J-WAVEが共同プロデュースするオンラインマガジン「守破離 -SHUHARI-」。“守破離”とは剣道や茶道などの修業における段階を示したもの。「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、よいものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。(※1)そんな“守破離”と“音”を切り口に人物のスタイルをリアルに掘り下げ、オリジナルインタビューをInstagramとJ-WAVE NEWSで配信していく。
(※1)引用:デジタル大辞泉「守破離」より
【過去の「守破離 -SHUHARI-」インタビュー】
今回は、グラフィティライターMQにインタビュー。“DMS CREW”に所属し、ニューヨークを拠点に世界中でボムを繰り返す伝説的なグラフィティライターMQ。現在、東京・原宿のblock houseで開催中のエキシビジョン「MQ exhibition“VISITOR”」で来日した彼に、これまでのキャリアや自身が考えるグラフィティの可能性、作品を通して伝えたい社会への思いを訊いた。
日本に来るのは5、6回目かな。東京に初めて来たのは1998年で、街中にグラフィティがあるのは知っていたけど、スローアップもタギングもシルバーフィリングもなさそうだったから最初にシルバーフィリングをやるのは自分だと思ってたんだ。それで渋谷と原宿の間のどっかで1回やったんだけど、そのときにSNIPE1(※2)を見て実は俺が最初じゃないんだなって知った。でも、それが逆に嬉しかった。大発見で、一種の進化を目撃した感じ。
(※2)SNIPE1…グラフィティライター/アーティスト。1990年代初頭に10代でNYグラフィティシーンに身を投じ、日本に拠点を映した後もLA、NY、バンコク、香港、メルボルンなど世界中の前衛ギャラリーにて今もなお、アート界をボミング中。
https://www.instagram.com/fukitalltokyo/
──MQさんが所属している、東京の「246」クルーとの出会いは?(※3)
246クルーのSECTとは、2001年くらいにサンフランシスコで会ったんだ。当時はお互い若くて、向こうは英語話せないし俺も日本語を話せないし。でも、SECTが日本に帰ったときになんとか連絡を取れて、自然なつながりを感じた。やつはよいエネルギーを持っていて、美しかった。生粋のボマーだし。
(※3)246…東京のグラフィティークルー。
家族もみんな絵を描いてた影響もあって、子供の頃はよく絵やコミックを好きで描いていたんだ。あるとき街の一部に落書きをしていて、それを人に見られちゃったことがあって。ストリートからのエネルギーみたいなものが悪とされていたから、当時は戦慄したけどそのおかげで自分も街とかそのカルチャーの一部になれた気がした。1980年頃のニューヨークって丁度ヒップホップが盛んで、そういうものに惹かれたのかな。
──作品を描いて満足する瞬間はどんなときですか?
描くときは毎回満足してるよ。中毒とまではいかないけど、繰り返し繰り返し。でも描く度に少しづつステップアップしていこうと思ってる。だからいつも何かを描くたびに、少しずつ危険なところに描きたくなるんだ。かといって、なんでもかんでも自分の好きなところに描いていいわけじゃないから、アートとして捉えてもらえるような範囲内で描くようにしてる。もし俺の母親がそれを見たら「お前また描いただろ」とか言われちゃうし、周りのタギングとのバランスも考えながら描くよ。
──MQさんが影響を受けたものはありますか?
誰に影響を受けたというよりかは、ただ自由に描いてるかな。もうカテゴリーみたいなもんなんだよ。オリンピックではアスリートが各競技で活躍してるでしょ?グラフィティもアートの延長線上にある。俺はただのペインター、アーティストで、繰り返し描くだけ。グラフィティは長い間ずっと否定的な目でしか見られなかったけど、徐々に社会も変わってきてると思う。グラフィティって世の中的には「ヴァンダリズム」として捉えられるけど、ヴァンダリズム自体はある種、健全なことなんだ。この地球上のすべてのものは、それが何であれ健全なんだ。ただ、どうアプローチするかというところで。今、アメリカでTargetをはじめ、いろんな量販店ではグラフィティ用のマーカーとか本が子ども向けのコーナーに売ってる。だからグラフィティ自体は合法なんだ。あと、ステッカーもいいね。スプレーを使うのは一部の人だけでいいけど、ステッカーはどんどん進化しているしね。
ニューヨーク・シティという街があって、俺のスタイルを確立したんだと思う。元々ニューヨークで生まれて、俺は80年代のニューヨークで育ったから。Dondi White、FUZZ ONE、RTWクルーのEric Haze(※4)といった伝説的なアーティスト達はみんなOGだ。
(※4)
Dondi White…1970年代半ばに活躍したニューヨーク、イーストブルックリンのグラフィティーライター。
FUZZ ONE…1970年代、ニューヨークの伝説的グラフィティライター。
Eric Haze…ニューヨークのグラフィティアーティストでデザイナー。1970年初頭からニューヨークのSUBWAYを中心に活動。Soul ArtistsやRTWなどのニューヨーク・グラフィティクルーとして活躍。
──ターニングポイントとなったできごとはありますか?
