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震災後に女川町の雇用を守った、若き経営者。10年を経て今の想いは

(女川駅前/画像素材:PIXTA)

震災後に女川町の雇用を守った、若き経営者。10年を経て今の想いは

東日本大震災から10年が経過した。J-WAVEでは震災直後より、被災地の人々の想いや復興への道を歩む人々の声を「HEART TO HEART」と題して継続的に伝えてきた。震災から10年を迎える今年の3月11日(木)は、東北を想う特別編成として、各番組でトークや弾き語りなどの企画を実施した。

そのひとつとして、被災地の今を伝え続けてきた番組『Hitachi Systems HEART TO HEART』の歴代ナビゲーターが番組で印象に残ったエピソードを語る企画があった。ここでは政治学者の姜 尚中のコメントをお届けする。オンエアは3月11日『STEP ONE』。

「被災地」という言葉でくくらず、地域の個性が見える関わり方を

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姜 尚中

姜は2017年度に『Hitachi Systems HEART TO HEART』のナビゲーターを務めた。

姜:1年間を通じていろいろな人と出会い、そしていろいろな人の言葉を聞き、非常に印象深い方々が多かったんですが、そのなかでも特に女川の「高政」でかまぼこをお作りになっている若き経営者の1人であった高橋正樹さんにお会いしたこと。これが本当に私にとっては印象深かったです。

姜がなによりも関心をしたのは、震災後に高橋さんがあえて先行投資をするなどして地元・女川町の雇用を守ったこと。そこに高橋さんの意気軒昂(いきけんこう)とした、苦難を前にしても奮い立つ様子を感じ、驚いたという。

姜:やはりあれから10年……まだ10年という、いろいろな想いがあると思います。遠く離れた場所から見ると、ただ「被災地」という言葉でくくってしまいがちなんですが、人それぞれに個性があるように、被災地といっても地域間のさまざまな違いが目立ちました。その違いのなか一人ひとりの個性が輝くような取り組みがされているので、私はやはり被災地という言葉を使うよりは、具体的な地名を今後メディアのなかでも語っていってほしいなと。人の顔が見える、地域の個性が見えるような関わり方をしていく必要があるのではないかなと思いました。

「高政」の4代目社長、高橋さんの想い

宮城県女川町の高橋正樹さんは、かまぼこ会社「高政」の4代目社長。復興の先頭に立って奮闘を続けている。高橋さんは震災後の10年を「人生観がガラッと変わってしまいました」と語った。

高橋:震災前は普通に「かまぼこ屋のせがれ」として生きていたんですが、「自分のふるさとがなくなってしまう」という危機感をものすごく持ちました。町の8割近くの建物がなくなって、11人に1人が亡くなるという状況で、「自分になにができるのか、自分が今しなくてはいけないことはなんなのか」というのをずっと毎日繰り返しながら生きているうちに、「自分は誰のために生きているのか」というところに僕の考えは行きつきました。最終的に復興のゴールというものをまずは10年と定めるうえで「誰を幸せにするのか」というところに行きつきました。

高橋さんは、ひどい目にあった女川町だからこそ「生き残った人たち、ここで生きていく人たちは震災前よりもっと幸せであるべきだ」という想いに至ったという。

高橋:ただの元の町に戻すのではなくて、よりすごしやすい町、楽しい町、それで我々の生きてて楽しいという町にいろいろな方々が訪れて、アクティビティとかコンテンツといったものを楽しんでいくという、ハッピーな町にしたい。だからあまり悲壮感を持って、この10年をすごすことはなかったです。明るく楽しいまちづくりをがれきだらけの町でもやっていって、明るく復興を目指すということを……空元気と言われるかもしれませんが、がれきのなかで笑ってまちづくりをするということをやってきて、10年かけてできた町というのは、大変楽しい町になったかなと。予定通りにこの町は復興が進んだから空気感もよくなったし、いろいろな方が訪れて我々の女川町のよさを理解できる町ができた、それがこの10年ですかね。

この10年間で「復旧・復活・復興」の3段階を経てきたという高橋さん。今後のまちづくりについて「いろいろな方に訪れていただいて『ここってたくさんの人が亡くなったんだ』より『日本にこんないいところがあるんだね』と思ってもらえるような町にしていきたい」と意気込みを語った。

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2020年3月18日28時59分まで

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STEP ONE
月・火・水・木曜
9:00-13:00

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