J-WAVEは、ギター弾き語りの祭典「J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2023 supported by 奥村組」(以下、ギタージャンボリー)を、今年も3月4日(土)、5日(日)に東京・両国国技館で主催する。
同イベントは2013年に始まり、今年で10年目。この間、サブスクリプションサービスが浸透し、ライブが制限されるコロナ禍を経るなど、音楽は“聴き方”も“出会い方”も大きく変化した。その状況を、長年音楽シーンを見てきたアーティストブッキング担当者はどう捉えているか? ギタージャンボリーの企画、アーティストブッキングを手がける廣阪拓也(ひろさか・たくや)に、変わりゆく音楽業界の中でオムニバスイベントが果たす意義や、ギタージャンボリーの見どころを聞いた。
(J-WAVE NEWS編集部/取材・文=小林千絵)
公式ホームページ: https://www.j-wave.co.jp/special/guitarjamboree2023/
コロナ禍という以前に、10年前くらいから、音楽がどんどん消費されるようになってきたというのは否めない事実だと思っていて。サブスクリプションサービスの普及や、安価に誰でも音楽が作れるようになったことで、皆さんたくさんの音楽を味わいたいという気持ちから、たくさんの曲をちょっとずつつまんでいくようになって。アルバム単位じゃなくて楽曲単位にもなってきた。その傾向が、コロナ禍の影響でライブにも顕著に出たのかなと思います。
──そういう意味では、コロナ禍での音楽の聴かれ方や出会い方に変化はない?
聴かれ方も、やはりこの10年くらいでの変化が、コロナ禍で顕著になったという感じですかね。ヘッドホンやイヤホンで、一人で聴く時代になっているから、みんなで同じ曲を聴いて、みんなで口ずさんでということはずいぶん減ったなと。みんなが歌える曲、いわゆる流行歌がなくなってきているのは、残念なことだなと思いますけど、人それぞれに「この曲を聴けばその時代を思い出す」とか「その人の人生に紐づく楽曲」というのはあると思うので。退化でも進化でもなく、ただの変化だと捉えています。
──それでいうと、最近はTikTokを通した流行も生まれつつあるなと、私は感じます。
確かにそれはあるかもしれないですね。でもTikTokは1曲でもないというか。流行っているのは、サビだけ、1フレーズだけなので、流行歌とはまた違うのかなと思っています。
J-WAVEの一員としてライブをつくるとか番組をつくるということで言えば、“J-WAVEの品格を保ちたい”ということは考えていますね。
──“J-WAVEの品格”って、具体的に言葉にはできますか?
ケースバイケースなので一概には言えないのですが、言うとしたら“J-WAVEらしいものをつくっていきたい”ということですかね。それはギタージャンボリーのコンセプトでもあります。
──確かに、端から見ていると、“J-WAVEらしさ”は何となくあるように感じます。それが品格にもつながっているのかもしれないですね。
そうですね。ギタージャンボリーを番組化していただいているBS朝日の方に、「ギタージャンボリーでは、アーティストが必ずみんなJ-WAVEに対してありがとうとか、J-WAVEを聴いているという話をステージ上でしますよね。テレビでは考えられないことです」と言われたことがあって。J-WAVEのイベントは、J-WAVEという存在があって出演が成り立っている感じがする、J-WAVEに対して愛を持ってくれていいですねって。
──そう言われると確かにそうですね。
本当に愛を持ってくれているかはわからないですが(笑)、やっぱりそう言われるとミュージシャンの期待に僕たちも応えたいなと思いますね。“J-WAVEらしさ”については、時代は変わるからこれも一概に言えないですが、一つあるとしたら“どこにもなかったいいものを早くやる”ということかなと思っていて。ギタージャンボリーなんか、まさにそうですよね。両国国技館でライブは開催されるけど、戦うイメージを持って、ギターの弾き語りをやるというのは、たぶんそれまでなかったんですよ。だから、“ありそうでなかったいいもの”というのは、キーワードかもしれないです。と言っても、ギタージャンボリーって最初は会社にも理解されなくて、「まぁ、やってみ」みたいな感じだったんですけどね。