地球が回るのと同じで、今も絶賛ターニング中。今も回ってるし、家で子守中でも自宅のプリンタでステッカーを作ってるし。成長してるんだか、むしろ後退してるんだか、そんなことは全然分からないけど俺はこの感じがいいんだ。
グラフィティはコミュニケーションの道具でもあると思うんだよね。広告も宣伝の為に看板とかステッカー作って貼ったりするでしょ?だから、いつか動物を開放する活動をしたいんだ。俺ら人間という意味での動物ではなく、地球上の動物たち。そしたら世界中の人たちが動物たちの声に耳を傾けるかもしれないでしょ。もしかしたら鶏を食べるのをやめるかもしれない、だって卵は食べられるんだから。俺は本当に動物を信じているんだ。地球という惑星も、信じてる。なぜならここは俺たちの故郷だから。そして、みんな自然が何であるかを知る必要があると思う。ステッカーは木から作られるし、サラダや庭もそうだ。だから、俺は肉を食べるのをやめたんだ。俺には大切な家族も子供もいるから、何も考えずにヴァンダリストになるのは嫌なんだ。
──最後に質問させてください。ヴァンダリズムは社会に変化をもたらすと思いますか?
俺はヴァンダリズムが社会に変化をもたらすと信じてるよ。みんなお金をもらってる訳じゃなくて、心の底から喜んでやっているから。何かを伝えたいとき、その行為が語ってくれることもある。逮捕されたりとか色々とネガティブなことが起こるかもしれないけど、ヴァンダリズムは確かなパワーを持っている。そして最低限の敬意は込めて描いているつもり。人の車とか家には塗らないとか。学べば学ぶほど、より多くのことを知れるから、経験をするというのはよいことだよ。人間として基本的なことだと思うし、これからも学び続けたいと思う。
Act Like You Know / MC Lyte
ニューヨークで流行ってた曲で、俺らはその曲で育ったようなもんなんだ。ある意味ニューヨークのテーマだったんだ。「Act like you know?」って口ずさんじゃうよね、まあ「You know what i am saying?」みたいなノリで使う感じ。ヒップホップから来る強烈な意味がその言葉にはある。だから俺はラップはできないけど、ヒップホップが大好きなんだ。ジュエリーも好きだし実は金歯もつけてたんだけど、それは売ってステッカーを買うお金にしちゃったのかな(笑)いや、指輪に変えたんだっけな。とにかく、「Act Like You Know」はNYの人に強さをくれた曲なんだ。
MQ exhibition“VISITOR”
開催日時:2023年2月18日(土)-26(日) OPEN 15:00-20:00
会場:block house(東京都渋谷区神宮前6-12-9 4F)
https://www.instagram.com/p/CoqY8wDv0_N/
Photo:Gaku Jungnickel
Interview:Masakazu Yanaka
Text:Kana Shionoya
ニューヨーク出身のグラフィティライター。“DMS CREW”に所属し、ニューヨークを拠点にアメリカ中西部やヨーロッパ、日本など世界中でボムを繰り返す伝説的な存在。
WEB / Instagram
「守破離 -SHUHARI-」
─師から学び、型を破り、確立する─
“守破離”を切り口に「人」のスタイルをリアルに掘り下げるオンラインマガジン
https://www.instagram.com/shuhari_official/
(※1)引用:デジタル大辞泉「守破離」より
【過去の「守破離 -SHUHARI-」インタビュー】
今回は、グラフィティライターMQにインタビュー。“DMS CREW”に所属し、ニューヨークを拠点に世界中でボムを繰り返す伝説的なグラフィティライターMQ。現在、東京・原宿のblock houseで開催中のエキシビジョン「MQ exhibition“VISITOR”」で来日した彼に、これまでのキャリアや自身が考えるグラフィティの可能性、作品を通して伝えたい社会への思いを訊いた。
MQと東京
