モデルで俳優の井桁弘恵が、23年10月より、J-WAVEの番組『LOGISTEED TOMOLAB. TOMORROW LABORATORY』(通称トモラボ)のナビゲーターを務めている。同番組は、私たちの周りにある森羅万象を「イシュー(テーマ)」にして、ラボの仲間「フェロー」を毎週ゲストに迎えながら、明日が豊かになるヒントを探すプログラム。
21年には日本テレビ系「おしゃれクリップ」のMC、22年には同局系「ヒルナンデス!」のレギュラー、23年には主演を務める映画が1本&ドラマが2本公開と、飛ぶ鳥を落とす勢いの井桁だが、かねてよりラジオ番組にも興味があったという。声の仕事に関心を持った理由は何なのか、また、実際にナビゲーターを数か月務めて感じたこととは。さらには、デビュー10周年を迎えた今の心境など、この度、インタビューを通して聞いてみた。
同番組はPodcastでも楽しめる。
これまでラジオ番組のナビゲーターやパーソナリティーを務めたことがなかったのですが、もともと人と話すことが好きで「いつかやってみたいな」「やれたらいいな」と思っていたジャンルだったので、オファーをいただいたときは素直にうれしかったです。
――ラジオをやりたいと思うきっかけなどはあったのでしょうか。
2021年から音声配信アプリ「Voicy」で、パーソナリティーを務めさせていただいたことがきっかけです。昔は、音声として客観的に聴くと想像よりも低い自分の声があまり好きではなかったのですが、その「Voicy」を配信する時間帯が夜だったんですね。それで、低くて息の抜けるような私の声が、夜に寝ながら聴くのに心地よいと褒めてくださるリスナーの方が、ありがたいことに多かったんです。あまり自信のなかった自分の声も、シチュエーションによっては良いと思ってもらえたことがうれしくて。そこから、声の仕事に興味を持つようになりました。
それに私は、SNSなどで、長々と語るのがあまり得意ではないんです。しゃべりたくない、発信したくないということではなく、長文をしたためるのが苦手で。そんな中で「Voicy」では、声だからこそ、自分の思ったことを自由にしゃべることができたので、ラジオのお仕事をやってみたいと思うようになったんですよね。
――番組が開始されて3カ月あまりが経ちましたが、ここまでの収録を振り返っての感想も聞かせてほしいです。
改めて「自分は人と話すのが好きなんだな」と実感しています。『トモラボ』は、ゲストの方と二人だけの空間でトークをする、対話100%の番組です。山崎(育三郎)さん、ゲストの方、私の3人で、企画など交えながら進行する「おしゃれクリップ」(日本テレビ系)とは、環境が全く異なります。『トモラボ』が始まる前は、ただ2人で何もない座った状態で会話をして盛り上がるのかなと、若干の不安がありました。でも、実際に番組でゲストの方の話を深堀していくと、どんどん気になることが出てくるんです。聴くことがなくて困ったり、会話が続かなくて滞ったりすることはこの3カ月間ありませんでした。むしろ、聴きたいことがありすぎて止められるくらい(笑)。なので、やっていてすごく楽しいです。
23年7月に日本テレビ系で放送された『THE MUSIC DAY 2023』にヒルナンデスチームの一員として出演させていただくにあたって、ベースに初めてチャレンジしたんですけど、11月11日「ベースの日」の放送回に、亀田誠治さんがゲストで来てくださったことは印象的でした。もともと東京事変がすごく好きで聴いていましたし、ベース初挑戦の年にそんなレジェンドから実際にお話をうかがえるというのは、『トモラボ』だから実現したことだと思います。
――映画やドラマ、あるいはバラエティー、ファッションショーと異なり、ラジオは声のみで伝えなければなりません。その難しさは感じますか?
たしかにラジオでは、モデルのお仕事やお芝居のように、表情と動きで表現することはできません。ただ、声だけだからこそ、情報がシンプルな分、研ぎ澄まされている感覚があります。ちょっとした息遣いにも感情が乗るからおもしろいんですよね。たとえば、私は同じテンションでやっているつもりでも、収録が終わったあとにディレクターさんから「今日は何かテンションが上がってましたね」と言われたりもするんです。わずかな気分の上がり下がりも、声だけで伝わるんだなと思いました。
――ほかにも、番組をやっていて気付いたことは?