演者の力だと思います。演者がみんな喜んでやってくれているので。最初に話したように、インスタントに音楽を作れるようになったとか、流行歌がないとか、時代はいろいろと変わっていますけど、ギターを弾いて歌って表現したいという人が存在するということは絶対に変わらない。そういう演者の気持ちに適切だったのが「ギタージャンボリー」だったんだと思います。
──弾き語りだからこそ、普段とは違うアレンジで演奏できる場でもあることも、出演アーティストにとっては楽しめる理由なのかもしれないですね。
そうそう、弾き語りは自分の“間”でできますからね。トータス(松本)さんなんて、感きわまると、ギター弾かないでアカペラで全部歌っちゃったりするんですよ。
──“ギター”ジャンボリーなのに。
そう、“ギター”ジャンボリーなのに(笑)。細野(晴臣)さんが以前、BPMが曲の頭とお尻が同じわけがないということを言っていて。「人間の鼓動、心臓の鼓動だから、同じじゃないんだよ、音楽は」と。それと一緒で、そのときの会場やお客さんとの向かい合う空気、ご時世、その人のコンディションでテンポが決まるんですよね。似た話で言うと、ハナレグミはセットリストを決めないでギタージャンボリーのステージに立つんですよ。ステージに上がって、お客さんを見て決める。いきなりコール&レスポンスから始めちゃったり。永積(タカシ)さんは弾き語りの天才ですね。
──そういうステージが生まれていると思うと、お客さんも見逃せなくなりますよね。いつも観に行っているアーティストだとしても「ギタージャンボリーでは違うことが起きる」とわかっていたら行きたくなる。
そうですね。だから回数を重ねていくごとにチケットが売れて。しかも一番いい席である砂かぶり席からチケットが売れていくのは当然なんですけど、マス席も同じくらいのペースで売れる。リピーターが増えているんだなと思います。
──出演者が発表される前から行くことを決める人もいそうですね。
「フジロック」とか「サマソニ」もそうじゃないですか。「ギタージャンボリー」もそういうイベントになってほしいなと思っています。“あそこに行けば自分の好みのものに出会える”という。
──「J-WAVEがチョイスするアーティストが、ギターの弾き語りで面白いことをやっているイベント」というだけで集まってくる人がいる。
そうそう。そこは意識してキャスティングしています。「Aさんのファンで来て、Aもよかったけど、全然知らなかったBもすごくよかった」とか、「若いアーティストを見に来たけどベテランのアーティストのほうがすごかった」とか。必ずそういう予想を超える出会いが生まれるように、ということは考えています。
それって実はラジオもそうなんですよね。何が流れるかわからないからおもしろい。欲しい情報を取りに行くインターネットと違って、無目的であるがゆえに感動するんです、ラジオって。だから今回のギタージャンボリーも、Tani Yuukiさんを観に来た若い人が「Taniさんはもちろん、森山良子さんもよかった」と言ってくれたり、「目当ては平井大さんだったけれど、初めて見る竹原ピストルさんもよかった」ってなってくれたりしたらいいなって。むしろそういうものを提供できないと、こういうオムニバスイベントの存続意義ってないのかなと思っています。
──Tani Yuukiさんと森山良子さんが同じ日に同じライブで見られることって、きっとなかなかないですよね。
そう思います。
──そんなTani Yuukiさんですが、「ギタージャンボリー」は今年が初出演なんですよね。
はい。Taniさんは、去年の「ギタージャンボリー」のちょっと前くらいに出会って、そのあとに「ギタージャンボリー」を見に来たんです。そしたらえらく感動して。「こうあるべきだ」みたいなものが見えたんでしょうね。そこからすごく変わりました。そして満を辞して今回出てくれます。
──またCLOWさんは、去年の「SONAR MUSIC Road to RYOGOKU」のグランプリ受賞者で、今年は正式な出演を勝ち取りました。この「SONAR MUSIC Road to RYOGOKU」は昨年から始まった試みでしたが、手応えはいかがでしたか?
