俳優の別所哲也がナビゲーターを務める、J-WAVEの番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(毎週月曜〜木曜 06:00-09:00)。
同プログラムは2009年4月1日から放送が開始され、約14年間にわたりJ-WAVEの朝を彩ってきた長寿番組。東京に生きる都市生活者のためのイノベーティブな情報を紹介している。
別所に、ラジオへの思いや、ここ最近のオンエアで特に印象に残った出来事、そして自身が代表を務める国際短編映画祭「Short Shorts Film Festival & Asia 2023」について聞いた。
印象的なことはたくさんあるんですけれど、出演してくださるいろんなゲストの方々から刺激をもらっています。近年で特に印象に残っていることは藤井 風さんのサプライズ出演ですかね。2度あって、最初の出演は2020年12月10日、コロナ禍での出来事でした。
――別所さんは藤井さんへのリスペクトを公言されていて、「てっちん」「かぜちん」と呼び合う仲でもありますよね。藤井さんの音楽に惹かれたきっかけは、なんだったのでしょうか?
YouTubeに上がっていた、若かりし頃のかぜちんの動画を見たことです。僕も子どもの頃にピアノをやっていた経験があるので、その卓越したテクニックを目にして驚きました。「なんだこのアーティストは……!」そんな彼がJ-WAVEで放送中の僕の目の前に現れて。かぜちんがちょうど初めてニューヨークに行った直後。「海外を知ることで、また彼の作風にも変化が訪れるんだろうな」と感じていたんですけど、瞬く間に音楽シーンを飛躍していって、まるで親戚のおじさんのようにうれしかったです(笑)。かぜちんの『何なんw』を一緒に歌ったりもしましたし、役得ですよね。
――番組では「カキフライ」についてのトークをされていましたね。
僕がカキフライ好きなので「かぜちんも好き?」なんて聞いたりね(笑)。かぜちんと呼んでることをツイートしたら、それに対してリアクションもしてくれたので、SNSで風民(※藤井 風ファンの呼称)のみなさんと繋がるきっかけになりました。
――藤井さんの音楽はどんな部分が別所さんの琴線に触れたのでしょう?
先ほどお話したピアノのテクニックのほかには、生まれ故郷の方言を大切にして、歌詞に盛り込んでいくところもいいですよね。彼の中から生まれてくる楽曲を聴くとエネルギーをもらえて、前向きになれるので、そういった部分にも惹かれました。
「小学校1年生から親と一緒に聞いてて、今は中学3年生になりました」と言われたことがありました。リスナーの皆さんと長く繋がれていることを実感できてうれしかったですね。
僕が出演する舞台をリスナーの方が見にきてくださることもあります。その後、番組宛に感想を寄せてくれるんですよ。なので、リスナーの皆さんとは仲間というか、絆が年々強まっている気がします。
――それこそ舞台出演など、俳優業でハードなスケジュールになることがあると思いますが、月曜〜木曜の生放送を続けているのはすごいことですね。
それはよく言われるんですけど、実は僕自身ハードだと思っていないんです。現場の空気はそれぞれ異なるし、場が変わると何事もリセットされる。ラジオはほぼ毎朝のことなので、僕の中でリズムが作れています。放送後に朝ごはんを食べれば幸せだし、次の現場に行けばまた新しいチャレンジができる。『J-WAVE GOOD MORNING TOKYO』から数えて約17年間、J-WAVEでラジオ番組を続けさせてもらってますけど、担当する前はけっこう生活リズムが不規則だったんです。だから今は、多少忙しくても健康的な生活だと感じています。
――そんな『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』は別所さんにとってどんな場所になっていますか?
