ザ・ビートルズが愛した場所も…「伝説の音楽スタジオ」を紹介!

J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。「音楽を愛する全ての人と作り上げる「(超)進化型音楽番組」だ。毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。

2020年11月12日(木)のオンエアでは、レコーディング・エンジニアの山田ノブマサとDYGLの下中洋介をゲストに迎え、「伝説の音楽スタジオ」をテーマにトークを繰り広げた。

ザ・ビートルズが好んで使った「アビー・ロード・スタジオ」

世界を見渡すと、数多くの伝説的なレコーディングスタジオが存在する。ザ・ビートルズで有名な「アビー・ロード・スタジオ」は、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。アビー・ロード・スタジオは3つのスタジオでされている。それぞれの特徴とは?

山田:今はプリプロルームや小さい部屋もできたんですけど、当時は1スタ、2スタ、3スタの大きな箱が3つあるようなスタジオでした。それぞれ特徴があります。
あっこゴリラ:1スタはどういうスタジオなんですか?
山田:一番広いスタジオで、28メートル×17メートル、天井高は12メートル。簡単に言うと25メートルのプールがすっぽり入っちゃう大きさです。
あっこゴリラ:すごい! でかっ!
山田:100人のオーケストラに、更に100人の合唱団が入れる大きさです。大編成の録音が主で、『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』などの映画音楽も録音しています。昔は大きいスタジオがたくさんありましたが、今ではもうここくらいになってしまったと言われています。
あっこゴリラ:情報によると、残響時間は2.3秒だとか。これってすごいことですよね。
山田:そうなんです。リバーブを足さなくても、自然に響くスタジオです。
下中:しかも、ロンドンって日本以上に湿っぽいのに、この音響時間はすごいです。
あっこゴリラ:ロンドンってそうなんだ~! 下中くんはこのスタジオ行ったことあるの?
下中:一度、見に行ったことあります。最初の印象は、体育館でした。
あっこゴリラ:あはははは。続いて2スタはどんな特徴があるんですか?
山田:みなさんご存じのザ・ビートルズが好んで使っていたスタジオです。ほとんど2スタで録っていたと言われています。2スタは真っ赤な壁のコントロールルームが特徴で、1スタに比べると小さいですが、18メートル×12メートル、天井高も7.3メートルと、それでもかなり大きなスタジオです。ザ・ビートルズはついたてを立てたりして、あまり音が響かないようにして録っていたと言われています。
あっこゴリラ:では最後に3スタについても教えてください。
山田:3スタは、アビー・ロードの中では一番狭いスタジオですが、それでも7メートル×8メートルほどあり、日本の大きなスタジオくらいあります。3スタは、ピンク・フロイドが好んで使っていたスタジオです。

アメリカで有名なレコーディングスタジオの特徴

続いて、アメリカで有名なレコーディングスタジオについて、それぞれの特徴を交えながらいくつか紹介した。

■ニューヨーク「パワー・ステーション」

山田:アメリカには本当にたくさんのスタジオがあるんです。その中でも有名なスタジオを挙げると、まずはニューヨークのパワー・ステーションというスタジオです。このスタジオは全部木で出来ていて、天井も高く円形になっています。エアー感やアンビエント感が素晴らしいと言われていて、この天井の高さを活かしてメリハリのある残響が出ます。
下中:自然のリバーブも出ますしね。

■ハリウッド「オーシャン・ウェイ・スタジオ」

山田:ビンテージ機材が豊富で、安室奈美恵やアヴリル・ラヴィーンも使用しています。古くはレイ・チャールズやビーチボーイズも使用していました。僕も行ったことがありますが、すごくいいスタジオです。
あっこゴリラ:どんな風にいいスタジオなんですか?
山田:ロサンゼルスの気候とマッチして居心地のいいスタジオですね。
あっこゴリラ:居心地ってマジで大事ですよね。

■ハリウッド「サンセット・サウンド」

山田:ロック中心のスタジオで、ザ・ローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリン、ビーチボーイズなどが使用していました。
あっこゴリラ:ヴァン・ヘイレンが、ファーストアルバムをレックした場所でもあるんですね。

■デトロイト「モータウン・スタジオ」

山田:映画にもなっています。みなさんご存じだと思うんですけど、いわゆるブラックミュージックの聖地といいますか、それこそスティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、ジャクソン5、マイケル・ジャクソン、ダイアナ・ロスなどが使ったスタジオです。

