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「最良の治療」のため伝えるべきことは? 医師に聞く、関節リウマチの“目標達成に向けた治療”

「最良の治療」のため伝えるべきことは? 医師に聞く、関節リウマチの“目標達成に向けた治療”

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提供:アッヴィ合同会社

病気を患うと「この病気は治るのか? 治らないのか?」に意識が向き、誰しもが不安になるものだ。病気によっては長期的に付き合っていくものもある。前向きに歩んでいくためには「どう治療を進めていくか」「どんな状態をゴールに設定するか」など、自分自身が治療を通じて目指す姿を思い描き、医師に共有することが重要だ。

医師と二人三脚で病気に向き合うには、どうすればよいか──ひとつの例として、関節リウマチの治療を見てみよう。通院や服薬など一般的にイメージされる治療そのものだけでなく、「目標達成に向けた治療」を意味するT2T(Treat to Target/トリート トゥ ターゲット)という治療への向き合い方が確立されているからだ。

“治療の目標”とは何か? T2Tを実践することのメリットや、治療に前向きに取り組むための心構えを、その道のエキスパートである慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科教授の金子祐子医師にインタビュー。聞き手は、J-WAVEナビゲーターでモデルの板井麻衣子が務めた。

長期的に付き合っていく治療では、「病気になる前と変わらない日常」を送ることを目指す

病気によっては「完治」ではなく、治療をしながら「病気になる前と変わらない日常を送ること」を目標とするものもある。

日本において60~100万人が発症しているとされる関節リウマチもその一例だ。発症年齢は30~60代と幅広く、罹患率も人口の0.6~1.0%と比較的一般的な疾病ながら、その症状や治療法は意外と知られていない(※1)。

板井:関節リウマチは、どういった病気なのでしょうか。

金子:本来はウイルスや菌と戦うために人の身体に備わっている免疫が、関節を攻撃してしまう病気です。関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、変形、発熱やだるさなどの症状が出ます。9割の方は手の指に痛みや腫れ、進行すると変形などの症状が出るため、たとえばシチューの入ったお鍋など重いものが持てなくなったり、掃除機がかけられなくなったり、マウスがクリックできなくなったりと日常生活に影響が出てくるんです。しかし、早いうちから治療を進めれば、「寛解(かんかい)」を目指すことができます。

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慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科教授の金子祐子医師

板井:寛解……。がん、うつなどの治療でも耳にする単語ですが、「治癒」とはどう違うのですか?

金子:治癒は「服薬も通院も、もう必要ありません」という状態です。一方で寛解は、ざっくり言えば、病気の勢いが収まっていて、病気になる前と変わらない、これまで通りの日常を送ることができる状態を指します。関節リウマチは、寛解を達成し、さらにその状態を維持することを目標とします。ある一定の水準まで炎症の数値が下がれば、腫れや痛みなどの症状が抑えられるだけでなく、将来的に関節が変形するリスクが低くなる事が示されています(※2)。

板井:しっかり病気と向き合っていくことで、病気になる前の心地よい生活を取り戻すこともできるということですね。

患者さんの数だけ”日常”がある──希望を医師に伝える重要性

寛解とみなされる数値は世界共通で決まっており、基本的にはその数値を目標にして治療を進めていく。ただ、日常の生活に何を望むのかや、薬の効き具合など人によって異なる点も多いため、自分の状態や望みを医師に伝えることが大切だ。

金子:たとえば、薬の副作用のリスクが高い患者さんであれば、本人の意向を聞きながら、寛解の数値に満たない目標を設定することもあります。反対に、寛解を超えて、より高みを求めた治療を行う場合もあります。

板井:より高みを求めた治療、ですか?

