大人気映画『THE FIRST SLAM DUNK』の見どころや、映画からの学びについて、バスケットボール・アナリストの佐々木クリスさんが語った。
佐々木さんが出演したのはJ-WAVEで放送中の番組『JUST A LITTLE LOVIN'』(ナビゲーター:長井優希乃)のワンコーナー「PANG’ONO PANG’ONO」。ここでは2月8日(水)のオンエアをテキストで紹介する。
NBAやBリーグなどの解説を行い、バスケに深く関わる佐々木さんに、この映画はどのように映っているのだろうか。
佐々木:現在、大人気公開中の映画『THE FIRST SLAM DUNK』。こちらはマンガ『SLAM DUNK』の一部を映画化したもので、湘北高校という高校のバスケットボール部が、高校バスケットボール界最強ともいわれる山王工業というチームと戦うところが肝になっていて、マンガにないストーリーも追加されているんですよね。なので、初めて観る人も予備情報なしで楽しめる作品になっていたかなと思いますし、原作の大ファンの方々も楽しめる内容になっていました。本当に涙なしにみられない作品だったんですけど、やはりバスケットボールの描き方、スピード感やリアルなゲームの疾走感、体がぶつかり合う激しさやパス回しの華麗さなどが、寸分の狂いもなく描かれていたというところに、僕もバスケットボール解説者として度肝を抜かれました。
長井:私も月曜に観に行ったのですが、圧倒されましたね。まさに自分が試合をしているかのような「間」で、私も中高バスケ部だったので久々に「バスケがしたい!」となりました。
佐々木さんが、作中で特に試合のリアルさを感じた部分は「時間」だという。
佐々木:バスケットボールというのは、時間が非常に大事なスポーツです。いまは24秒に1回攻めなければいけない、作中では30秒に1回。これは、ショットクロックと呼ばれる時計で、(作中では)30秒に1回ボールを放って、ゴールに当てなければいけないというルールなんですね。そのほかにゲームクロックというのがあって、前・後半20分、時計が2つの時間を示しながら進行しているスポーツです。ここにもリアルさが詰まっていて、僕なんかは登場人物が会話しているあいだに、どのくらい時間が進んでいるのかがすごく気になっちゃうんですよね。15秒も20秒もしゃべりっぱなしだったとなると「ちょっと待てよ」となるんですが、(原作者の)井上雄彦さんは、ちゃんと登場人物が会話をしいるその後ろに、ゲームクロックやショットクロックをあえて映して見せることで、ちゃんと時計が進みながらこの会話がされていますよという、これはちょっとびっくりするほどの手法でしたね。素晴らしい描き方でした。
バスケットボールは2000年のシドニーオリンピックをきっかけに国際ルールが変更され、日本でも2001年に国際ルールに沿った形で変更。ショットクロックも以前は30秒以内にシュートを打たなければいけなかったが、現在では24秒以内という時間制限に変更されている。しかし映画では、スラムダンクが連載されていた1990~96年ごろのルールに沿って描かれているため、現在とは違った見方で楽しむことができる。
佐々木:『THE FIRST SLAM DUNK』という作品の主人公、宮城リョータはさまざまな困難にぶち当たります。それはバスケットボールのコート内のみならず、人生においても問題にぶつかり、恐れを感じるとか怖いとか、不安に駆られているという描写が非常にたくさんあるんですね。そして、それを乗り越える術として、たとえば手のひらを見て気持ちを落ち着かせる、これは「アンカリング」という手法なんですけど、アンカリングというのは必ずしも手のひらを見なければいけないというわけではありません。宮城リョータは手のひらを見る前は、お兄ちゃんの形見である赤いリストバンドに触れることが、自分の気持ちを落ち着かせることでした。これがイヤリングを触るでもいいですし、ネクタイを締め直すでもいいんですけど、要するに「自分がありのままの自分に戻れる瞬間」を作るというのが、ある意味アンカリングの手法の大前提になってきます。今、受験シーズン真っ只中で、いろいろ頑張らなきゃいけない受験生の皆さんもいて、お守りをいただく人もいるかもしれませんし、大好きなステッカーを携帯電話の裏に貼っている方もいらっしゃると思いますし、一瞬だけ意識をそこにチャネリングすることで、ほかのことを忘れて不安も払拭できる、そういったものがすごく重要だと思います。
最後に、佐々木さんがこの映画を通して改めて感じたことについて伺った。
佐々木:今回の作品で僕がいちばん井上雄彦さんに感謝したいのが、僕のようにバスケットボールをしてきたりとか、バスケットボールを仕事にしているだけじゃなくてこよなく愛している人間が、「スポーツって素晴らしいんだよ」といくら言っても、なかなか言語化できなかったり、それを一般の方に伝えたりするのは難しいです。そういったなかで、スポーツはただ競争のなかで自分が成長したり、素晴らしいチームメイトに出会えて人間として成長したりできるだけではなくて、苦しんでいる1つの家族、もしくは家族の周りの1つのコミュニティといったものも希望となれる、そういう力があることをここで示してくれたんじゃないかなと思います。
長井:バスケットボールだけじゃなく、ほかのスポーツでも、困難なことを乗り越えていく力、支え合うことの大切さなど、スポーツを通して学べることがたくさんあるなと改めて思いました。
『THE FIRST SLAM DUNK』は全国で公開中。ポイントを抑えながら、映画館に足を運んでみては。
『JUST A LITTLE LOVIN'』のワンコーナー「PANG’ONO PANG’ONO」では、番組&長井が気になる内容を日替わりテーマでお伝えする。放送は毎週月~木曜の5時40分頃から。
佐々木さんが出演したのはJ-WAVEで放送中の番組『JUST A LITTLE LOVIN'』(ナビゲーター:長井優希乃)のワンコーナー「PANG’ONO PANG’ONO」。ここでは2月8日(水)のオンエアをテキストで紹介する。
細部までわたる工夫で、バスケットボールをリアルに描く
