ハリー杉山が思う「コミュ力」の本質とは? ラジオの相棒・長濱ねるの印象も明かす

ラジオ、テレビ、イベントと、多様なメディアで活躍するハリー杉山。J-WAVEでは現在『POP OF THE WORLD』(毎週土曜6:00~8:00)を、長濱ねるとツインナビゲート中だ。同番組にはかつて乃木坂46・齋藤飛鳥も出演。飾らないトークで、後輩たちをやさしくリードする存在と言える。

そんな彼も、2011年のナビゲーター就任当初は失敗続きで、「僕のナビゲーター人生はここで終わる」と感じたこともあったという。さらに、由緒正しい家柄ゆえの挫折も経験したそうだ。さまざまな壁を乗り越えてきたハリーに、「コミュニケーションのコツ」や「挫折の受け止め方」をインタビュー。番組の相棒である長濱ねるの印象も訊いた。

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「下手くそ」という評価を超えて…10年を振り返る

──ハリーさんのナビゲーターデビューは2011年の『PARK IN THE SKY』でしたね。もともと、ラジオにどんな印象がありましたか?

ラジオは子どものときからよく聴いていました。イギリスにいるときにもBBC RadioやCapital FMとかを愛聴していて、ナビゲーターは憧れの存在。オーディションでまさか自分に決まるとは思っていなくて、うれしかったですね。

でも、いざ始めてみると全然うまくいかなくて、続けていけるか不安でした。当初は自分の名前を検索すると、関連ワードに「下手くそ」という言葉が出てきたことも。番組が1年で終了したタイミングで、「ああ、僕のナビゲーター人生が終わるんだな」と思っていたんです。でも、スタッフさんやリスナーさんに支えていただけて、今ではジョン・カビラさんやクリス・ぺプラーさんなど、子どものときから聴いていた方の代演も務められるようになりました。あの試行錯誤の日々がなければ今の芸能生活もなかったし、ラジオの仕事が僕の軸になっています。

──特に印象的だった出来事は?

『PARK IN THE SKY』の最終回に、ディレクターがMuseのライブ音源をミックスして、オープニングに流してくれたことです。当時いろいろ悩みや葛藤があったのですが、そのオープニングを聴いて、「絶対に次につなげてやろう」と思わせてもらいました。ほかにも、あの番組のプロデューサーが今『SAISON CARD TOKIO HOT 100』のプロデューサーをされているのですが、先日クリス・ぺプラーさんの代演を務めたときに、「うまくなったじゃん」と褒めてもらえて、すごくうれしかったですね。ほかにも『PARK IN THE SKY』のスタッフさんには今でもお世話になっているし、いつか恩返ししたいなと思っています。

番組の相棒・長濱ねるは、細やかにエンタメを愛する人

──今、担当する『POP OF THE WORLD』は今年で6年目。ハイテンションなナビゲートが特徴ですね。どんな気持ちで番組を届けていますか?

素敵な週末を迎える起爆剤になる番組でありたいと思っています。コロナ禍で視線が下がりがちな状況なので、前を向くきっかけを与えられていたらうれしいですね。僕も実は5時59分45秒くらいまでは、「眠いな~」と思っていたりするんですけど(笑)、オープニングが流れると急にエンジンがかかります。番組が海外のラジオみたいにテンポが速く、次から次へと音楽をいっぱいかける構成なので、僕もテンションを保ちながらお届けできていますね。

──今年の4月に番組がリニューアルし、長濱さんとのツインナビゲートに。半年以上が経ちましたが、いかがですか?

めちゃくちゃ楽しいです。僕がワーワー言っているところをまろやかに包み込んでくれるので、いいバランスを保てていると思います。ねるちゃんは、一人で海外アーティストのライブを観に大阪に遠征したこともあるほどエンタメを愛する人。映像作品に関しても「1時間6分35秒のあの人の表情が……」なんて細部を観ているのが印象的です。作品を観ていかに心が動いたかを自分の言葉で語ってくれるし、お互いの考えを正直に話し合えるようになってきて、あうんの呼吸が生まれている気がします。

ラジオで大事にするのは「ファミリー感」

──番組やSNSからは、リスナーとの距離の近さもうかがえます。

番組を通じてリスナーさんと距離感を近づけることは難しいことなんですけど、SNSでもメッセージをたくさんいただけてありがたいですね。(齋藤)飛鳥ちゃんが出ていたときもそうだったんですが、はじめは僕を警戒するファンの方もいらっしゃるんです。でも、番組をお届けするうちに「ハリー兄貴」と呼ばれるようになって(笑)。「ハリー兄貴なら認める」って言ってくれるようになったんですよ。今では男性のリスナーさんもすごく増えました。

リスナーさんとの交流と言えば、毎年六本木ヒルズで開催している「J-WAVE LISTENER’S MARKET」(※リスナーが参加するマーケットイベント)も印象深いですね。僕は『PARK IN THE SKY』のときから参加していて、最初に会ったときは5歳くらいだった子が中学生くらいに成長していたり、久しぶりに会ったリスナーさんから「うちの旦那が去年亡くなってね」と伺って心を寄せ合ったり……やっぱりラジオはファミリー感が一番大事なメディアだなと実感するイベントです。

コミュニケーションを円滑に進めるために

──ハリーさんは、長濱さんや齋藤さんといった若手をリードしたり、テレビやイベントも含めていろいろな場の方にインタビューをしたりと、コミュニケーションのプロだと思います。そんなハリーさんが思う、「コミュニケーション能力の高い人」とは?