「このワード、この言い回し、よく使っているな」という自分のしゃべっているときの癖が、ラジオだとハッキリとわかるんですよね。例を挙げると、会話を「でも」でスタートしちゃうところとか。「でも」ではないときも使ってしまうんです(笑)。あとは、「~とか」もよく言っていて、そういった自分の会話の癖を知って改善するための、いいトレーニングになっています。
あっという間でしたね。ほんとに「気づいたら過ぎていた」という感じで。自分が何かをやったという感触は正直なくて、周りの方との縁と運でやってきた10年だった気がします。いまだに自信がなくて、実力が追い付いていないとよく思いますし、運でやれていると感じることのほうがまだまだ多いです。
――様々なメディアに引っ張りだこの今、自信をもって芸能活動に取り組んでいるように思っていました。
いや、自信はないですね。なのに、今年はこの有難い環境にちょっと慣れてきてしまったというか……。慣れてはいけないな、良くないなと感じた一年でした。なので来年は、もっと実力を付けて、当たり前じゃないことをしっかりと自覚し、地に足を付けて冷静にやっていこうと思います(笑)。
――10年の芸能生活の中で、仕事との向き合い方も変わったのでしょうか?
だいぶ変わったと思います。10年前はまだ若かったので、オーディションに受かって「ラッキー!」「やったー!」みたいなノリでした(笑)。それに「絶対に次に繋げるぞ!」「爪痕を残すぞ!」と肩をブンブンに振り回していたんですけど、そのためにどうしたらいいのかさえわかりませんでした。ただ、やる気を見せること、めっちゃ笑顔で挨拶することくらいしかできなかったというか。もちろんそういう気持ちで仕事に臨むこともそれはそれで大事だと思いますが、今はより仕事がリアルなものとして冷静に見えている気がします。
――では、これからの10年はどんなものにしていきたいですか。
楽しいことを楽しめる心の余裕を常に持っていたいです。仕事としてきちっとやらなければいけないことはやる。でもやっぱり、エンタメを届ける側として仕事になり過ぎて自分が楽しめなくなってしまったら、結局それはエンタメじゃなくなっちゃう気もするんですよ。表ではこんなに笑顔でやっていて、裏ですごい疲れた……となっているのは違う気がするので。仕事としてやるべき部分と自分が楽しむ部分のバランスをちゃんと取っていきたいです。そんなわけで、これからの10年は、しっかりと仕事を楽しめる環境を作っていくこと、としておきます!
旅をしたいです。海外へ行って英語もしゃべれるようになりたいですし、仕事で英語を使えるのもいいなと思うので。あとはなんだろう……いろいろなことを、だいぶ叶えてきている感覚もあって。それこそ「ラジオ番組をやりたい」と言っていたこともありますし、「『ヒルナンデス!』に出たい」とずっと言っていた時期もありますし、それが叶ってきているのはうれしい反面、怖くもあって。
――なぜ「怖い」と感じるのでしょうか。
ここ数年かなり活動的に過ごしてきたので、お仕事はもちろん、プライベートでもスカイダイビングをし、スキューバダイビングもライセンスを取ったりと、やってみたかったことが叶い続けているんです。「やってみたい」が「やったことがある」に変わっていくのって、やってみたいことが減っていく状態とも言えるので、それは嫌だなと思っていて。だからしいて言うなら、“欲”を、もっと増やしていきたいです。そのきっかけをくれるのが『トモラボ』だと思うので、いろいろなゲストの方のお話を聴き、自分の中の欲を多くしていくことが目標ですね。
――最後に、番組を楽しみにしているリスナーの方、ファンの方に向けてメッセージをお願いします。
大人になると、自分の興味のあることって限られてくると思うんですよ。興味がないことには食わず嫌いになり、「これはもう知らない、わからない」で片づけてしまうというか。私自身、最初はドラムをやりたかったんですけど、ドラムは先にやる人が決まっちゃって、ベースが空いてるから「ベースかぁ……」と思っていたんです(笑)。最初の入り口はそんな感じだったんですけど、やっぱり、やってみてその楽しさがわかりました。『トモラボ』は、今まで閉じていた興味の扉を開けるきっかけになる番組だと思います。なので、仮に「よくわからないな」というテーマであっても、話を聴いてみると今まで知らなかった魅力がたくさんあるので、「自分の世界が広がるかもしれない」とちょっとした期待をかけて、気軽に聴いてくれたらうれしいです。
◎プロフィール
