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ダンレボ、ビートマニア…「ゲーム音楽とクラブミュージック」の歴史を紐解く

ダンレボ、ビートマニア…「ゲーム音楽とクラブミュージック」の歴史を紐解く

DJのKSUKEとゲーム音楽史研究家の田中"hally"治久さんが、ゲーム音楽とクラブミュージックの深い関係性を解説した。

二人が登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは、3月9日(火)のオンエアをテキストで紹介する。

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ゲーム音楽が、「音楽」として聴かれるようになった背景

近年、中田ヤスタカやFlying Lotus、Thundercatなど、ゲーム音楽からの影響を公言するアーティストが登場。そんなゲームに慣れ親しんだ世代が活躍する一方、実に80年代からゲーム音楽とクラブミュージックは少なからず影響を与え合ってきた。

ゲストには、DJのKSUKE、そして、「ゲーム音楽ディスクガイド」を監修したゲーム音楽史研究家の田中"hally"治久さんをお迎えし、ゲーム音楽とクラブミュージックの関係性を紐解いていく。

あっこゴリラ:お二人が「ゲーム音楽」に注目し始めたのはどんなきっかけだったんですか?
KSUKE:ゲームと音楽が初めてつながったのは、やっぱり「ダンスダンスレボリューション」だと思うんです。当時は社会現象みたいになりましたが、そのときにリズムに合わせて遊ぶっていうのが新感覚で、初めてゲームと音楽の一体感を感じましたね。
あっこゴリラ:hallyさんはどうですか?
hally:僕は小学校くらいのときにファミコンが出てきたんですけど、ゲームの音が気になり始めたのはそれよりももうちょっと前。当時はゲームセンターがにぎやかな時代で、そんな中でナムコさんのゲーム音楽に感動して。その時期に細野晴臣さんがゲーム音楽をレコード化するという一大事件がおきたんです(笑)。
KSUKE:ヤバい!
hally:ヤバいですよね。そこで、ゲームの音は単なるゲームのおまけのチープな音じゃなくて、音楽として自信をもって世の中に出せるものなんだってことがわかって。

ここでKSUKEが当時好きだったというゲーム音楽、ダンスダンスレボリューションの収録楽曲、SMiLE.dkの『butterfly』をオンエアした。

【SMiLE.dk『butterfly』を聴く】

あっこゴリラ:この曲はブチ上がるね。
KSUKE:めちゃめちゃ懐かしいですよね。
あっこゴリラ:98年リリースらしいですが、やっぱり年代によってリミックスされていってるのかな~。
KSUKE:そうだと思います。後にトランスリミックスとかもされましたね。
あっこゴリラ:この曲といまご自身でやられてるEDMとで通じる部分はありますか?
KSUKE:この曲は4つ打ちなんですけど、僕はいまでも4つ打ちが大好きなんです。やっぱり昔から好きだったものが顕著に表れてるなって思いますね。リミックスされてトランスになったときも、だいぶ日本に寄せた洋楽みたいな感じがしました。
あっこゴリラ:KSUKEさんは、ゲーム音楽を楽しんでるときからクラブミュージックを作りたいって思ってたんですか?
KSUKE:いや、どちらかというとゲーム音楽をもっと爆音で聴きたいと思っていて。
あっこゴリラ:なるほど~!
KSUKE:それで、大人になったときにクラブに行って爆音でかかっているトランスバージョンの『butterfly』を聴いて、「すげー! 」ってなったのを覚えてますね。

近年ゲーム音楽が、「音楽」として聴かれるようになった背景にはどのような流れがあったのか。

hally:いろんなきっかけがあったと思うんですけど、近年で一番大きかったのは『Diggin' in the Carts』というドキュメンタリー番組だったと思います。日本のゲーム音楽のレジェンドたちを追いながら、現代のミュージシャンたちにどんな影響を与えたのを追った内容で、コンピレーションも発売され話題になりました。
あっこゴリラ:へえ~。じゃあ、これをきっかけに世界的にも大きな影響を与えたんですね。
hally:そうですね。普段ゲーム音楽を聴かないような人たちもゲーム音楽に注目するようになったのかなと思います。
あっこゴリラ:その中には、どんなミュージシャンが登場するんですか?
hally:Flying LotusやThundercat、イギリスのラッパー・Dizzee Rascalなど、ほかにもたくさんいます。
あっこゴリラ:コンピレーションも発売されたとのことですが、どんな内容なんですか?
hally:基本的には80〜90年代の日本のゲーム音楽から今の目線で、音楽として面白かったり革命的だった曲をピックアップしたものです。このコンピは、イギリスのエレクトロミュージックレーベル「Hyperdub」からリリースされ、「音楽」として再び注目されるきっかけになりました。

