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クリープハイプ・尾崎世界観とSHISHAMO・宮崎朝子に共通する「歌わないこと」は?

クリープハイプ・尾崎世界観とSHISHAMO・宮崎朝子に共通する「歌わないこと」は?

クリープハイプのギター・ボーカルの尾崎世界観がJ-WAVEで7月10日(土)、音楽のルーツや楽曲作りについて語った。

尾崎が登場したのは、J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。7月のマンスリープレゼンターはSHISHAMOのギター・ボーカル宮崎朝子が担当している。

クリープハイプは7月16日(金)、ライブイベント『J-WAVE THE KINGS PLACE LIVE Vol.20』に出演する。詳細はこちら(https://www.j-wave.co.jp/topics/entry_kings20/?jw_ref=kings20_news)。

ライブは「楽しいだけ」ではない

SHISHAMOは2020年9月まで半年間、J-WAVEの番組『SPARK』の月曜ナビゲーターを担当していた。同番組が終わる際に尾崎は番組宛にお花を贈ったそうで、宮崎は「すごく嬉しかった」と振り返る。

宮崎はまず尾崎に一番古い音楽の記憶を訊いた。

尾崎:家でずっと父親が聴いている曲が流れていて、自由になるものではなかったんです。学校でも音楽の授業があって。自分の力では動かせない、どうにもならないもので。その音を聴いていないと生活が進まなかったから、ちょっと苦痛だと思っていましたね。
宮崎:好きだった瞬間はあるんですか?
尾崎:小学校高学年くらいかな。レンタルビデオ屋で中古のCDを買うようになって、ケースを順番に並べて勝手にランキングをつけていました(笑)。

尾崎は歌うことにも昔から消極的だったという。一方の宮崎はベビーカーに乗っている頃から歌うのが好きだったと話す。ボーカルとして歌う感覚は異なる2人だが、ライブ観について話が及ぶと意見が合致する。

宮崎:ライブは好きなんですけど、楽しい気持ちよりも大きなものがいろいろあります。プレッシャーとか。その日に初めて来たお客さんはそのライブがよくないとその後は絶対に来ないので、どうしても楽しい気持ちだけではやれない。ライブが楽しそうなバンドがうらやましいです。
尾崎:同じ感覚ですね。いいライブなら楽しいけど、なかなか難しいですよね。
宮崎:お客さんが楽しんでくれることが一番と思いつつも、自分の中ではいろいろありますよね。
尾崎:ステージに出て行く瞬間は楽しいので、それだけで終わりたいですね。
宮崎:出て行って戻る(笑)。
尾崎:そのままハケていくっていう。歓声で迎えてもらってから2時間くらい、どうなるかわからないからプレッシャーですよね。

宮崎にとっていいライブの基準は、自身が曲に集中できたかどうかだという。

尾崎:たまに全く集中できないライブってありますよね。なんでかわからないですけど、ステージに立つ自分から自分が離れていく感覚があって悲しくなるときがあります。そういうときに限って一番前で楽しそうに聴いてくれているお客さんの顔が見えて「くそ、なんでなんだろう」と思いながらやっているときもあります。
宮崎:でもお客さんが喜んだらそれが正解なんだろうなって。
尾崎:だからそういうズレには救われますよね。

軽音部への敵対心…そのおかげで今がある?

高校で初めてバンドを組んで、路上での弾き語りやライブハウスを中心に活動していた尾崎は、軽音部に対して「こいつらはどうせここで終わるんだ」と敵対心を持っていたと話す。

尾崎:こっちはライブハウスでやっていることだけを心の拠り所にしていたんです。実際はノルマを取られてライブハウスにも相手にされていなかったんだけど。でも、軽音部(への反発心)のおかげで今があるかもしれない。
宮崎:私は軽音部でした。そうか、そういうふうに見ている人もいるかもしれないですよね。うちはけっこう環境が整っていて、スタジオが2つ、ドラムセットも2つあって。今思うと(そういう環境は)あんまりないですよね。
尾崎:ないね。高校のときはスタジオの予約が当日予約だと半額になったんだけど、お金がないからそれしか入れなくて。受付開始時間になったら授業中に必ずトイレに行ってトイレの個室から予約してたんですよ。毎回。
宮崎:スタジオは高校生にとっては高いですよね。
尾崎:高いよ、本当に。きつかったなあ。
宮崎:うちは学校にスタジオがあったので。
尾崎:真逆の環境ですね。

音楽のルーツを問われると答えに迷う尾崎。自分が実際に音楽をやるようになって「認めたくない」という気持ちもあるという。

尾崎:いっぱい聴いたし、影響も受けたと思うんだけど、証拠がないからなんとも言えない。でも家でずっと流れていたのは、かぐや姫かな。歳を取ってから聴いたらやっぱり「いいな」と思うし、歌詞やメロディーが自分の中に染み付いていたんだなと思いました。あと、もともと弾き語りでは、ゆずをやっていたので、そのときに覚えたコードで曲を作っています。歌詞も明確に影響を受けたものはないけれど、竹原ピストルさん(が組んでいたバンド)の野狐禅とかフラワーカンパニーズは好きですね。