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モデル、ラジオナビゲーターの板井麻衣子

金子:職業や趣味によって、どの程度の状態が理想的かは違ってきますよね。私の患者さんの例をあげると、「もう一度ピアノをちゃんと弾けるようになりたい」という希望をお持ちの方がいらっしゃいました。

板井:なるほど。日常の作業よりも、細やかな指の動きが求められますね。

金子:その方に合わせた目標で治療を行ったところ、また人前で弾けるようになって。私にも演奏動画を見せてくださり、すごくうれしかったですね。

板井:なんだか先生は、患者さんにとって長く人生を共にするパーソナルトレーナーのようですね。

金子:たしかに、仕事のニュアンスとしてはそれに近いかもしれません。それこそ、十数年診させていただいている患者さんもいますからね。「お互い年取ったね~」なんて世間話をよくしたりしていますよ(笑)。

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板井:素敵な関係ですね。治療の目標とする日常は患者さんによって違うからこそ、目標の共有が大事なのですね。

医師と患者さんの目線を合わせ、目標を共有する「T2T」

医師と目標を共有するために、関節リウマチでは、「T2T(Treat To Target)」という考え方も重要になる。「目標達成に向けた治療」という意味で、患者さん自身が治療成果を認識できるメリットもあるという。

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関節リウマチの治療は日進月歩で発展を続けている。最近では、抗リウマチ薬である生物学的製剤やJAK阻害薬により、腫れや痛みなどの症状に加えて、関節破壊の進行を抑えることができるようになった。さらに、点滴や自己注射、飲み薬など、自身の状態や生活スタイルに合った治療法を選択することも可能だ

板井:T2Tは、「治療目標を設定し、その目標に向かって治療を最適化する」という世界共通のガイドラインだそうですね。T2Tを踏まえて治療を行うことで、どんなメリットがあるのですか?

金子:かつて関節リウマチの専門医は、患者さんの「痛い」という訴えや、血液検査の結果だけを頼りに診察を行っていたんです。しかし2010年にT2Tが提唱され始めてからは、患者さんの症状に加えて腫れている関節の数や痛んでいる関節の数、血液検査の結果から算出された全世界共通の客観的な「数値」で、関節リウマチの状態、つまり疾患活動性を表せるようになりました。つまり、医師と患者さんで数値を共有しながら寛解を目指して治療していけるようになったんです。関節リウマチ治療における大きな進歩と言えます。

板井:数値でわかると安心できますね。T2Tは、具体的にどのように取り組んでいくのでしょうか。

金子:まずは患者さんと医師との間で話し合って、治療目標を共有します。病気の勢いを表す「疾患活動性」の数値を、治療開始後は1~3カ月ごとに算出しながら効果を判断し、3カ月以内の改善、あるいは6カ月以内に治療目標が達成されない場合は治療を見直すようにしています。

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SDAIスコアとは、病気の勢いを表す疾患活動性を測るための指標「SDAI」のスコア。スコアの値が小さいほど、病気の勢いが弱く、症状が落ち着いている状態を示す。T2T実践ガイドP13より引用

板井:どう治療が進むかもわかりやすくなるということですね。「T2T」が提唱される以前は、明確な数値目標がない分、患者さんとのやりとりも大変だったのでは?

金子:昔は数値目標を共有するという概念さえなかったので、それが当たり前でしたが、今振り返ってみると、患者さんと医師はすれ違ってしまっていた部分もあるのかもしれません。T2Tが提唱される以前は、患者さんは自分の痛みを訴えるしか手立てがなく、医師は血液検査の結果を注視していました。それぞれ見ているものが違っていましたし、その2つの程度は必ずしも一致するわけではありませんから。

T2Tを実践するためには?

T2Tに基づいて治療を進めていく上では、あらゆる「ツール」が味方になる。

金子:製薬会社が提供している患者さん向けの冊子や情報サイトを患者さんに紹介することがあります。たとえば、アッヴィが展開するウェブサイト「Talk Over RA(トーク オーバー アールエー)」もその一つです。同サイトは、関節リウマチのエキスパートの医師や、患者さんで構成されるコミッティ監修のもと、関節リウマチにおける目標達成に向けた治療をサポートするための知識やツールを提供しています。T2Tをクイズ形式で学ぶことのできるT2Tクイズなどのコンテンツがあるほか、この度新たなコンテンツとして、T2Tを実践する上で患者さんが知っておくべきことや、医師とのコミュニケーションのポイントをわかりやすくまとめた「T2T実践ガイド」が公開されました。