──日本に来るのは何回目ですか?東京はMQさんにとってどんな都市ですか?日本に来るのは5、6回目かな。東京に初めて来たのは1998年で、街中にグラフィティがあるのは知っていたけど、スローアップもタギングもシルバーフィリングもなさそうだったから最初にシルバーフィリングをやるのは自分だと思ってたんだ。それで渋谷と原宿の間のどっかで1回やったんだけど、そのときにSNIPE1(※2)を見て実は俺が最初じゃないんだなって知った。でも、それが逆に嬉しかった。大発見で、一種の進化を目撃した感じ。
(※2)SNIPE1…グラフィティライター/アーティスト。1990年代初頭に10代でNYグラフィティシーンに身を投じ、日本に拠点を映した後もLA、NY、バンコク、香港、メルボルンなど世界中の前衛ギャラリーにて今もなお、アート界をボミング中。
https://www.instagram.com/fukitalltokyo/
──MQさんが所属している、東京の「246」クルーとの出会いは?(※3)
246クルーのSECTとは、2001年くらいにサンフランシスコで会ったんだ。当時はお互い若くて、向こうは英語話せないし俺も日本語を話せないし。でも、SECTが日本に帰ったときになんとか連絡を取れて、自然なつながりを感じた。やつはよいエネルギーを持っていて、美しかった。生粋のボマーだし。
(※3)246…東京のグラフィティークルー。
Photo by Gaku Jungnickel
「守」
──グラフィティを始めた経緯は?家族もみんな絵を描いてた影響もあって、子供の頃はよく絵やコミックを好きで描いていたんだ。あるとき街の一部に落書きをしていて、それを人に見られちゃったことがあって。ストリートからのエネルギーみたいなものが悪とされていたから、当時は戦慄したけどそのおかげで自分も街とかそのカルチャーの一部になれた気がした。1980年頃のニューヨークって丁度ヒップホップが盛んで、そういうものに惹かれたのかな。
──作品を描いて満足する瞬間はどんなときですか?
描くときは毎回満足してるよ。中毒とまではいかないけど、繰り返し繰り返し。でも描く度に少しづつステップアップしていこうと思ってる。だからいつも何かを描くたびに、少しずつ危険なところに描きたくなるんだ。かといって、なんでもかんでも自分の好きなところに描いていいわけじゃないから、アートとして捉えてもらえるような範囲内で描くようにしてる。もし俺の母親がそれを見たら「お前また描いただろ」とか言われちゃうし、周りのタギングとのバランスも考えながら描くよ。
──MQさんが影響を受けたものはありますか?
誰に影響を受けたというよりかは、ただ自由に描いてるかな。もうカテゴリーみたいなもんなんだよ。オリンピックではアスリートが各競技で活躍してるでしょ?グラフィティもアートの延長線上にある。俺はただのペインター、アーティストで、繰り返し描くだけ。グラフィティは長い間ずっと否定的な目でしか見られなかったけど、徐々に社会も変わってきてると思う。グラフィティって世の中的には「ヴァンダリズム」として捉えられるけど、ヴァンダリズム自体はある種、健全なことなんだ。この地球上のすべてのものは、それが何であれ健全なんだ。ただ、どうアプローチするかというところで。今、アメリカでTargetをはじめ、いろんな量販店ではグラフィティ用のマーカーとか本が子ども向けのコーナーに売ってる。だからグラフィティ自体は合法なんだ。あと、ステッカーもいいね。スプレーを使うのは一部の人だけでいいけど、ステッカーはどんどん進化しているしね。
「破」
──ご自身の今のスタイルはどうやって確立していったのですか?ニューヨーク・シティという街があって、俺のスタイルを確立したんだと思う。元々ニューヨークで生まれて、俺は80年代のニューヨークで育ったから。Dondi White、FUZZ ONE、RTWクルーのEric Haze(※4)といった伝説的なアーティスト達はみんなOGだ。
(※4)
Dondi White…1970年代半ばに活躍したニューヨーク、イーストブルックリンのグラフィティーライター。
FUZZ ONE…1970年代、ニューヨークの伝説的グラフィティライター。
Eric Haze…ニューヨークのグラフィティアーティストでデザイナー。1970年初頭からニューヨークのSUBWAYを中心に活動。Soul ArtistsやRTWなどのニューヨーク・グラフィティクルーとして活躍。
──ターニングポイントとなったできごとはありますか?
