「渋谷系」がいまだに愛される理由は? カジヒデキが必聴7曲をセレクト

Awesome City Club・PORIN、フレンズ・えみそん、カジ ヒデキが「渋谷系サウンド」への思いを語った。

3人が登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは、「ようこそ東京!リバイバル!? 渋谷系サウンド」をテーマにお届けした、4月6日(火)のオンエア内容をテキストで紹介する。

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いまだに根強い人気を誇る「渋谷系」

90年代初頭から95年あたりまでに渋谷の街を中心に起こった、音楽を中心としたムーブメント「渋谷系」。出身もジャンルすらもバラバラなアーティストたちが、ごちゃ混ぜに「渋谷系」として括られ、ひとつの時代を築いた。そんな渋谷系は今年3月に、音楽メディア「ナタリー」から『渋谷系狂騒曲 街角から生まれたオルタナティブ・カルチャー』という本が出版されるなど、いまだに根強い人気を誇っている。

まず一人目のゲストとしてAwesome City ClubからPORINが登場し、「渋谷系」に対する思いを語った。

あっこゴリラ:PORINさんは1990年生まれということで、渋谷系は生まれた頃の音楽シーンになると思うんですけど、何がきっかけで知ったんですか?
PORIN:周りの友達にこの渋谷系の時代を生きてきた人たちが多くてそれでいろいろ話を聞いたのと、あと私たちはデビュー当時シティポップって括られることが多くて、その流れが渋谷系とちょっと似ているよねって言われることもあり興味を持ち始めました。

渋谷系に分類されることが多いアーティストには、フリッパーズギターだった小沢健二とCorneliusこと小山田圭吾や、現在はオリジナル・ラブで活動する田島貴男、野宮真貴がボーカルを務めたピチカートファイヴ、現在も活動するスチャダラパー、東京スカパラダイスオーケストラ、サニーデイ・サービス、カジヒデキなど、ジャンルもバラバラな多くのアーティストが「渋谷系」と呼ばれていた。

PORIN:渋谷にレコード屋さんがいっぱいあって、そこに集って遊んでいた仲間たちとも言われてますよね。
あっこゴリラ:宇田川のカルチャーなのかな。HIPHOPとはまた違うカルチャーなんですね。そのあたりも詳しく知りたいな~。では、まずPORINさんが「渋谷系」に惹かれた楽曲を教えてください。
PORIN:フリッパーズギターの『恋とマシンガン』です。

【フリッパーズギター『恋とマシンガン』を聴く】

あっこゴリラ:PORINさんは、渋谷系のどんなところに面白みを感じたんですか?
PORIN:洋楽エッセンスをちゃんとJ-POPに昇華しているところが、自分たちともリンクするところがあります。あとは、ファッションもそうですけど、アートワークも含め、カルチャー全体で盛り上がっているところが素敵だなって思いました。
あっこゴリラ:90年代の渋谷カルチャーのどんな部分に憧れを抱いていたんですか?
PORIN:渋谷パルコやアニエスベーとの親和性など、特にファッションに対しての憧れはありましたね。
あっこゴリラ:この後、当時を知るカジヒデキさんが登場しますが、聞いてみたいことってありますか?
PORIN:渋谷系アーティストのアートワークの多くを信藤三雄さんが手がけていますが、そういうムーブメントはどう起きていったのか聞いてみたいですね。
あっこゴリラ:確かに、一つの盛り上がったムーブメントって、ミュージシャンだったり、アートディレクターだったり、デザイナーだったり、いろんなものが組み込まれてますもんね。ちなみに、信藤三雄さんは数多くのCDジャケット、広告を手掛けるアートディレクターで、これまでに松任谷由実、Mr.Children、宇多田ヒカルなどを担当し、ピチカートファイヴ、フリッパーズギターら渋谷系アーティストも多数担当しています。
PORIN:すごくポップでカラフルで、一回見たら忘れられないような色使いですよね。
あっこゴリラ:ファッションがちょっと60年代チックというか、そのあたりもおもしろい。PORINさんが、特に「渋谷系」を感じる曲ってありますか?
PORIN:自分の中では、やっぱりピチカートファイヴさんが渋谷系を代表するアーティストだと思っていて、楽曲、ビデオ、野宮真貴さんのファッションアイコン感など、時代を捉えていて最高にオシャレに感じます。

