SHOWROOM代表取締役社長の前田裕二氏が、時代をリードするアイデアを生み出すコツや、ファンコミュニティを形成する上で大切にしていることなどについて語った。
前田氏が登場したのは、J-WAVEで22年2月23日に放送された特別番組『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL TDK presents THE FANG』(ナビゲーター:稲葉友/藤原麻里菜)。TDKのブランドキャンペーン「尖った大胆さ、くれよ。」と連動してお届けした番組で、尖った偉業を成し遂げ、今なお挑戦し続ける各界を代表するトップランナーたちがゲスト出演。また、事前に募集した「尖った夢」をもつリスナーたちが活動資金10万円を懸けて、自身の実現したいことをプレゼンした。
前田:一番手軽に寂しさを埋められる手段が動画だと思っているんですよ。ワンタップ、ツータップぐらいで気軽にアクセスできて、誰かと繋がっている感覚を得られる。そんなふうに、寂しい誰かに寄り添えたらいいと思い、昔から動画サービスをやっているんです。
藤原:私も一度、「SHOWROOM」で芸人時代に同期だったレインボーの池田(直人)くんの配信を観てみたんですけど、すごく寂しさを埋めてくれる気がしたんですね。で、投げ銭したんですよ。そしたら、私だと気づかずに、「まりなちゃん、ありがと~」って言ってくれて。同期なのに、ときめいちゃいました(笑)。
稲葉:同期に投げ銭してときめくって、だいぶ珍しい経験だね(笑)。まぁそれぐらい、繋がっている感覚があったってことだよね。
前田:SNSがいつも身近にあり、バーチャルに生きていているような若い世代の中には「リアルはちょっと苦手……」という人もいるはずなんです。そういった人たちでも、動画であれば自分の居場所を見付けられたりもするんですよね。
前田:まずは「組み合わせること」です。●●版の××といったように、ランダムにひたすら組み合わせてみるんですよ。たとえば、Uber Eatsってうまくいってるビジネスモデルじゃないですか。そこで、「●●版のUber Eats」をたくさん挙げていく。仮に「お笑い版のUber Eats」で考えてみるとしましょう。僕ら3人がこの後、飲みに行くとするじゃないですか。お店に来たはいいものの、話が盛り上がらないとき、お笑い版のUberアプリを開いたら、自宅で暇してる芸人さんがマッチングされる。そして、飲み会に30分だけ来てくれて、ちょっと笑わせて帰っていく……みたいなサービスができそうですよね。
稲葉:芸人さんにとって、ギャラが還元されるのはもちろん、芸を磨く機会にもなっていいですね。
前田:こんな感じで、何かと何かをいくつも組み合わせていくんです。それこそ、電話×パソコンの組み合わせが、今僕らの使っているスマホになっているわけですしね。
藤原:以前、前田氏の本を拝読させていただいたのですが、今のお話を聞いていて、「就職活動のときに1000個、自分に自問自答した」と書かれていたことを思い出しました。天才のように見えて、実は、数をこなす努力を積まれてきたからこそ、すごいアイデアが生まれるんですね。
前田:僕は「量質転化」という言葉を信じていて。質の前に量だと思っているんですよ。完璧主義的に1個目からクオリティの高いアイデアを出す必要はない。それより、たとえレベルが低くても、とにかくたくさんアイデアを出して、玉石混交の中で一つ光るものがあればいいという考えなんです。だから、「いいアイデアが出ない」という人は、そもそも出している絶対数が少ない気がします。そんなわけで、尖ったアイデアは、「組み合わせ」と「量質転化」という2つが大事だというのが僕の持論です。
前田:僕の中のイメージでは、演者が「ライブやります」「トークイベントやります」と言ったら、会社や仕事を休んででも来てくれるようなレベルの人をファンと呼んでいるんです。それぐらい自分のことを無償の愛で、利他的に応援してくれる人をファンとして付けるにはどうするべきかを考えるのですが、そのためには、こちらが先にめちゃくちゃ利他的にならなければいけないと思うんですよね。
