藤井フミヤがフランスの国民的写真家、ロベール・ドアノーの魅力に迫る。「幸せを感じる写真」が多い理由は?

シンガーだけでなくアーティストとしても活躍する藤井フミヤが、フランスの国民的写真家ロベール・ドアノーの魅力を伝える番組『J-WAVE SELECTION FUMIYA FUJII MEETS ROBERT DOISNEAU』が1月24日(日)に放送された。

2月5日(金)からBunkamura ザ・ミュージアムで開催される展覧会「写真家ドアノー/音楽/パリ」に先駆け、藤井が本展覧会の企画を担当した株式会社コンタクト代表・佐藤正子とともにドアノーの魅力に迫った。

写真をはじめたのは、生活のためだった

1912年生まれのドアノーは、雑踏の中での恋人たちの姿をとらえたモノクロームの写真「パリ市庁舎前のキス」が世界的に有名だ。日本でも1980年代には広告で使われたり、パリに関連するお店で飾られていたりと、名前こそ知らなくても誰もが一度は彼の写真を見たことがあると言っても過言ではない。生涯で45万点もの写真を残しており、ミュージシャンをはじめ、芸能人、役者、画家などさまざまな人物を撮影している。

佐藤:ドアノーはパリの郊外に生まれたんですが、昔のパリは城壁に囲まれていて市内と市外がとても厳密に区切られていたんです。
藤井:うわー、そうなんだ。
佐藤:城壁の外は労働者階級や移民が追いやられている辺境の地。ドアノーはそんなところに生まれ育ったので裕福ではなく、10代後半からは当然のように働き始めます。絵が上手だったので最初はリトグラフの石版工になるんですが、それはアーティストではなく職人になるためでした。徐々に写真が進化していく中で、印刷技術の元となるのが石版から写真になるにつれ、最初は生活するために写真家になっていきました。
藤井:当時よかったのは、カメラを向けても誰も嫌がらなかったことですよね。
佐藤:そうです。それは私もすごく思います。
藤井:今ならカメラを向けるとすごく嫌がられるもんね。
佐藤:しかも、街中でスナップ写真をこんなにたくさん撮れないですよね。文句を言われたり問題になったりしますから。
藤井:この時代だとレジスタンスですら、カメラ向けたらニコっと笑ってたかもしれない(笑)。

その後、(自動車メーカーの)「ルノー」の記録写真を担当したドアノー。佐藤によると、あくまで美術作品としてではなく、生活のための仕事として写真を撮るスタンスだったそうだ。

人生はつらい。だからこそ、カメラで幸せな瞬間を残す

藤井はドアノーの写真について、「幸せそうな写真が多い」と印象を語る。佐藤はこの点について、幼少期に母親を亡くしたり父親の再婚相手と折り合いがうまくいかなかったりなど、ドアノー自身が幸せではない日々を過ごしたことが影響していると解説した。

佐藤:気分を上げるために読書をしたり、ひたすら流れる水を見たりして「どうやったらこの水を止められるだろう」と一日中釣りをしていたそうです。それって写真ですよね。
藤井:そうですよね。そのときに写真を撮って「これだ!」と思ったんでしょうね。
佐藤:そうだと思います。よくドアノーは「イメージの釣り人」と呼ばれます。狩りをする人ではなく、ひたすら待って釣り上げる。
藤井:一瞬を切り取っているんじゃなくて、そのシチュエーションの場にずっと居座って、何かが起きるのを待ってから撮っているような気がする。
佐藤:その通りだと思います。もともと内気な少年だったので「人の嫌なことは絶対にしたくない」という考えもあり、真正面から人を撮影することは攻撃的な感じで嫌だったみたいです。相手が嫌だと思うことは撮らなかったでしょうし、相手がカメラを意識することを忘れさせるまで、ずっと一緒にお酒を飲んだり喋ったりして写真を撮っていたみたいですね。

佐藤がドアノーの娘から聞いた話では、ドアノーは「人生は生きているだけでつらいが、生きていれば小さな幸せはたくさん転がっている。それをカメラで拾っていい気持ちになってもらうのが自分の仕事だ」と語っていたという。藤井はこの話を踏まえ、「本当につらい写真が1枚もないですもんね」と感想を述べた。実際にドアノーは報道写真家としても活動したが、残忍な戦争を伝えるような写真は撮影しなかった。

戦争から解放されたパリの人々が自由に音楽を楽しむ姿も

フランス・パリ19区にある“フィルハーモニー・ド・パリ”内の音楽博物館で開催された展覧会が基になっている「写真家ドアノー/音楽/パリ」は、音楽にも焦点を当てているのが特徴だ。

藤井:今回の展覧会は何点くらい?
佐藤:額に入っているのは170点ちょっとで、額に入りきらないので一部はまとめてプロジェクションにしています。細々とした資料もあって、全体では200点越えですね。
藤井:それだけあればお腹いっぱいになれますね。
佐藤:相当見応えがあるし、楽しんでもらいたいです。音楽をテーマにしていますし、パリの街中を歩いているようです。たくさん見るものはありますが「あー、疲れた」というのではなく、「なんか元気になった」となってもらいたい。
藤井:ドアノーの人生観も感じてほしいですよね。
佐藤:そうですね。1930年代から1980年代までの写真があるんですが、戦争が終わったことでそれまでのつらい生活から、パリの街中で自由に演奏して踊れるようになった。音楽が人々に解放感や喜びを与えていたことがすごく伝わります。今、コロナで自由に人と会えなかったり制限されていたりするので、これが終わったら自分はどういう風に解放感を味わうのかを想像しますね。
藤井:この時代のパリのモードファッションも追えますよね。ファッションも見ていて面白い。
佐藤:可愛いんですよね。
藤井:この時代のファッションって絵になるんだよね!

ドアノー独自の音楽的感覚に富んだ作品を紹介する「写真家ドアノー/音楽/パリ」は、2月5日(金)からBunkamuraザ・ミュージアムで開催される。ぜひチェックしてみてほしい。

「写真家ドアノー/音楽/パリ」開催概要】

開催期間:2021/2/5(金)~2021/3/31(水) *会期中無休
開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
※金・土の夜間開館につきましては、予定のため変更になる可能性もございます。最新情報は展覧会公式ホームページにてご確認ください。
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
主催:Bunkamura、読売新聞社
協賛・協力等:[後援]在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、J-WAVE
[企画協力]コンタクト
お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

公式ホームページ:https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_doisneau/

radikoで聴く
2021年1月31日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
J-WAVE SELECTION FUMIYA FUJII MEETS ROBERT DOISNEAU
1月24日(日)
22:00-22:54

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