SiM・MAHの考え方が180度変わった出来事とは。THE ORAL CIGARETTES・山中拓也が聞く

J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい”音楽をつくるクリエイターが“WOW"と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる。

1月のマンスリープレゼンターはTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也。1月22日(金)のオンエアでは、ゲストにSiMのボーカル・MAHが登場。ここでは、自身の音楽ルーツやSiMのターニングポイント、楽曲制作の裏話を語った部分をお届けする。

ハイスタに憧れてベースボーカルにトライ

山中はMAHについて「僕が上京した時に居場所を作ってくれた、お兄ちゃん的存在」と表現。まずは、MAHの音楽ルーツをたどった。

MAH:小学生まではJ-POPとかを聴いていたんだけど、中学1年のときに、姉ちゃんの彼氏の影響でハイスタ(Hi-STANDARD)を家に持ち込んできて、「むっちゃ速え」みたいになって。テンポ速いじゃん。
山中:確かにJ-POPを聴いてたらそうなりますよね(笑)。
MAH:当時、姉ちゃんの代がバンドブームで、中学の卒業ライブでベースを弾いてみるって言い出して、家にベースギターを持って帰ってきたんだよ。それで、自分もベースにのめり込んで、ハイスタとかパンク系をよく弾いてた。
山中:その後、他のバンドのコピーとかもやったんですか?
MAH:めっちゃしてた。中学の3年間は周りにバンド仲間がいなかったから、ずっとひとりでベースを弾いてたの。コピーするしかなかったから、ハイスタから入って洋楽パンクを聴きまくって、中学時代はパンク小僧だったね。RancidとかNOFXとかいろんなバンドのベースをコピーする感じ。
山中:ベースからだったんですね。
MAH:そう。ベースボーカルをやりたかったの。ハイスタの難波(章浩)さんはベースボーカルだったから。

MAHは軽音学部がある高校に進学。そこでようやくバンドを始められたという。

山中:高校で結成したバンドにSiMのメンバーっているんですか?
MAH:SiMの最初のベースが、そのバンドのドラムだった。
山中:なるほどね。ややこしい(笑)。
MAH:最初3人でバンドを組んでて、俺がベースボーカルでドラマーがいたのね。その後、俺はギターボーカルに転向したの。「それなら俺がベースやろう」ってそいつがベースを始めて。それで、地元のライブハウスで出会った同世代のめっちゃうまいドラマーが「一緒にバンドをやりたい」と言ってくれて、じゃあベースはあいつを入れようとなって、高校3年くらいからSiMがスリーピースで始まったの。
山中:そこからSiMの現メンバーとはどこで出会ったんですか?
MAH:地元で対バンとかよくしてたバンドから、結果引き抜くみたいなかたちだった。ギターのSHOW-HATEとは高校のときからだから付き合いはめっちゃ古いし、家もすごく近かったからずっと遊んでて、ベースのSINくんは中学校のひとつ上の先輩だから、3人は地元が一緒なんだよ。ドラムのGODRiだけ兵庫から出てきて知り合ったね。

ふたつの大きなターニングポイント

MAHはこれまでのアーティスト人生を振り返り、ふたつのターニングポイントがあったと明かす。

MAH:ひとつは今のメンバーがそろったとき。それが2009年だからバンドを始めて5年くらいたった頃なんだけど、一時期バンドに俺とSHOW-HATEだけってときもあって。そこにGODRiとSINくんが入ってくれた。バンドって結成したときが一番勢いあるじゃん。ずっと自分がバンドをやりたいって思っていたやつと一緒にバンドを組めるわけだから、「俺ら最強だぜ」「なんでもできる」って思うんだけど、そのメンバーが抜けたりするじゃん。最強が崩れちゃうからみんなすごくショックを受けるんだけど、実はそんなことはなくて、そのあとにそろったピースこそが最強。SiMで言えばSINくん、GODRi、SHOW-HATEが最強で、始めたときのメンバーは最強じゃなかったんだなって気づいた。