前田氏によると、かつて自分の著書を書店で目立ちやすくするために、ファンが位置をずらしてくれたことがあったという。
前田:どんなに本を読んで感動しても、わざわざ本屋でずらして……ってやらないじゃないですか。だから、「自分のファンはなんて優しいんだろう」って想像すると、1つでもファンのために何かやりたいという気持ちが沸いてくるんです。そうすると、ファンの方もそう思ってくれるという、利他・利他のループに入ってくるんですよね。逆に、いつまでも利己・利己のままでいるコミュニティは、伸びていかない気がします。
藤原:めちゃめちゃぶっ刺さりました。やっぱり、YouTubeに投稿した動画の再生回数が伸びないときは「なんでこんなに低いんだ」って思っちゃう。でも、これだけ再生してくれているということに、まずは感謝しないといけないですよね。
前田:そうですよね。人生の大事な時間を使ってくれていると考えたら、すごいことですから。
前田:Z世代をターゲットとした場合、なるべく疲れさせないコンテンツを作り手側は提供しがちで。動画も漫画もいかに頭を使わせないか。ローカロリー化が重要視される傾向にあると見ています。
若い世代に向けた音楽の作り方も変化しており、「なるべくイントロは短くするし、まず5秒でこの曲を聞き続けようと思ってもらわなければいけない」と前田氏は説く。
稲葉:その現状っていいんですか? 悪いんですか?
前田:どうなんでしょう。僕はいいか悪いかの価値判断があまりなくて。なぜかというと、必ず揺り戻しがあるんですよ。軽いもの、咀嚼しなくてもいいものが流行った次には、歯ごたえのあるものが求められる。これは音楽に限った話ではありません。たとえば、漫画コンテンツであれば、キングからナイトの時代になっていますし。かつては「俺は●●王になる!」という作品が流行っていましたが、今の主人公は、自分から王様になるとは絶対言わない。その代わり、何かに巻き込まれる。家族が殺されて、悔しいから戦って……といったように、巻き込まれたあとに奮起して周りを助けるナイトになっていくんです。ただ、しばらくすれば、利己的に「俺が王様になる」「俺が一番だ」という主人公が魅力的に見える時代が来るはずです。それがぐるぐる循環しているように思います。こうした時代の変化に備えて、作り手側は準備をしなければいけません。
稲葉:そうやって世界は回っていってるんだ……。
挑戦者は、「サイクリストが後悔のないロードバイク選びをできる世の中にしたい」というビジョンを掲げる会社員の奥野寛史さん。個人で運営している自転車レビュー投稿サイト「チャリビュー」を盛り上げるべく、活動資金10万円を投稿してくれたユーザーへのプレゼント購入資金に使用したいとアピールしたものの、結果は、審査員3人とも「マネー不成立」と判断。肩を落とす挑戦者に対し、前田氏は経営者目線の的確なアドバイスと熱いエールを送った。
前田:不成立にした理由が2つあります。1つ目が、たった10万円を持ち帰ることよりも、「負けた悔しい」という気持ちになるほうが10万円以上の価値があると思うからです。2つ目が10万円で投稿者のモチベーションを引き上げるという考えがおそらく間違っていそうで、別のアイデアを考えて欲しいというメッセージも込めて不成立とさせていただきました。でも、基本的にはパッションが最高によくて絶対に応援したいので、今後も見守らせてください。
(構成=小島浩平)
前田氏が登場したのは、J-WAVEで22年2月23日に放送された特別番組『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL TDK presents THE FANG』(ナビゲーター:稲葉友/藤原麻里菜)。TDKのブランドキャンペーン「尖った大胆さ、くれよ。」と連動してお届けした番組で、尖った偉業を成し遂げ、今なお挑戦し続ける各界を代表するトップランナーたちがゲスト出演。また、事前に募集した「尖った夢」をもつリスナーたちが活動資金10万円を懸けて、自身の実現したいことをプレゼンした。
動画を軸にした事業を展開する理由は「寂しさへの寄り添い」
