J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。「音楽を愛する全ての人と作り上げる「(超)進化型音楽番組」だ。毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。
2020年11月5日(木)のオンエアでは、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』の著者で、音楽学校講師・産業カウンセラー・保育士資格保持者でもある手島将彦さん、そしてロックバンド「凛として時雨」のドラム・ピエール中野をゲストに迎え、「メンタルヘルスと音楽の世界」をテーマにトークした。
手島:その後、メンタルヘルスの本を出すにあたって、出すならきちんとメンタルヘルスについて勉強しようと思い、カウンセラーになりました。
あっこゴリラ:ピエール中野さんは、自身のTwitterアカウントでDMを開放し、ファンの悩みを吐き出せる場を提供する他、Instagram上ではフォロワーからの質問や悩み相談に回答し続け、それをまとめた書籍『キリトリ線』を刊行してますが、いつ頃から始めたんですか?
ピエール中野:DMの開放自体はもうずっと前からやっていて、それこそmixiとかそのくらいの時代からメッセージでやり取りできるようにしていたんで、そのときから自分で答えられる範囲のものは答えていて。Instagram上で答え始めたのは、1年くらい前かな。
新型コロナの影響はメンタルにも影響を及ぼす。生活への不安、外出ができない閉塞感など、人によって原因はさまざま。番組では、大きく3つの要因を取り上げた。
1:経済的なことを主とした現状の苦しみと将来への不安
2:これまでできていたことができなくなった、活動の制限によるストレス、ストレス解消法の喪失
3:自分の仕事などが「不要不急」とされたことによる、自分の存在意義に対する不安定な気持ち
あっこゴリラ:ちょっとアーティスト目線でお話しさせてもらうと、この3つ目の「不要不急」が本当に食らったし、もちろん怒りの感情もあるんですけど、状況に追いつかない心っていうのがあって。それと同時にメンタルヘルスも考えていかなければいけないって、2020年本当に痛感しました。社会での立場や職種はそれぞれですが、そんな今のメンタル状況を手島さんはどう考えてますか?
手島:どんなことでもそうなのですが、何か大きな災害などが起きたとき、最初は「頑張ろう!」となるのですが、長期化すると疲労が溜まってきて、そうもいかなくなってしまいます。そうなりつつあるのかなっていうのが心配ですね。
あっこゴリラ:ピエールさんは、この話を聞いて、お悩み相談とリンクするところはありますか?
ピエール中野:やっぱり周りがしんどそうにしているのは、以前よりもはるかに感じますね。ミュージシャンもそうだし、応援しているファンもそうだし。とにかくライブができなくて、ライブやらないとやっていけないって人って本当にいるから、そういう人たちは本当にしんどそうだよね。長期化してて、先が見えないっていうのもありますね。
手島:また、演者側はもともと「感情労働」という側面がありますので、こだわりが強いのにそれができなくなったとか、自分の感情を押し殺してファンを不快にさせないようにとか、感情を無理にコントロールすることで、無意識につらくなってしまっているケースもあると思います。
ピエール中野:本当になかなか理解してもらえないことも多いんだよね。
あっこゴリラ:完全にプライベートと仕事をわけているようなアーティストやミュージシャンは本当につらいと思います。
1:まず、メンタルヘルスに関する、ごく基礎的な知識を身につけること
2:「自分が自分であって大丈夫」という「本当の意味での自己肯定感」に気づくこと
手島:最近よく言われる「自己肯定感」は、「何かの役に立つ」「何かが誰かよりも優れている」などの意味合いの強い、いわば「自己効力感」「自己有用感」のような意味で使われることが多いように思います。それはそれで悪いことでもないのですが、それらはどちらかというと「機能的」な意味での肯定感で、表面的なものです。本来は、どんな人間でも「そのままで存在していていい」という存在レベルでの肯定感のことです。どんな人も、“存在することにクリアしなければいけない条件などない”という意識をもって見ることが大切だと思います。そして、僕はよく言うのですが、「ほとんどのことは世の中(環境)のせい」です。ただ、現実問題として世の中は明日にでもすぐ変わるというものではないので、どこかで折り合いをつけなければならない、というだけであって、あくまでも今苦しんでいるのはその人のせいではない、と考えてみることも大切です。
手島:また、アイデンティティは一度定まるとずっと一貫していく、あるいは一貫して行くべきだ、というイメージを持つ方もいますが、社会の変化や自分の加齢などによって、変化していくものでもあります。その変化を自然なものとして受け入れることと、一貫している自分との調整が大切だと思います。
あっこゴリラ:ラジオであったり、音楽であったり、メンタルにいい影響を与える行為は多くあると思います。具体的に音楽がもたらす良い影響はどんなことがありますか?