まだまだ弾き語りアーティストはいるんだなと思いました。街で弾き語りをしている人が昔より減ったなと思っていたんですけど、オーディションにはすごい数の応募が来たので。様々なレベルの方がいて……皆さん応募しようという気持ち、人に聴いてもらおうという気持ちを持っていることがうれしくて。なんとかしてあげたいという気持ちになりましたね。
──一方で森山良子さんも初出演だったりして、改めて出演アーティストの年齢層やキャリアの幅の広さを感じます。
しかも楽屋は全員同じ部屋なんですよ。畳200畳くらいの大部屋で、ベテランから若手まで全員一緒。端っこで練習をしている人もいるし、ベテランに自分のサンプルCDを渡しながら挨拶している人もいてとても自由です。すごく良い雰囲気です。
──そこでもいろいろな出会いや繋がりが生まれそうですね。
あるみたいですね。楽屋にはJ-WAVEの人間もなるべく入らないようにしているので。アーティスト同士、ライブのゲスト出演の交渉をしたり、「あれをきっかけに楽曲の提供をお願いしました」というのもよく聞きます。
──若手から大御所まで出ているイベントの意味が、そういうところにもあるんですね。
はい、演者のためのイベントにしたいという想いもすごくあって。だから飽きさせないようにしたいし、「ギタージャンボリー」を特別な場にしてあげたいと思っています。
出演者の年齢の幅が広がりましたね。開催初年度の2013年は、弾き語りがいいと言われている人を僕がそんなに知らないこともあって、奥田民生さん、斉藤和義さん、トータス松本さんあたりに頼っちゃっていたんですよね。でも今は、その人たちにも支えてもらっているけど、なるべく新しい人たちを入れていこうと思っていて。だから新陳代謝はしていけているのかなと思います。今年のオープニングアクトの林龍佑さん(fusen)、森大翔さんも良いですよ。ぜひオープニングアクトから観に来ていただきたいですね。
──ちなみに、1日目の「特別演目」ではどのようなことが行われる予定なのか、少し教えていただけますか?
TOSHI-LOWさんと岡野昭仁さんと斉藤和義さんと高橋 優さん、4人が一緒に歌うステージです。しかも、ただ一緒にやるだけじゃ面白くないので、この日だけの演出を考えています。楽しみにしていてください。
──TOSHI-LOWさんは2日連続の出演なんですね。
2日連続です、初出演なのに(笑)。ありがたいですね。TOSHI-LOWさんに出会ったのは本当にここ最近。なのに、TOSHI-LOWさんのほうから「ギタージャンボリーに出たい」と言ってくれて。TOSHI-LOWさんは、東日本大震災のときに被災地に行って「兄ちゃん、ミュージシャンやっているなら歌ってよ」と言われたことがきっかけで、弾き語りに注力するようになったそうです。見るたびに進化していて、すごく努力していらっしゃるんだろうなと思います。それでいて、地元の友だちっぽいところもあって。好きですね。
──では、今年の「ギタージャンボリー」はどのような2日間になりそうですか?
今回は本当に休憩がないので、忙しそうだなと(笑)。
──例年より出演アーティストが多い?
