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洋楽を通じて、人と繋がっていく─話題マンガ『気になってる人が男じゃなかった』魅力を解説! 作者コメントも

洋楽を通じて、人と繋がっていく─話題マンガ『気になってる人が男じゃなかった』魅力を解説! 作者コメントも

SNSから火が着いた、音楽好きを魅了する新井すみこのマンガ『気になってる人が男じゃなかった』を特集。音楽ライターの粉川しのさんが解説した。また作者である新井のテキストでのインタビューも紹介した。

この特集を扱ったのは、J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。オンエアは7月8日(月)。

【SONAR MUSICは番組公式LINEでも情報発信中】

2024年7月15日28時59分まで

仲良くなるきっかけが洋楽だった

Xのフォロワー105万人越え。音楽好きが大好きな名作ロックが多数登場することでも話題の、SNSで人気のマンガ『気になってる人が男じゃなかった』。現在はKADOKAWAでコミック化もされている。マンガから音楽を知るという人も続出中のこの作品を紐解くべく、音楽ライターの粉川しのさんに話を聞いた。

あっこゴリラ:『気になってる人が男じゃなかった』はどんなお話なんですか。

粉川:主人公は2人の女子高生、大沢 綾と古賀美月という女の子。綾がCDショップで店員のお兄さんに一目惚れするんです。でも実はそのお兄さんは女子高生で、しかも彼女の高校のクラスメートの美月だったことが分かるんですね。そこから2人の好きを巡るストーリーが始まります。

あっこゴリラ:それで音楽も関わってくると。

粉川:綾はけっこうギャルな女の子で、美月は地味系の女の子なんですけど、その2人が仲良くなるきっかけが洋楽でした。特に2人ともオルタナティブロックが好きで、それがきっかけでプレイリストのやりとりをしたりと甘酸っぱい展開の中で2人の距離がどんどん近づいていくという。ニルヴァーナが2人の出会いのきっかけとなっていたりします。

粉川さんが、このマンガにハマりグッときたポイントを語る。

粉川:この2人は現代の高校生なんですけど、なぜかよく2人が聴いているのは90年代のオルタナティブロックなんです。かわいい女の子がレディオヘッドとかレッチリとかをキャーキャー言いながら聴いているのが単純にいいなって。あと、ちょっとシーンにLPが出てきて、それがベックのジャケットだったりとか2人がスクロールするプレイリストにフー・ファイターズが出てたりとか、小ネタがちりばめられているとかすごく巧みな感じで、一つひとつ見つけてはニヤニヤしています。

あっこゴリラ:私も青春時代にCDを交換したりしたのと同じじゃんって。

粉川:美月のおじさんがCDショップの店長で、その人が90年代、00年代くらいがリアルタイムのおじさんなんです。私はたぶんそのおじさんと同世代なのでシンパシーを感じられるんだと思います。おじさん目線でこの2人を見守っている感じですね。

あっこゴリラ:いろんな世代のいろんな人に投影して楽しめるわけですね。

粉川:2人はストリーミング世代なのでレッチリと一緒にターンスタイルとかシンズとか最近の音楽も聴いていたりしていて、そのバランスもすごく面白いですね。

5月には同作品の、サウンドトラックもリリース。ここには作品の世界を彷彿とする厳選された10曲が収録される他、ブックレットには作者の新井すみこによる描きおろしの4Pマンガ、インタビューを掲載。また楽曲解説、ニルヴァーナとのコラボイラストも掲載している。

音楽好きであればあるほど泣ける

粉川さんは『気になってる人が男じゃなかった』のストーリーの見どころをこう解説する。

粉川:すごく青春物語なんですけど、青春物語って何がキーポイントかっていうとまわりと馴染めないとか、人にはあまり言えないけど実はさみしいとか。特に女の子の場合はおそろいの文化ってあるじゃないですか。まわりの子たちと合わせなきゃいけないっていう。

