クリエイティブ・ディレクターの辻愛沙子がSKY-HIと対談。起業のことや、アイデア発信を続ける大切さについて語った。
辻が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『DIVE TO THE NEW WORLD』(ナビゲーター:SKY-HI)、4月1日(土)のオンエア。
辻:私の場合は表に出ることが最初の目的としてあったわけではなくて手段という感じ。クリエイティブの仕事は本来、裏方・黒子の仕事なので真逆です。ただ、最初はひょんなことから、自分が作った企画を軸にたまたま密着してくださる番組があって、その密着を観てくれた別の番組のディレクターさんが連絡をくれてそっちの番組の密着があってという連鎖で報道番組に出ることになったんです。本当に図らずしてというか。
「いまでも、自分が報道番組に出ていることが、ちょっと不思議な感じすらあるんです」と、素朴な思いを述べる辻。しかし、意義もしっかりと見出している。
辻:普段、社会課題に向き合う仕事をしていて、報道でもそうですし、クリエイティブもそういうものをテーマにしているんです。かたいテーマなので企業さんと一緒にクリエイティブを作っているだけだとなかなか届かないところがあって、むずがゆく思うところもあります。企業さんも企業さんで「こういう広告を作っても生活者に届くかな?」という不安があったりするので、自分が表に出て直接生活者の方や世の中にメッセージを届けていくことができると、クライアントさんにとってもプラスになるんじゃないかなと思うんです。自分の声で発せられる場所があるのはありがたいことだなと思います。
SKY-HI:経営者の顔が見えるのは、いまの時代に必要な要素のような気もします。
辻:世の中にとって必要なこと、たとえば世論的な話もそうかもしれないんですけど、時事ニュースとかで、自分がここに対してなにか意見を言う必要性を感じたら言っていく。そこに対して新聞取材が入ったら応えるという、常に社会を主語にやってきました。逆に最近悩みが1個あって、ルーツが報道なのですごくかたく見られることが多いんです。怖がられるというか。でも私生活はめっちゃゆるいし、それこそ音楽やインテリアが好きだったり、仕事もクリエイティブなので、どちらかというと、かたくないほうなんですけど。髪色もこんなハイトーンで報道に出てるのに(笑)。
SKY-HI:そうですよね。
辻:特にジェンダーの話とか社会課題の話とかを真面目にしないといけないんじゃないかって、すごく構えられちゃうことが多くて。初対面で「意外とポップですね」みたいなことを言われたりすることがあります。
SKY-HI:定期的につかなくていい嘘をついたらいいんじゃないですか(笑)。
辻:いいですね、教えてください(笑)!
【関連記事】辻愛沙子が語る、プリキュアの魅力
辻:挑戦と危機が好きなタイプです。
SKY-HI:『週刊少年ジャンプ』的展開ですもんね。自分は2020年9月なので、もともとコロナ禍で起業しているんです。
辻:そうか。覚悟を持ったうえで。
SKY-HI:むしろ「チャンス!」って思ったのはあったんです。芸能の体質とかはすごく知っていたので、コロナ禍で動けないだろうと思っていたので「これは家でライブをやろう」と思って。
辻:アーカイブとか残っていますか?
SKY-HI:残ってますよ。
辻:観よう。
SKY-HI:2時間ぐらいあるので100万人ぐらい観ていて「なんでだよ」っていう(笑)。
辻:すごい!