ここまで長く続けさせてもらうと、僕の人生の一部と言っても過言じゃないですね。とにかく毎日をスタートする場所だし、ある意味で全てがここから始まっている。俳優の仕事だけでは交わらないような人に出会えることも刺激的です。それこそ若くして頑張っている企業家だったり、ソーシャルグッドな活動をしている方などなど、日々、世界だったり東京だったりの最新ニュースにも触れられるのは、ものすごい財産だと思っています。
――異業種の分野で活躍する方と交流することで、新たな刺激を持ち帰れていると。
まさにそうです。年齢を重ねるとどうしても、普段関わっている領域の人としか接しなくなってしまい、見える世界が狭まってしまう。このラジオではそんな部分を越境できるというか、ボーダーレスな世界に連れてってくれる。日々、異なる景色を見させてもらっているという実感があります。
もう25回目ということで、これも息長くやらさせてもらっています。おかげさまで四半世紀続く映画祭に成長させることができました。こちらも長く続ける中で感じるのは、“世界との繋がり”です。僕の大好きな映画の世界に没入できる時間であり、若いクリエイターのはじめの一歩が見られる素晴らしい機会です。今年はSDGsだったりウクライナへの軍事侵攻などといった、さまざまな世相を反映した作品が集まっています。“今まさに関心を集めている事象”をテーマにできることが、ショートフィルムのいいところなんです。
――長編映画だと難しいのでしょうか?
長編映画の配給リリースペースだと、どうしても公開まで3〜5年程度の時間がかかってしまいます。一方で、ショートフィルムの場合だと1年前に仕込んだものが翌年に公開できる。つまり即時性があり、世の中の今が見えてくると言えますね。
2001年にアメリカ同時多発テロが起きたときと同じように、今年は人間同士の分断を描いた作品がすごく増えています。それと、シングルファーザーを描いた物語も多かった。一方で、不確かな時代だからこそ「笑っていたい」「楽しく生きたい」という願望を描いたファンタジー作も増えました。現実がつらいと、映画の中にそれを笑い飛ばせる快楽のようなものを求める傾向があります。
また今年はコロナ禍で培ったハイブリット開催をより推し進めていきます。Web3の時代だからこそオンラインとリアルの両軸をより強化していくつもりです。イベント自体のテーマは「unlock=解き放て」で、コロナ禍で感じたさまざまなことを映画にして解き放つ期間になると思います。
――ネットが普及したことで、映画に影響を及ぼした部分は何だと考えていますか?
圧倒的に動画メディアが増えたので、視聴行動に変化が訪れましたよね。それと「シネマチックとはどういうことなんだろう」という根本的なことを考えるきっかけになったと思います。つまり、映画館で上映されているものだけが映画というわけではなくなってしまったということ。Netflixなどのサブスクモデルで作られた作品も映画だし、物語の本質というものがより問われる時代になった気がします。
――別所さんは新しいツールや技術をどんどん自分の中に取り入れていくタイプですか?
性格的に新しいものは好きですね。出てきたものはまず試したいという気持ちがあって、この映画祭としても例えばXRやVR、そしてWeb3など、最新のテクノロジーを活用したコンテンツ作りというものは非常に興味があります。
――「映画を撮る」という文化は古くから続いていますが、届ける手法が広がることで、体験の価値も変化していくというのは面白いですよね。
その通りだと思います。テクノロジーが進化したことで、映画館という非日常な空間もどんどん変化していると感じています。
芸術というのは、日常と非日常を瞬間移動させてくれるような感覚を与えてくれるものだと思います。人間はただ食べて寝てを繰り返すだけでは味気なく、やっぱり心の潤いが必要。それがあってはじめて人間らしく過ごせると思うし、その感覚を共有できるひとつの手法が映画なんだと思います。
――最後に映画祭にちなみ「ショートフィルムを見たような物語を感じる1曲」を教えてください。
ルイ・アームストロング『What a Wonderful World(この素晴らしき世界)』は非常に映画的な世界観ですよね。イントロから心を持っていかれるというか……自分と世界をよい波長で繋げてくれます。
出会いは大学の頃、英語劇をやっていた時ですね。もちろんかぜちんや、若い頃に出会ったY.M.O.(ワイ・エム・オー)やビリー・ジョエルなど時代時代で僕の中に刻まれている音楽はあるんだけど、最終的にサッチモのあの楽曲を求めてしまうかな。
「Short Shorts Film Festival & Asia 2023」は、都内複数会場+オンライン会場で開催する。現在はノミネート候補の第六弾が発表中だ。詳細は公式サイトまで。
・開催期間
オンライン会場:4月27日(木)から7月10日(月)
都内会場:6月6日(火)から6月26日(月)
・公式サイト
https://www.shortshorts.org/2023/
(取材・文=中山洋平)
同プログラムは2009年4月1日から放送が開始され、約14年間にわたりJ-WAVEの朝を彩ってきた長寿番組。東京に生きる都市生活者のためのイノベーティブな情報を紹介している。
別所に、ラジオへの思いや、ここ最近のオンエアで特に印象に残った出来事、そして自身が代表を務める国際短編映画祭「Short Shorts Film Festival & Asia 2023」について聞いた。
思い出深い、藤井 風のサプライズ出演
――長らくナビゲーターを務めている『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』。これまでを振り返って、印象的な出来事は?印象的なことはたくさんあるんですけれど、出演してくださるいろんなゲストの方々から刺激をもらっています。近年で特に印象に残っていることは藤井 風さんのサプライズ出演ですかね。2度あって、最初の出演は2020年12月10日、コロナ禍での出来事でした。
――別所さんは藤井さんへのリスペクトを公言されていて、「てっちん」「かぜちん」と呼び合う仲でもありますよね。藤井さんの音楽に惹かれたきっかけは、なんだったのでしょうか?