ここで、スーパーファミコン『麻雀闘牌伝』(1993年)から『Mister Diviner The Majhong Touhhaiden)』をオンエアした。

【Soshi Hosoi『Mister Diviner The Majhong Touhhaiden)』を聴く】

ゲーム音楽が爆発的に認知されるきっかけとなったゲームは……

ここからは、hallyさんにゲーム音楽とクラブミュージックの関係性の歴史について教えてもらった。

あっこゴリラ:まず、ゲーム音楽とクラブミュージックの接点はどこから始まったと考えられるのでしょうか?
hally:始まりとなるとインベーダーまで遡る必要があると思います。1978年、ちょうどインベーダーが出た年に、YMOがデビューしています。そのデビュー盤のアルバムの中でインベーダーゲームのSEが使用され、ゲーム音楽にダンスミュージックの要素を見出します。
あっこゴリラ:もう70年代から始まっていたんですね。
hally:YMOはシンセディスコを嗜好していたので、そういう意味でもゲーム音楽とダンスミュージックの接点がここかなと思います。
あっこゴリラ::ゲーム音楽にとって、YMOはかなり大きな存在なんですね。
hally:そうですね。初期のゲーム音楽の方に話を聞くと影響を受けてない人を探す方が難しいくらいだと思います。特に細野さんはその後、史上初のオリジナルゲーム音楽を主体とした音楽アルバムをリリースし、細野さんがいなければゲーム音楽というジャンルが定着することはなかったと思います。
あっこゴリラ:おお~! 特にゲーム音楽が爆発的に認知されるきっかけとなったゲームってありますか?
hally:スーパマリオブラザーズだと思います。マリオの音がすごく注目されて、ここでいろんなレコード会社がゲーム音楽のレコード化に参入してきます。
あっこゴリラ:そんな中で歴史的にhallyさんが重要だと感じる一曲は何でしょうか?
hally:1979年の『スペース・インベーダー』時代の一枚でディスコ企画物になるんですが、ファニースタッフの『ディスコ・スペース・インベーダー』です。

あっこゴリラその後、本格的にクラブカルチャーと結びついてくるのはいつ頃になるのでしょうか?
hally:先ほどのようにゲーム音楽をネタ的に使う時代が長く続くんですけど、その後、本格的にクラブミュージックと結び付けたいという人たちが出てくるのが90年代からです。そこから少しずつ“ゲームの中でクラブミュージックありなんじゃない”っていう雰囲気が出来上がっていきます。
あっこゴリラ:以前、番組でエイフェックス・ツインが変名で作った『パックマン』をサンプリングしたテクノを流したんですが、それも同時期ですか?
hally:これはゲーム音楽がクラブミュージックにアプローチするちょっと前くらいになります。公式でミュージシャンが起用されるようになった一方、アンダーグラウンドなクラブシーンでそのような非合法サンプリングも続々登場し、行ったり来たりしながら最終的にうまく混ざっていくのがプレイステーション時代です。
あっこゴリラ:90年代にゲーム音楽とクラブミュージックの接点となった歴史的重要作はありますか?
hally:古代祐三さんが手掛けた『ベアナックル3』の『ハッピー・パラダイス』です。

ゲーム音楽とクラブミュージックのこれから

その後、2000年代からはゲーム音楽に影響を受けて育った世代が活躍し始める。この兆候が最初に見出されたのはエレクトロ~チップチューンのシーンで、80年代のチープなゲームサウンドが工夫次第でクラブサウンドとして映えるものであることを示した。また、ヒップホップの世界でも古くからサンプリングされることが多い。