あっこゴリラ:あれはしんどかった。

粉川:実はそうじゃないんだけど、そうしないと浮いてしまう。そういう普遍的な悩みみたいなものをこの作品では音楽やロックを使って、すごくビビッドに描いています。特に洋楽リスナーっていつの時代もマイノリティじゃないですか。今だと特にそうだと思います。洋楽って斜陽と言われていて、若い子はCDなんて買わないですし、そもそもロックを聴かないですからね。ましてや海外のロックなんてっていうところで、綾と美月は孤独を宿命付けられた2人なんです。その2人が音楽を通じて出会うっていうストーリで。

あっこゴリラ:こんなの泣くでしょって(笑)。音楽好きであればあるほど泣けますよね。私たちはそういう孤独を音楽とかロックに救われて大人になりましたから。

粉川:リアルタイムでレディオヘッドを聴いていた人間としては、この作品を自己投影するわけですね。

あっこゴリラは「音楽好きはもちろん、青春マンガとしても楽しめる作品であることがすごい」と話すと、粉川さんも同調する。

粉川:10代って人とリズムが合わないとか、あの人とジャンルが違うよね、みたいな感じで、友だち関係を複雑にするじゃないですか。でもそんなことはないよって。結局、綾も美月も洋楽なんて全く聴かないような友だちたちとも、洋楽を聴くことによってオープンになって友だちになれるんです。閉じた関係じゃなくて人とビートが違ってもいいじゃんってことを、ニルヴァーナとか聴いてこの人たちが分かっていくというストーリーが今っぽくていいんですよね。

あっこゴリラ:概要を聞くだけで、コンテンツとしてすごいと思う。

粉川:今日的なマンガだと思いました。ロックって反抗的なものだったりするけど、そこで綾と美月が2人だけの世界に閉じこもってしまったらすごく昔的なマンガですが、2人はそこで閉じこもらなくて音楽を通して強くなるので、他のものを受け入れられる強さを持っているところが昔と違いますよね。

作品に入れる音楽の選び方は?

番組後半では、作者の新井すみこから届いたテキストでのインタビューを紹介した。

Q:この作品を描こうと思ったきっかけは?

新井:そもそも自分のセクシャリティについて日々どんどん気付きみたいなのがあって、女性と女性の繋がりを描きたいというのはありました。その上でギャップがある人たちが好きで、単純なのですが正反対の2人が意外にも共通点を持つとどうなるんだろう、それが唯一無二な存在になったらいいなと思って。そしてなおさら単純なのですが、マスキュリンな女性が好きなので美月は特にこだわって生み出しました。

Q:この作品の特徴と言えば作品の色が緑と黒ですが、その理由は?

新井:黄緑のあの色は1話の投稿の15分前くらいに入れて、それがトレードマークになったという完全な偶然です。でもあの黄緑の色は個人的に好きな色でとても危険で目にとどまるというか、目がそらせない色だなと思って。ロックって私にとって刺激が強くて大好きで、一度聴いたら聴かずにはいられないのでロックをイメージしたんだと思います。

Q:作品に登場する曲のチョイスのポイントは?

新井:マンガに入れる音楽の選び方はキャラクターのそのときの気持ちが音で感じられたり、歌詞や曲名で分かったりするといいなと思って選んでいます。この作品のいくつかの大きなシーンは自分が音楽を聴いているときに浮かんできたものだったりするので、その曲にぴったりだと自分が感じられるシーンが生まれたりしています。音楽ってすごいですよね。

また、新井は「一番のお気に入りのシーンは?」との質問に「コミック1巻の学園祭の後夜祭のシーン」と答えた。美月が綾と友だちになりたいために後夜祭のステージでレディオヘッドを歌う場面、マンガのそのときの状況と照らし合わせるとどの曲を歌っているかが分かることもポイントだ。

新井:あえて作中では曲名を出してはいないのですが、読んでくださるみなさんには分かってらっしゃってすごいと思いました。

『気になってる人が男じゃなかった』詳細は公式Xまで。

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番組情報
SONAR MUSIC
月・火・水・木曜
22:00-24:00