板井:私も「T2T実践ガイド」を読ませていただいたのですが、イラストや平易な説明を用いていて、わかりやすいなと感じました。

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T2T実践ガイド

金子:こういったツールの存在って、医師にとって非常に大きいんですよね。私の口頭説明だけでは、T2Tがどんなものかイメージできなかった患者さんでも、わかりやすい説明文とイラストが入っていればスッと理解できるケースも多いですし。それに、医師から話を聞いてわかったような気がしても、診察室を一歩出た途端にわからなくなることって、よくあると思うんです。

板井:そうなんです! 医師からの説明って、なかなか頭の中に知識としてとどまらないというか……。難しい言葉も多かったりしますし、診察時に緊張していることもありますし。

金子:そうですよね。診察後にガイドを自宅で読んでいただいて、わからないことがあればメモして、次の来院時に医師に質問して……ということを繰り返していくうちに、患者さんの理解はどんどん深まっていくと思います。

最良の治療のために、医師と対話を重ねて相互理解を

「T2Tの広まりにはまだ余地があるのでしょうか」

板井が尋ねると、金子医師は「“T2T”という言葉を知らないリウマチ医はいないと思います」としつつ、「ただ、本当の意味でT2Tをしっかりと実践できている医師はまだまだ少ないのかもしれません」と問題提起した。

金子:2014年にリウマチ医を対象にインターネットサーベイ(※3)を行ったことがあるのですが、T2Tをしっかりと実践できている医師は、3割程度しかいませんでした。残りの7割の医師はなぜできていないのか。その理由は、日本の診療は診察時間がとても少なくならざるをえず、T2Tを行う時間的余裕がないというのが一つ。もう一つは、患者さんは詳細な情報を望んでいないとして、十分なコミュニケーションができていないと思われる理由が上位に並んでいました。

板井:そういった課題は今後、どうやって解決していくべきなのでしょうか。

金子:難しい面もありますが、私個人としては、患者さんにT2Tの概要や意義を根気よく何度もお伝えし、場合によっては「次はご家族を連れてきてください」とお願いして、ご家族同伴のもと、治療方法についてご理解いただくこともあります。あとは、先ほどお話した「Talk Over RA」や「T2T実践ガイド」といったツールの拡充およびアップデートによって、医師と患者さんの情報共有・相互理解が促進されることを期待しています。

板井:ここまで先生のお話を聞き、関節リウマチは長い付き合いになる病気であり、関節リウマチになったからといって、何かをあきらめたりする必要はないんだなと感じました。病気になったことで希望を捨てるべきではないというか。遠慮を払拭して「自分がどうしていきたいのか」「自分がどうありたいのか」ということを、患者さん自ら積極的に医師へお伝えするべきなんですね。

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金子:もちろん、治療は万能ではなく、すべての希望をかなえられるわけではありません。でも、一つの希望に向かい、医師と患者さんが一丸となって治療に取り組んでいくことが大事なんです。関節リウマチだと診断結果を告げたときに、「仕事を辞めなきゃいけないの?」と衝撃を受ける方も少なくありません。それくらい、関節リウマチ=難病というイメージが広まっているんです。ただ、決してそんなことはない。今はいい治療方法があるから、仕事を辞めるなんて、最後の最後で考えればいい。医師と患者さん、二人三脚で最善の治療を目指していくべきだと思います。

板井:最後に、医師として患者さんに伝えたいメッセージをお願いします。

金子:関節リウマチは以前と比べて格段に治療が進歩しています。適切に診断をして適切に治療をしていけば、関節リウマチになる前と同じ生活ができるようになりました。しかし、適切な治療にはまだまだ難しい部分があるのも事実です。そのためには医師は、患者さんが何を希望されていて、どんな症状が現れていて、どんな副作用が出ていてということを把握することが非常に重要です。血液検査で一部はわかります。でも、患者さんご自身の口からお聞きしないとわからない部分がたくさんあります。なので、医師と患者さんが対話を重ねながら、相互理解を深め、その結果、治療がうまくいき、患者さんの希望が実現することを心から願っています。

出典:
※1:第1回 厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会「内科からみたリウマチの現状」
※2:Smolen JS, et al: Ann Rheum Dis, 69, 4:631-637(2010)
※3:Kaneko Y, et al: Mod Rheumatol, 25, 1:43-49(2015)

取材は2022年12月20日 明治記念館にて実施

提供:アッヴィ合同会社
(取材・文=小島浩平、撮影=竹内洋平)

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