1組多いです。しかもオープニングアクトがあったり、オーディショングランプリのステージがあったりと、盛りだくさんで。
──開催当初は弾き語りのアーティストがそんなにいなかったとおっしゃっていましたが、今となっては、時間がぎっしりで裏方が大変なくらい、やりたいことがたくさんあるんですね。
はい。あと、このイベントについて言っておきたいのは、舞台監督の岡本さんやディスクガレージの高田さんにすごく支えてもらっているということ。最初からずっと一緒にやっている方々なのですが、「なぜギタージャンボリーをやるのか」「ギタージャンボリーにはどういう意味があるのか」をずっと理解してくださっていて。彼らがいないと絶対にできなかった。J-WAVEの力だけじゃないということは、この場を借りて言っておきたいです。あとは、とにかく知らないアーティストも楽しみに来てください、ということ。お目当てのアーティストはいると思いますが、それ以外もなかなか面白いよと。これまで何度も出ている斉藤(和義)さんが、今年はリハーサルを入念にやりたいと言ってきて。特に、音をしっかり決めたいそうなんです。とても楽しみですよね。
──そういう意味では常連組も例年とも違うステージになりそうですね。
そうですね。楽しみにしてもらいたいです。
日時: 2023年3月4日(土)、5日(日)
場所: 両国国技館(東京都墨田区横網1-3-28)
3月4日(土)出演(順不同):斉藤和義、岡野昭仁(ポルノグラフィティ)、秦 基博、高橋 優、藤原さくら×Rei、七尾旅人、みゆな、CLOW、
特別演目:TOSHI-LOW×高橋 優×岡野昭仁×斉藤和義(全9組)
Opening Act:林龍佑(fusen)
MC:クリス・ペプラー(J-WAVEナビゲーター)
3月5日(日)出演(順不同):竹原ピストル、トータス松本(ウルフルズ)、TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)、ハナレグミ、森山良子、UKULELE GYPSY(キヨサク from MONGOL800)、岸谷 香、Tani Yuuki、平井 大(全9組)
Opening Act:森 大翔
幕間Guest:Ichika Nito
MC:グローバー(J-WAVEナビゲーター)
チケット料金(税込):全席指定
・砂かぶり席(アリーナレベルの椅子席)¥9,900
・ます席(座布団/4名迄)¥22,000
※1ます4名まで入場可、履物を脱いで着席 サイズは1ます=約120cm×130cm(推奨:大人2名)
・2階席指定(イス) ¥5,900
主催: J-WAVE
企画・制作: J-WAVE、J-WAVE MUSIC、DISK GARAGE
後援:BS朝日
特別協賛:奥村組
イベントHP:https://www.j-wave.co.jp/special/guitarjamboree2023/
公演に関わるお問い合わせ:DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00~15:00)
同イベントは2013年に始まり、今年で10年目。この間、サブスクリプションサービスが浸透し、ライブが制限されるコロナ禍を経るなど、音楽は“聴き方”も“出会い方”も大きく変化した。その状況を、長年音楽シーンを見てきたアーティストブッキング担当者はどう捉えているか? ギタージャンボリーの企画、アーティストブッキングを手がける廣阪拓也(ひろさか・たくや)に、変わりゆく音楽業界の中でオムニバスイベントが果たす意義や、ギタージャンボリーの見どころを聞いた。
(J-WAVE NEWS編集部/取材・文=小林千絵)
公式ホームページ: https://www.j-wave.co.jp/special/guitarjamboree2023/
音楽は「一人で聴く時代」になってきた
──2020年には「ギタージャンボリー」もラジオを通した生演奏という形を取っていましたが、コロナ禍で配信ライブになったり、対バンのいないワンマンライブが多くなったりと、ライブも形を変えました。それに伴い、音楽の聴かれ方に変化も生まれたのではないかと思うのですが、ラジオ局のライブイベントのブッキングマネージャーという立場でいらっしゃる廣阪さんは、コロナ禍での音楽の聴かれ方やライブのあり方の変化はどのように見られていましたか?コロナ禍という以前に、10年前くらいから、音楽がどんどん消費されるようになってきたというのは否めない事実だと思っていて。サブスクリプションサービスの普及や、安価に誰でも音楽が作れるようになったことで、皆さんたくさんの音楽を味わいたいという気持ちから、たくさんの曲をちょっとずつつまんでいくようになって。アルバム単位じゃなくて楽曲単位にもなってきた。その傾向が、コロナ禍の影響でライブにも顕著に出たのかなと思います。
──そういう意味では、コロナ禍での音楽の聴かれ方や出会い方に変化はない?
聴かれ方も、やはりこの10年くらいでの変化が、コロナ禍で顕著になったという感じですかね。ヘッドホンやイヤホンで、一人で聴く時代になっているから、みんなで同じ曲を聴いて、みんなで口ずさんでということはずいぶん減ったなと。みんなが歌える曲、いわゆる流行歌がなくなってきているのは、残念なことだなと思いますけど、人それぞれに「この曲を聴けばその時代を思い出す」とか「その人の人生に紐づく楽曲」というのはあると思うので。退化でも進化でもなく、ただの変化だと捉えています。
──それでいうと、最近はTikTokを通した流行も生まれつつあるなと、私は感じます。
確かにそれはあるかもしれないですね。でもTikTokは1曲でもないというか。流行っているのは、サビだけ、1フレーズだけなので、流行歌とはまた違うのかなと思っています。
“ありそうでなかったいいもの”を観客に届ける
──そういう時代の中で、ラジオやライブイベントから音楽を発信される立場にある廣阪さんが大切にしていることは何ですか?J-WAVEの一員としてライブをつくるとか番組をつくるということで言えば、“J-WAVEの品格を保ちたい”ということは考えていますね。
──“J-WAVEの品格”って、具体的に言葉にはできますか?
