ダンサー/振付家の森山開次が、ダンスを始めるきっかけや音楽遍歴、2023年1月からの舞台『KAAT DANCE SERIES「星の王子さま‐サン=テグジュペリからの手紙‐」』について語った。
森山が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談議を繰り広げる番組だ。オンエアは12月9日(金)。
この番組では、ゲストがビールに合う“おみや”を紹介する。森山はポテトチップスを持参し、ビールとともに楽しんだ。
クリス:けっこう遅咲きですよね。
森山:遅いほうだと思います。
クリス:どういうダンスレッスンをされてきたんですか。
森山:僕は最初、ミュージカルの現場からスタートしました。ミュージカルって本当に大変で。新聞配達をしながら大学に行っていたんですけど、すさんでる時期があって。たまたまミュージカル劇団で体操の臨時コーチをしていた兄が見かねて「たまにはミュージカルでも観に行ってみたら」ってことでチケットをくれたのがきっかけで舞台を観に行ったんですね。
クリス:そのミュージカルは何だったんですか。
森山:音楽座ミュージカルの『マドモアゼル・モーツァルト』です。モーツァルトが女性だったっていうストーリーなんですけど、それうんぬんと言うよりは踊っている人たちが精霊の役割で白い衣装を着て縦横無尽に動いているんですね。まわりにはこんなにイマジネーションがあるのに、自分はそれを吐き出せる場がないって気持ちになって、いてもたってもいられなくなりました。
もともと森山は小さな頃から「こういう世界があったらいいな」などの空想をしていたという。
森山:その吐き出し口が絵だったり歌だったり、いろいろトライはしてみたもののうまくできなくて挫折をしているときに出合ったのが舞台でした。
クリス:模索しているときに踊りと出合えたわけですね。
森山:兄は中学生くらいのときにバンドを始めて、エディ・ヴァン・ヘイレンの早弾きをすごく練習していて、相当うまかったですね。僕は少し遅れてギターを弾き始めました。中学時代に文化祭でちょっと歌った経験もあります。中学に軽音楽クラブがあって、僕は遅れて門をたたいたら女性しかいなくて僕は歓迎されて。いいことを言われながら数週間後の文化祭に出るぞってなっちゃって。それで3曲やることになりました。文化祭ではBOØWYの『B・BLUE』と『MARIONETTE』と、サザンオールスターズの『いとしのエリー』をギターを弾きながら歌って。
クリス:過去にそういう経験もないのに。
森山:そうなんです。必死になってやったけどそんな簡単にいくわけもないからボロボロでしたね。まず人前に立つこと自体がダメなタイプだったんです。中学生くらいは赤面症で、すぐあがってしまうし、今舞台上に立っているのが不思議なくらいで。当時は学校の授業で手を挙げて発言するのも声が震えるような少年だったので、だからこそそういうのに憧れてたのもあったかもしれないですね。
森山は影響を受けたアーティストとしてデヴィッド・ボウイをあげた。
森山:デヴィッド・ボウイのジャケットがすごく印象的で、その中でもすぐに思い出すのが『Changes』って曲ですね。
森山:デヴィッド・ボウイは声とビジュアルもそうですし、存在自体がカッコいいなって。メイクアップとかもすごく憧れたし、今ダンサーになって、彼のパフォーマンスの動きも興味を持って見ています。
クリス:彼もステージ上ではパフォーマンスアートじゃないけど、パントマイムを勉強していたってこともあって、ステージでも彼の舞は独特でしたからね。
森山:そうですよね。だからメイクをまねしてみたり、例えで出してみたりしています。
クリス:21歳からよく開花しましたよね。
森山:よくやってるなって自分でも思います。
クリス:それは努力したってことなんですかね。
森山:自分で言うのもあれですけど、自分なりに必死でいろいろやったのは事実としてありますね。体も固まってからのスタートだったので、柔軟体操を始めるところからダンスを習得するために、いろんなことをしていましたね。通勤電車でもつり革を持ちながら肩のストレッチをしたり、寝ながら足を縛ってストレッチをしたり、そういうのをよくやってましたね。
「自分の努力だけではなく、出会いがすごくよかった」と森山は続ける。
森山:僕はソロダンスみたいなことをやってましたけど、ソロだから自分だけと思いきや全くそうではなくて、出会いがあって初めてダンスが生まれてくるっていうことが大きくて。そのなかでコラボレーションするさまざまな方たちや先生、仲間、音楽家、衣装さん含め、みんなとの出会いのなかでダンスができるので、その出会いに僕は恵まれていたんだなと思います。
