音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
高良健吾が見た、輝きあふれる「すばらしい芝居」。17歳の大西利空との共演で互いが学んだこと

高良健吾が見た、輝きあふれる「すばらしい芝居」。17歳の大西利空との共演で互いが学んだこと

「私、一生、恋愛しないから」。いつも不機嫌そうに、日々を淡々と暮らすOLを広瀬すずが演じる映画『水は海に向かって流れる』が、6月9日(金)から全国公開となる。

高校生の熊沢直達(大西利空)は、通学のため叔父の家で居候をすることに。しかし、待ち合わせ場所に現れた謎の女性・榊千紗(広瀬すず)が案内したのはシェアハウスだった。会社員だと聞いていた叔父・歌川茂道(高良健吾)は、密かに漫画家となり、ユーモラスな住人と共同生活を送っていたのだ。榊は笑顔を見せないが、気まぐれに手料理を振る舞ってくれるなど、親切な一面も。次第に淡い思いを抱き始める直達だが、ふたりには思わぬ因縁があった──人と真摯に向き合うこと、優しくあることの大切さを再認識させてくれる、やわらかな物語だ。
mizuumi-2230306-2.jpg

©2023 映画『水は海に向かって流れる』 製作委員会 ©田島列島 講談社

今回は、純粋な高校生・直達を演じた大西利空と、マイペースだけど優しい漫画家“ニゲミチ先生”(茂道)を演じた高良健吾にインタビュー。叔父と甥という役柄を演じ、大西は「本当の家族かのように支えていただきました」と高良に感謝を伝える。作品の魅力や撮影で得た学び、主演の広瀬すずの印象を訊いた。また、ふたりが最近聴いている音楽の話題も。

人との関わりが心を溶かしていく─映像も細部まで美しい映画

――人気漫画『子供はわかってあげない』などで知られる田島列島さんの作品が原作です。大人たちの情けなさを描きながらも、みんなが愛おしく見えてくる、優しい作品だと感じました。おふたりは、初めて物語に触れたとき、どんな印象を持ちましたか。
mizuumi230602-4.jpg

大西利空(左)、高良健吾(右)

高良健吾:まず脚本を読んだときは、直達の純粋さが榊さんの心を溶かしていくまでの過程におもしろさを感じました。原作も読み、撮影を終えて仕上がった作品を観たときは、ストーリーのよさだけでなく「映像にする意味があったんだな」と感動したんです。「ここまでの原作を、こういうふうに調理するんだ」と。映画でみんなを楽しませようという空気に満ちていて、前田監督のすごさを実感し、「いい映画だ。すごく好きだ」と思いました。

大西利空:僕は最初に原作を読ませていただいて、高良さんと同じように、自分の気持ちを胸に秘めていた榊さんが感情を表に出すに至るまでの心境の変化に惹かれました。その後、撮影に入っても、仕上がった作品を観ても、景色などの情景や、榊さんが作るおいしそうな食べ物など、細部まで気が配られたきれいな作品だと思いました。
mizuumi-2220122-9.jpg

©2023 映画『水は海に向かって流れる』 製作委員会 ©田島列島 講談社

──たしかに、繊細な感情の揺れを表現する役者陣のお芝居はもちろん、海や雨など水のきらめきが印象的なロケーションやシェアハウスの個性的なインテリアなど、視覚的な部分のこだわりも心地よい映画でした。

大西:明るさや色遣いなどに映画ならではの美しさを感じて、「自分がこの作品に携われて本当によかったな」と思える作品になりました。

高良:僕は観終わったあとに、「大西くん、すごい」と思って。

大西:ありがとうございます。

『水は海に向かって流れる』本予告

大人と少年。それぞれが得た学び

──叔父と甥という、つながりの深い間柄でしたね。撮影以外では、どんな話をされましたか。

高良:野球の話とか、漫画の話とかだよね。

大西:撮影以外では、楽しい話をしていましたよね。

高良:「カップラーメン、何が好き?」みたいな話とか(笑)

