音楽プロデューサーでベーシストの亀田誠治と、作曲家・編曲家・プロデューサーのYaffleがJ-WAVEで12月11日(土)に対談。Yaffleが自身の音楽遍歴や、プロデューサーになったきっかけ、楽曲に携わる藤井 風との出会いについて語った。
ふたりが対談したのは、J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。12月のマンスリープレゼンターを亀田誠治が担当。
まずはYaffle の音楽遍歴の話に。Yaffleが初めて音楽に触れたのは幼少期の頃。音楽教室でピアノを習っていたという。
Yaffle:でも(音楽教室が)全然もたなくて。早々にドロップアウトしそうになったときに、先生がジャズっぽい方に代わったんです。ポップスピアノ集みたいなもので、楽譜の音符じゃなくて謎のアルファベットを弾いていくと、音符を読まなくてもそれっぽいのが弾けると中学1年生くらいのときに気づいて。
亀田:楽譜のコード?
Yaffle:そうです。コードがわかるようになったので、セオリーっぽいのもだんだんわかるようになっていきました。なんの気なしに切り抜けるのってセオリーが大事じゃないですか。
亀田:そうですね。その分、好きなことから入っていくから吸収は早いですよね。 Yaffle:より構造のほうに目がいくようになったんですね。
亀田:これが今をときめくプロデューサー・Yaffleさんの原点になっていくわけですね。
Yaffle:『S.W.A.T.』を観に行って、その作品はパンクロックっぽい劇伴だったんですね。そのときに自分もできそうだなって(笑)。勘違いですけど。
亀田:ビビッとくるというか、「これいけるかも」って思ったんですね。これって天才肌あるあるで、根拠のない「いける!」っていう瞬間があるんですよね。みんなそこを大事にして伸びていくんです。
Yaffle:亀田さんはそういうのあったんですか?
亀田:ありましたね。部屋に、母親が買った「あなたにも弾ける」みたいな通信教育で送られてくるようなクラシックギターが置いてあって、「なんだこれ」と思いながらギターを持って、自分の好きなザ・ビートルズの青盤(『ザ・ビートルズ1967年~1970年』)をかけたら『ハロー・グッドバイ』が流れてきて、そのクラシックギターでベースを弾けちゃったんです。
Yaffle:すごい。
亀田:なんかわからないけど、いきなりできちゃったんですね。
Yaffle:小袋成彬と、初めはふたりでレーベルをつくろうとしていました。当時はインターネットレーベルが流行りだしたときです。配信も出てきて在庫を抱えなくてもいい時代になったときに、レーベルをやって自分たちがアーティストを見つけてきて、その人に自分たちが曲を書いて売っていこうという構想があって。そのときにCapesonを初めてプロデュースして、それを続けていったらメジャーレーベルの耳に止まって「うちもお願いします」って頼まれるようになり、それが仕事として広がっていきました。23、24歳くらいのときでしたね。
プロデュースを始めた頃を回想し、「なめられがちだった」と振り返る。
Yaffle:僕はいかにアーティストとプロデューサーが50対50の割合で作っていけるかってことを考えていて、それができないと気持ち悪いんですよ。なんでも叶えてあげるマニピュレーターみたいな扱いになると興奮しないたちで。
亀田:わかる、わかる。
Yaffle:「なんでもやってあげたい」というタイプの人もいると思うんですけど、お互いの職業にリスペクトを持って仕事をしていくために「初めにどういう対応をしたほうがいいか」とか、「ここははっきり言ったほうがいい」とか(を考える)。亀田さんもありますか?
亀田:すごくあります。今でもあるけど、少しずつよくなってきている感じがして、まだ自分に伸びしろがある感じです。とにかくアーティストと対話をします。まわりが半信半疑で「じゃあ、やってみようか」ってときはあまりうまくいかないので、本当にお互いが信頼できて、預けてもいい、もしくは代わってもいい、あのサウンドがほしい──僕はいろんなサウンドをやるので、その中で「自分の経験をどれだけこのアーティストに使えるか」ってことをしっかり考えながらやりますね。僕とかYaffleさんの立場のサウンドクリエーターのほうが熱いパッションと本気でやる気持ちがないと、本物のアーティストは見抜きます。「あれ、主体性はどっち?」みたいなこともある。揺るぎのない確信を持てるところまで、自分を高めるというか、勉強をしますね。
亀田:(藤井)風さんと出会ったのはどのタイミングだったんですか?