尾崎は自身の作詞状況を歯みがき粉に例えてこう話す。

尾崎:どうしたら出るかなって。今はもう歯みがき粉の真ん中をハサミで切って指ですくっている状態。
宮崎:じゃあ、書くということが先にあって作り始めるんですね。
尾崎:もう歯みがき粉の匂いしかしないかもしれない(笑)。それくらい枯れていて、テーマを見つけてそこから広げていくことが多いです。宮崎さんは最近、感情をストレートに歌っていますよね。
宮崎:「物語みたいに楽しんでほしい」という書き方から、もっと自然に自分が普段感じたことを広げる書き方をしていますね。
尾崎:明確に相手がいる感じがします。そういうふうに書きたいけど、うまいこと言いたくなっちゃうんですよね。作品にしてしまうのが悩みです。
宮崎:でもそれを好きな人がたくさんいるのでもう正解ですよね。
尾崎:間に人が入っている感じがしますね。自分が歌詞を書いているんだけど、それを点検している人がいて、少し人工的になるというか。
宮崎:クリープハイプを聴いていると真逆な感じがします。尾崎さんのことは知らないけど「この人」が現れている。歌詞に共通点や出てくる人間の一貫性があって、それが尾崎さんの声で歌われるからクリープハイプなんだなというか。だから意外でした。

ふたりは基本的に自分のことを歌わない

曲や歌詞によって歌い方を変えているという宮崎。歌詞は自身のことを書いているのではなく、レコーディングの際には、「この子(歌の主人公)は結局、何が言いたいんだろう」と考えてから歌うという。

尾崎:物語を書くように歌詞を書いているんですね。それを自分のことだと思わせているのは成功していますね。
宮崎:思われているんですかね? すごく嫌なんですけど。
尾崎:あははは(笑)。
宮崎:自分のことじゃないのに、歌詞によって「彼氏できたな」「ふられたな」と言われるので、もう「基本的に自分のことではありません」と言っています。
尾崎:でも聴いている人は思っちゃうんだよな。「そんなこと言ってもどうせ……」って(笑)。自分も自分のことを歌わない。逆に歌えないですね。
宮崎:自分のことを歌っているイメージでした。
尾崎:全然なんですよね。どんなに悲しいことがあってもそのまま歌にできないので、コンプレックスでもあります。たまには自分のことを歌いたいなって思うな。
宮崎:クリープハイプの『バンド ニ〇一九』がすごく好きなんですけど、あれは自分のことを歌っていますよね?
尾崎:あれは違ったらサイコパスだよね(笑)。

宮崎:『バンド ニ〇一九』はバンドをやっていたらみんな泣くと思います。めちゃくちゃ好きです。

宮崎は、嫌なことが重なってどうにもならないときにクリープハイプ『陽』に救われたというエピソードも語った。

タイアップ楽曲を作る難しさ

クリープハイプの新曲『四季』を聴いて、宮崎は前向きな気持ちが強くていつもとは違った印象を受けたという。同曲はリモートで制作されたそうだ。

尾崎:いつもはスタジオでメンバーと向かい合っているし音も大きいので、なんとなくいい感じになるんですよね。それでレコーディングになると「ショボかった」となることが多かったので、今回そのことに気付けましたね。バンドのいいところなんですけど、曲を作る上では邪魔なところだなと。
宮崎:うちはそもそもスタジオの音が小さいのかも。だからレコーディングのときはギャップがないです。
尾崎:うまい人たちは音が小さいんですよ。iPhoneでスタジオの演奏を録ると、なんかいい感じになるので、あれで騙されるんです。

『四季』はテレビ番組『奇跡体験!アンビリバボー』(フジテレビ系)のエンディングテーマとなっている。宮崎はタイアップの楽曲制作の悩みを尾崎に相談した。

宮崎:自分たちが見せたい音楽とタイアップで求めてもらう音楽の両立が難しい。
尾崎:昔は気にしていましたけど、こっちはずっとその曲を演奏していくので、あまり気にしなくなりました。ただでさえテーマに迷っているから、お題をもらってラッキーかなという感覚でやっていますね。ソフトバンクのCMで『ニガツノナミダ』をやったときは、アートディレクターの方と一緒に作ってすごく楽しかったです。あれはCMにすごく寄せていて、クリープハイプの曲では使わない「Wi-Fi」みたいな歌詞も入っているんですけど、その方との信頼関係があって「使おう」と思えて、すごく大事な曲ですね。

【関連記事】尾崎世界観が語る、『ニガツノナミダ』制作秘話

宮崎:関係性って大事ですよね。
尾崎:いつも聴いてくれている人たちが「魂を売ったな」と言うときもあるけど、そういうときほどちゃんとやれているんですよね。
宮崎:向こうがどんな気持ちでお願いしてくださったのか、こっちが何を返せるかですよね。

『WOW MUSIC』はJ-WAVEで土曜24時-25時。また、『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。

・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ
https://www.youtube.com/c/musicfun_jp

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