ライブ配信サービス「SHOWROOM」や、スマホに特化した縦型の映像配信アプリ「smash.」などを手掛ける前田氏。動画を軸としたプラットフォームを展開する理由は、いったい何なのだろうか。前田:一番手軽に寂しさを埋められる手段が動画だと思っているんですよ。ワンタップ、ツータップぐらいで気軽にアクセスできて、誰かと繋がっている感覚を得られる。そんなふうに、寂しい誰かに寄り添えたらいいと思い、昔から動画サービスをやっているんです。
藤原:私も一度、「SHOWROOM」で芸人時代に同期だったレインボーの池田(直人)くんの配信を観てみたんですけど、すごく寂しさを埋めてくれる気がしたんですね。で、投げ銭したんですよ。そしたら、私だと気づかずに、「まりなちゃん、ありがと~」って言ってくれて。同期なのに、ときめいちゃいました(笑)。
稲葉:同期に投げ銭してときめくって、だいぶ珍しい経験だね(笑)。まぁそれぐらい、繋がっている感覚があったってことだよね。
前田:SNSがいつも身近にあり、バーチャルに生きていているような若い世代の中には「リアルはちょっと苦手……」という人もいるはずなんです。そういった人たちでも、動画であれば自分の居場所を見付けられたりもするんですよね。
尖ったアイデア誕生の秘訣は「組み合わせ」と「質の前に量」
消費者のニーズを満たしつつも、時代をリードする「尖ったアイデア」は、どのようにして生まれるのだろうか。前田氏からは明確な答えが返ってきた。前田:まずは「組み合わせること」です。●●版の××といったように、ランダムにひたすら組み合わせてみるんですよ。たとえば、Uber Eatsってうまくいってるビジネスモデルじゃないですか。そこで、「●●版のUber Eats」をたくさん挙げていく。仮に「お笑い版のUber Eats」で考えてみるとしましょう。僕ら3人がこの後、飲みに行くとするじゃないですか。お店に来たはいいものの、話が盛り上がらないとき、お笑い版のUberアプリを開いたら、自宅で暇してる芸人さんがマッチングされる。そして、飲み会に30分だけ来てくれて、ちょっと笑わせて帰っていく……みたいなサービスができそうですよね。
稲葉:芸人さんにとって、ギャラが還元されるのはもちろん、芸を磨く機会にもなっていいですね。
前田:こんな感じで、何かと何かをいくつも組み合わせていくんです。それこそ、電話×パソコンの組み合わせが、今僕らの使っているスマホになっているわけですしね。
藤原:以前、前田氏の本を拝読させていただいたのですが、今のお話を聞いていて、「就職活動のときに1000個、自分に自問自答した」と書かれていたことを思い出しました。天才のように見えて、実は、数をこなす努力を積まれてきたからこそ、すごいアイデアが生まれるんですね。
前田:僕は「量質転化」という言葉を信じていて。質の前に量だと思っているんですよ。完璧主義的に1個目からクオリティの高いアイデアを出す必要はない。それより、たとえレベルが低くても、とにかくたくさんアイデアを出して、玉石混交の中で一つ光るものがあればいいという考えなんです。だから、「いいアイデアが出ない」という人は、そもそも出している絶対数が少ない気がします。そんなわけで、尖ったアイデアは、「組み合わせ」と「量質転化」という2つが大事だというのが僕の持論です。
ファンコミュニティを形成する「利他・利他のループ」
昨今のビジネスシーンでは、企業やブランドが顧客と深く結び付く、いわゆる“ファンづくり”が重要視される。「SHOWROOM」も「smash.」も目標とするのはつまるところ、ファンの輪を広げていくことだ。独自のファンコミュニティ形成論を持つ前田氏は「まず、ファンとはどういう状態か定義することが重要」と論を進める。前田:僕の中のイメージでは、演者が「ライブやります」「トークイベントやります」と言ったら、会社や仕事を休んででも来てくれるようなレベルの人をファンと呼んでいるんです。それぐらい自分のことを無償の愛で、利他的に応援してくれる人をファンとして付けるにはどうするべきかを考えるのですが、そのためには、こちらが先にめちゃくちゃ利他的にならなければいけないと思うんですよね。
前田氏によると、かつて自分の著書を書店で目立ちやすくするために、ファンが位置をずらしてくれたことがあったという。