ケースバイケースなので一概には言えないのですが、言うとしたら“J-WAVEらしいものをつくっていきたい”ということですかね。それはギタージャンボリーのコンセプトでもあります。
──確かに、端から見ていると、“J-WAVEらしさ”は何となくあるように感じます。それが品格にもつながっているのかもしれないですね。
そうですね。ギタージャンボリーを番組化していただいているBS朝日の方に、「ギタージャンボリーでは、アーティストが必ずみんなJ-WAVEに対してありがとうとか、J-WAVEを聴いているという話をステージ上でしますよね。テレビでは考えられないことです」と言われたことがあって。J-WAVEのイベントは、J-WAVEという存在があって出演が成り立っている感じがする、J-WAVEに対して愛を持ってくれていいですねって。
──そう言われると確かにそうですね。
本当に愛を持ってくれているかはわからないですが(笑)、やっぱりそう言われるとミュージシャンの期待に僕たちも応えたいなと思いますね。“J-WAVEらしさ”については、時代は変わるからこれも一概に言えないですが、一つあるとしたら“どこにもなかったいいものを早くやる”ということかなと思っていて。ギタージャンボリーなんか、まさにそうですよね。両国国技館でライブは開催されるけど、戦うイメージを持って、ギターの弾き語りをやるというのは、たぶんそれまでなかったんですよ。だから、“ありそうでなかったいいもの”というのは、キーワードかもしれないです。と言っても、ギタージャンボリーって最初は会社にも理解されなくて、「まぁ、やってみ」みたいな感じだったんですけどね。
観客を見てライブを作り上げていく、アーティストの力
──そんな始まりから、長く続くイベントになった理由は何だと思いますか?演者の力だと思います。演者がみんな喜んでやってくれているので。最初に話したように、インスタントに音楽を作れるようになったとか、流行歌がないとか、時代はいろいろと変わっていますけど、ギターを弾いて歌って表現したいという人が存在するということは絶対に変わらない。そういう演者の気持ちに適切だったのが「ギタージャンボリー」だったんだと思います。
──弾き語りだからこそ、普段とは違うアレンジで演奏できる場でもあることも、出演アーティストにとっては楽しめる理由なのかもしれないですね。
そうそう、弾き語りは自分の“間”でできますからね。トータス(松本)さんなんて、感きわまると、ギター弾かないでアカペラで全部歌っちゃったりするんですよ。
「ギタージャンボリー2022」のトータス松本(Photo by 上飯坂一)
そう、“ギター”ジャンボリーなのに(笑)。細野(晴臣)さんが以前、BPMが曲の頭とお尻が同じわけがないということを言っていて。「人間の鼓動、心臓の鼓動だから、同じじゃないんだよ、音楽は」と。それと一緒で、そのときの会場やお客さんとの向かい合う空気、ご時世、その人のコンディションでテンポが決まるんですよね。似た話で言うと、ハナレグミはセットリストを決めないでギタージャンボリーのステージに立つんですよ。ステージに上がって、お客さんを見て決める。いきなりコール&レスポンスから始めちゃったり。永積(タカシ)さんは弾き語りの天才ですね。
「ギタージャンボリー2020」のハナレグミ(Photo by 上飯坂一)
そうですね。だから回数を重ねていくごとにチケットが売れて。しかも一番いい席である砂かぶり席からチケットが売れていくのは当然なんですけど、マス席も同じくらいのペースで売れる。リピーターが増えているんだなと思います。
──出演者が発表される前から行くことを決める人もいそうですね。
「フジロック」とか「サマソニ」もそうじゃないですか。「ギタージャンボリー」もそういうイベントになってほしいなと思っています。“あそこに行けば自分の好みのものに出会える”という。
──「J-WAVEがチョイスするアーティストが、ギターの弾き語りで面白いことをやっているイベント」というだけで集まってくる人がいる。