大西:現場にいっぱい置いてあったんですよね。「やっぱりシーフードじゃないか」みたいな話をしていました(笑)。
mizuumi230602-9.jpg
──なごやかな雰囲気が伝わってきます。お芝居の面ではいかがでしょう。

大西:高良さんが演じたニゲミチ先生は、ちょっと抜けているところもあるけれど、やっぱり直達にとっては小さい頃からよくしてくれた存在で……今までそういった役柄の人と関わる役があまりなかったこともあって僕が悩んでいると、高良さんはすごく心に響くアドバイスをしてくださいました。そして、役への向き合い方も勉強になりました。コメントで寄せた「本当に家族みたい」という言葉は、僕が小さい頃は現場にお母さんがついてきてくれていたんです。
mizuumi-2230306-10.jpg

©2023 映画『水は海に向かって流れる』 製作委員会 ©田島列島 講談社

──生後5か月で芸能界入りされていますもんね。

大西:はい。そこからどんどん独り立ちしていって、ひとりで、あるいはマネージャーさんと現場に行くようになってみて、頼れる存在が近くにいてくれると気持ち的にラクになると感じたんです。僕がよくしていただいたからこそ、これから大人になって、同じ悩みを抱えている人に出会ったら恩返しができたらいいなと思いました。「大人になる」ということについて考えさせられたし、すごく勉強になる経験でした。

──そんな大西さんの姿から、高良さんは何を感じていたのでしょうか。大西さんは現在17歳、高良さんが芸能界に入られた年齢と近いですが、かつての自分と重なる部分はありましたか。
mizuumi230602-6.jpg
高良:大西くんが芝居という表現について悩むポイントは、僕も通ってきた道でした。でも、その人が自分で答えをみつけられる人なら全部は教えないほうがいいし、人それぞれ響く言葉も違う。大西くんはそういうことを考えさせてくれる人だったと思います。芝居の経験が浅い10代の子と一緒に演じること自体にも学びがあって。そのときにしか出せない輝きのようなものが、どうしてもあるんです。大西くんを通して、そういうものを身近で見られたのはラッキーな機会でした。素直に、自分の心の中で起きていることをちゃんとつかまえていくような、すばらしい芝居でした。

気さくだけど、芝居はストイック。広瀬すずのすごさ

――主演の広瀬すずさんは今回、いつも不機嫌そうに、淡々と生きる女性を演じていました。現場ではどんな印象を受けましたか?
mizuumi-2230306-8.jpg

©2023 映画『水は海に向かって流れる』 製作委員会 ©田島列島 講談社

高良:「かっこいい」という印象でしたね。僕が広瀬すずさんという俳優に対して感じるすごさは、役としてそこにいる、“居方”なんです。役として、その場の空気を巻き込んでいく。我が強いと、その人の作品になりすぎることがあると思うんですけど、広瀬さんの場合はそうはならないんですよね。そのあり方がすごいと思いました。

──大西さんは、広瀬さんと二人きりのシーンも多いですね。感情を生のまま溢れ出させるような難しいお芝居もありました。

大西:二人きりのシーンではプレッシャーを感じるんじゃないかという不安もあったのですが、広瀬さんは気さくで明るくて、すごく優しく話してくださって。でも芝居の表現の仕方は、すごく迫力がありました。間近で見ていて、僕の人生の中でも本当に5本の指に入るくらいの衝撃でした。まるで、榊千紗という人物を介して自分の気持ちを言っているかのような自然さに圧倒されました。作品に対しての向き合い方も、ストイックで真っすぐな方でした。
mizuumi-2230306-5.jpg

©2023 映画『水は海に向かって流れる』 製作委員会 ©田島列島 講談社

【関連記事】広瀬すず、大西利空との共演を語る

ふたりがよく聴く音楽は?