SKY-HI:あれは前半20分を観るだけでも価値がある気がします。
コロナ禍の起業について、「ちょうど直後となると相応の覚悟と準備を持たれて起業されているでしょうから」とSKY-HIが水を向ける。
辻:それこそ戦略、事業計画とかも立てますけど、思いついちゃうときもあったりします。
SKY-HI:あってないようなものですもんね(笑)。
辻:なんならやってみて「全然違った」とか「これはうまくいった」みたいなことってあったりするじゃないですか。
SKY-HI:「1年目は社長ごっこだったな」って、社長の友だちと話した記憶があります(笑)。
辻:逆に、特にステークホルダーが増えていくとそうかもしれないんですが、ガチガチに計画を立てるとそれを遂行することが目的になるので、途中で軌道修正をしたりとか、それこそ新しいジャンプをしたりとか「コロナがきた」となったときに、全部一旦やめて「新しいことを始めます」って相当勇気のある意思決定の気がしていて。基本的には私がざっくりしているというのもあるんですが、ある程度の余白を持ちたいなと思っているので、あまり綿密に計画を立ててみたいなタイプじゃないかもしれないです。
SKY-HI:俺は何回か怒られたというか、「決めて」と言われたことありました。「このくらいの金額感で」って出すと「ここに関しての予算はいくらくらいまでならありにしますか?」と言われて「そこはザックリでいいや」と思っちゃったのはけっこうあります(笑)。
辻:計画も中長期では「こうありたい」とか。業界自体もそうかもしれないですし、自分たちもそうかもしれないんですけど、夢を描くのは得意。逆にゼロイチなので、それのオペレーションを組むのが苦手で、みんなにお世話になってばかりなんですけど、かなり先のビジョンと目の前ですごく具体的にやりたい企画の二極化なんです。あいだは変わっていくものなのであまり具体化しないというのはあるかもしれないです。
SKY-HI:たぶん広告って究極に言うとコミュニケーションだと思うんです。購買層とクライアントのコミュニケーションを手伝うために、クライアントとコミュニケーションして、購買層とコミュニケーションがとれるように計らうので、コミュニケーションがうまくいっていると盛り上がる。
辻:まさに。
SKY-HI:実生活に近いところがある気がします。
辻:対話ですもんね。
SKY-HI:コロナ禍もそうですけど、それ以前のSNS発達以後、コミュニケーションの仕方がだいぶ変わってきました。
辻:かなり相互コミュニケーションぽいものが増えてきた感じがあります。
SKY-HI:AAAのアルバムタイトルで自分が作ったやつがいくつかあるんですけど、『Buzz Communication』を12年前に作ってたんです。
辻:早い早い(笑)!
SKY-HI:「日本語にすると、『バズる』だよね」って身内で言っていて、『Buzz Communication』を作ってTwitterで「バズる」というワードを使いまくっていたら、「『バズる』がバズるんじゃないか」とか言ってました。さすがに12年前は時代が追いついてこなかったです(笑)。
辻:全部早いですね。
SKY-HI:開場中に、幕にTwitterの画面を出して、「ハッシュタグ」自体を当時まだ知らなくてTwitterアカウントも半分ぐらい持ってないから、「Twitterというのがあって、アルバムの話をするときに『#AAABC』とつけて」としたら、開場中の時間も「あ、私のツイート流れた」とか、場内にいる人同士のコミュニケーションも生まれるという。
辻:それが12年前? ヤバい(笑)。
SKY-HI:12年前はそこまでハッシュタグをみんな使っていなかったので、毎回ツアーの公演をやるたびに「ハッシュタグランキング世界1位」とか簡単にいきました。ちょっとハックに近いくらいの勢いでそうなっちゃったから「やった」と思っていたんですけど、それを面白がってくれた人は、自分のほか(ライブなどを手がけるスタッフの)石川 淳のひとりでしたね。知らないものがひとりのアイデアで盛り上がるということに対しては、嫉妬しか残ってなかったです。ただただ、僕の居心地が悪くなるだけでした(笑)。
「言い続ける・やり続けることが大事」と語る辻も、自身の体験を語った。2019年にジェンダーギャップをファクトで可視化するメディアを立ち上げたものの、当時は「ジェンダー」という言葉自体が理解されなかったという。
辻:たった4年前ですけど、地上波でジェンダーという言葉を使うと「それなに? 性別の話?」みたいな、だいたい解説が必要な感じで、「性別とはちょっと直接的に意味が違うので使いづらいな。どうやって言おうかな」みたいな感じでした。だけどいまはジェンダーという言葉は普通に使われるじゃないですか。当時国際女性デーで広告コミュニケーションを出したりするのも、そんなにまだ多くなかったんですけど、たった数年で毎年「今年はどの企業がどんなものを出すのかな」となりました。けっこう炎上するから「うちに頼んでくれればいいのに」「いいもの作るのに」と思いながら「あっちも燃えた、こっちも燃えた」って、ちょっとドキドキしながら見ていました(笑)。でもそれぐらい「すごく攻めたことやってるね」とか、究極には「儲かるの?」と言われたりするんです。「そんなのキレイごとだよ」とか。でも「言い続けているとみんなアクションしていく」というのもすごく感じるところはあります。
『DIVE TO THE NEW WORLD』は国内外のさまざまなフィールドで活躍するアーティストやクリエイターたちの“本心”にSKY-HIが“DIVE”していくプログラム。放送は毎週土曜23時から。
辻が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『DIVE TO THE NEW WORLD』(ナビゲーター:SKY-HI)、4月1日(土)のオンエア。
今の時代は「経営者の顔が見える」ことが大事?
