品のイタリアンレストラン・Nodo Rossoのハンバーグのソースは、香味野菜が香るお醤油ソース、自家製ポン酢、自家製スイートチリソースがあるそうです。いろいろなソースがあるわけですが、人気のファミレスのナンバーワンハンバーグについても訊いてみました。びっくりドンキーは「チーズバーグディッシュ」が不動の人気で、「コクのある濃厚なチーズが、独自開発した特製ブレンド和風ベースのオリジナルハンバーグソースとよく合います」ということでした。

石田:ほかのファミレスさんはいろいろな料理があるけど、びっくりドンキーは、ハンバーグだけで1ジャンルを築けているのがいいですよね。

市川:ロイヤルホストは「黒×黒ハンバーグ」が人気で、ソースのいちばん人気は「ガーリッククリームソース」。これもおいしいんだよね。ジョナサンはハンバーグとタンドリーチキン、フランクソーセージの「ミックスグリル」がいちばん人気です。

石田:わんぱく! 僕、幼稚園生の頃の青春はジョナサンとともにありました。

市川:どういうことですか?

石田:イベントがあったらその帰りに寄って、ハンバーグを食べていました。

市川:いま、ジョナサンには合挽きとビーフ100%の2種類のハンバーグがあって。最近のハンバーグ事情でいうと、ちょっと荒々しいものが流行っているそうです。

石田:たぶん、ひと昔前はファミレスさんも「とりあえずハンバーグを出しておけば喜ぶでしょう」みたいな感じだったのが、いまはすごく工夫されていますもんね。

市川:ファミレスのハンバーグ史をたどると、ガストがチーズインハンバーグというものを流行らせて、ひとつ、ファミレスハンバーグ革命が起こったんですよね。そのあとにちょっとソースにこだわって、いまは肉々しいハンバーグが来ているそうですよ。それから、関東には渋谷のゴールドラッシュというハンバーグ屋さんがあるのですが、そこがけっこう「肉、ドーン!」みたいな感じで、静岡のさわやか、神奈川のハングリータイガー、北関東のフライングガーデンが似たような感じのハンバーグなんです。ただ、暗黙の仲よし協定を結んでいるという噂で、お互い縄張りから出ないんですよ。

石田:すごくキラキラした目でハンバーグの紳士協定の話をしているけど、これは何の時間ですか(笑)?

おいしく焼くなら「超弱火で約10分」

“スュック”と“デグラッセ”という業界用語を入口に、ハンバーグソースを考察するふたりに、土井先生がハンバーグにつなぎを使う理由や、おいしい焼き方を伝授してくれた。

土井:本当においしいお肉だったら、つなぎも何も入れないで、赤身の挽きたての肉をただ焼いただけのものを、塩コショウで食べるというのがいちばんいいです。それがハンバーグのもともとのおいしさで、赤身だから焼き加減もミディアムやミディアムレアでもかまいません。でも、日本の家庭ではたいてい合挽き肉を使うので、きちんと火を通す。それだとちょっとつなぎがないとボソボソしてうまみが足りないので、玉ねぎやパン粉を牛乳で浸したものなどを入れて少しかさを増して、柔らかく仕上げます。柔らかいのを返すときは難しいですが、フライパンの立ち上がった壁にもたれかけるように、「壁際に寝返りを打って」というような感じで上手に返してください。

うまく返せたとしても、ハンバーグは焦げやすいので注意が必要だ。土井先生は火加減や焼き時間についてわかりやすく教えてくれた。

土井:ハンバーグはわりと真っ黒に焦げやすいので、最初に焼き色だけつけたらひっくり返して、超弱火にしてふたをします。焼き時間は厚みや大きさによって変わりますが、ハンバーグ1個につき、だいたい弱火で10分ぐらいです。わからなかったら金串をハンバーグに10秒くらい刺して、ハンバーグの中央にあたる部分をちょっと唇に当てます。そのときに「熱い」という感覚になれば、火が通っている。そういったコツをひとつ覚えたらいろいろなことに応用できますので、基本的な料理の仕方として身につけてください。

市川:ちゃんと火が通っているかは、心配になりますよね。

石田:家でやるときは難しいですよね。

市川:金串を入れて10秒待って、口じゃなくてもいいかな。手じゃダメなのかな?

石田:手も熱そうですからね。やっぱり土井先生の教えに従うしかないんじゃないですかね(笑)。

市川:ちょっと勇気がいるけど、土井先生流でやってみたいと思います。イシケンさん、2回にわたってお付き合いいただき、ありがとうございました。

石田:ハンバーグに、こんなに深い世界が広がっているとは思わなかったです。

ニッチな世界から覗き見

市川紗椰がお届けする『THE NICHE WORKBOOK』では、業界用語を入り口に、世のなかのいろいろをニッチな視点から覗き見し、知識欲の渦に巻き込まれていく、未知を愛でる30分。放送は毎週金曜25時30分から。

現段階では、ハンバーグを扱った回のほか、「相撲」を取り上げた回も配信中。





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番組情報
THE NICHE WORKBOOK
毎週金曜
25:30-26:00