「人の言葉をちゃんと聞く人」だと思います。僕がナビゲーター1年目で失敗をしたのは、相手の言葉を待たずにガツガツ話してしまったから。相手の言葉を本当に理解したあとに言葉を投げ返すことが大切だと思います。

やっぱり人に興味を持たないとダメなんですよ。10代、20代は主観的になりがちだけど、そこから一歩引いてみて、相手が何を考えているのか、相手が今言ったことは何に対して向けている言葉なのかということをちゃんと受け取ってキャッチボールをすれば、自然とコミュニケーションはうまくいくと思います。

──どうしても緊張してしまった、なんてことはありますか?

ありますよ! 初めてのテレビの仕事で吉井和哉さんにインタビューしたときは頭が真っ白になって、そのときは一緒に話をうかがっていたSHELLYがリードしてくれました。

インタビューでは、相手の表層ではなく、本質を見ることを大事にしています。例えばアーティストさんなら、作品を通じて何を伝えようしているのかを考える。これは基礎中の基礎です。家族や友だち、パートナーなど誰に対しても、相手とちゃんと向き合うことを意識するとコミュニケーションはスムーズになるはず。

失敗や挫折で人は強くなる

──失敗や挫折の経験から、コミュニケーションに恐怖心を抱いている方もいると思います。ハリーさんはどう乗り越えてきましたか?

失敗や挫折は、違う角度から見れば自分を上に持ち上げてくれるきっかけなんだと思います。そう思えたのは父から言われたある一言がきっかけで。

僕のイギリス側の一族は、みなオックスフォード大学やケンブリッジ大学など、超名門大学出身なんです。でも、僕はその一族の400年くらいの歴史のなかで初めて、それらの大学に受からなかった。ずっとコンプレックスに感じていたけど、2013年に仕事で父にインタビューをした際、父から「You failed upwards.(おまえは上に向かって失敗したんだ)」と言われて。受験には失敗したかもしれないけれど、失敗がなかったらこうやってタレントとして日本で活躍することはなかったと。そう言われてから、失敗や挫折は「次につなげればいいや」と思えるようになりました。挫折をすることでどんどん心身ともに強くなっていくわけだし、苦い経験をすればするほど、甘い経験ももっと甘く感じられますよね。まわりの人への感謝の気持ちもより感じるし。だから、挫折して「人生終わりだ」ではなく、「挫折してナンボだ」というふうに思えばいいのではないでしょうか。

──ハリーさんは失敗や挫折をしたときに落ち込みますか?

仕事に関しては、そこまで落ち込むことはないですね。切り替えないと悪循環にどんどんはまって抜け出せなくなっちゃうので。落ち込むとしても1日、2日くらいで、周りの人に話したり趣味のランニングをしたりしてすぐに切り替えます。あとは、認知症で介護施設にいる父とやっと面会が許されるようになったので、その時間は僕の精神安定剤となっています。

「激辛カレー」が由来! テンションを上げる一曲

――早朝の放送でもテンション最高潮のナビゲートでリスナーに元気を与えてくれるハリーさん。テンションを上げたいときに聴いている、おすすめの一曲を教えてください。

Fat Lesの『Vindaloo』です。この曲は1998年のFIFAワールドカップに向けて作られたイングランドの応援歌なんですけど、タイトルの「Vindaloo」は世界で一番辛いカレーを指します。イギリス人はこのカレーを食べられるかどうかでかっこよさを決めたりするんです。くだらないですけど、テンションが上がって好きですね。イギリス人はだいたい、パブでこの曲がかかると大合唱になるんですよ。

あとは、フランツ・フェルディナンドの『Take Me Out』。彼らの王道曲ですけど、やっぱりわかりやすい、とにかく気分の上がるロックはいいですよね。スコットランド・グラスゴーのバンドですけど、やはりスコットランドは寒いので、その寒さを「ロックで、おしゃれに吹っ飛ばせ!」というパワーが好きですね。



(取材・文・撮影=J-WAVE NEWS編集部)

ハリー杉山 プロフィール

東京生まれ、イギリス育ち。イギリス人の父と日本人の母を持つ。日本語、英語、中国語、フランス語の4か国語を話せるマルチリンガル。現在は、「ノンストップ!」(フジテレビ)、「ランスマ倶楽部」(NHK BS1)、「どーも、NHK」(NHK)、などにレギュラー出演中。タレント、MC、モデルとして、様々なメディアで幅広く活躍中。

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