――同作の主題歌は、スピッツが書き下ろした『ときめきpart1』。繊細な爽やかさを持つ楽曲で、作品とマッチしていました。

『水は海に向かって流れる』主題歌スペシャルムービー

高良:主題歌がスピッツさんと聞いたとき、「わあ、最高!」と思いましたね。

大西:僕も、すごくうれしかったです。撮影が終わってから主題歌が入った状態の作品を観るまで時間が空いたので、どんな歌になるのかなと楽しみにしていたんです。実際に聴くと、曲単体で聴いても楽しいけど、映画と合わさることによって、作品のよさが新しく感じられる曲だなと思いました。

【関連記事】スピッツが語る『ときめきpart1』制作秘話
mizuumi230602-8.jpg
──J-WAVE NEWSは、音楽に力を入れるラジオ局のJ-WAVEが運営しています。おふたりは最近、どんな音楽を聴いていますか? 気合いを入れるときに聴く曲があれば教えてください。

高良:最近よく聴くのは、邦楽だとラッパーのZORNくんとか、ロックだったら、踊ってばかりの国とかが好きですね。気合いを入れるときはZORNくんかな。

大西:僕は最近、K-POPにハマりまして。

高良:おお!

大西:ちょっと自分でもびっくりしています。

高良:なんていうグループ?
mizuumi230602-2.jpg
大西:ガールズグループのNMIXXです。若い子たちで、K-POPの第4世代にあたるのかな。すごくかわいくて、歌もうまいんです。やる気を出したいときは、RADWIMPSを聴くことが多いです。ちょうど『水は海に向かって流れる』の撮影が始まる前くらいに聴き出しました。

――「特にこの曲!」というのはありますか?

大西:難しい……もう、めちゃめちゃ聴くんですよ。曲の内容的には『正解』が本当に大好きで。あと『桃源郷』も、曲のテンポが速くて好きです。

──高良さんは過去にJ-WAVEのオンエアでも、おすすめの楽曲をご紹介いただいたことがあり、よく音楽を聴かれる印象があります。新しいアーティストとはどう出会っていますか?

【関連記事】高良健吾がプレイリストに必ず入れている曲は?

高良:周囲に音楽を好きな人やミュージシャンが多いので、そこからですね。友だちが作ったプレイリストを送ってもらって聴いて、気になった曲をディグっていきます。好きな曲の系統は気分によっても変わってきますが、昔は激しさや速さを持つ曲が好んでいたんですけど、今はアンビエントような安らげる音楽も聴くようになりました。
mizuumi230602-7.jpg
──先ほど挙げていただいたZORNだと?

高良:気合いを入れるときに聴く曲として答えると、ZORNくんの『Love Yourself』ですね。弱ったときに聴くと「よっしゃ!」と背中を押される気持ちになりますし、最後の1分のパンチラインがすごいんです。

人と人の特別な関係性を描く、心あたたまる物語

――最後に、『水は海に向かって流れる』が気になっている読者へのメッセージをお願いします。

大西:家族でも恋愛でもない、特別な関係性を描いています。共感できたり、涙するような部分があったり、いろんな感情を抱かせてくれる、心あたたまる作品だと思います。音楽との関係性もすごくいい作品なので、ぜひ観に来てください。
mizuumi230602-1.jpg
高良:少年のピュアさが、大人の凝り固まった何かを溶かしていく、その描き方がすごくキュートな作品です。おもちゃ箱のようにさまざまな魅力が詰まった、映画らしい映画だと思います。そういう映画って、なかなか邦画で最近ないような気がしています。楽しんでいただけたらうれしいです。
mizuumi230602-5.jpg
<取材・文=西田友紀、撮影=友野雄/高良健吾担当=メイク:森田康平、スタイリスト:渡辺慎也(Koa Hole)、大西利空担当=ヘアメイク:Emiy、スタイリスト:MASAYA>

【作品情報】
・出演
広瀬すず
大西利空
高良健吾 戸塚純貴 當真あみ 勝村政信
北村有起哉
坂井真紀 生瀬勝久
・監督
前田哲
・原作
田島列島「水は海に向かって流れる」 講談社「少年マガジン KCDX 」
・脚本
大島里美 音楽 羽毛田丈史
・主題歌
スピッツ『ときめきpart1』
・公式サイト
https://happinet-phantom.com/mizuumi-movie/

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。

  • 新規登録簡単30
  • J-meアカウントでログイン
  • メールアドレスでログイン