俳優・映像作家・文筆家と多岐にわたって活躍する小川紗良。2月からは、J-WAVEの番組『ACROSS THE SKY』(毎週日曜 9:00-12:00)のナビゲーターを務めている。同番組は、東京で生活する人々の感性や感覚をよりグローバルに磨くため、積極的に世界と繋がっていく3時間のプログラム。もともとは、事務所の先輩だった俳優の玄理がナビゲートしていた。
ナビゲートを引き継ぐにあたり、玄理から「宝物を手渡すような感じ」と伝えられたという小川。普段からラジオを愛聴する彼女は今、話し手として何を感じているのか? ラジオの良さや、やってみたいことを聞いた。
■「NAVIGATOR'S VOICE」過去のインタビュー
もともと私の日常生活にラジオは欠かせない存在だったので、ラジオのお仕事をいただけたのはうれしかったです。『ACROSS THE SKY』も玄理さんがナビゲーターを務めていた時代から聴かせていただいていて、内容がすごく濃いと感じていたんです。“世界と繋がる”をテーマに国際的な話題も扱っていて、暮らしを豊かにするような情報が詰まっているので、自分の関心事としてもすごくピッタリの内容です。リスナーさんから反応をいただけることも含めて、毎週楽しくやらせていただいています。
――玄理さんから番組を始めるにあたり、何かメッセージはありましたか。
玄理さんはこの番組を5年間務められていたので、「宝物を手渡すような感じ」と仰っていて。その言葉に、玄理さんが抱いていた全ての思いが詰まっていると感じました。私はすごく焦ってしまう性質なのですが、玄理さんから「落ち着いてね。ゆっくりで大丈夫」とアドバイスをいただいて、放送中はその言葉を思い出しています。
収録を重ねるにつれ、ラジオって話すことよりも、実は聞くことが大事だと思うようになって。ゲストの方の話はもちろん、リスナーの意見を拾うこともそうだし、その日のテーマに対してどれだけの反応を起こすかは、聞く能力が問われると思っています。今は自分が何を話すかということより、しっかりと話を聞くことを大事にしています。
――ちなみに普段、リスナーとしては、どんなラジオ番組を聴いているのでしょうか?
Podcastも含めて、音声メディアは日常的に触れています。『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)という番組がPodcastを開始して、もともと番組の大ファンなので、耳だけでも楽しめるのでうれしくて。ほかにも『アンガールズのジャンピン』(オールナイトニッポンPODCAST)も。ラジオだと『空気階段の踊り場』(TBSラジオ)や『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)が好きです。あとは、ハロー!プロジェクトが好きなので、ハロプロ関連のラジオもよく聴いています。
コロナ禍は大きかったです。その前から聴いてはいたんですけど、外出自粛の時期にがっつりハマりました。今は結婚して同居していますが、コロナが拡大していった頃は、大学を卒業してひとり暮らしを始めたときで。ひとりで過ごす時間にラジオが寄り添ってくれたというか、空間を埋めてくれるものとしてピッタリの存在だったんです。ラジオって、ふと耳に入ってきた情報が面白かったりもしますし、BGMのような感覚で流していました。
コロナ禍から干し野菜を作ることにハマって、今も趣味のひとつとして楽しんでいるんですけど、とにかく野菜を大量に切るんですね。そんなとき、ラジオが相棒となり、心地よく作業を進めることができています。
――小川さんは、俳優、映像作家、文筆家、そしてラジオのナビゲーターと幅広い分野で活動されています。今後、どんなことを追求していきたい……など、クリエイターとしての理想像はありますか。
『ACROSS THE SKY』のテーマが“世界と繋がる”なんですけど、私自身もその考えは大切にしたいと思っています。“世界”が指す意味って地理的なことだけではなく、概念的なものなんじゃないかなって思うんですね。人が100人いれば100通りの世界があるし、自分じゃない他者が持っている世界と繋がって、何かをわかちあったり、助けあったりするような繋がりを、このラジオや創作を通して、生み出せたら良いなって思います。
私の関心ごとにも偏りはあると思うんですけど、日々世界で起きている問題は自分の中でも考えるようにしていて。例えば、『母親になって後悔してる』(新潮社)という本を番組の中で紹介したんですけど、私も女性として生きているので、その中に書かれていることには関心があります。あらゆる情報を受けて、自分なりに考えたことをリスナーさんと意見交換できる場があるというのは幸せなことだなと思いますね。
――インプットが増えることで、小川さんが携わる作品の強度が増していくような、良い循環が生まれていそうですね。
そうですね。単純に自分では選ばなかった本も手に取る機会が増えたし、美術も見に行くようになりました。
私は保育士資格を持っていて、ときどき保育園でも働いているんです。そういう経歴からか、子育てのことや、子どもに関わることはすごく興味があります。理想を言うならいつか子どもたちをゲストに呼んでみたいですね。「夏休み子ども相談」みたいなイメージで、子どもの素朴な疑問に大人が耳を傾けるような放送ができたらなって。今のこの世の中で生きる子どもたちが何を思って、何を感じているのか気になります。「遊び場には満足しているのか」とか、「保育園は楽しいか」など直球の質問も投げかけて、子どもたちの心を探ってみたいですね。
──最後に『ACROSS THE SKY』のテーマに沿った質問を。「世界と繋がったように感じられる1曲」を教えてください。
番組のディレクターさんが音楽に詳しくて、放送で「これ良いな」と感じる曲に出会うことが多いんですけど、先日聴いたシンガポールのインディーポップ・バンドのSobsの音楽がすごく好きでした。日曜の朝のムードにも合うし、オシャレなサウンドで、ゆったり聴けるけれど、心が楽しくなれるというか。そのときは『Party Song』を流しましたけど、外国のインディーバンドのサウンドが流れるというのは、番組のコンセプトとすごくピッタリだし、繋がった気分になれます。
――ちなみにハロー!プロジェクトで好きな曲は?