そうそう。そこは意識してキャスティングしています。「Aさんのファンで来て、Aもよかったけど、全然知らなかったBもすごくよかった」とか、「若いアーティストを見に来たけどベテランのアーティストのほうがすごかった」とか。必ずそういう予想を超える出会いが生まれるように、ということは考えています。
若手から大御所まで。幅広い演者が出るメリット
──予想を超える出会いは、それこそライブならではですよね。それって実はラジオもそうなんですよね。何が流れるかわからないからおもしろい。欲しい情報を取りに行くインターネットと違って、無目的であるがゆえに感動するんです、ラジオって。だから今回のギタージャンボリーも、Tani Yuukiさんを観に来た若い人が「Taniさんはもちろん、森山良子さんもよかった」と言ってくれたり、「目当ては平井大さんだったけれど、初めて見る竹原ピストルさんもよかった」ってなってくれたりしたらいいなって。むしろそういうものを提供できないと、こういうオムニバスイベントの存続意義ってないのかなと思っています。
──Tani Yuukiさんと森山良子さんが同じ日に同じライブで見られることって、きっとなかなかないですよね。
そう思います。
──そんなTani Yuukiさんですが、「ギタージャンボリー」は今年が初出演なんですよね。
はい。Taniさんは、去年の「ギタージャンボリー」のちょっと前くらいに出会って、そのあとに「ギタージャンボリー」を見に来たんです。そしたらえらく感動して。「こうあるべきだ」みたいなものが見えたんでしょうね。そこからすごく変わりました。そして満を辞して今回出てくれます。
──またCLOWさんは、去年の「SONAR MUSIC Road to RYOGOKU」のグランプリ受賞者で、今年は正式な出演を勝ち取りました。この「SONAR MUSIC Road to RYOGOKU」は昨年から始まった試みでしたが、手応えはいかがでしたか?
まだまだ弾き語りアーティストはいるんだなと思いました。街で弾き語りをしている人が昔より減ったなと思っていたんですけど、オーディションにはすごい数の応募が来たので。様々なレベルの方がいて……皆さん応募しようという気持ち、人に聴いてもらおうという気持ちを持っていることがうれしくて。なんとかしてあげたいという気持ちになりましたね。
──一方で森山良子さんも初出演だったりして、改めて出演アーティストの年齢層やキャリアの幅の広さを感じます。
しかも楽屋は全員同じ部屋なんですよ。畳200畳くらいの大部屋で、ベテランから若手まで全員一緒。端っこで練習をしている人もいるし、ベテランに自分のサンプルCDを渡しながら挨拶している人もいてとても自由です。すごく良い雰囲気です。
──そこでもいろいろな出会いや繋がりが生まれそうですね。
あるみたいですね。楽屋にはJ-WAVEの人間もなるべく入らないようにしているので。アーティスト同士、ライブのゲスト出演の交渉をしたり、「あれをきっかけに楽曲の提供をお願いしました」というのもよく聞きます。
──若手から大御所まで出ているイベントの意味が、そういうところにもあるんですね。
はい、演者のためのイベントにしたいという想いもすごくあって。だから飽きさせないようにしたいし、「ギタージャンボリー」を特別な場にしてあげたいと思っています。
特別演目やオーディション…盛りだくさんでお届け
──「ギタージャンボリー」は今年で10年目。この10年間で、ギタージャンボリー自体にはどういう変化があったと思いますか?出演者の年齢の幅が広がりましたね。開催初年度の2013年は、弾き語りがいいと言われている人を僕がそんなに知らないこともあって、奥田民生さん、斉藤和義さん、トータス松本さんあたりに頼っちゃっていたんですよね。でも今は、その人たちにも支えてもらっているけど、なるべく新しい人たちを入れていこうと思っていて。だから新陳代謝はしていけているのかなと思います。今年のオープニングアクトの林龍佑さん(fusen)、森大翔さんも良いですよ。ぜひオープニングアクトから観に来ていただきたいですね。
──ちなみに、1日目の「特別演目」ではどのようなことが行われる予定なのか、少し教えていただけますか?