俳優・モデル。 1997年2月3日、福岡県出身。2011年スカウトにて芸能界へ。日本テレビ「ヒルナンデス」水曜レギュラー、日本テレビ連続ドラマ「紅さすライフ」にヒロインとして出演、ファッション雑誌集英社『MORE』の専属モデルなど多岐にわたって活躍。多数のCMにも起用されている。
(取材・文=小島浩平)
21年には日本テレビ系「おしゃれクリップ」のMC、22年には同局系「ヒルナンデス!」のレギュラー、23年には主演を務める映画が1本&ドラマが2本公開と、飛ぶ鳥を落とす勢いの井桁だが、かねてよりラジオ番組にも興味があったという。声の仕事に関心を持った理由は何なのか、また、実際にナビゲーターを数か月務めて感じたこととは。さらには、デビュー10周年を迎えた今の心境など、この度、インタビューを通して聞いてみた。
同番組はPodcastでも楽しめる。
ナビゲーター就任は「素直に嬉しかった」
――まずは、『トモラボ』のナビゲーターを務めることが決まった時の率直な気持ちから教えてください。これまでラジオ番組のナビゲーターやパーソナリティーを務めたことがなかったのですが、もともと人と話すことが好きで「いつかやってみたいな」「やれたらいいな」と思っていたジャンルだったので、オファーをいただいたときは素直にうれしかったです。
――ラジオをやりたいと思うきっかけなどはあったのでしょうか。
2021年から音声配信アプリ「Voicy」で、パーソナリティーを務めさせていただいたことがきっかけです。昔は、音声として客観的に聴くと想像よりも低い自分の声があまり好きではなかったのですが、その「Voicy」を配信する時間帯が夜だったんですね。それで、低くて息の抜けるような私の声が、夜に寝ながら聴くのに心地よいと褒めてくださるリスナーの方が、ありがたいことに多かったんです。あまり自信のなかった自分の声も、シチュエーションによっては良いと思ってもらえたことがうれしくて。そこから、声の仕事に興味を持つようになりました。
それに私は、SNSなどで、長々と語るのがあまり得意ではないんです。しゃべりたくない、発信したくないということではなく、長文をしたためるのが苦手で。そんな中で「Voicy」では、声だからこそ、自分の思ったことを自由にしゃべることができたので、ラジオのお仕事をやってみたいと思うようになったんですよね。
――番組が開始されて3カ月あまりが経ちましたが、ここまでの収録を振り返っての感想も聞かせてほしいです。
改めて「自分は人と話すのが好きなんだな」と実感しています。『トモラボ』は、ゲストの方と二人だけの空間でトークをする、対話100%の番組です。山崎(育三郎)さん、ゲストの方、私の3人で、企画など交えながら進行する「おしゃれクリップ」(日本テレビ系)とは、環境が全く異なります。『トモラボ』が始まる前は、ただ2人で何もない座った状態で会話をして盛り上がるのかなと、若干の不安がありました。でも、実際に番組でゲストの方の話を深堀していくと、どんどん気になることが出てくるんです。聴くことがなくて困ったり、会話が続かなくて滞ったりすることはこの3カ月間ありませんでした。むしろ、聴きたいことがありすぎて止められるくらい(笑)。なので、やっていてすごく楽しいです。
ベースに挑戦した年に、亀田誠治との対談が実現!
――ここまでの放送で印象に残ったゲストを一人挙げるとするならば、どなたになりますか?23年7月に日本テレビ系で放送された『THE MUSIC DAY 2023』にヒルナンデスチームの一員として出演させていただくにあたって、ベースに初めてチャレンジしたんですけど、11月11日「ベースの日」の放送回に、亀田誠治さんがゲストで来てくださったことは印象的でした。もともと東京事変がすごく好きで聴いていましたし、ベース初挑戦の年にそんなレジェンドから実際にお話をうかがえるというのは、『トモラボ』だから実現したことだと思います。
――映画やドラマ、あるいはバラエティー、ファッションショーと異なり、ラジオは声のみで伝えなければなりません。その難しさは感じますか?
たしかにラジオでは、モデルのお仕事やお芝居のように、表情と動きで表現することはできません。ただ、声だけだからこそ、情報がシンプルな分、研ぎ澄まされている感覚があります。ちょっとした息遣いにも感情が乗るからおもしろいんですよね。たとえば、私は同じテンションでやっているつもりでも、収録が終わったあとにディレクターさんから「今日は何かテンションが上がってましたね」と言われたりもするんです。わずかな気分の上がり下がりも、声だけで伝わるんだなと思いました。
――ほかにも、番組をやっていて気付いたことは?