【ピチカートファイヴ『東京は夜の7時』を聴く】

「渋谷系」を通していろんな歌い方があることを学んだ

続いてのゲストは、渋谷系ならぬ「神泉系」、フレンズのえみそんが登場。

あっこゴリラ:フレンズはまさに渋谷区の地名からとった「神泉系」を自称していますが、やっぱり渋谷系からインスパイアされた言葉なんですか?
えみそん:そうですね。渋谷系って、2021年でもずっとムーブメントとして語り継がれてるじゃないですか。そういう音楽のジャンルを築けるっていうのは、私たち的に羨ましいなって思っていて。もっと軽いノリだったけど、“じゃあ、渋谷の隣で神泉系にしちゃおうよ”みたいな感じで神泉系を名付けました。
あっこゴリラ:えみそんも世代ではないと思うんだけど、何がきっかけで知ったんですか?
えみそん:中学生のときに年上の友達のDJパーティーに遊びに行くようになって、そこでまず渋谷系ではないかもしれないけどフィッシュマンズや堂島孝平さんなどにハマって。そこからディスクユニオンに行くようになって、いろんな旧譜を漁っているうちにオザケンだったり、フリッパーズギターだったり、そういう渋谷系といわれる音楽にどんどん出会っていきました。
あっこゴリラ:中学生のときってことは、けっこう早めに出会ってたんだね。
えみそん:このころは何が何だかわかんないけど、とりあえずかっこいい~、かわいい~みたいなところから始まりましたね。
あっこゴリラ:そんなえみそんが、「渋谷系」に惹かれた楽曲は?
えみそん:渋谷系といえば、やっぱりフリッパーズギター。そのDJパーティーでも流れていて印象的だった『カメラ! カメラ! カメラ! 』です。

【フリッパーズギター『カメラ! カメラ! カメラ!』を聴く】

あっこゴリラ:えみそん自身の音楽にも、この「渋谷系」から活かされてる部分ってありますか?
えみそん:J-POPで育ってきたので、渋谷系を通していろんな歌い方があることを学びましたね。フレンズの楽曲にも、囁いてみたり、甘い感じで歌ってみたり、いろいろと活かされてると思います。
あっこゴリラ:えみそんが、特に「渋谷系」を感じる曲ってありますか?
えみそん:私はキュートなワードだったり、カラフルで心が晴れやかになるようなものに渋谷系を感じるので、ピチカートファイヴの『スウィート・ソウル・レヴュー』を選びました。

【ピチカートファイヴ『スウィート・ソウル・レヴュー』を聴く】

渋谷系は、新しい価値観やスタイルが生まれ育まれたムーブメント

最後は、当時を知るカジヒデキが登場。

カジヒデキは、90年代初頭、フリッパーズギターやさまざまなアーティストが通い、渋谷系カルチャーを支えたといわれる輸入レコード店「ゼスト」に勤務。さらにバンド「bridge」でデビューし、その後、ソロ活動とプレイヤーとしても渋谷系のど真ん中にいた、生き字引的な存在である。

あっこゴリラ:90年代の渋谷は、世界一レコード店が多い場所としてギネス認定されたほどだったそうですが、実際に働いていてどうでしたか?
カジ:自分が働いてる間にどんどんレコード屋が増えていきましたね。とにかくたくさんありました。
あっこゴリラ:みんながディガーみたいな感じだったんですね。渋谷系のムーブメントは、何かしらのカウンターではあるんですよね?
カジ:そうですね。時代の流れでいうと、渋谷系って言葉はたぶん93年くらいにできたと思うんですけど、実際はもっと前のフリッパーズギターがデビューしたころくらいからプレ渋谷系みたいのがあったんですよね。80年代後半はビートパンクとかがすごい流行ってて。インディーズのパンクバンドがすごい売れていたり、あとイカ天とか、そういうもののカウンターが渋谷系なんだと思います。
あっこゴリラ:なるほど~。確かにイカ天がすごい盛り上がって、みんながパンクロックをやってるっていうのが続いたら、その反動がきますよね。
カジ:たぶんあの頃は、ピチカートファイヴもオリジナル・ラブもフリッパーズギターも、何かもっと洒落たことというか、もっと洋楽的で違うことがしたかったっていうのもあったのかもしれないですね。

「カジヒデキの渋谷系セブン! 」

ここでカジヒデキが、“これが「渋谷系」の代表”と思う曲を7曲選曲してくれた。

・小沢健二『愛し愛されて生きるのさ』(1994)
・フリッパーズギター『恋とマシンガン』(1990)
・カヒミ・カリィ『ELASTIC GIRL』(1995)
・Cornelius『パーフェクト・レインボー』(1994)
・オリジナル・ラブ『月の裏で会いましょう』(1992)
・ピチカートファイヴ『スウィート・ソウル・レヴュー』(1993)
・小沢健二 feat. スチャダラパー『今夜はブギー・バック』(1994)

あっこゴリラ:いま振り返ると「渋谷系」とは何だったと思いますか?
カジ:音楽やクラブシーンなどを中心に、映画やデザインやアート、ファッションやカフェなどの食文化からライフスタイルに至るまで、新しい価値観やスタイルが生まれ育まれたムーブメントだったなと思います。

【カジヒデキ『ラ・ブーム~だってMY BOOM IS ME~』を聴く】

J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
番組情報
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月・火・水・木曜
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