■フィラデルフィア「シグマ・サウンド・スタジオ」

山田:フィラデルフィア・ソウルって、フィリー・ソウルと呼ばれていて、モータウンと似ているんです。だけど、もうちょっとゴージャスで煌びやかなサウンドが特徴で、70年代のディスコなどがここで作られていました。とにかく、シグマ・サウンドで作ったものは全部ヒットすると言われているくらいでした。
あっこゴリラ:一時代を築いたスタジオなんですね。
下中:シグマ・サウンド関係は、ボーカルもすごくきれいに伸びている印象があります。

イギリスで有名なレコーディングスタジオの特徴

さらに、イギリスのレコーディングスタジオについても教えてもらった。

■ロンドン「トライデント・スタジオ」

山田:トライデント・スタジオは、1960年代から先進的な技術や機械を取り入れるのが早く、4トラックレコーダーや8トラックレコーダーも、アビー・ロードより早く導入していました。例えば、ザ・ビートルズの『Hey Jude』のレコーディングはトライデントで行われますが、その理由は当時アビー・ロードにはなかった8トラックレコーダーがあったからだと言われています。そして、ホワイト・アルバムでもこのスタジオが使われています。クイーンも初期のころから使っていたとして有名ですね。しかし、このスタジオは時代の流れもあって、閉鎖してしまいました。

■ロンドン「オリンピック・スタジオ」

山田:英国でもトップクラスの独立系スタジオで、レッド・ツェッペリンのほぼ全てのアルバム、クイーン『ボヘミアン・ラプソディ』、ザ・ローリング・ストーンズの『ベガーズ・バンケット』、ジミ・ヘンドリックスの『エレクトリック・レディランド』もここで録っています。このスタジオも2009年で閉鎖してしまい、今はカフェと映画館になっています。

ここまで様々なレコーディングスタジオをピックアップしてきたが、最近のスタジオ事情はどうなのだろうか。

あっこゴリラ:今をときめくレディー・ガガやテイラー・スウィフト、エド・シーランとかに人気のスタジオとかもあるんですか?
山田:今は世界的に音楽業界が不況なこともあって、世界でも日本でも音楽スタジオが減少しています。なので、ミュージシャンは自分でプライベートスタジオを持って、そこで録音して、なるべくお金がかからないように、という感じに変わってきています。
あっこゴリラ:そうですよね~。私の友だちの若手のラッパーとか自分で録っちゃうって子、多いですね。
山田:やっぱり機材が安く手に入るようになってきたってことも大きいと思います。僕的には、もっとエンジニア使ってほしいと思いますけどね(笑)。
あっこゴリラ:私は、エンジニアさんにお願いしたいタイプですけどね。あはははは。

日本を代表するアーティストたちがこよなく愛した「音響ハウス」

2020年11月、映画『音響ハウス Melody-Go-Round』が公開された。同作は、坂本龍一、松任谷由実、矢野顕子、佐野元春など、日本を代表するアーティストたちがこよなく愛したレコーディングスタジオ「音響ハウス」に関するドキュメンタリーだ。

あっこゴリラ:山田さんは「音響ハウス」を使ったことはありますか?
山田:はい。何度も使わせてもらっています。
あっこゴリラ:どんなスタジオなんですか?
山田:音がナチュラルですし、音の特性もよくできていて、音が録りやすいスタジオです。
あっこゴリラ:現在はコロナ渦でレコーディング法なども変わってきていますか?
下中:会わないでも出来るといえば出来ますしね。
山田:そうですよね。福山雅治さんのアルバムは、ミックスは湘南のスタジオでやって、出来たものをテレワークで送って聞いてもらって、またそれにギターを入れて返してもらってって、ピンポン作業して作りました。なので、テレワーク的なレコーディングも今の時代なのかなって思います。
あっこゴリラ:でも、その場でのちょっとした調整が出来なかったりするのも寂しいですよね。
山田:本当はそれが一番ですよね。一緒に音出してなんぼ、みたいなところありますからね。
あっこゴリラ:最近、本当に寂しい! 音響ハウスは老舗ですが、最近人気のレコーディングスタジオはありますか?
山田:最近はみんなプライベートに移行しちゃって、日本のスタジオもどんどん潰れてしまっています。人気というか、やっぱり「アバコスタジオ」や「ビクタースタジオ」などの老舗のスタジオは、最近は埋まってきていると聞きますね。
番組情報
SONAR MUSIC
月・火・水・木曜
21:00-24:00

関連記事