Yaffle:『何なんw』(2019年)が出る1年くらい前に、レコード会社の人が「デビューを控えている新人がいるんだけど、ちょっと音合わせ的にお試しで……」みたいな、ふわっとした依頼が来て(笑)。
亀田:そういうの、今の僕でもあるんですよ。これテスト期間中だな、みたいな(笑)。
Yaffle:彼がYouTubeで動画とかもあげていたので、それを観て面白そうだなとは思ったんですけど、ちゃんとはわかっていない状態でした。彼はデビュー前から、発表はしてないけどたくさんのデモを溜めていて、それが送られてきて「好きな曲を一曲選んでください」と言われて、楽曲『もうええわ』を選んだんです。それが初めでしたね。
亀田:そこからはスタジオで共同作業をしたんですか?
Yaffle:彼の声とピアノをもらって、どういうことを考えてるのとか、どういうのが好きなのとか、この曲はなんで書いたのとか、そういう話をして。彼はバンドもやったことがなかったみたいなので、人に自分の曲を触られたことがないタイプだし、誰かと一緒に曲をつくったこともなかったみたいだったので未知数でしたが、それで一度預かってフルでつくって投げ返しました。そうしたらすごくいい感じだったみたいで、1が2になって2が3になって、最終的にフルアムバムが出ますってなりました。
亀田:全部手掛けられていますもんね。
Yaffle:最初はアルバムをやるとは思ってなかったですね。
亀田は先日、国立代々木競技場第一体育館で行われた藤井のライブに行ったそうで、「バンドのメンバーを最小限にしているけど、音源で聴く質感とそれを超えるパフォーマンスが素晴らしかった」と絶賛した。
亀田:藤井 風さんって本当に人間力があって、そこからあふれ出てくるオーラというかパワーで会場が満たされている感じで。でもその中に繊細なリズムワークとかコードの積みのようなものがあって、これは風さんとYaffleさんが一緒につくり上げたものだと思いました。アリーナクラスの会場でも音楽のコアな部分がしっかり届いたというか。そこのサウンドメーキングを感じてYaffleさんはやっぱりすごいなって思いました。
亀田は藤井のライブを自身の妻と一緒に観たそうだ。妻は「時代は変わったね」と感想をもらしたという。
亀田:風さんは“緩み”があるんですよね。今いちばん、ヒット曲、そしてさまざまなサウンドを映像も含めてつくり上げているトップアーティストなんだけど、息苦しさがないところが、Yaffleさんが最初に植え付けてくれている種の中にあるんじゃないかなって思いながら聴いていました。
最後に「音楽ってどういうものか?」と訊かれたYaffleは、こう答える。
Yaffle:そもそも僕がなぜ音楽を職業としてやろうと思ったかというと、なんにも意味のないことに金を払っていることにロマンを感じちゃったんですね。
亀田:いいことを言うね(笑)。
Yaffle:基本的に僕は、音楽は役に立たないって方向のほうが話の展開として好きなんですよね。胎教にいいとか、これ聴いたらビジネスうまくいくとか、そうなっちゃうと胎教によい音楽とよくない音楽っていう線引きになるじゃないですか。だから音楽はずっと役に立たない存在であってほしいなって思っています。それでもなお好きな人が集まってますっていう。
亀田:すごくわかる気がします。解説とかそういったことで片付けるものではなくて、音楽は基本的に感じるものであってほしいなって思いますよね。
Yaffleの最新情報は、Twitterまで。
『WOW MUSIC』はJ-WAVEで土曜24時-25時。また、『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。
・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ https://www.youtube.com/c/musicfun_jp
ふたりが対談したのは、J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。12月のマンスリープレゼンターを亀田誠治が担当。
音楽のセオリーを理解したとき
いま最も注目されるソングライター・プロデューサーであるYaffle。小袋成彬、藤井 風、iri、SIRUP、SANABAGUN.の高岩 遼、Capeson、柴咲コウ、adieu(上白石萌歌)らの楽曲アレンジや提供のほか、CMや映画の音楽制作など幅広く活躍している。まずはYaffle の音楽遍歴の話に。Yaffleが初めて音楽に触れたのは幼少期の頃。音楽教室でピアノを習っていたという。
Yaffle:でも(音楽教室が)全然もたなくて。早々にドロップアウトしそうになったときに、先生がジャズっぽい方に代わったんです。ポップスピアノ集みたいなもので、楽譜の音符じゃなくて謎のアルファベットを弾いていくと、音符を読まなくてもそれっぽいのが弾けると中学1年生くらいのときに気づいて。
亀田:楽譜のコード?