クリス:ソロと言っても1人では絶対にできることではないってことですよね。
森山:音楽に興味があった少年時代だったんですけど、ダンスを始めて自分のダンス表現をやりたいと思ったときに、音楽と一緒に踊らなきゃいけないのがなんか癪に障る時期があって(笑)。自分の世界を表現したいのに何で他の音楽家の世界と一緒に踊らなきゃいけないんだろうってとんがったところが若い頃はあって。音楽家に対しての嫉妬心の裏返しなんですけど、音楽がないと踊れないのは嫌だなって。
クリス:なるほど。
森山:無音でも自分の表現をするんだみたいな、いきがってた時代があって。でもやっていくうちにいろんな音を聴くようになって、無音で踊ってもBGMに心を動かされたりとか、風の音に踊らされたりとか、いろんな音と出合っていくのが楽しくて。音楽と離れてしまったところからダンスに出合って、今すごく音楽と出合っている感じですね。
森山:この舞台は本として世界的なベストセラーであるので、言葉の美しさに多くの方が魅了されているものなんですけど、この舞台の試みとしてはダンスと音楽でつづる『星の王子さま』なので、言葉には頼らずにこの物語を追っていく。なかなか『星の王子さま』をダンス化したものはないと思うんですけど、それはやはり言葉が重要だからなんだと思います。でもそこを身体表現と言葉と音楽でつづっていく舞台で、とても大事にしている作品です。
クリス:その中でもこだわったポイントはどこですか。
森山:わかりやすいところで言うと、ゾウを飲み込んだウワバミ(大蛇)の絵が大人には帽子に見えてしまうっていうエピソードが最初のほうにありますよね。それを読んだときに、踊りもけっこうそういうことをやってるなって。舞踏とかもそうかもしれないですよね。こっちとしてはゾウを飲み込んだ人の踊りなんですって思って踊っているけれど、違った人が見たらただクネクネ踊ってる人にしか見えなかったり、必ずしもやっていることが人に伝わっているとは限らないこととか。その意味ではダンスとも通じているテーマがそこにあるんじゃないかなって思いました。
森山は独特の表現でこの舞台の見どころを口にする。
森山:『星の王子さま』にある、大切なものは目にはみえないって名言としてよく知っている言葉がありますが、僕はひねくれてるところがあって、大切なもので目に見えるものもあるじゃないですか。そう考えると、どっちが正しいとかはサン=テグジュペリのやりたいことではないと思うんですけど、身体表現は目に見えるものでもあるので、自分たちの身体表現を見ていただくなかで何かを見てもらっているわけだから、そういう意味で目に見えるものを大切なダンスで届けていきたいし、ダンスにするやりがいのあるテーマだと思います。
森山は翌週16日(金)の同番組でも、クリス・ペプラーとトークを繰り広げた。23日(金)までradikoで聴くことができる。
【radikoで聴く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20221216230000
森山開次の最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterまで。
番組の公式サイトに過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。
・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html
『SAPPORO BEER OTOAJITO』では、毎週さまざまなゲストを迎えてお酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる。放送は毎週金曜23時から。
森山が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『SAPPORO BEER OTOAJITO』(ナビゲーター:クリス・ペプラー)。ビールを飲みながら、クリスとゲストが音楽談議を繰り広げる番組だ。オンエアは12月9日(金)。
この番組では、ゲストがビールに合う“おみや”を紹介する。森山はポテトチップスを持参し、ビールとともに楽しんだ。
ミュージカルを観て、いてもたってもいられなくなった