ハロプロはいっぱいありすぎて……ちょっと困っちゃいます(笑)。すごく有名な曲ですけど、モーニング娘。の『ザ☆ピ〜ス!』は聴くとすごく幸福感に包まれます。<好きな人が優しかった>ってフレーズはシンプルだけど、本当に良いなって。タイトルのテーマは大きいんですけど、歌詞は<投票行って外食するんだ>などなんでもない日常が歌われている。この曲にはそういう日常が平和に繋がっているというコンセプトがある気がして、昔からすごく好きな1曲です。
(取材・文=中山洋平)
2019年早稲田大学文化構想学部卒業。
NHK連続テレビ小説『まんぷく』(2018~2019年)で、長谷川博己・安藤サクラの娘役を演じ話題に。
その他主演映画『ビューティフルドリーマー』(2020年)、初主演ドラマ『湯あがりスケッチ』(2022年)などに出演。
映像作家として2021年6月には初商業映画『海辺の金魚』が公開し、韓国で開催された「全州国際映画祭」に正式出品された。
文筆業では、小説版『海辺の金魚』や初エッセイ『猫にまたたび』を手掛ける。
ナビゲートを引き継ぐにあたり、玄理から「宝物を手渡すような感じ」と伝えられたという小川。普段からラジオを愛聴する彼女は今、話し手として何を感じているのか? ラジオの良さや、やってみたいことを聞いた。
■「NAVIGATOR'S VOICE」過去のインタビュー
ラジオは、話すよりも聞くことが大事と気づいた
――『ACROSS THE SKY』のナビゲーターに就任して、いまどんなお気持ちですか?もともと私の日常生活にラジオは欠かせない存在だったので、ラジオのお仕事をいただけたのはうれしかったです。『ACROSS THE SKY』も玄理さんがナビゲーターを務めていた時代から聴かせていただいていて、内容がすごく濃いと感じていたんです。“世界と繋がる”をテーマに国際的な話題も扱っていて、暮らしを豊かにするような情報が詰まっているので、自分の関心事としてもすごくピッタリの内容です。リスナーさんから反応をいただけることも含めて、毎週楽しくやらせていただいています。
――玄理さんから番組を始めるにあたり、何かメッセージはありましたか。
玄理さんはこの番組を5年間務められていたので、「宝物を手渡すような感じ」と仰っていて。その言葉に、玄理さんが抱いていた全ての思いが詰まっていると感じました。私はすごく焦ってしまう性質なのですが、玄理さんから「落ち着いてね。ゆっくりで大丈夫」とアドバイスをいただいて、放送中はその言葉を思い出しています。
収録を重ねるにつれ、ラジオって話すことよりも、実は聞くことが大事だと思うようになって。ゲストの方の話はもちろん、リスナーの意見を拾うこともそうだし、その日のテーマに対してどれだけの反応を起こすかは、聞く能力が問われると思っています。今は自分が何を話すかということより、しっかりと話を聞くことを大事にしています。
――ちなみに普段、リスナーとしては、どんなラジオ番組を聴いているのでしょうか?