手島:単純に、気持ちが高揚したり、反対に落ち着いたりという効果は、誰しもが経験あると思います。最近では、よく「共感する」という形で音楽を聴く方も多いようです。もちろん、それも自分の支えになると思いますが、それだけではなく、「新しい感覚や視野が開ける」「良い意味での驚き」なども得られるものだと思います。個人的には、この影響をもっと大切にしたいなと思います。
あっこゴリラ:すごくわかります。私は、逆に共感し過ぎちゃってつらいときあります。
最後に、不安になっている人へ、音楽をどう取り入れるとプラスに働くか教えてくれた。
手島:先ほどの「音楽がもたらす良い影響」のようなことと同時に、音楽はそれを聴いている“今”を大切にできるものだと思います。メンタルヘルスを考える上で、「過去/現在/未来」に対する姿勢として、まず大事なのは“今”です。過去は変えようがないし、未来は確実な予測が不可能なわけですよね。つまり、過去を悔やんで「変えたい」と思ったり、予測不可能な未来に不安になりすぎたりしても、しかたがないのです。音楽を深呼吸するように聴くと、自然と“今”を大事にできると思います。それは自然とメンタルに良い影響を与えると思いますし、そしてときに、新しい視界をもたらしてくれると思います。
2020年11月5日(木)のオンエアでは、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』の著者で、音楽学校講師・産業カウンセラー・保育士資格保持者でもある手島将彦さん、そしてロックバンド「凛として時雨」のドラム・ピエール中野をゲストに迎え、「メンタルヘルスと音楽の世界」をテーマにトークした。
コロナ禍でメンタルが蝕まれやすい理由
手島さんは自身がアーティスト活動をしていた経験がある。自分の周囲にメンタルの問題を抱えている人が多かったことが、今の道に進むきっかけになったそうだ。手島:その後、メンタルヘルスの本を出すにあたって、出すならきちんとメンタルヘルスについて勉強しようと思い、カウンセラーになりました。
あっこゴリラ:ピエール中野さんは、自身のTwitterアカウントでDMを開放し、ファンの悩みを吐き出せる場を提供する他、Instagram上ではフォロワーからの質問や悩み相談に回答し続け、それをまとめた書籍『キリトリ線』を刊行してますが、いつ頃から始めたんですか?
ピエール中野:DMの開放自体はもうずっと前からやっていて、それこそmixiとかそのくらいの時代からメッセージでやり取りできるようにしていたんで、そのときから自分で答えられる範囲のものは答えていて。Instagram上で答え始めたのは、1年くらい前かな。
新型コロナの影響はメンタルにも影響を及ぼす。生活への不安、外出ができない閉塞感など、人によって原因はさまざま。番組では、大きく3つの要因を取り上げた。
1:経済的なことを主とした現状の苦しみと将来への不安
2:これまでできていたことができなくなった、活動の制限によるストレス、ストレス解消法の喪失
3:自分の仕事などが「不要不急」とされたことによる、自分の存在意義に対する不安定な気持ち
あっこゴリラ:ちょっとアーティスト目線でお話しさせてもらうと、この3つ目の「不要不急」が本当に食らったし、もちろん怒りの感情もあるんですけど、状況に追いつかない心っていうのがあって。それと同時にメンタルヘルスも考えていかなければいけないって、2020年本当に痛感しました。社会での立場や職種はそれぞれですが、そんな今のメンタル状況を手島さんはどう考えてますか?
手島:どんなことでもそうなのですが、何か大きな災害などが起きたとき、最初は「頑張ろう!」となるのですが、長期化すると疲労が溜まってきて、そうもいかなくなってしまいます。そうなりつつあるのかなっていうのが心配ですね。
あっこゴリラ:ピエールさんは、この話を聞いて、お悩み相談とリンクするところはありますか?