森山は神奈川県相模原市出まれ。21歳でダンスを始めたという。クリス:けっこう遅咲きですよね。
森山:遅いほうだと思います。
クリス:どういうダンスレッスンをされてきたんですか。
森山:僕は最初、ミュージカルの現場からスタートしました。ミュージカルって本当に大変で。新聞配達をしながら大学に行っていたんですけど、すさんでる時期があって。たまたまミュージカル劇団で体操の臨時コーチをしていた兄が見かねて「たまにはミュージカルでも観に行ってみたら」ってことでチケットをくれたのがきっかけで舞台を観に行ったんですね。
クリス:そのミュージカルは何だったんですか。
森山:音楽座ミュージカルの『マドモアゼル・モーツァルト』です。モーツァルトが女性だったっていうストーリーなんですけど、それうんぬんと言うよりは踊っている人たちが精霊の役割で白い衣装を着て縦横無尽に動いているんですね。まわりにはこんなにイマジネーションがあるのに、自分はそれを吐き出せる場がないって気持ちになって、いてもたってもいられなくなりました。
もともと森山は小さな頃から「こういう世界があったらいいな」などの空想をしていたという。
森山:その吐き出し口が絵だったり歌だったり、いろいろトライはしてみたもののうまくできなくて挫折をしているときに出合ったのが舞台でした。
クリス:模索しているときに踊りと出合えたわけですね。
影響を受けたアーティストはデヴィッド・ボウイ
森山は音楽にも兄の影響を大きく受けていると当時を振り返る。森山:兄は中学生くらいのときにバンドを始めて、エディ・ヴァン・ヘイレンの早弾きをすごく練習していて、相当うまかったですね。僕は少し遅れてギターを弾き始めました。中学時代に文化祭でちょっと歌った経験もあります。中学に軽音楽クラブがあって、僕は遅れて門をたたいたら女性しかいなくて僕は歓迎されて。いいことを言われながら数週間後の文化祭に出るぞってなっちゃって。それで3曲やることになりました。文化祭ではBOØWYの『B・BLUE』と『MARIONETTE』と、サザンオールスターズの『いとしのエリー』をギターを弾きながら歌って。
クリス:過去にそういう経験もないのに。
森山:そうなんです。必死になってやったけどそんな簡単にいくわけもないからボロボロでしたね。まず人前に立つこと自体がダメなタイプだったんです。中学生くらいは赤面症で、すぐあがってしまうし、今舞台上に立っているのが不思議なくらいで。当時は学校の授業で手を挙げて発言するのも声が震えるような少年だったので、だからこそそういうのに憧れてたのもあったかもしれないですね。
森山は影響を受けたアーティストとしてデヴィッド・ボウイをあげた。
森山:デヴィッド・ボウイのジャケットがすごく印象的で、その中でもすぐに思い出すのが『Changes』って曲ですね。
デヴィッド・ボウイ『Changes』
クリス:彼もステージ上ではパフォーマンスアートじゃないけど、パントマイムを勉強していたってこともあって、ステージでも彼の舞は独特でしたからね。
森山:そうですよね。だからメイクをまねしてみたり、例えで出してみたりしています。
自分の努力だけではなく、出会いがすごくよかった
21歳から踊りを始めた森山。2001年にはエディンバラフェスティバルで「今年最も才能あるダンサーの一人」と評され、2005年のソロダンス『KATANA』ではニューヨークタイムズ紙が「驚異のダンサー」と称賛した。2021年のヴェネツィア・ビエンナーレに出演するなど数々の受賞歴や世界各国でのステージを経験している。クリス:21歳からよく開花しましたよね。
森山:よくやってるなって自分でも思います。
クリス:それは努力したってことなんですかね。
森山:自分で言うのもあれですけど、自分なりに必死でいろいろやったのは事実としてありますね。体も固まってからのスタートだったので、柔軟体操を始めるところからダンスを習得するために、いろんなことをしていましたね。通勤電車でもつり革を持ちながら肩のストレッチをしたり、寝ながら足を縛ってストレッチをしたり、そういうのをよくやってましたね。
「自分の努力だけではなく、出会いがすごくよかった」と森山は続ける。
森山:僕はソロダンスみたいなことをやってましたけど、ソロだから自分だけと思いきや全くそうではなくて、出会いがあって初めてダンスが生まれてくるっていうことが大きくて。そのなかでコラボレーションするさまざまな方たちや先生、仲間、音楽家、衣装さん含め、みんなとの出会いのなかでダンスができるので、その出会いに僕は恵まれていたんだなと思います。