Podcastも含めて、音声メディアは日常的に触れています。『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)という番組がPodcastを開始して、もともと番組の大ファンなので、耳だけでも楽しめるのでうれしくて。ほかにも『アンガールズのジャンピン』(オールナイトニッポンPODCAST)も。ラジオだと『空気階段の踊り場』(TBSラジオ)や『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)が好きです。あとは、ハロー!プロジェクトが好きなので、ハロプロ関連のラジオもよく聴いています。
コロナ禍でラジオとの距離が近づいた
――小川さんがラジオを好きになった時期は?コロナ禍は大きかったです。その前から聴いてはいたんですけど、外出自粛の時期にがっつりハマりました。今は結婚して同居していますが、コロナが拡大していった頃は、大学を卒業してひとり暮らしを始めたときで。ひとりで過ごす時間にラジオが寄り添ってくれたというか、空間を埋めてくれるものとしてピッタリの存在だったんです。ラジオって、ふと耳に入ってきた情報が面白かったりもしますし、BGMのような感覚で流していました。
コロナ禍から干し野菜を作ることにハマって、今も趣味のひとつとして楽しんでいるんですけど、とにかく野菜を大量に切るんですね。そんなとき、ラジオが相棒となり、心地よく作業を進めることができています。
――小川さんは、俳優、映像作家、文筆家、そしてラジオのナビゲーターと幅広い分野で活動されています。今後、どんなことを追求していきたい……など、クリエイターとしての理想像はありますか。
『ACROSS THE SKY』のテーマが“世界と繋がる”なんですけど、私自身もその考えは大切にしたいと思っています。“世界”が指す意味って地理的なことだけではなく、概念的なものなんじゃないかなって思うんですね。人が100人いれば100通りの世界があるし、自分じゃない他者が持っている世界と繋がって、何かをわかちあったり、助けあったりするような繋がりを、このラジオや創作を通して、生み出せたら良いなって思います。
私の関心ごとにも偏りはあると思うんですけど、日々世界で起きている問題は自分の中でも考えるようにしていて。例えば、『母親になって後悔してる』(新潮社)という本を番組の中で紹介したんですけど、私も女性として生きているので、その中に書かれていることには関心があります。あらゆる情報を受けて、自分なりに考えたことをリスナーさんと意見交換できる場があるというのは幸せなことだなと思いますね。
――インプットが増えることで、小川さんが携わる作品の強度が増していくような、良い循環が生まれていそうですね。
そうですね。単純に自分では選ばなかった本も手に取る機会が増えたし、美術も見に行くようになりました。
いつか「子どもの声に耳を傾ける」放送をしてみたい
――今後、ラジオでやってみたいことはありますか?私は保育士資格を持っていて、ときどき保育園でも働いているんです。そういう経歴からか、子育てのことや、子どもに関わることはすごく興味があります。理想を言うならいつか子どもたちをゲストに呼んでみたいですね。「夏休み子ども相談」みたいなイメージで、子どもの素朴な疑問に大人が耳を傾けるような放送ができたらなって。今のこの世の中で生きる子どもたちが何を思って、何を感じているのか気になります。「遊び場には満足しているのか」とか、「保育園は楽しいか」など直球の質問も投げかけて、子どもたちの心を探ってみたいですね。
──最後に『ACROSS THE SKY』のテーマに沿った質問を。「世界と繋がったように感じられる1曲」を教えてください。
番組のディレクターさんが音楽に詳しくて、放送で「これ良いな」と感じる曲に出会うことが多いんですけど、先日聴いたシンガポールのインディーポップ・バンドのSobsの音楽がすごく好きでした。日曜の朝のムードにも合うし、オシャレなサウンドで、ゆったり聴けるけれど、心が楽しくなれるというか。そのときは『Party Song』を流しましたけど、外国のインディーバンドのサウンドが流れるというのは、番組のコンセプトとすごくピッタリだし、繋がった気分になれます。
――ちなみにハロー!プロジェクトで好きな曲は?
ハロプロはいっぱいありすぎて……ちょっと困っちゃいます(笑)。すごく有名な曲ですけど、モーニング娘。の『ザ☆ピ〜ス!』は聴くとすごく幸福感に包まれます。<好きな人が優しかった>ってフレーズはシンプルだけど、本当に良いなって。タイトルのテーマは大きいんですけど、歌詞は<投票行って外食するんだ>などなんでもない日常が歌われている。この曲にはそういう日常が平和に繋がっているというコンセプトがある気がして、昔からすごく好きな1曲です。
(取材・文=中山洋平)
小川紗良 プロフィール
1996年東京都生まれ。俳優・映像作家・文筆家2019年早稲田大学文化構想学部卒業。
NHK連続テレビ小説『まんぷく』(2018~2019年)で、長谷川博己・安藤サクラの娘役を演じ話題に。
その他主演映画『ビューティフルドリーマー』(2020年)、初主演ドラマ『湯あがりスケッチ』(2022年)などに出演。
映像作家として2021年6月には初商業映画『海辺の金魚』が公開し、韓国で開催された「全州国際映画祭」に正式出品された。
文筆業では、小説版『海辺の金魚』や初エッセイ『猫にまたたび』を手掛ける。