辻は株式会社arca(アルカ)を2019年に創業。現在は報道番組などにも出演している。SKY-HIは「メディア露出に対しては積極的ですか?」と質問を投げかけた。辻:私の場合は表に出ることが最初の目的としてあったわけではなくて手段という感じ。クリエイティブの仕事は本来、裏方・黒子の仕事なので真逆です。ただ、最初はひょんなことから、自分が作った企画を軸にたまたま密着してくださる番組があって、その密着を観てくれた別の番組のディレクターさんが連絡をくれてそっちの番組の密着があってという連鎖で報道番組に出ることになったんです。本当に図らずしてというか。
「いまでも、自分が報道番組に出ていることが、ちょっと不思議な感じすらあるんです」と、素朴な思いを述べる辻。しかし、意義もしっかりと見出している。
辻:普段、社会課題に向き合う仕事をしていて、報道でもそうですし、クリエイティブもそういうものをテーマにしているんです。かたいテーマなので企業さんと一緒にクリエイティブを作っているだけだとなかなか届かないところがあって、むずがゆく思うところもあります。企業さんも企業さんで「こういう広告を作っても生活者に届くかな?」という不安があったりするので、自分が表に出て直接生活者の方や世の中にメッセージを届けていくことができると、クライアントさんにとってもプラスになるんじゃないかなと思うんです。自分の声で発せられる場所があるのはありがたいことだなと思います。
SKY-HI:経営者の顔が見えるのは、いまの時代に必要な要素のような気もします。
辻:世の中にとって必要なこと、たとえば世論的な話もそうかもしれないんですけど、時事ニュースとかで、自分がここに対してなにか意見を言う必要性を感じたら言っていく。そこに対して新聞取材が入ったら応えるという、常に社会を主語にやってきました。逆に最近悩みが1個あって、ルーツが報道なのですごくかたく見られることが多いんです。怖がられるというか。でも私生活はめっちゃゆるいし、それこそ音楽やインテリアが好きだったり、仕事もクリエイティブなので、どちらかというと、かたくないほうなんですけど。髪色もこんなハイトーンで報道に出てるのに(笑)。
SKY-HI:そうですよね。
辻:特にジェンダーの話とか社会課題の話とかを真面目にしないといけないんじゃないかって、すごく構えられちゃうことが多くて。初対面で「意外とポップですね」みたいなことを言われたりすることがあります。
SKY-HI:定期的につかなくていい嘘をついたらいいんじゃないですか(笑)。
辻:いいですね、教えてください(笑)!
【関連記事】辻愛沙子が語る、プリキュアの魅力
コロナ禍で起業したふたり
辻がアルカを起業したのは2019年。2020年にはコロナ禍になってしまった。当時の心境を辻に尋ねると、「業界が広告なので正直大ダメージではあったが、むしろワクワクも同時にあった」と話す。辻:挑戦と危機が好きなタイプです。
SKY-HI:『週刊少年ジャンプ』的展開ですもんね。自分は2020年9月なので、もともとコロナ禍で起業しているんです。
辻:そうか。覚悟を持ったうえで。
SKY-HI:むしろ「チャンス!」って思ったのはあったんです。芸能の体質とかはすごく知っていたので、コロナ禍で動けないだろうと思っていたので「これは家でライブをやろう」と思って。
辻:アーカイブとか残っていますか?
SKY-HI:残ってますよ。
辻:観よう。
SKY-HI:2時間ぐらいあるので100万人ぐらい観ていて「なんでだよ」っていう(笑)。
辻:すごい!