Yaffle:そうです。コードがわかるようになったので、セオリーっぽいのもだんだんわかるようになっていきました。なんの気なしに切り抜けるのってセオリーが大事じゃないですか。
亀田:そうですね。その分、好きなことから入っていくから吸収は早いですよね。 Yaffle:より構造のほうに目がいくようになったんですね。
亀田:これが今をときめくプロデューサー・Yaffleさんの原点になっていくわけですね。
「いけるかも」という“天才肌あるある”とは?
学生時代、Yaffleは軽音楽部の助っ人として、数え切れないほど東京事変の曲をピアノで弾いていたという。そんなYaffleが音楽プロデュースを意識するようになったのは中学1年生で観た一本の映画がきっかけだった。Yaffle:『S.W.A.T.』を観に行って、その作品はパンクロックっぽい劇伴だったんですね。そのときに自分もできそうだなって(笑)。勘違いですけど。
亀田:ビビッとくるというか、「これいけるかも」って思ったんですね。これって天才肌あるあるで、根拠のない「いける!」っていう瞬間があるんですよね。みんなそこを大事にして伸びていくんです。
Yaffle:亀田さんはそういうのあったんですか?
亀田:ありましたね。部屋に、母親が買った「あなたにも弾ける」みたいな通信教育で送られてくるようなクラシックギターが置いてあって、「なんだこれ」と思いながらギターを持って、自分の好きなザ・ビートルズの青盤(『ザ・ビートルズ1967年~1970年』)をかけたら『ハロー・グッドバイ』が流れてきて、そのクラシックギターでベースを弾けちゃったんです。
Yaffle:すごい。
亀田:なんかわからないけど、いきなりできちゃったんですね。
アーティストと対等に…プロデューサーとして心がけること
これまで数多くの楽曲を手掛けてきたYaffle。プロデュースの仕事が増えていった過程を明かした。Yaffle:小袋成彬と、初めはふたりでレーベルをつくろうとしていました。当時はインターネットレーベルが流行りだしたときです。配信も出てきて在庫を抱えなくてもいい時代になったときに、レーベルをやって自分たちがアーティストを見つけてきて、その人に自分たちが曲を書いて売っていこうという構想があって。そのときにCapesonを初めてプロデュースして、それを続けていったらメジャーレーベルの耳に止まって「うちもお願いします」って頼まれるようになり、それが仕事として広がっていきました。23、24歳くらいのときでしたね。
プロデュースを始めた頃を回想し、「なめられがちだった」と振り返る。
Yaffle:僕はいかにアーティストとプロデューサーが50対50の割合で作っていけるかってことを考えていて、それができないと気持ち悪いんですよ。なんでも叶えてあげるマニピュレーターみたいな扱いになると興奮しないたちで。
亀田:わかる、わかる。
Yaffle:「なんでもやってあげたい」というタイプの人もいると思うんですけど、お互いの職業にリスペクトを持って仕事をしていくために「初めにどういう対応をしたほうがいいか」とか、「ここははっきり言ったほうがいい」とか(を考える)。亀田さんもありますか?