YouTubeに上がっていた、若かりし頃のかぜちんの動画を見たことです。僕も子どもの頃にピアノをやっていた経験があるので、その卓越したテクニックを目にして驚きました。「なんだこのアーティストは……!」そんな彼がJ-WAVEで放送中の僕の目の前に現れて。かぜちんがちょうど初めてニューヨークに行った直後。「海外を知ることで、また彼の作風にも変化が訪れるんだろうな」と感じていたんですけど、瞬く間に音楽シーンを飛躍していって、まるで親戚のおじさんのようにうれしかったです(笑)。かぜちんの『何なんw』を一緒に歌ったりもしましたし、役得ですよね。
――番組では「カキフライ」についてのトークをされていましたね。
僕がカキフライ好きなので「かぜちんも好き?」なんて聞いたりね(笑)。かぜちんと呼んでることをツイートしたら、それに対してリアクションもしてくれたので、SNSで風民(※藤井 風ファンの呼称)のみなさんと繋がるきっかけになりました。
――藤井さんの音楽はどんな部分が別所さんの琴線に触れたのでしょう?
先ほどお話したピアノのテクニックのほかには、生まれ故郷の方言を大切にして、歌詞に盛り込んでいくところもいいですよね。彼の中から生まれてくる楽曲を聴くとエネルギーをもらえて、前向きになれるので、そういった部分にも惹かれました。
異業種の人と出会えるラジオ「僕の人生の一部」
――リスナーの方との繋がりで思い出深いことはありますか?「小学校1年生から親と一緒に聞いてて、今は中学3年生になりました」と言われたことがありました。リスナーの皆さんと長く繋がれていることを実感できてうれしかったですね。
僕が出演する舞台をリスナーの方が見にきてくださることもあります。その後、番組宛に感想を寄せてくれるんですよ。なので、リスナーの皆さんとは仲間というか、絆が年々強まっている気がします。
――それこそ舞台出演など、俳優業でハードなスケジュールになることがあると思いますが、月曜〜木曜の生放送を続けているのはすごいことですね。
それはよく言われるんですけど、実は僕自身ハードだと思っていないんです。現場の空気はそれぞれ異なるし、場が変わると何事もリセットされる。ラジオはほぼ毎朝のことなので、僕の中でリズムが作れています。放送後に朝ごはんを食べれば幸せだし、次の現場に行けばまた新しいチャレンジができる。『J-WAVE GOOD MORNING TOKYO』から数えて約17年間、J-WAVEでラジオ番組を続けさせてもらってますけど、担当する前はけっこう生活リズムが不規則だったんです。だから今は、多少忙しくても健康的な生活だと感じています。
――そんな『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』は別所さんにとってどんな場所になっていますか?