『THE FIRST SLAM DUNK』は2022年12月の公開からこれまで、動員数合計約687万人。興行収入も100億円を突破した人気の映画だ。佐々木:現在、大人気公開中の映画『THE FIRST SLAM DUNK』。こちらはマンガ『SLAM DUNK』の一部を映画化したもので、湘北高校という高校のバスケットボール部が、高校バスケットボール界最強ともいわれる山王工業というチームと戦うところが肝になっていて、マンガにないストーリーも追加されているんですよね。なので、初めて観る人も予備情報なしで楽しめる作品になっていたかなと思いますし、原作の大ファンの方々も楽しめる内容になっていました。本当に涙なしにみられない作品だったんですけど、やはりバスケットボールの描き方、スピード感やリアルなゲームの疾走感、体がぶつかり合う激しさやパス回しの華麗さなどが、寸分の狂いもなく描かれていたというところに、僕もバスケットボール解説者として度肝を抜かれました。
長井:私も月曜に観に行ったのですが、圧倒されましたね。まさに自分が試合をしているかのような「間」で、私も中高バスケ部だったので久々に「バスケがしたい!」となりました。
佐々木さんが、作中で特に試合のリアルさを感じた部分は「時間」だという。
佐々木:バスケットボールというのは、時間が非常に大事なスポーツです。いまは24秒に1回攻めなければいけない、作中では30秒に1回。これは、ショットクロックと呼ばれる時計で、(作中では)30秒に1回ボールを放って、ゴールに当てなければいけないというルールなんですね。そのほかにゲームクロックというのがあって、前・後半20分、時計が2つの時間を示しながら進行しているスポーツです。ここにもリアルさが詰まっていて、僕なんかは登場人物が会話しているあいだに、どのくらい時間が進んでいるのかがすごく気になっちゃうんですよね。15秒も20秒もしゃべりっぱなしだったとなると「ちょっと待てよ」となるんですが、(原作者の)井上雄彦さんは、ちゃんと登場人物が会話をしいるその後ろに、ゲームクロックやショットクロックをあえて映して見せることで、ちゃんと時計が進みながらこの会話がされていますよという、これはちょっとびっくりするほどの手法でしたね。素晴らしい描き方でした。
バスケットボールは2000年のシドニーオリンピックをきっかけに国際ルールが変更され、日本でも2001年に国際ルールに沿った形で変更。ショットクロックも以前は30秒以内にシュートを打たなければいけなかったが、現在では24秒以内という時間制限に変更されている。しかし映画では、スラムダンクが連載されていた1990~96年ごろのルールに沿って描かれているため、現在とは違った見方で楽しむことができる。
精神的な「学び」も多い作品
バスケットボールがリアルに描かれているという魅力だけでなく、この映画にはさまざまな学びもある。メンタル面での「学び」について、佐々木さんは次のように語る。佐々木:『THE FIRST SLAM DUNK』という作品の主人公、宮城リョータはさまざまな困難にぶち当たります。それはバスケットボールのコート内のみならず、人生においても問題にぶつかり、恐れを感じるとか怖いとか、不安に駆られているという描写が非常にたくさんあるんですね。そして、それを乗り越える術として、たとえば手のひらを見て気持ちを落ち着かせる、これは「アンカリング」という手法なんですけど、アンカリングというのは必ずしも手のひらを見なければいけないというわけではありません。宮城リョータは手のひらを見る前は、お兄ちゃんの形見である赤いリストバンドに触れることが、自分の気持ちを落ち着かせることでした。これがイヤリングを触るでもいいですし、ネクタイを締め直すでもいいんですけど、要するに「自分がありのままの自分に戻れる瞬間」を作るというのが、ある意味アンカリングの手法の大前提になってきます。今、受験シーズン真っ只中で、いろいろ頑張らなきゃいけない受験生の皆さんもいて、お守りをいただく人もいるかもしれませんし、大好きなステッカーを携帯電話の裏に貼っている方もいらっしゃると思いますし、一瞬だけ意識をそこにチャネリングすることで、ほかのことを忘れて不安も払拭できる、そういったものがすごく重要だと思います。
最後に、佐々木さんがこの映画を通して改めて感じたことについて伺った。
佐々木:今回の作品で僕がいちばん井上雄彦さんに感謝したいのが、僕のようにバスケットボールをしてきたりとか、バスケットボールを仕事にしているだけじゃなくてこよなく愛している人間が、「スポーツって素晴らしいんだよ」といくら言っても、なかなか言語化できなかったり、それを一般の方に伝えたりするのは難しいです。そういったなかで、スポーツはただ競争のなかで自分が成長したり、素晴らしいチームメイトに出会えて人間として成長したりできるだけではなくて、苦しんでいる1つの家族、もしくは家族の周りの1つのコミュニティといったものも希望となれる、そういう力があることをここで示してくれたんじゃないかなと思います。
長井:バスケットボールだけじゃなく、ほかのスポーツでも、困難なことを乗り越えていく力、支え合うことの大切さなど、スポーツを通して学べることがたくさんあるなと改めて思いました。
『THE FIRST SLAM DUNK』は全国で公開中。ポイントを抑えながら、映画館に足を運んでみては。
『JUST A LITTLE LOVIN'』のワンコーナー「PANG’ONO PANG’ONO」では、番組&長井が気になる内容を日替わりテーマでお伝えする。放送は毎週月~木曜の5時40分頃から。
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2023年2月15日28時59分まで
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番組情報
- JUST A LITTLE LOVIN'
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月・火・水・木曜5:00-6:00