「このワード、この言い回し、よく使っているな」という自分のしゃべっているときの癖が、ラジオだとハッキリとわかるんですよね。例を挙げると、会話を「でも」でスタートしちゃうところとか。「でも」ではないときも使ってしまうんです(笑)。あとは、「~とか」もよく言っていて、そういった自分の会話の癖を知って改善するための、いいトレーニングになっています。
メディアに引っ張りだこでも「自信はない」
――話は変わりますが、2013年にデビューした井桁さんにとって2023年はデビュー10周年イヤーです(インタビューは23年末に実施)。この10年はご自身にとってどんな時間でしたか?あっという間でしたね。ほんとに「気づいたら過ぎていた」という感じで。自分が何かをやったという感触は正直なくて、周りの方との縁と運でやってきた10年だった気がします。いまだに自信がなくて、実力が追い付いていないとよく思いますし、運でやれていると感じることのほうがまだまだ多いです。
――様々なメディアに引っ張りだこの今、自信をもって芸能活動に取り組んでいるように思っていました。
いや、自信はないですね。なのに、今年はこの有難い環境にちょっと慣れてきてしまったというか……。慣れてはいけないな、良くないなと感じた一年でした。なので来年は、もっと実力を付けて、当たり前じゃないことをしっかりと自覚し、地に足を付けて冷静にやっていこうと思います(笑)。
――10年の芸能生活の中で、仕事との向き合い方も変わったのでしょうか?
だいぶ変わったと思います。10年前はまだ若かったので、オーディションに受かって「ラッキー!」「やったー!」みたいなノリでした(笑)。それに「絶対に次に繋げるぞ!」「爪痕を残すぞ!」と肩をブンブンに振り回していたんですけど、そのためにどうしたらいいのかさえわかりませんでした。ただ、やる気を見せること、めっちゃ笑顔で挨拶することくらいしかできなかったというか。もちろんそういう気持ちで仕事に臨むこともそれはそれで大事だと思いますが、今はより仕事がリアルなものとして冷静に見えている気がします。
――では、これからの10年はどんなものにしていきたいですか。
楽しいことを楽しめる心の余裕を常に持っていたいです。仕事としてきちっとやらなければいけないことはやる。でもやっぱり、エンタメを届ける側として仕事になり過ぎて自分が楽しめなくなってしまったら、結局それはエンタメじゃなくなっちゃう気もするんですよ。表ではこんなに笑顔でやっていて、裏ですごい疲れた……となっているのは違う気がするので。仕事としてやるべき部分と自分が楽しむ部分のバランスをちゃんと取っていきたいです。そんなわけで、これからの10年は、しっかりと仕事を楽しめる環境を作っていくこと、としておきます!
今後の目標は「“欲”をもっと増やしていきたい」
──それでは、今後の仕事やプライベートでの目標があれば教えてください。旅をしたいです。海外へ行って英語もしゃべれるようになりたいですし、仕事で英語を使えるのもいいなと思うので。あとはなんだろう……いろいろなことを、だいぶ叶えてきている感覚もあって。それこそ「ラジオ番組をやりたい」と言っていたこともありますし、「『ヒルナンデス!』に出たい」とずっと言っていた時期もありますし、それが叶ってきているのはうれしい反面、怖くもあって。
――なぜ「怖い」と感じるのでしょうか。
ここ数年かなり活動的に過ごしてきたので、お仕事はもちろん、プライベートでもスカイダイビングをし、スキューバダイビングもライセンスを取ったりと、やってみたかったことが叶い続けているんです。「やってみたい」が「やったことがある」に変わっていくのって、やってみたいことが減っていく状態とも言えるので、それは嫌だなと思っていて。だからしいて言うなら、“欲”を、もっと増やしていきたいです。そのきっかけをくれるのが『トモラボ』だと思うので、いろいろなゲストの方のお話を聴き、自分の中の欲を多くしていくことが目標ですね。
――最後に、番組を楽しみにしているリスナーの方、ファンの方に向けてメッセージをお願いします。
大人になると、自分の興味のあることって限られてくると思うんですよ。興味がないことには食わず嫌いになり、「これはもう知らない、わからない」で片づけてしまうというか。私自身、最初はドラムをやりたかったんですけど、ドラムは先にやる人が決まっちゃって、ベースが空いてるから「ベースかぁ……」と思っていたんです(笑)。最初の入り口はそんな感じだったんですけど、やっぱり、やってみてその楽しさがわかりました。『トモラボ』は、今まで閉じていた興味の扉を開けるきっかけになる番組だと思います。なので、仮に「よくわからないな」というテーマであっても、話を聴いてみると今まで知らなかった魅力がたくさんあるので、「自分の世界が広がるかもしれない」とちょっとした期待をかけて、気軽に聴いてくれたらうれしいです。
◎プロフィール
俳優・モデル。 1997年2月3日、福岡県出身。2011年スカウトにて芸能界へ。日本テレビ「ヒルナンデス」水曜レギュラー、日本テレビ連続ドラマ「紅さすライフ」にヒロインとして出演、ファッション雑誌集英社『MORE』の専属モデルなど多岐にわたって活躍。多数のCMにも起用されている。
(取材・文=小島浩平)
番組情報
- LOGISTEED TOMOLAB. ~TOMORROW LABORATORY
-
土曜20:00-20:54