ここからは、まさにその世代の代表ともいえるDJのKSUKEに話を訊いた。

あっこゴリラ KSUKEさんは学生時代、どんな音ゲーにハマっていたんですか?
KSUKE:「ダンスダンスレボリューション」をはじめ、ビートマニア、ドラムマニアとかいろんなジャンルのゲームがあったと思うんですけど、僕が一番やっていたゲームは「ビートマニア II DX」です。
あっこゴリラ:あれからDJになるの大正解な気がしますね。
KSUKE:DJシミュレーションゲームから本物のDJになっちゃったみたいな(笑)。
あっこゴリラ:あはははは! めちゃめちゃ夢あるよな~。改めて、音ゲーの魅力とは?
KSUKE:やっぱり楽しいっていうのはもちろんなんですけど、まず音楽が全部かっこいいんすよ。あと、当時ゲームセンターで自分の記録が残せるようになったのでやり込み要素も素晴らしくて。
あっこゴリラ:なるほどな~。
KSUKE:やり込む=耳の中で何度もリピートするのでどんどんハマるしかないって、もう沼ゲーでしたね。
あっこゴリラ:DJとして活動する中で聴こえ方は変わってきました?
KSUKE:やっぱり遊びと踊りはちょっと違って、ダンスミュージックの方がグルーヴがより自然で、ゲーム音楽の方は遊びで叩いて気持ちいいみたいなリズムが重視されるので、そういうグルーヴ感の違いはあるかもしれないですね。
あっこゴリラ:世界のDJとも交流があると思いますが、やはりゲーム音楽を愛するミュージシャンは多いですか?
KSUKE:そうですね。有名どころで言うと、スクリレックスとかポーター・ロビンソンとかは、「日本大好き! ゲーム大好き!」ってガンガン公表しているタイプのアーティストですね。それ以外にも、ゲーム音楽をサンプリングした曲も今、けっこうあります。

8bitのピコピコサウンドの時代からいまは普通の音楽と何ら変わりのないサウンドとなったが、ゲーム音楽の幅が広がったのはいつからなのだろうか。

hally:ゲーム音楽の歴史はハード容量の歴史と重なる部分があって、1994年の初代プレステ以降、音楽で使える容量も増えていったことが広がっていくきっかけにもなったと思います。
あっこゴリラ:なるほど~。
hally:ゲーム音楽は自由に見えて実は時間の制約が厳しかったりするんです。それがゲームの中のゲーム音楽らしさなんじゃないかっていう考え方もありますね。
あっこゴリラ:現在、ゲーム音楽とクラブミュージックの関係で言うとどういった音楽シーンがあるんですか?
hally:昨今、VaporwaveやSynthwaveというジャンルがありますが、その中でもゲーム音楽の影響は大きくあると思います。
あっこゴリラ:私はそれで食らいましたね。
hally:そういうVaporwaveやSynthwaveといったレトロモダンな音楽の中で、ゲーム音楽を概念的にフィーチャーする動きがあります。特にSynthwaveは、ジャンルの別の呼び方で「アウトラン」と呼ばれていて、このアウトランというのは80年代に大ブームを起こしたドライビングゲームの名前で、サウンドそのものにはダイレクトな引用が見られなくともそこへの憧憬(しょうけい)を示していると思います。

最後に、ゲストのお二人にゲーム音楽とクラブミュージックがこれからどうなっていくと思うか訊いてみた。

KSUKE:このご時世、ゲームやる人がすごく増えたと思います。そんな中、去年はフェスとかできなかったので、バーチャルの世界でフェスをやるアーティストがたくさんいました。今後はそういうゲームの大会と音楽のフェスが融合するみたいことが出てくるんじゃないかなって思います。
hally:ゲームサウンドの世界ではAIをどうやって使っていくかだと思います。実際、AIによって展開が変わっていくみたいなゲーム音楽がもうけっこう出てきてて。それがクラブミュージックと組み合わさって、“AIに踊らされる”みたいな新しい体験が出来たりしたらおもしろいんじゃないかなって思います(笑)。

J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。

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