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なぜAK-69の言葉は“闘う人”に響く? WANIMA・KENTAが対談

なぜAK-69の言葉は“闘う人”に響く? WANIMA・KENTAが対談

J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい"音楽をつくるクリエイターが“WOW"と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる。

5月のマンスリープレゼンターはWANIMAのKENTA(Vo/Ba)が担当。初回となる5月1日(土)のオンエアでは、ラッパーのAK-69をゲストに迎えた。ここでは、AK-69が影響を受けた音楽や楽曲への思い、新曲『I’m the shit feat. ¥ellow Bucks』について語った場面を紹介しよう。 対談は、動画でも配信中。

ふたりが音楽を始めたきっかけ

今回が初対面のふたり。KENTAはかねてから、AK-69のマインドやモチベーションなどを直接訊きたかったと思いを伝えた。まずは、音楽との出会いを質問。AK-69が初めて自分のお金で買ったCDは、とんねるずの『ガラガラヘビがやってくる』で、歌詞を覚えるために手にとったのだそう。影響を受けた音楽として、中学2年生で出会った尾崎 豊の曲を挙げる。

AK-69:幼なじみの友だちが家で(尾崎 豊の)曲を聴いていて、それで衝撃を受けたね。その頃は尾崎さんが亡くなる直前で。アルバム『放熱への証』に収録された『汚れた絆』って曲が思春期の自分に刺さって、「俺もこういうことをやりたい」って思った。
KENTA:僕が尾崎さんを知ったのは本当に最近ですね。僕は熊本県天草市出身なんですけど、(地元は)人口が2000人くらいの……東京で言ったら新木場STUDIO COASTくらいのキャパの街なんですけど(笑)。
AK-69:ははは(笑)。新木場STUDIO COASTって小さすぎでしょ(笑)。
KENTA:あれで人口が埋まるくらいの街で育ったから、情報が本当に入ってこないんです。東京に出てくるようになってからいろんな音楽を知るようになりました。

KENTAが音楽を始めたきっかけは中学校での文化祭。バンドを組み、自分たちでオリジナル曲を制作していた。演奏していた場所は、なんとパチンコ店の跡地だという。

KENTA:パチンコ屋の店長が夜逃げして、そこの土地をたまたま僕のおやじが持っていて。パチンコ台を全部自分たちで出して、そこを平たくしてテーブルを作ってお客さんを入れてライブとかをしていました。
AK-69:すごいね。初めから自分たちだけでやっちゃうんだね。
KENTA:自分たちでやらないと誰もやってくれなかったので。
AK-69:最初に憧れたアーティストは誰だったの?
KENTA:僕はバンドをやっているけど、もともとヒップホップとかレゲエが大好きだったからバンドはあんまり聴いてこなかったんですよね。
AK-69:へえ、そうなんだ。
KENTA:僕は熊本出身なので、当時は餓鬼レンジャーとか聴いていました。
AK-69:すごいね。WANIMAにそんな影響を与えてたなんてね。

“闘う人”に愛される理由

AK-69の曲はアスリートや格闘家の入場曲として使われることが多い。AK-69自身がそれを狙って制作しているわけではないため、「あとあと知ってすごく光栄に思うし、ビックリする部分もある」と心境を明かした。

AK-69:(そういった層から支持されるのは)どうしてだろうと考えたときに、やっぱり自分のドラマを歌ってるってことと、自分のドラマは常に闘っているマインドだからってことが大きいのかなって。リスクとかも全部自分で背負って。

エンターテインメントの世界は答えがない。時代によって目まぐるしく変わる、浮き沈みが激しい業界だ。その中でAK-69は閉塞感や停滞感を覚えながらも、自分を奮い立たせ、まわりが「無理だ」と思うような挑戦もしてきた。

AK-69:ものすごく怖いんだよね。ただでさえ失敗するかもしれない、ちょっとうまくいかなくなってきてるってときに、みんなが反対するような挑戦をするのは。でも、現状の自分を追いつかせるための努力を惜しまずやってみる。リアルにそういう状況に自分を置いたときに生まれる言葉って、それこそ言霊になると思うんだよね。だから自分のことを歌っているんだけど、ただの言葉じゃない魂ののった言霊になって、自分を追い込んで闘っている人たち、それがアスリートじゃなくても、経営者だろうと学生だろうと何だろうと、自分と向き合って闘っている人に自ずと響くメッセージになっているのかなって、僭越ながら思っているんだけどね。

AK-69は「WANIMAはみんなを鼓舞する曲が多い」と表現。KENTAは「自分に歌っているところもある」と話しつつ、「ライブに来る子たちが普段、僕らが知らないところですごく闘っていることを知っているから、ライブとかWANIMAの音楽を聴いているときくらいは気を休めてほしいという思いがある」と語る。