クリス:ソロと言っても1人では絶対にできることではないってことですよね。
森山:音楽に興味があった少年時代だったんですけど、ダンスを始めて自分のダンス表現をやりたいと思ったときに、音楽と一緒に踊らなきゃいけないのがなんか癪に障る時期があって(笑)。自分の世界を表現したいのに何で他の音楽家の世界と一緒に踊らなきゃいけないんだろうってとんがったところが若い頃はあって。音楽家に対しての嫉妬心の裏返しなんですけど、音楽がないと踊れないのは嫌だなって。
クリス:なるほど。
森山:無音でも自分の表現をするんだみたいな、いきがってた時代があって。でもやっていくうちにいろんな音を聴くようになって、無音で踊ってもBGMに心を動かされたりとか、風の音に踊らされたりとか、いろんな音と出合っていくのが楽しくて。音楽と離れてしまったところからダンスに出合って、今すごく音楽と出合っている感じですね。
『星の王子さま』をダンス化
2023年1月21日(土)からKAAT 神奈川芸術劇場 ホールで森山が演出・振付・出演を担当する舞台『KAAT DANCE SERIES「星の王子さま‐サン=テグジュペリからの手紙‐」』が開催される。本作は2020年の再演となる。森山:この舞台は本として世界的なベストセラーであるので、言葉の美しさに多くの方が魅了されているものなんですけど、この舞台の試みとしてはダンスと音楽でつづる『星の王子さま』なので、言葉には頼らずにこの物語を追っていく。なかなか『星の王子さま』をダンス化したものはないと思うんですけど、それはやはり言葉が重要だからなんだと思います。でもそこを身体表現と言葉と音楽でつづっていく舞台で、とても大事にしている作品です。
クリス:その中でもこだわったポイントはどこですか。
森山:わかりやすいところで言うと、ゾウを飲み込んだウワバミ(大蛇)の絵が大人には帽子に見えてしまうっていうエピソードが最初のほうにありますよね。それを読んだときに、踊りもけっこうそういうことをやってるなって。舞踏とかもそうかもしれないですよね。こっちとしてはゾウを飲み込んだ人の踊りなんですって思って踊っているけれど、違った人が見たらただクネクネ踊ってる人にしか見えなかったり、必ずしもやっていることが人に伝わっているとは限らないこととか。その意味ではダンスとも通じているテーマがそこにあるんじゃないかなって思いました。
森山は独特の表現でこの舞台の見どころを口にする。
森山:『星の王子さま』にある、大切なものは目にはみえないって名言としてよく知っている言葉がありますが、僕はひねくれてるところがあって、大切なもので目に見えるものもあるじゃないですか。そう考えると、どっちが正しいとかはサン=テグジュペリのやりたいことではないと思うんですけど、身体表現は目に見えるものでもあるので、自分たちの身体表現を見ていただくなかで何かを見てもらっているわけだから、そういう意味で目に見えるものを大切なダンスで届けていきたいし、ダンスにするやりがいのあるテーマだと思います。
森山は翌週16日(金)の同番組でも、クリス・ペプラーとトークを繰り広げた。23日(金)までradikoで聴くことができる。
【radikoで聴く】https://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20221216230000
森山開次の最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterまで。
番組の公式サイトに過去ゲストのトーク内容をアーカイブ。オンエアで扱った音楽の情報も掲載している。
・過去ゲストのアーカイブページ
https://www.j-wave.co.jp/original/otoajito/archives.html
『SAPPORO BEER OTOAJITO』では、毎週さまざまなゲストを迎えてお酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる。放送は毎週金曜23時から。
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番組情報
- SAPPORO BEER OTOAJITO
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毎週金曜23:00-23:30
-
クリス・ペプラー