Hi-STANDARDが心に突き刺さる。ライダー俳優・武田航平が“ハードコア愛”語る

『仮面ライダーキバ』と『仮面ライダービルド』の2作で仮面ライダーを演じた武田航平が、父親役に初挑戦した。育児放棄していた父親が幼い娘と懸命に向き合おうとする姿を描いた映画『この小さな手』(4月8日公開)。『きらきらひかる』『モリのアサガオ』で知られる郷田マモラ氏による漫画の実写映画化だ。姪っ子に愛されているという武田が、劇中で生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこした感想から、featuringの高校時代を経て辿り着いたハードコア音楽道までを余すところなく教えてくれた。

映画『この小さな手』予告

初の父親役「とてもいいタイミング」

──父親役に初挑戦ですね!

10代から俳優をやらせてもらう中で、父親役と向き合う機会は今までありませんでした。僕は結婚をしていますが親にはなっていないので、自分にとって未知なるものを演じることへのドキドキ感はありました。僕の家族は仲が良く、自分も明るく楽しい家族像が理想なので、家庭や子どもとうまく向き合えていない父親である和真は縁遠い存在ですが、今の年齢で父親役を演じる機会を得たのはとてもいいタイミングだと思いました。

──赤ちゃんを抱っこする場面もありますね!

生まれたばかりの赤ちゃんは壊れそうで、抱っこするのも怖いという気持ちがありました。その気持ちは和真も同じだと思います。新しい命をお腹の中に宿す母親とは違い、父親とは生まれたばかりの我が子を抱っこすることで家族や子どもと向き合うことがスタートすると思います。しかし和真はそのスタートがうまく切れなかった。だからこそ、我が子を抱いてもグッと自分の胸に引き寄せることができなかった。僕が抱いた「壊れそうで怖い」という感情は、和真の父親になり切れない戸惑いに変換できた気がします。

──撮影中に赤ちゃんが泣き出したりとかは?

それは全くなくて、人様のお子さんですから僕の方が緊張していました。とても落ち着いたおとなしい赤ちゃんだったので撮影はスムーズ。ちなみに僕には姪っ子がいるので抱っこには慣れていて、姪っ子からも好かれています(笑)。

──武田さんは実際にご結婚されていますが、結婚したことで仕事に対する心境は変わりましたか?

それはとても大きくあります。妻の家族からしたら、大切に育てた娘を僕に託すわけですから、一つ一つの仕事に対する責任感はかなり強くなりました。家族を養うという意識が芽生えて、独身時代以上に仕事への気合いが高まりました。子どもがいたら、その気持ちも一層高まると思います。

(C) 映画「この小さな手」製作委員会

音楽はハードコア、メロコアが好き! 自身で作曲も

──J-WAVE NEWSは、音楽に力を入れるラジオ局のJ-WAVEが運営しています。そこで質問です。武田さんの好きな音楽は何ですか?

僕の好きなジャンルはハードコアやメロコアで、学生時代はグリーン・デイ、オフスプリング、ブリンク182、サム41を聴いていました。Hi-STANDARDは中学1年生の頃から好きで、その気持ちは今もブレません。ニルヴァーナのカート・コバーンも好きでそこから色々と枝葉を広げてラモーンズに辿り着いたりして、西海岸系のパンクも好きになりました。僕が15歳の頃はミクスチャー系の音楽が流行っていて、友だちのバンドにMCとして客演をしていました。今でいうフィーチャリングですね。趣味レベルではありますが、今でもギターを片手に作曲をしたりしています。

──自分で曲を作るからこそわかるミュージシャンたちの偉大さもありますよね!

もちろんあります。ラモーンズの楽曲は5コードくらいのシンプルな曲構成なのにどれも粒ぞろい。しかも彼らが演奏するからこその雰囲気というのがあります。それはニルヴァーナのカートもそうで、『Smells Like Teen Spirit』のイントロは誰もが弾けるけれど、カートでなければ出せない味があります。

心に突き刺さる、Hi-STANDARDの楽曲

──武田さんの心の一曲は何ですか?

Hi-STANDARDのアルバム『ANGRY FIST』の『the sound of secret minds』は大好きで、昨日も聴いていました。自分の心に耳を傾けろという内容で、聴くたびに心に突き刺さります。先日そのことを横山 健さんに伝えたら「その詞は俺が書いたものだ」と教えてくれました。『the sound of secret minds』は自分が好きなこと、自分が信じたことをそのまま貫けと思わせてくれる曲です。昨年末にRumble Of The Year 2022でマキシマム ザ ホルモンとKen Bandが対バンした際その曲をやってくれて、改めて僕はこの曲が好きだと実感しました。

──どんなシチュエーションで音楽を聴きますか?

音楽は車の移動中に聴くことが多いです。日常的に音楽は流れていますが、自分の気持ちを整理するときやメンタルが弱っているときに意識的に摂取します。奮起させたいときはHi-STANDARDやブリンク182を聴きます。僕は現在37歳ですが、いまだに好んで聴く曲の多くが多感な時期に聴いていた音楽。10代の頃に影響を受けた曲を今聞くと、意味もなく涙腺が緩むときってありますよね(笑)。歌詞を当時とは違う受け止め方で理解したりして。

──データではなくてCDなど現物を手元に置いておきたい派ですか?

ストリーミングもいいですが、僕はやはりCD派です。データではなく、現物で所有したいという欲求。収録されている楽曲もさることながら、CDジャケットのアートワークやライナーノーツも含めて一つの作品という考え方を持っています。CDの場合はジャケットのアートワークで勝負していて、絵やデザインにアーティストそれぞれのこだわりやテーマを感じます。大切にしたいアルバムはCDで買って部屋にコレクションしています。CDは学生時代から買っているので、実家やトランクルーム含めて相当な枚数を所有しています。学生時代はHMVやタワレコなどに行って、視聴コーナーで曲を聴いて感動したり、店員さんの紹介ポップを読んだり。欲しい新譜が発売されたときのお店に行くワクワク感は最高です。

父になろうとする「普通の男の姿」を見てほしい

(C) 映画「この小さな手」製作委員会

──映画も、映画館で観るという行為自体に、喜びや発見がありますよね。

映画館で映画を観るということは、音楽で言えばライブに行くのと同じです。有限な時間を割いて、自分の小遣いや稼いだお金を払ってその場所に行って観るという行為。それだけに集中して観られる気がする。映画館という大きなスクリーンで一つの作品をみんなで共有するという時間はスペシャルな瞬間であり、ライブ同様に作品を全身で浴びることが出来る。ぜひとも『この小さな手』を映画館という非日常で体感してほしいです。

──どんな方に観てもらいたいですか?

この作品を感動的かつ、いい家族の話だと捉えてほしくはないです。父親は完璧なヒーローだと思っていたけれど、実はそうではない。年齢を重ねて大人と呼ばれる存在になっただけ。この映画を通して、毎日もがきながら家族と向き合い、ダサいところもありながら必死に立ち上がろうとしている普通の男の姿を見てほしいです。パーフェクトな人間なんていません。だからこそ「僕も同じだ」「私も同じだ」と共感していただき、勇気をもらってほしいです。反面教師にするのもいいけれど、お父さん方には改めて子どもの気持ちを考えて、お子さんの小さな手をそっと握ってほしいですね。

(C) 映画「この小さな手」製作委員会

■作品情報 『この小さな手』
4月8日(土)よりユーロスペース他全国順次公開

(取材・文・撮影=石井隼人、ヘアメイク=七絵、スタイリスト=網野正和)

関連記事