前田:どんなに本を読んで感動しても、わざわざ本屋でずらして……ってやらないじゃないですか。だから、「自分のファンはなんて優しいんだろう」って想像すると、1つでもファンのために何かやりたいという気持ちが沸いてくるんです。そうすると、ファンの方もそう思ってくれるという、利他・利他のループに入ってくるんですよね。逆に、いつまでも利己・利己のままでいるコミュニティは、伸びていかない気がします。
藤原:めちゃめちゃぶっ刺さりました。やっぱり、YouTubeに投稿した動画の再生回数が伸びないときは「なんでこんなに低いんだ」って思っちゃう。でも、これだけ再生してくれているということに、まずは感謝しないといけないですよね。
前田:そうですよね。人生の大事な時間を使ってくれていると考えたら、すごいことですから。
“流動食化”するZ世代向けコンテンツ
時代の最先端を行くZ世代をどう見ているのか。前田氏は「流動食化して、顎を使わなくてもよくなっている」と独特の言い回しで、新世代のニーズを鋭く分析する。前田:Z世代をターゲットとした場合、なるべく疲れさせないコンテンツを作り手側は提供しがちで。動画も漫画もいかに頭を使わせないか。ローカロリー化が重要視される傾向にあると見ています。
若い世代に向けた音楽の作り方も変化しており、「なるべくイントロは短くするし、まず5秒でこの曲を聞き続けようと思ってもらわなければいけない」と前田氏は説く。
稲葉:その現状っていいんですか? 悪いんですか?
前田:どうなんでしょう。僕はいいか悪いかの価値判断があまりなくて。なぜかというと、必ず揺り戻しがあるんですよ。軽いもの、咀嚼しなくてもいいものが流行った次には、歯ごたえのあるものが求められる。これは音楽に限った話ではありません。たとえば、漫画コンテンツであれば、キングからナイトの時代になっていますし。かつては「俺は●●王になる!」という作品が流行っていましたが、今の主人公は、自分から王様になるとは絶対言わない。その代わり、何かに巻き込まれる。家族が殺されて、悔しいから戦って……といったように、巻き込まれたあとに奮起して周りを助けるナイトになっていくんです。ただ、しばらくすれば、利己的に「俺が王様になる」「俺が一番だ」という主人公が魅力的に見える時代が来るはずです。それがぐるぐる循環しているように思います。こうした時代の変化に備えて、作り手側は準備をしなければいけません。
稲葉:そうやって世界は回っていってるんだ……。
プレゼン企画でリスナーに送った経営者目線の熱いエール
最後には、「尖った夢」をもつ挑戦者が活動資金として最大10万円を懸け、自身の実現したいことをプレゼンする企画「THE FANG PITCH」が行われた。前田氏は、藤原、TDK株式会社イノベーション推進部部長・佐藤俊弥さんとともに、審査員を務めた。このトークはPodcastでも配信中。挑戦者は、「サイクリストが後悔のないロードバイク選びをできる世の中にしたい」というビジョンを掲げる会社員の奥野寛史さん。個人で運営している自転車レビュー投稿サイト「チャリビュー」を盛り上げるべく、活動資金10万円を投稿してくれたユーザーへのプレゼント購入資金に使用したいとアピールしたものの、結果は、審査員3人とも「マネー不成立」と判断。肩を落とす挑戦者に対し、前田氏は経営者目線の的確なアドバイスと熱いエールを送った。
前田:不成立にした理由が2つあります。1つ目が、たった10万円を持ち帰ることよりも、「負けた悔しい」という気持ちになるほうが10万円以上の価値があると思うからです。2つ目が10万円で投稿者のモチベーションを引き上げるという考えがおそらく間違っていそうで、別のアイデアを考えて欲しいというメッセージも込めて不成立とさせていただきました。でも、基本的にはパッションが最高によくて絶対に応援したいので、今後も見守らせてください。
(構成=小島浩平)
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2月23日(水・祝)9:00~17:55
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稲葉友、藤原麻里菜