年齢を重ねることで音楽制作はどう変化? WONK・長塚健斗×go!go!vanillas・牧 達弥が対談

WONKのボーカル・長塚健斗とgo!go!vanillasのボーカル/ギター・牧 達弥が対談。長塚が音楽ルーツや楽曲制作について語った。

2人がトークを展開したのはJ-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい”音楽をつくるクリエイターが“WOW”と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる番組だ。9月は、牧がマンスリープレゼンターは務めている。

ここで紹介する番組のオンエアは9月10日(土)。

WONKとgo!go!vanillas は9月17日(土)・18日(日)・19日(月・祝)に国立代々木競技場 第一体育館、第二体育館、外周エリアで開催の「J-WAVE presents INSPIRE TOKYO ~Best Music & Market」に出演する(WONKは18日、go!go!vanillasは17日に出演)。

・「J-WAVE presents INSPIRE TOKYO ~Best Music & Market」公式サイト
https://www.j-wave.co.jp/special/inspire2022/

ボーカルだけじゃなくドラムも!?

4、5年の付き合いになる牧と長塚。まずは牧が長塚の音楽ルーツに迫る。

長塚:姉がピアノをやってて、母親もピアノが上手で、一緒にやりたいなってことでヴァイオリンをやらせてほしいって言って買ってもらったのが始まりで。でも全然真面目にやらなくて超サボってて。高校1年くらいまで続けたけど、ヴァイオリンにハマったのは中学3年とかだった(笑)。

牧:そんなにやってたんだ。

長塚:でも全然。レッスンに行きたくなくて。中学3年くらいにバンドが流行りはじめて。いわゆる軽音学部みたいな。部活はなかったんだけど、バンド演奏を文化祭でできます、みたいな。それでバンドを同級生と組んだときに「おまえ、歌ってくれない?」って言われて。

牧:何、歌ったの?

長塚:めちゃくちゃなセットリストだったんですけど、ポルノグラフィティとかザ・クロマニヨンズとか、レミオロメンの『粉雪』も歌ったわ。外部のライブのときとかは、ボブ・マーリーやったり、Sum 41やったりみたいな。めちゃくちゃでいろんなことやってた。

牧:わりとポピュラーでティーンな時期だね。Sum 41とか、メロコア系のパンクとかもあるし。

長塚:メロコアっていうかメタル、ハードロックのほうにめっちゃハマっちゃって。

牧:顔が似合うわ(笑)。

当時は、バンドメンバーで自主企画を立て、なけなしのお金を出し合い、東京・八王子や立川の駅前にあるライブハウスでライブをやっていたと長塚は振り返る。

牧:ずっとボーカルだったの?

長塚:最初ボーカルをやってて、途中からなぜかドラマーをやってましたね。

牧:マジで!? 前回ゲストに来てくれたKroi(のボーカル・内田怜央)もドラムから入ってて。ボーカリストがドラムから歌に行くって結構あるんだろうね。

牧達弥(go!go!vanillas)×内田怜央(Kroi) 音楽対談

長塚:あるのかな。

牧:Yogee New Wavesの(角舘)健悟もそうだし。

長塚:今じゃ全然叩けないですけどね。

牧:そこからWONKのメンバーとはどうやって出会ったの?

長塚:WONKのベース(井上 幹)は高校1年のときに、お互いが行っている高校が近かったってこともあって知り合って。Sum 41とかそっちのほうのライブを他のメンバーと一緒にやってて。そこからバラバラの大学に行って、全然連絡を取らなくなって、俺も料理やりたいなと思って料理ばっかりやってて。

牧:そうだよね。

長塚:でも週末は音楽活動をしてて、そのときは知り合いの年上のいわゆるジャズのプレイヤーの人たちとバンドを組んで、いろんなライブに出て。

牧:なんでジャズのほうに意識が行ったの?

長塚:自分がボーカルとして歌いたいのって何だろうなって思ったとき、19、20歳くらいのときにいい音楽との出会いがあって、そこからジャズいいなと思って。ジャズ、ソウル、R&Bの方向にすごくハマっていって。ロックとかメタルって好きだけど演奏するものじゃない感覚がすごくあったから。僕は絶対そういう声質じゃないし。だからそっちの方面にハマってやり始めたら、当時英語でジャズとかを歌える男性ボーカルってなかなかいないから、それで巡り巡って同世代の他の大学の人たちにうわさが広まって、企画バンドのライブに呼んでもらっていくつか出るようになって、最終的にWONKになりました。

作詞と作曲、それぞれのスタイルは?

WONKの楽曲の詞やメロディーを多く手掛ける長塚。牧が、その制作に迫った。

長塚:WONKのドラマーでリーダーの荒田(洸)もメロディーは半分くらい考えてって感じなんですけど、楽曲の進行を決めたり、いろんな要素を考えたりするのは他のメンバーがやってて。

牧:それはインストで曲が来て、それを自分の中でメロディーをのっけてくって感じ?