ここまで長く続けさせてもらうと、僕の人生の一部と言っても過言じゃないですね。とにかく毎日をスタートする場所だし、ある意味で全てがここから始まっている。俳優の仕事だけでは交わらないような人に出会えることも刺激的です。それこそ若くして頑張っている企業家だったり、ソーシャルグッドな活動をしている方などなど、日々、世界だったり東京だったりの最新ニュースにも触れられるのは、ものすごい財産だと思っています。
――異業種の分野で活躍する方と交流することで、新たな刺激を持ち帰れていると。
まさにそうです。年齢を重ねるとどうしても、普段関わっている領域の人としか接しなくなってしまい、見える世界が狭まってしまう。このラジオではそんな部分を越境できるというか、ボーダーレスな世界に連れてってくれる。日々、異なる景色を見させてもらっているという実感があります。
ショートフィルムの「今の世の中が見えてくる」魅力とは
――別所さんが代表を務める「Short Shorts Film Festival & Asia(SSFF & ASIA)」が今年も開催されますね。もう25回目ということで、これも息長くやらさせてもらっています。おかげさまで四半世紀続く映画祭に成長させることができました。こちらも長く続ける中で感じるのは、“世界との繋がり”です。僕の大好きな映画の世界に没入できる時間であり、若いクリエイターのはじめの一歩が見られる素晴らしい機会です。今年はSDGsだったりウクライナへの軍事侵攻などといった、さまざまな世相を反映した作品が集まっています。“今まさに関心を集めている事象”をテーマにできることが、ショートフィルムのいいところなんです。
――長編映画だと難しいのでしょうか?
長編映画の配給リリースペースだと、どうしても公開まで3〜5年程度の時間がかかってしまいます。一方で、ショートフィルムの場合だと1年前に仕込んだものが翌年に公開できる。つまり即時性があり、世の中の今が見えてくると言えますね。
2001年にアメリカ同時多発テロが起きたときと同じように、今年は人間同士の分断を描いた作品がすごく増えています。それと、シングルファーザーを描いた物語も多かった。一方で、不確かな時代だからこそ「笑っていたい」「楽しく生きたい」という願望を描いたファンタジー作も増えました。現実がつらいと、映画の中にそれを笑い飛ばせる快楽のようなものを求める傾向があります。
また今年はコロナ禍で培ったハイブリット開催をより推し進めていきます。Web3の時代だからこそオンラインとリアルの両軸をより強化していくつもりです。イベント自体のテーマは「unlock=解き放て」で、コロナ禍で感じたさまざまなことを映画にして解き放つ期間になると思います。
――ネットが普及したことで、映画に影響を及ぼした部分は何だと考えていますか?
圧倒的に動画メディアが増えたので、視聴行動に変化が訪れましたよね。それと「シネマチックとはどういうことなんだろう」という根本的なことを考えるきっかけになったと思います。つまり、映画館で上映されているものだけが映画というわけではなくなってしまったということ。Netflixなどのサブスクモデルで作られた作品も映画だし、物語の本質というものがより問われる時代になった気がします。
――別所さんは新しいツールや技術をどんどん自分の中に取り入れていくタイプですか?
性格的に新しいものは好きですね。出てきたものはまず試したいという気持ちがあって、この映画祭としても例えばXRやVR、そしてWeb3など、最新のテクノロジーを活用したコンテンツ作りというものは非常に興味があります。
――「映画を撮る」という文化は古くから続いていますが、届ける手法が広がることで、体験の価値も変化していくというのは面白いですよね。
その通りだと思います。テクノロジーが進化したことで、映画館という非日常な空間もどんどん変化していると感じています。
芸術というのは、日常と非日常を瞬間移動させてくれるような感覚を与えてくれるものだと思います。人間はただ食べて寝てを繰り返すだけでは味気なく、やっぱり心の潤いが必要。それがあってはじめて人間らしく過ごせると思うし、その感覚を共有できるひとつの手法が映画なんだと思います。
――最後に映画祭にちなみ「ショートフィルムを見たような物語を感じる1曲」を教えてください。
ルイ・アームストロング『What a Wonderful World(この素晴らしき世界)』は非常に映画的な世界観ですよね。イントロから心を持っていかれるというか……自分と世界をよい波長で繋げてくれます。
出会いは大学の頃、英語劇をやっていた時ですね。もちろんかぜちんや、若い頃に出会ったY.M.O.(ワイ・エム・オー)やビリー・ジョエルなど時代時代で僕の中に刻まれている音楽はあるんだけど、最終的にサッチモのあの楽曲を求めてしまうかな。
「Short Shorts Film Festival & Asia 2023」は、都内複数会場+オンライン会場で開催する。現在はノミネート候補の第六弾が発表中だ。詳細は公式サイトまで。
・開催期間
オンライン会場:4月27日(木)から7月10日(月)
都内会場:6月6日(火)から6月26日(月)
・公式サイト
https://www.shortshorts.org/2023/
(取材・文=中山洋平)
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