ピエール中野:やっぱり周りがしんどそうにしているのは、以前よりもはるかに感じますね。ミュージシャンもそうだし、応援しているファンもそうだし。とにかくライブができなくて、ライブやらないとやっていけないって人って本当にいるから、そういう人たちは本当にしんどそうだよね。長期化してて、先が見えないっていうのもありますね。
エンターテインメントを提供する人ならではの苦しみも
アーティストやエンターテインメントに関わる人の中には「感受性が強い」「こだわりが強い」などの特性を持つ人もおり、コロナ禍で心に負担を感じやすいと言える。また、演者側にはこんなケースも。手島:また、演者側はもともと「感情労働」という側面がありますので、こだわりが強いのにそれができなくなったとか、自分の感情を押し殺してファンを不快にさせないようにとか、感情を無理にコントロールすることで、無意識につらくなってしまっているケースもあると思います。
ピエール中野:本当になかなか理解してもらえないことも多いんだよね。
あっこゴリラ:完全にプライベートと仕事をわけているようなアーティストやミュージシャンは本当につらいと思います。
「本当の意味での自己肯定感」に気づこう
表現の場を制限されている人へのアドバイスは2点。1:まず、メンタルヘルスに関する、ごく基礎的な知識を身につけること
2:「自分が自分であって大丈夫」という「本当の意味での自己肯定感」に気づくこと
手島:最近よく言われる「自己肯定感」は、「何かの役に立つ」「何かが誰かよりも優れている」などの意味合いの強い、いわば「自己効力感」「自己有用感」のような意味で使われることが多いように思います。それはそれで悪いことでもないのですが、それらはどちらかというと「機能的」な意味での肯定感で、表面的なものです。本来は、どんな人間でも「そのままで存在していていい」という存在レベルでの肯定感のことです。どんな人も、“存在することにクリアしなければいけない条件などない”という意識をもって見ることが大切だと思います。そして、僕はよく言うのですが、「ほとんどのことは世の中(環境)のせい」です。ただ、現実問題として世の中は明日にでもすぐ変わるというものではないので、どこかで折り合いをつけなければならない、というだけであって、あくまでも今苦しんでいるのはその人のせいではない、と考えてみることも大切です。
たまには“今”を感じるように深く音楽を聴くことも必要
生活のリズムが変わったことを理解、認識することも必要だが、「過剰適応」しないように気をつけよう。手島:また、アイデンティティは一度定まるとずっと一貫していく、あるいは一貫して行くべきだ、というイメージを持つ方もいますが、社会の変化や自分の加齢などによって、変化していくものでもあります。その変化を自然なものとして受け入れることと、一貫している自分との調整が大切だと思います。
あっこゴリラ:ラジオであったり、音楽であったり、メンタルにいい影響を与える行為は多くあると思います。具体的に音楽がもたらす良い影響はどんなことがありますか?
手島:単純に、気持ちが高揚したり、反対に落ち着いたりという効果は、誰しもが経験あると思います。最近では、よく「共感する」という形で音楽を聴く方も多いようです。もちろん、それも自分の支えになると思いますが、それだけではなく、「新しい感覚や視野が開ける」「良い意味での驚き」なども得られるものだと思います。個人的には、この影響をもっと大切にしたいなと思います。
あっこゴリラ:すごくわかります。私は、逆に共感し過ぎちゃってつらいときあります。
最後に、不安になっている人へ、音楽をどう取り入れるとプラスに働くか教えてくれた。
手島:先ほどの「音楽がもたらす良い影響」のようなことと同時に、音楽はそれを聴いている“今”を大切にできるものだと思います。メンタルヘルスを考える上で、「過去/現在/未来」に対する姿勢として、まず大事なのは“今”です。過去は変えようがないし、未来は確実な予測が不可能なわけですよね。つまり、過去を悔やんで「変えたい」と思ったり、予測不可能な未来に不安になりすぎたりしても、しかたがないのです。音楽を深呼吸するように聴くと、自然と“今”を大事にできると思います。それは自然とメンタルに良い影響を与えると思いますし、そしてときに、新しい視界をもたらしてくれると思います。
番組情報
- SONAR MUSIC
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月・火・水・木曜21:00-24:00