本年度アカデミー賞において主演男優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した映画『ザ・ホエール』が4月7日からTOHOシネマズ シャンテほか全国でロードショー。公開前日の4月6日には、主演を務めたブレンダン・フレイザーが15年ぶりに来日し、ザ・リッツ・カールトン東京で記者会見を実施。映画に対する思いを語った。
同作は272キロある肥満症のキャラクターを演じるため、特殊メイクを施したほかファットスーツを着用。演出ではリアリティを追求し、ほぼワンシチュエーションの会話劇で構成された。
アカデミー賞主演男優賞を受賞したことについて「いまだに自分が受賞したことに驚いている状態です。招待されるとも思っていなかったので、光栄でした」というフレイザー。演技の部分で、アロノフスキー監督からは“未熟で脆い部分”の表現を要求されたという。「どの役者も『彼と仕事がしたい』と思っているほどの才能の持ち主。最初に会ったときはクリエイティブな意味で少し脅威を感じました。実際にキャストに要求するスタンダードが高いので、自分自身も人間として、そして役者として知る限りのすべてをこのキャラクターに注ぎ込みました」とアロノフスキー監督との撮影を振り返った。
さらに、フレイザーは主人公のチャーリーについて「父であり、教育者である彼が、あまりよくないタイミングで深い愛を見つけてしまった。そのために目の前にいる家族からリスペクトを失うという犠牲も払っている。そんな彼が最後の贖罪として娘と再び関係を構築するのです」と分析。移り変わっていく感情を表現するために「チャーリーという役について、たくさんのリサーチをしました」という。
そのリサーチの一つとしてOAC(The Obesity Action Coalition)という肥満症と闘う人々やその家族を支援するグループとの連携を取り上げた。「彼らのミッションは、いまだに私たちの文化に残る肥満症の方へのバイアスを失くすことです。こういう作品を作ること自体、リスクをはらむものですが、それこそがアートだし映画だと思うんです。そのため今回のような作品は、クリエイティブなかたちでリスクをとるべきだと考えています。不安感もありますが、だからこそ大きな成長が望めると思うし、今回もそうでした」と語った。
また同作は、サミュエル・D・ハンターが原案、脚本を務めている。同名舞台劇を自ら映画用に脚色した。フレイザーは「脚本家の実体験をもとににした物語だったため、あまり役者として深掘りはせず、そこに書いてあることを忠実に表現した。例えば、すごい癖のある人物として演じるのではなく、いかに彼の人生をリアルに忠実に描くかということを意識して演技した」と話した。
最後に作品についてフレイザーはこのように語った。「作品を見て、『勇気』を持ってほしい。勇気を持つということは自分の周りに(何かを成し遂げるためには)壁がそびえたっているということを意識すること。これは自分の道なのだと認識し、そして必要なことをやっていく。それを少しずつやることで少しずつ目標に近づいていく。この作品を見ることで、そういう勇気ある彼の姿を感じてほしい」と締めくくった。
過食、恋人の喪失…悲しみを克服する葛藤を描く
映画『ザ・ホエール』は、『ブラック・スワン』などのメガホンを取ったダーレン・アロノフスキーが監督した人間ドラマだ。主人公はボーイフレンドのアランを亡くして以来、現実逃避のために過食と引きこもり生活を続けたことで肥満症になってしまった40代のチャーリー。アランの妹で看護師であるリズに助けてもらいながら、オンライン授業の講師として生計を立てていたものの、心不全の症状が悪化しても病院に行くことを拒否し続けていた。しかし自分の死期が近いと悟ったチャーリーは、8年前にアランと暮らすため家庭を捨てて以来、疎遠になっていた娘のエリーに再び会おうと決意。作中では彼女との絆を取り戻そうとするなかで、肥満や恋人を失った悲しみといった、これまで乗り越えられなかった壁を克服しようと葛藤し、もがく5日間が描かれる。同作は272キロある肥満症のキャラクターを演じるため、特殊メイクを施したほかファットスーツを着用。演出ではリアリティを追求し、ほぼワンシチュエーションの会話劇で構成された。
演技で要求された“未熟で脆い部分”
ブレンダン・フレイザーの来日は『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』でのプロモーション以来15年ぶりとなる。会見では「日本に戻って来ることができて、本当に嬉しく思います。昨日少し時間があったので街を見て、しゃぶしゃぶをいただきました」という、フレイザーの挨拶からスタートした。アカデミー賞主演男優賞を受賞したことについて「いまだに自分が受賞したことに驚いている状態です。招待されるとも思っていなかったので、光栄でした」というフレイザー。演技の部分で、アロノフスキー監督からは“未熟で脆い部分”の表現を要求されたという。「どの役者も『彼と仕事がしたい』と思っているほどの才能の持ち主。最初に会ったときはクリエイティブな意味で少し脅威を感じました。実際にキャストに要求するスタンダードが高いので、自分自身も人間として、そして役者として知る限りのすべてをこのキャラクターに注ぎ込みました」とアロノフスキー監督との撮影を振り返った。
そのリサーチの一つとしてOAC(The Obesity Action Coalition)という肥満症と闘う人々やその家族を支援するグループとの連携を取り上げた。「彼らのミッションは、いまだに私たちの文化に残る肥満症の方へのバイアスを失くすことです。こういう作品を作ること自体、リスクをはらむものですが、それこそがアートだし映画だと思うんです。そのため今回のような作品は、クリエイティブなかたちでリスクをとるべきだと考えています。不安感もありますが、だからこそ大きな成長が望めると思うし、今回もそうでした」と語った。
また同作は、サミュエル・D・ハンターが原案、脚本を務めている。同名舞台劇を自ら映画用に脚色した。フレイザーは「脚本家の実体験をもとににした物語だったため、あまり役者として深掘りはせず、そこに書いてあることを忠実に表現した。例えば、すごい癖のある人物として演じるのではなく、いかに彼の人生をリアルに忠実に描くかということを意識して演技した」と話した。
作品を通じて伝えたい「勇気を持つ」ということ
作品を通して「父の愛は『勝つんだな』と改めて感じた」と、3人の息子の父親でもあるフレイザーは話す。「今回の脚本は、脚本家自身の経験から作られたものなので、それこそが真実。そこに家族がいることの大切さも描かれていた」という。最後に作品についてフレイザーはこのように語った。「作品を見て、『勇気』を持ってほしい。勇気を持つということは自分の周りに(何かを成し遂げるためには)壁がそびえたっているということを意識すること。これは自分の道なのだと認識し、そして必要なことをやっていく。それを少しずつやることで少しずつ目標に近づいていく。この作品を見ることで、そういう勇気ある彼の姿を感じてほしい」と締めくくった。