地球が回るのと同じで、今も絶賛ターニング中。今も回ってるし、家で子守中でも自宅のプリンタでステッカーを作ってるし。成長してるんだか、むしろ後退してるんだか、そんなことは全然分からないけど俺はこの感じがいいんだ。
「離」
──常に何かに挑戦してるんですね。今後、やってみたいことはありますか?グラフィティはコミュニケーションの道具でもあると思うんだよね。広告も宣伝の為に看板とかステッカー作って貼ったりするでしょ?だから、いつか動物を開放する活動をしたいんだ。俺ら人間という意味での動物ではなく、地球上の動物たち。そしたら世界中の人たちが動物たちの声に耳を傾けるかもしれないでしょ。もしかしたら鶏を食べるのをやめるかもしれない、だって卵は食べられるんだから。俺は本当に動物を信じているんだ。地球という惑星も、信じてる。なぜならここは俺たちの故郷だから。そして、みんな自然が何であるかを知る必要があると思う。ステッカーは木から作られるし、サラダや庭もそうだ。だから、俺は肉を食べるのをやめたんだ。俺には大切な家族も子供もいるから、何も考えずにヴァンダリストになるのは嫌なんだ。
──最後に質問させてください。ヴァンダリズムは社会に変化をもたらすと思いますか?
俺はヴァンダリズムが社会に変化をもたらすと信じてるよ。みんなお金をもらってる訳じゃなくて、心の底から喜んでやっているから。何かを伝えたいとき、その行為が語ってくれることもある。逮捕されたりとか色々とネガティブなことが起こるかもしれないけど、ヴァンダリズムは確かなパワーを持っている。そして最低限の敬意は込めて描いているつもり。人の車とか家には塗らないとか。学べば学ぶほど、より多くのことを知れるから、経験をするというのはよいことだよ。人間として基本的なことだと思うし、これからも学び続けたいと思う。
「音」
──好きな音楽はありますか?Act Like You Know / MC Lyte
ニューヨークで流行ってた曲で、俺らはその曲で育ったようなもんなんだ。ある意味ニューヨークのテーマだったんだ。「Act like you know?」って口ずさんじゃうよね、まあ「You know what i am saying?」みたいなノリで使う感じ。ヒップホップから来る強烈な意味がその言葉にはある。だから俺はラップはできないけど、ヒップホップが大好きなんだ。ジュエリーも好きだし実は金歯もつけてたんだけど、それは売ってステッカーを買うお金にしちゃったのかな(笑)いや、指輪に変えたんだっけな。とにかく、「Act Like You Know」はNYの人に強さをくれた曲なんだ。
Photo by Gaku Jungnickel
MQ exhibition“VISITOR”
今回、個展開催前の忙しい中で時間をいただきグラフィティーライターMQの真髄に迫る貴重な話を伺うことができた。アートギャラリーjinkinokoプレゼンツで開催中のエキシビジョン「VISITOR」では、ステッカーをモチーフにした白黒基調のものから色彩豊かなものまで、ギャラリー内でありながらもストリートが再現された空間に並ぶ、躍動感溢れるグラフィティは圧巻だ。原宿のギャラリーblock houseに詰め込まれたMQの世界をぜひ体感してほしい。MQ exhibition“VISITOR”
開催日時:2023年2月18日(土)-26(日) OPEN 15:00-20:00
会場:block house(東京都渋谷区神宮前6-12-9 4F)
https://www.instagram.com/p/CoqY8wDv0_N/
Interview:Masakazu Yanaka
Text:Kana Shionoya
PROFILE
MQニューヨーク出身のグラフィティライター。“DMS CREW”に所属し、ニューヨークを拠点にアメリカ中西部やヨーロッパ、日本など世界中でボムを繰り返す伝説的な存在。
WEB / Instagram
「守破離 -SHUHARI-」
─師から学び、型を破り、確立する─
“守破離”を切り口に「人」のスタイルをリアルに掘り下げるオンラインマガジン
https://www.instagram.com/shuhari_official/
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