長塚:そう。それとか、曲によって作り方がバラバラで。荒田はビートメーカーって側面もあるからビートを組んじゃって、その上で歌うのもあるし。5月に『artless』っていうアルバムを出したんですけど、それはみんなで合宿して。先に歌詞を持って行って、その歌詞の世界観に合わせるように、ギターとかピアノを最初につけるっていうか、弾きながらその上で一緒に歌いながらメロディーを考えていって組み上げました。詞を先にやったのはそれが初めてじゃないかな。

牧:へえ。それはすごく面白い。じゃあ、最近は詞が先?

長塚:それが多くなってきてるって感じですね。でも、半々くらいですかね。

牧:そのときも、歌詞だけを持って行くって感じ?

長塚:歌詞だけです。この歌詞がどういう歌詞なのかって。キーワードとかが箇条書きになってるもの、世界観を表すようなものがあって、その下に歌詞があって、そこに和訳も付いてるのをみんなに見せて。

牧:プレゼンみたい。面白い。

一方、牧は「ギターを弾きながら詞とメロディーも一緒に作る」と言うと、長塚は「マジ!?」と驚きを隠せない様子。

長塚:ギターを弾きながら歌詞も考えるの? ヤバくない?

牧:それが1セットになってて。

長塚:そういう人ってたまにいるじゃないですか。意味わからないですよね。どういうこと?

牧:逆に、詞とメロディーを分解していくとわからなくなっちゃうから。最初の取っ掛かりが同時で、そこから「ここがフックになるな」みたいな言葉とかメロディーが生まれてきて、それが弾き語りでまとまってきたら1回歌詞を書くかも。それで次のパートに行って、徐々にトンネルを掘っていくって感じ。休憩して、トンネル掘って、みたいなやり方なのよ。

年齢を重ねて、作るものの幅が広がった

楽曲制作の話題は続き、長塚は牧に訊きたいことがあると切り出す。

長塚:自分で体感したこととか何か思い描いてきたこととか、湧き出てくる感情とか、日常の景色を切り取っていかにドラマチックにして歌詞にするかってところがあると思うんですけど、それしかできないというか。それが自分のいちばんしっくりくる書き方だなと思ってて。牧くんってどうやってるんですか?

牧:俺は映画とか漫画とか、創作物をより自分に投影することが多い。

長塚:わかる、それもやる。

牧:ドラマチックさが全然違うから。それで勝手に自分で映画を作っていく感覚になってるのかな。(長塚)健斗も俺も映画とか好きでしょ。そういうカルチャーが好きだから。

長塚:そうやって自分が日々触れたあらゆるものから絶対に影響は受けてるじゃないですか。日々、それをめちゃくちゃ感じますね。数年前の自分だったら今この曲は書けないなとかあるし。

牧:昔はどうだったの? ずいぶん変わった?

長塚:表現できる幅がどんどん広がってきているっていうのももちろんあるんですけど、音楽以外の自分の余白じゃないけど、他のところが相乗効果的にというか、いろんなものが成長していくにつれて見えてくる景色がだんだん広まっていくというか。見える世界がどんどん増えてくるというか。それによって生まれてくる新しい視点みたいな。

牧:わかるわ。

長塚:同じ物事だけど新しい視点がどんどん生まれていく。

牧:ある意味、ちょっと俯瞰で見れるとか。

長塚:それとか、俯瞰の見方も変わってきたりとか。そういったものが歳を取るごとに変わってきてるからこそ、そのときにしか書けない音楽ってあるなって思いつつ、成長して初めて書けるようになった曲もあるなって。

牧が「今がいちばん最高だなって感じ?」と訊くと、長塚は「常にそう」と答える。

牧:ずっとそうありたいよね。楽しくいたいし。

長塚:歌を書く人間としてはそれが理想ですよね。

牧:言い訳でもなく、そうだよね。歳を取っていったほうがどんどん楽しくなっていくし。

長塚:そう、それめっちゃ思います。

牧:それで得た経験のほうが音楽に落とし込んだときも満足感があるというか。

長塚:わかるな、それ。

最後に今後の目標を質問された長塚は、「自分たちがやっていることを一個一個広げていくことが夢ではあるので、自分たちの作った音楽とかそれ以外で作ったものをいろんな人が触れることで、幸せになってくれる人がより増えてくれたら」と語った。

番組では他にも、長塚がライブやシェフをしていた過去について語る場面もあった。

『WOW MUSIC』はJ-WAVEで土曜24時-25時にオンエア。また、『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。

・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ
https://www.youtube.com/c/musicfun_jp
radikoで聴く
2022年9月17日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
WOW MUSIC
毎週土曜
24:00-25:00

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