KENTA:だからお客さんのこともすごく意識はするけど、自分のOKラインや自分がどういう人間かということをWANIMAがやっている音楽で証明したいってところがあります。
AK-69:WANIMAの音楽ってすごく人柄が出てるよね。音とリリックにも。だから画面で見ていて、しゃべったことがなくても真っすぐな人たちなんだろうなってことはすごく感じる。これでねじ曲がってたら、やばいけどね(笑)。でも、その真っすぐさはすごく感じたね。
KENTA:うれしいです。そこさえ伝わっていたら他の人にどう思われてもいいです(笑)。
AK-69:歌っていないメンバーも、その眼差しとか楽しんでる感がすごく伝わってくるし、だから売れてるんだな、それが伝わってるんだなって画面越しでも感じたね。素晴らしい。

ヒップホップの輝く瞬間は、文脈が光ったとき

AK-69は4月に配信シングル『I’m the shit feat. ¥ellow Bucks』をリリースした。AK-69の盟友TOKONA-Xが残した名盤『トウカイXテイオー』の1曲目『They Want T-X』をDJ RYOWがリメイク。AK-69と“ヤングトウカイテイオー”こと¥ellow Bucks、そしてDJ RYOW、TOKONA-Xによる名古屋を代表するアーティストの豪華共演となっている。

AK-69 「I’m the shit feat. ¥ellow Bucks」 (Official Video)

AK-69:楽曲の細かいテクニックとかはあるんだけど、何を置いても、ヒップホップの輝く瞬間って文脈が光ったときなんだよね。

今、飛ぶ鳥を落とす勢いのラッパー、¥ellow Bucksは、小学5年生のときにAK-69のターニングポイントとなった曲『Ding Ding Dong 〜心の鐘〜』と出会う。そこからヒップホップを知り、この道に入ったという。

AK-69 / Ding Ding Dong 〜心の鐘〜 at 日本武道館(THE ANTHEM in BUDOKAN 2019.03.30)

そして2020年、AK-69は¥ellow Bucksを迎え、『Ding Ding Dong 〜心の鐘〜』を大胆にサンプリングした『Bussin' feat. ¥ellow Bucks』をリリース。『I’m the shit feat. ¥ellow Bucks』は¥ellow Bucksとの第2弾楽曲となる。

AK-69 - 「Bussin’ feat. ¥ellow Bucks」 (Official Video)

AK-69:当時、衝撃を受けた『Ding Ding Dong 〜心の鐘〜』をサンプリングしてDJ RYOWとやるっていうドラマが、『Bussin' feat. ¥ellow Bucks』のポイントなんだよね。そして、最新曲『I’m the shit feat. ¥ellow Bucks』は、亡くなった盟友のTOKONA-Xの『They Want T-X』をリメイクしてやったっていう文脈が、リスナーが知ってか知らずか、そのドラマが宿っている曲ってなんか違うんだよね。
KENTA:ちゃんと点と点が全部繋がってますよね。
AK-69:そうだね。そこが大事だよね。かっこいいやつを招いて、かっこいい曲ができましたっていうことだけじゃない、それを超越するドラマみたいなものが備わっていたときに、ヒップホップってめっちゃ光を放つっていう。そこがヒップホップのかっこよさでもあるんだよね。それが凝縮されたような曲だね。

1秒も後戻りしたくない。「今が最高」という自信を持ってやってきた

先日、AK-69のドキュメンタリー番組『Talk About AK-69:FADE TO RED』(BSフジ)が放送された。KENTAは非常に感銘を受けたという。AK-69は「ここまで前線で闘い続けさせてもらっているのは、ひとえに感謝」と言う。

AK-69:ずっと長いことやってきて、ダメかもしれないとか何やってもうまくいってたときみたいにリアクションが返ってこないとかあったけど、その中でもテンションを上げていって自分のやりたい音楽を作ってそれに興奮してライブのことを考えて、みんなの顔とか想像してそこでゾワゾワってして。これを今でもやれてるって本当に感謝でしかない。

「俺は褒めてもらえるような素晴らしい人間でもないのよ」と謙遜しながら、音楽には真摯に向き合ってきたと語る。

AK-69:俺は褒めてもらえるような素晴らしい人間でもないのよ。クソなところのほうが多いから。でも音楽に関してだけは本当にリアルにぶつかってきた。だから今まで自分のダメだった部分、ガキの頃にものすごく道を外していたこととか、音楽を始めて遠回りしたことだってあるんだけど、それも全部含めて今のドラマになっていると思ったら、俺は1分も元に戻りたくないというか。1秒でも前に戻りたいって思わないもんね。今が最高って。だからいつ死んでもいいと思ってる。死にたいとは思ってないけど、いつ死んでも大丈夫だと思ってやれてる自信はあるね。

最後に、AK-69は今後の目標についてこう語った。

AK-69:ヒップホップって海外ではポップスとしてもいちばんメジャーな音楽になっているんだけど、日本ではまだそこまでにはなっていなくて。だから自分のプロジェクト以外で、ヒップホップがもっと日本においてお茶の間化されたり、格付けがもっと上がるようなことをしていきたいね。

AK-69の最新情報は、公式サイトまたは、オフィシャルTwitterまで。

番組では他にも、AK-69が楽曲制作やライブ、コラボしたいアーティストを語る場面もあった。

『WOW MUSIC』はJ-WAVEで土曜24時-25時。また、『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。

・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ
https://www.youtube.com/c/musicfun_jp

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番組情報
WOW MUSIC
毎週土曜
24:30-25:00