亀田:すごくあります。今でもあるけど、少しずつよくなってきている感じがして、まだ自分に伸びしろがある感じです。とにかくアーティストと対話をします。まわりが半信半疑で「じゃあ、やってみようか」ってときはあまりうまくいかないので、本当にお互いが信頼できて、預けてもいい、もしくは代わってもいい、あのサウンドがほしい──僕はいろんなサウンドをやるので、その中で「自分の経験をどれだけこのアーティストに使えるか」ってことをしっかり考えながらやりますね。僕とかYaffleさんの立場のサウンドクリエーターのほうが熱いパッションと本気でやる気持ちがないと、本物のアーティストは見抜きます。「あれ、主体性はどっち?」みたいなこともある。揺るぎのない確信を持てるところまで、自分を高めるというか、勉強をしますね。
藤井 風との出会いや、彼の音楽の魅力は
続いて、Yaffleがサウンドプロデュースを手掛ける藤井 風の話題に。亀田:(藤井)風さんと出会ったのはどのタイミングだったんですか?
Yaffle:『何なんw』(2019年)が出る1年くらい前に、レコード会社の人が「デビューを控えている新人がいるんだけど、ちょっと音合わせ的にお試しで……」みたいな、ふわっとした依頼が来て(笑)。
亀田:そういうの、今の僕でもあるんですよ。これテスト期間中だな、みたいな(笑)。
Yaffle:彼がYouTubeで動画とかもあげていたので、それを観て面白そうだなとは思ったんですけど、ちゃんとはわかっていない状態でした。彼はデビュー前から、発表はしてないけどたくさんのデモを溜めていて、それが送られてきて「好きな曲を一曲選んでください」と言われて、楽曲『もうええわ』を選んだんです。それが初めでしたね。
亀田:そこからはスタジオで共同作業をしたんですか?
Yaffle:彼の声とピアノをもらって、どういうことを考えてるのとか、どういうのが好きなのとか、この曲はなんで書いたのとか、そういう話をして。彼はバンドもやったことがなかったみたいなので、人に自分の曲を触られたことがないタイプだし、誰かと一緒に曲をつくったこともなかったみたいだったので未知数でしたが、それで一度預かってフルでつくって投げ返しました。そうしたらすごくいい感じだったみたいで、1が2になって2が3になって、最終的にフルアムバムが出ますってなりました。
亀田:全部手掛けられていますもんね。
Yaffle:最初はアルバムをやるとは思ってなかったですね。
亀田は先日、国立代々木競技場第一体育館で行われた藤井のライブに行ったそうで、「バンドのメンバーを最小限にしているけど、音源で聴く質感とそれを超えるパフォーマンスが素晴らしかった」と絶賛した。
亀田:藤井 風さんって本当に人間力があって、そこからあふれ出てくるオーラというかパワーで会場が満たされている感じで。でもその中に繊細なリズムワークとかコードの積みのようなものがあって、これは風さんとYaffleさんが一緒につくり上げたものだと思いました。アリーナクラスの会場でも音楽のコアな部分がしっかり届いたというか。そこのサウンドメーキングを感じてYaffleさんはやっぱりすごいなって思いました。
亀田は藤井のライブを自身の妻と一緒に観たそうだ。妻は「時代は変わったね」と感想をもらしたという。
亀田:風さんは“緩み”があるんですよね。今いちばん、ヒット曲、そしてさまざまなサウンドを映像も含めてつくり上げているトップアーティストなんだけど、息苦しさがないところが、Yaffleさんが最初に植え付けてくれている種の中にあるんじゃないかなって思いながら聴いていました。
最後に「音楽ってどういうものか?」と訊かれたYaffleは、こう答える。
Yaffle:そもそも僕がなぜ音楽を職業としてやろうと思ったかというと、なんにも意味のないことに金を払っていることにロマンを感じちゃったんですね。
亀田:いいことを言うね(笑)。
Yaffle:基本的に僕は、音楽は役に立たないって方向のほうが話の展開として好きなんですよね。胎教にいいとか、これ聴いたらビジネスうまくいくとか、そうなっちゃうと胎教によい音楽とよくない音楽っていう線引きになるじゃないですか。だから音楽はずっと役に立たない存在であってほしいなって思っています。それでもなお好きな人が集まってますっていう。
亀田:すごくわかる気がします。解説とかそういったことで片付けるものではなくて、音楽は基本的に感じるものであってほしいなって思いますよね。
Yaffleの最新情報は、Twitterまで。
『WOW MUSIC』はJ-WAVEで土曜24時-25時。また、『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。
・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ https://www.youtube.com/c/musicfun_jp
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2021年12月18日28時59分まで
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番組情報
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