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メタバースで街中が「チームラボ」の世界に!? 仕掛け人が語る、街づくりの未来予想図

メタバースで街中が「チームラボ」の世界に!? 仕掛け人が語る、街づくりの未来予想図

メタバースで都市体験をどう拡張していくのか――

そんなテーマについて語り合う、森ビル株式会社・新領域企画部の杉山央氏と、株式会社バスキュール代表取締役の朴正義氏によるトークセッションが2022年10月23日、日本最大級のデジタル・クリエイティブフェス「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2022」(イノフェス)にて、J-WAVEナビゲーターでモデルの板井麻衣子による進行のもと行われた。

森ビルが目指す、“リアルメタバース”とは?

「今、時代の変わり目において、街づくりがますます面白くなってきた」

こう切り出したのは、森ビル新領域企画部の杉山氏だ。彼によれば、メタバースは、「1.架空のファンタジー世界」「2.実際の街をモチーフにした世界」「3.リアルとデジタルが重なった世界」の3つに分類されるという。森ビルが目指すのは、“リアルメタバース”と呼ばれる「3.リアルとデジタルが重なった世界」とのことで、杉山氏は「現実空間の中にデジタルな要素を重ね合わせ、その場所にいない人たちも同じ空間にいるかのようにコミュニケーションが取れたり、また、その場にないバーチャルなものを疑似体験できたり……。そんな仕組みを街の中に実装したいと考えているところです」と構想を語る。

こうした、リアルとデジタルが重なった世界を構築するフィールドとして適切なのは、新しくできる街なのか、それとも既存の街なのか。

板井が問うと、杉山氏は「既存の街のほうが導入は簡単です。リアルメタバースには位置情報の取得が欠かせませんが、既存の街のほうが、リアルなデータをコンピューターが把握しやすい。イメージで言うと、リアルな街にデジタルのレイヤーを重ねるといったところでしょうか」と答えた。

宇宙空間を浮いているような感覚のライブ

もう一人の論客である、バスキュール代表取締役の朴氏は、国際宇宙ステーションのリアルタイム位置情報と連携し、宇宙飛行士の視点を擬似体験できるメタバース「THE ISS METAVERSE」を手掛けている。

「『THE ISS METAVERSE』の中にエンターテイメントを導入できないか」。そう考えた朴氏は、人物や物体を3次元データ化し、360度全方位の3D映像を生成する「ボリュメトリックビデオ技術」を駆使して、メタバースの国際宇宙ステーションをステージとした、実在のアーティストによるライブパフォーマンスを先日行ったという。

このライブパフォーマンスに、“観客”として参加したという杉山氏は「めちゃくちゃ面白かった」と絶賛し、「ゴーグルをかけて体験すると、本当に宇宙空間を浮いているような感覚になるんですよ」と興奮気味に話す。さらに、パフォーマンスを披露したアーティストを指し、「本当に彼女たちがその場にいるみたいに感じました。後ろに回り込もうと思えばそれもできるし、触れられるくらいの距離感で歌ってくれる。その感覚は初めてでした。可能性を感じました」と熱弁した。

虎ノ門ヒルズエリアが表現の実験場に

「THE ISS METAVERSE」は、森ビル・バスキュール含む11社で構成される企業コンソーシアムが立ち上げた「クリエイティブエコシステム構築に向けた共同プロジェクト」の一環として展開されている。この共同プロジェクトは、杉山氏曰く「東京・虎ノ門ヒルズを中心としたエリアを様々な表現の実験場にする」というもので、「クリエイターやテクノロジーを有した企業、プラットフォーマー、技術者がチームを組むことで、ブレイクスルーしたものを実際の街を使って表現するプロジェクト」だという。

こうした壮大な実験場ができることで、リアルとデジタルが重なり合う“リアルメタバース”の可能性はますます広がっていきそうだ。しかし一方で、技術的限界も当然ながらあるだろう。
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「仮想空間にいながら、常時接続できるデバイスは今のところない」

朴氏はそう語りながらも、「一つあるのは『音声』。AirPodsなどは耳に装着しながら仕事ができたりするわけじゃないですか」と現在の技術で可能なことを述べ、以下のように続ける。

音声により、今リアルで見ているものの拡張情報は手に入れられます。たとえば、街中を歩いていて『このビルは建築家の●●が作ったもの』や『この公園は〇〇が初デートした場所』といった情報は音声であれば、入手可能です」

こういったことが視覚を含めて体感できるデバイスはいつできるのか。またそのデバイスを、一般ユーザーがスマホのように持ち歩く時代はいつやってくるのか――。そこが一つのハードルだと、朴氏は難しさを語る。

しかし、杉山氏は「もう間もなくだと思いますよ」と説く。

2018年に開業した、teamLabのアート作品を展示する「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」の企画運営室長だった杉山氏。

「僕はこれまで、リアルな空間に無理やりプロジェクターを投影し、表層的にリアルとデジタルが重なる世界を作り、その世界をクリエイター、アーティストが表現する場所として提供してきました。その集大成がお台場の『teamLab Borderless』でした」といい、「今後、ARグラスなどのデバイスが普及すれば、常に『teamLab Borderless』の世界観が街中に広がっていくのではないかと。そんな時代がすぐそこに来ているんじゃないかなと思い、ワクワクしています」と近未来を予想した。

さらに森ビルでは、2023年に虎ノ門で文化発信施設の開業を予定している。杉山氏は「色んな人がその場所を活用し、どんどんアップデートし続けるような施設にしていきたい」と願望を口にする。

メタバースの発展が生む“新たな居場所”

では、メタバースが街づくりや日常生活に活用・実装されることで、人々にどんな好影響を与えるのか。朴氏は次のように私見を述べる。

街づくりでは多くの人が関わり、『ここが自分の居場所だ』と思えることが大事であり、それはテクノロジーの力で実現できるはずです。そのためには、それぞれの人の“街への貢献”リターンする仕組みが必要で、Web3はその仕組みを可能にすると思います。皆さんにとって大事な、故郷や母校・会社がある場所。そこに加えて、『自分はこの街づくりに関わっているんだ』と思える、自分の居場所が増えるって人生、幸せな気がするんですよ。なので、テクノロジーの力で居場所を増やせたら素敵ではないかという理想を持っています」

メタバース・テクノロジーの力で増える新しい居場所。「それは世界で同時に進行していることなのでしょうか?」と板井が尋ねたところ、杉山氏は「そうだと思います」と答え、こう続けた。

「日本だけではなく世界的にこの流れは加速していくと思います。SNSの登場によって人々の新たな結びつきができたように、メタバースとリアルな世界が融合することにより、人々のコミュニケーションがますます活発になり、普段自分が所属しているグループ以外のネットワークがどんどん生まれていく。そんな多重的な生活が送れるようになるのではないかと思います」

(構成=小島浩平)

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