料理研究家・土井善晴が伝授する「おいしいおむすびの作り方」 米の洗い方が肝心!

料理研究家・土井善晴が、「食べる」「料理をする」ことの意味、そして喜びを考えるラジオ特別番組『J-WAVE SPECIAL ZOJIRUSHI TO EAT IS TO LIVE』が、2月11日(木)にオンエアされた。ナビゲーターはクリス智子。

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ここでは、土井のスタジオからお届けした『リモートおむすび講座』の模様をテキストで紹介。J-WAVE公式Instagramでは、動画でも楽しむことができる。

「米の買い方」から意識しよう

ここで教えるのは「おむすびの作り方」ではなく「おいしいおむすびの作り方」だと強調した土井。米を買うところから、心構えを教えてくれた。

土井:おいしいおむすびを握ろうと思ったら、おいしいご飯を炊かないといけません。おいしいご飯というのは、それこそ白米を洗うとことから始まります。白米を触るとヌルッとした米ぬかがついているんです。昔は米にたくさん米ぬかがついていたものですから「米を研ぐ」と言っていたんです。米ぬかがあんまりつかないようになって、そういう言葉がなくなりました。米ぬかのつかないお米というのは、裸みたいなお米なんです。
クリス:ということは?
土井:袋を開けるとすぐに風邪をひいたり寒がったりして、食味が落ちるんです。精米したてがおいしいというのは、挽きたてのコーヒーの香りがいいみたいなのと同じで、風に当たってなくて酸化していないから。袋を空けたら早く食べないとアカン。全然違います。米びつにたくさん入れておいたら、いまのお米って早く悪くなるんです。米屋さんと相談をしながら少量ずつ買ったり、精米したてを買うのがいいんですね。
クリス:まずは買うところからなんですね。

米は丁寧に洗おう。炊くのは「急速モード」でもOK

米を洗う際は、ザルの上に乗せてたっぷりの水で流し、水気を切ったあとにすり合わせるようにして洗い、水を変える作業を繰り返していく。水は何度も変えよう。

土井:私は「完全にきれいになるまでするとおいしく炊きあがる」と言っています。確実にそうなんです。この米ぬかのなかに雑菌が潜在的にものすごくいるんです。米のとぎ汁がにごっているぐらいで炊きますと、火が入っても雑菌がいる。だからきれいに研いだほうが、ご飯の“持ち”がいいんです。
クリス:洗い方で変わってくるんですね。

水が完全に澄みきるまで洗い、ザルにあげて30分くらいすると、米が吸水して膨らむ。しかし、それ以上の放置はNG。乾燥して米が割れてしまう。ビニール袋に入れて冷蔵庫に保管しよう。

土井:水に浸しっぱなしにすると、ばい菌だらけで炊くことになってしまうんです。だから「洗い米」にしたら冷蔵庫に入れておくんです。

洗い米はご飯を炊くときになったら冷蔵庫から取り出して炊飯器に。このときの水加減は「洗い米と同体積」にするのが基本だという。

土井:大事なことはきれいな水を加減しながら入れたら、すぐにスイッチを入れること。水と出会うと、その出会った瞬間から発酵が始まるんです。発酵だったらいいけども、雑菌が増えると腐敗のほうもありますので。そして私は「急速炊き」にします。
クリス:急速でもいいんですね。
土井:だいたい3合ぐらいだと25分ぐらいで炊きあがるということで。速いでしょ? (前の日に)洗い米にして寝て、起きたら水加減だけをしてスイッチ入れて急速炊きにしておいて、25分で身だしなみを整えておいて、さあおむすびと。そして握って5分したらピュッと出て行けると。
クリス:そういうタイムスケジュール(笑)。
土井:それができるんですよ。

おむすびを置く場所、手の洗い方にも要注意

土井は、おむすびをいったん置いておくための杉板を用意。まな板ではないのがポイントだ。

土井:まな板は魚を切ったりタマネギを切ったりね、匂いがしないなと思っても熱いのを置いたら匂いが上がってきよるんです。何もしていないのにタマネギ風味のおむすびとかできて……気持ち悪いでしょ?
クリス:気持ち悪い(笑)。
土井:だからこれは、まな板はアカンと。まあ菓子折りの蓋とかなんかで考えておいてください。そしてお茶碗に水をくぐらせておいて、ここにご飯をいったんよそいます。もうひとつ、清潔なさらしを用意します。
クリス:さらしを買っておくといいですね。
土井:念入りに手を洗います。手を洗うということも大事ですけれども、たとえば手を30秒洗ったら、30秒同じ時間すすぐということが大事です。必ず洗剤が残ってます、すすぎが足らないと石けんの匂いがします。

「携帯食」だからこそ具材選びは重要

すぐ食べるおむすびなら具材は自由だが、持ち運ぶ場合は衛生面を考えて選ぼう。

土井:たとえばおむすびのなかにふりかけを混ぜる。衛生に自分で責任を持てないものを混ぜるということは、雑菌を混ぜ込む可能性があるから、そういうことはしないんです。「いますぐみんなで食べよう」というおむすびはいいけども、これを持って行って5時間、6時間というのは、それはちょっと信用できへんのちゃうかな?と。
クリス:じゃあお弁当とかおにぎりとかを持たせるときに、基本は塩むすびのほうがいい?
土井:基本は塩むすびで、なかに入れる具材というのはやっぱり限定します。
クリス:たとえば?
土井:梅干し、かつお醤油、焼いた鮭もいいですね。生や水分の多いものは入れないというのが基本です。タラコは焼いて入れる。佃煮もいいでしょう、そういう範囲です。外を持ち歩くおむすびは“携帯食”だから。
クリス:これは固めに炊いてますか?
土井:水加減は同量を基本。そこから「お父さんお腹壊しているから柔らかめに」とか、そこに自分の心が入っていくわけです。

仕上げのコツは「作為とか人為をできるだけ入れない」

握るときは熱々のご飯を使おう。手は必ず全体を濡らすこと。そのあと固くしぼったふきんでふきとって全体が湿るぐらいの感じにするといいのだとか。

茶碗を片方の手に持ち、ご飯をよそう。そして、もう片方の手にしぼったさらしを持って、その上にご飯を置く。「キュッ」と包み込むように1度だけ握って、そのまま杉板の上に。その速やかさは、クリスも「ええっ!?」と驚きの声を上げるほど。

最後は手のひらに塩をつけて、軽く握って仕上げる。

クリス:ご飯に触った感じも、柔らかくてフワーッとしてる。
土井:これがおいしいんですよ。
クリス:おいしそう。
土井:一生懸命きれいな丸にしようと思うと、その分だけ空気がなくなったり。手数が増えると、なんていうか、神様からちょっと遠くなっていくんです。だから作為とか人為をできるだけ入れないで作ったのがこのおむすびです。

洗うときは丁寧に、握るときは軽やかに。ここで紹介したコツを取り入れて、おいしいおむすび作りに挑戦してみては。
radikoで聴く
2021年2月18日28時59分まで

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番組情報
J-WAVE SPECIAL ZOJIRUSHI TO EAT IS TO LIVE
2021年2月11日(木・祝)
18:00-20:55

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