TOSHI-LOWさんと岡野昭仁さんと斉藤和義さんと高橋 優さん、4人が一緒に歌うステージです。しかも、ただ一緒にやるだけじゃ面白くないので、この日だけの演出を考えています。楽しみにしていてください。
──TOSHI-LOWさんは2日連続の出演なんですね。
2日連続です、初出演なのに(笑)。ありがたいですね。TOSHI-LOWさんに出会ったのは本当にここ最近。なのに、TOSHI-LOWさんのほうから「ギタージャンボリーに出たい」と言ってくれて。TOSHI-LOWさんは、東日本大震災のときに被災地に行って「兄ちゃん、ミュージシャンやっているなら歌ってよ」と言われたことがきっかけで、弾き語りに注力するようになったそうです。見るたびに進化していて、すごく努力していらっしゃるんだろうなと思います。それでいて、地元の友だちっぽいところもあって。好きですね。
──では、今年の「ギタージャンボリー」はどのような2日間になりそうですか?
今回は本当に休憩がないので、忙しそうだなと(笑)。
──例年より出演アーティストが多い?
1組多いです。しかもオープニングアクトがあったり、オーディショングランプリのステージがあったりと、盛りだくさんで。
──開催当初は弾き語りのアーティストがそんなにいなかったとおっしゃっていましたが、今となっては、時間がぎっしりで裏方が大変なくらい、やりたいことがたくさんあるんですね。
はい。あと、このイベントについて言っておきたいのは、舞台監督の岡本さんやディスクガレージの高田さんにすごく支えてもらっているということ。最初からずっと一緒にやっている方々なのですが、「なぜギタージャンボリーをやるのか」「ギタージャンボリーにはどういう意味があるのか」をずっと理解してくださっていて。彼らがいないと絶対にできなかった。J-WAVEの力だけじゃないということは、この場を借りて言っておきたいです。あとは、とにかく知らないアーティストも楽しみに来てください、ということ。お目当てのアーティストはいると思いますが、それ以外もなかなか面白いよと。これまで何度も出ている斉藤(和義)さんが、今年はリハーサルを入念にやりたいと言ってきて。特に、音をしっかり決めたいそうなんです。とても楽しみですよね。
──そういう意味では常連組も例年とも違うステージになりそうですね。
そうですね。楽しみにしてもらいたいです。
公演概要
タイトル: J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2023 supported by 奥村組日時: 2023年3月4日(土)、5日(日)
場所: 両国国技館(東京都墨田区横網1-3-28)
3月4日(土)出演(順不同):斉藤和義、岡野昭仁(ポルノグラフィティ)、秦 基博、高橋 優、藤原さくら×Rei、七尾旅人、みゆな、CLOW、
特別演目:TOSHI-LOW×高橋 優×岡野昭仁×斉藤和義(全9組)
Opening Act:林龍佑(fusen)
MC:クリス・ペプラー(J-WAVEナビゲーター)
3月5日(日)出演(順不同):竹原ピストル、トータス松本(ウルフルズ)、TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)、ハナレグミ、森山良子、UKULELE GYPSY(キヨサク from MONGOL800)、岸谷 香、Tani Yuuki、平井 大(全9組)
Opening Act:森 大翔
幕間Guest:Ichika Nito
MC:グローバー(J-WAVEナビゲーター)
チケット料金(税込):全席指定
・砂かぶり席(アリーナレベルの椅子席)¥9,900
・ます席(座布団/4名迄)¥22,000
※1ます4名まで入場可、履物を脱いで着席 サイズは1ます=約120cm×130cm(推奨:大人2名)
・2階席指定(イス) ¥5,900
主催: J-WAVE
企画・制作: J-WAVE、J-WAVE MUSIC、DISK GARAGE
後援:BS朝日
特別協賛:奥村組
イベントHP:https://www.j-wave.co.jp/special/guitarjamboree2023/
公演に関わるお問い合わせ:DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00~15:00)
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