SKY-HI:あれは前半20分を観るだけでも価値がある気がします。
コロナ禍の起業について、「ちょうど直後となると相応の覚悟と準備を持たれて起業されているでしょうから」とSKY-HIが水を向ける。
辻:それこそ戦略、事業計画とかも立てますけど、思いついちゃうときもあったりします。
SKY-HI:あってないようなものですもんね(笑)。
辻:なんならやってみて「全然違った」とか「これはうまくいった」みたいなことってあったりするじゃないですか。
SKY-HI:「1年目は社長ごっこだったな」って、社長の友だちと話した記憶があります(笑)。
辻:逆に、特にステークホルダーが増えていくとそうかもしれないんですが、ガチガチに計画を立てるとそれを遂行することが目的になるので、途中で軌道修正をしたりとか、それこそ新しいジャンプをしたりとか「コロナがきた」となったときに、全部一旦やめて「新しいことを始めます」って相当勇気のある意思決定の気がしていて。基本的には私がざっくりしているというのもあるんですが、ある程度の余白を持ちたいなと思っているので、あまり綿密に計画を立ててみたいなタイプじゃないかもしれないです。
SKY-HI:俺は何回か怒られたというか、「決めて」と言われたことありました。「このくらいの金額感で」って出すと「ここに関しての予算はいくらくらいまでならありにしますか?」と言われて「そこはザックリでいいや」と思っちゃったのはけっこうあります(笑)。
辻:計画も中長期では「こうありたい」とか。業界自体もそうかもしれないですし、自分たちもそうかもしれないんですけど、夢を描くのは得意。逆にゼロイチなので、それのオペレーションを組むのが苦手で、みんなにお世話になってばかりなんですけど、かなり先のビジョンと目の前ですごく具体的にやりたい企画の二極化なんです。あいだは変わっていくものなのであまり具体化しないというのはあるかもしれないです。
SKY-HI:たぶん広告って究極に言うとコミュニケーションだと思うんです。購買層とクライアントのコミュニケーションを手伝うために、クライアントとコミュニケーションして、購買層とコミュニケーションがとれるように計らうので、コミュニケーションがうまくいっていると盛り上がる。
辻:まさに。
SKY-HI:実生活に近いところがある気がします。
辻:対話ですもんね。
SKY-HI:コロナ禍もそうですけど、それ以前のSNS発達以後、コミュニケーションの仕方がだいぶ変わってきました。
辻:かなり相互コミュニケーションぽいものが増えてきた感じがあります。
12年前に「バズ」を活用
辻はSNSによる相互コミュニケーションが発生した結果、現在は「バズブーム」がきていると解説。SKY-HIはバズブームにちなんで、先見性が垣間見えるエピソードを語った。SKY-HI:AAAのアルバムタイトルで自分が作ったやつがいくつかあるんですけど、『Buzz Communication』を12年前に作ってたんです。
辻:早い早い(笑)!
SKY-HI:「日本語にすると、『バズる』だよね」って身内で言っていて、『Buzz Communication』を作ってTwitterで「バズる」というワードを使いまくっていたら、「『バズる』がバズるんじゃないか」とか言ってました。さすがに12年前は時代が追いついてこなかったです(笑)。
辻:全部早いですね。
SKY-HI:開場中に、幕にTwitterの画面を出して、「ハッシュタグ」自体を当時まだ知らなくてTwitterアカウントも半分ぐらい持ってないから、「Twitterというのがあって、アルバムの話をするときに『#AAABC』とつけて」としたら、開場中の時間も「あ、私のツイート流れた」とか、場内にいる人同士のコミュニケーションも生まれるという。
辻:それが12年前? ヤバい(笑)。
SKY-HI:12年前はそこまでハッシュタグをみんな使っていなかったので、毎回ツアーの公演をやるたびに「ハッシュタグランキング世界1位」とか簡単にいきました。ちょっとハックに近いくらいの勢いでそうなっちゃったから「やった」と思っていたんですけど、それを面白がってくれた人は、自分のほか(ライブなどを手がけるスタッフの)石川 淳のひとりでしたね。知らないものがひとりのアイデアで盛り上がるということに対しては、嫉妬しか残ってなかったです。ただただ、僕の居心地が悪くなるだけでした(笑)。
「言い続ける・やり続けることが大事」と語る辻も、自身の体験を語った。2019年にジェンダーギャップをファクトで可視化するメディアを立ち上げたものの、当時は「ジェンダー」という言葉自体が理解されなかったという。
辻:たった4年前ですけど、地上波でジェンダーという言葉を使うと「それなに? 性別の話?」みたいな、だいたい解説が必要な感じで、「性別とはちょっと直接的に意味が違うので使いづらいな。どうやって言おうかな」みたいな感じでした。だけどいまはジェンダーという言葉は普通に使われるじゃないですか。当時国際女性デーで広告コミュニケーションを出したりするのも、そんなにまだ多くなかったんですけど、たった数年で毎年「今年はどの企業がどんなものを出すのかな」となりました。けっこう炎上するから「うちに頼んでくれればいいのに」「いいもの作るのに」と思いながら「あっちも燃えた、こっちも燃えた」って、ちょっとドキドキしながら見ていました(笑)。でもそれぐらい「すごく攻めたことやってるね」とか、究極には「儲かるの?」と言われたりするんです。「そんなのキレイごとだよ」とか。でも「言い続けているとみんなアクションしていく」というのもすごく感じるところはあります。
『DIVE TO THE NEW WORLD』は国内外のさまざまなフィールドで活躍するアーティストやクリエイターたちの“本心”にSKY-HIが“DIVE”していくプログラム。放送は毎週土曜23時から。
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2023年4月8日28時59分まで
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番組情報
- DIVE TO THE NEW WORLD
-
毎週土曜23:00-23:54