もうひとつのターニングポイントは東日本大震災だった。

MAH:震災は個人的にすごく大きなターニングポイントだった。それまではすごくネガティブな考えをする人間だったの。「いつか死んじゃえばいいや」「成功しなかったら死んじゃえばいいし」「誰にも迷惑かけずにいなくなろう」とか思ってたけど、震災が起こって自分のファンの子たちが苦しい思いをしているのを見たときに、1秒でも長く生きていこうと思って。「絶対死なねえ、みんなのぶんまで生きなきゃ」って考えが180度ガラッと変わって。そこから書く歌詞も前向きなものが増えた。
山中:すごくわかる気がします。
MAH:ちょうとセカンドアルバムの『SEEDS OF HOPE』を作ってたときだったんだけど、歌詞も全部書き換えて。
山中:ええ!
MAH:レコーディング前に「やっぱり書き直す」って言って、ネガティブな言葉は排除した。
山中:できるだけみんなが前向きになれるように。
MAH:そうそう。それでそのアルバムがちょっとヒットして、今のSiMがあるから、すごく大事な年だったなって、いろんなことを考えた年だったなって思う。

お客さんを信頼できるからこそ生まれる音楽

番組後半ではSiMの音楽制作に迫った。SiMは楽曲制作の約9割をMAHが作り、それを他のメンバーがコピーしつつ最終的にアレンジを加えて完成するという。

山中:デモでドラム、ベース、ギターも作っちゃうってことですか?
MAH:コーラスとかも入れて、ほぼほぼちゃんと聴けるレベルのデモを作ってるかな。
山中:じゃあ、ギターのリフとかもギタリストに任せるというより、最初に自分で作っちゃう感じですか?
MAH:それも含めて、ほぼ全部作っちゃう。
山中:へえ! すごいな。
MAH:リードギターの「チルチルチルチル」みたいなのはSHOW-HATEに任せるけど、基本となるものは俺が全部作るかな。

山中が、曲を作るときに、自分の好きな音楽ややりたい音楽、SiMで表現したい音楽、リスナーに寄せる音楽との割合を訊くと、MAHはこう答えた。

MAH:それは時期によって違って、めちゃくちゃ意識してた時期もあったけど、最近は全くそれを無視し始めるところに入った。
山中:なんで無視できるようになったんですか?
MAH:お客さんを信頼できるようになったというか。ずっとどっかで「こんなことをやってもお客さんに理解してもらえないだろうな」って考えてたんだよ。でも、自分たちの考えているはるか上でお客さんは俺たちのことを理解しようとしてくれているから、俺らが突拍子もないことをやっても、たぶんお客さんはついてきてくれるなって信頼が持てたんだよね。それで次のアルバムはやりたいことをやるぞってことで2020年に5枚目のアルバムを作った。

その完成したアルバムが、2020年6月にリリースした『THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES』だ。

SiM 【 #SiM神盤 】インタビュー Part.① -タイトル由来と曲作り –

山中:このアルバムで、初めて自分たちがやりたいことを振り切って作ったと。
MAH:いや、ファーストアルバム『Silence iz Mine』がそう。
山中:なるほど。めっちゃわかります!
MAH:バンド始めた頃から「俺らがファーストアルバムを出すとしたら」とか考えてたようなものを作って、でも最初は700枚くらいしか売れなかったの。全然売れない、みんなわかってくれないみたいな気持ちから、みんながわかってくれるにはどうすればいいんだろうと思ってすごく考えて作ったのが2、3枚目くらい。そこからちょっと挑戦を加えたのが4枚目で、この5枚目になった感じ。
山中:『PANDORA』のあたりでSiMがバンと上がっていっているのを僕らは見てたので、そう考えると、そうやって混ぜ合わせたことが成果に出てるってすごいなって思います。

SiM - PANDORA (OFFICIAL VIDEO)

MAH:あの頃は、次に出すCDのその次に出すCDくらいまでイメージが決まっていたんだよね。この曲を出すために、まずこの曲をリリースしようみたいなことがちゃんとできてたから、あのときはニヤニヤしてたよね(笑)。
山中:見ている側も「めちゃくちゃ計算して出してるんだろうな」って感じがすごくて。ミュージックビデオも関連性があったので、僕らも学ばせていただきました。
MAH:でも、それはどっかで行き詰まっちゃうんだよね。寄せていってたつもりでも、なんかうまくいかなくなっちゃって「こういう作り方はやめよう」ってなったんだと思うね。

番組では他にも、SiMの楽屋の裏話や、ライブの魅力について語る場面もあった。radikoで2021年1月29日28時59分まで聴取できる。SiMの最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterまで。

THE ORAL CIGARETTESの山中拓也がマンスリープレゼンターを務めるJ-WAVEの深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。1月29日(金)はHYDEが登場する。公式サイトはこちら。

『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。

・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ
https://www.youtube.com/c/musicfun_jp
radikoで聴く
2021年1月29日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
WOW MUSIC
毎週金曜
24:30-25:00

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