J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。「音楽を愛する全ての人と作り上げる「(超)進化型音楽番組」だ。毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。
2020年11月9日(月)のオンエアでは、DJ/音楽プロデューサーのTJOとDa-iCEの工藤大輝をゲストに迎え、「プロデューサータグ」について掘り下げて紹介した。
TJO:HIP-HOPやR&Bを聴いてると、よくイントロに声ネタが入ってたりしますよね。それぞれ違うアーティストの曲でも、聞き馴染みのある声ネタだったりすることがあると思います。それが、その曲を作ったプロデューサーの名前を表すネームタグ的なもの、「プロデューサータグ」です。
あっこゴリラ:これを今まで知らなかった人は、これから好きな曲を聴くとき気付くかもしれないですよね。プロデューサータグ以外にも、「シグネチャーサウンド」「サウンドロゴ」「ネームタグ」などの呼び方があるということですが、意味合いはちょっと変わってきますよね。
TJO:「プロデューサータグ」だと人の名前であることが多いです。「シグネチャーサウンド」は名前というより特徴的な音になるので、それぞれ使い分けている感じだと思います。
あっこゴリラ:やり方は、いろいろあるってことですね。
TJO:有名なところで言うと、Khaledの楽曲に必ず入っている「we da best music DJ Khaled」という決めゼリフですね。このシャウトは、彼が運営しているレーベル「We the Best Music Group」のことで、自分の名前だけじゃなくて、自分の会社やレーベルのこともレペゼンしているんです。
あっこゴリラ:実は海外だけでなく、みんなが知っているJ-POPの曲にもプロデューサータグが潜んでいるんですよね。三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの『R.Y.U.S.E.I』にも入ってるんですか?
TJO:冒頭の「プゥォーン」という音ですが、これはこの曲の作曲者のSTYというプロデューサーのシグネチャーサウンドになります。
あっこゴリラ:言葉じゃなくて、音で自分を表現されてるんですね。
TJO:『R.Y.U.S.E.I』以外にも、STYの作品で三浦大知の『SHINE』や東方神起の『DEAD END -STY Gin n' Tonic mix-』などにも入っています。
あっこゴリラ:ここで1曲、プロデューサータグが入ってる曲を工藤さんがセレクトしてくれました。
工藤:Michael Jackson、Destinys Childなどを手掛けているDarkchildがプロデュースした宇多田ヒカルさんの曲です。イントロ部分、よく聴いててください!
工藤:イントロ部分で「Darkchild」と掛け合っていますが、まさかの宇多田ヒカルさんに言わせるっていうね(笑)。
あっこゴリラ:あはははは! ちなみにこのDarkchildて、どんなプロデューサーなんですか?
TJO:Darkchildは、 90年代後半~2000年代を代表するR&B名プロデューサーです。ロドニー・ジャーキンスという名義でも活躍されていて、本当にいろんな名曲を手掛けています。
あっこゴリラ:他のDarkchildの楽曲で、どんな曲にプロデューサータグが入ってますか?
TJO:例えば、Destiny's Childの『Say My Name』やMichael Jacksonの『You Rock My World』です。最近の邦楽やHIP HOPだと、AwichやkZmなどを手掛けるChaki Zuluさんも、自分の名前だけじゃなくて、自身のスタジオの名前である「ハスキースタジオ」も入れたりしてます。
あっこゴリラ:私たちも知らない間に色々聞いてたんですね。やっぱり自分なりのラインや場所を言うっていうのもありますよね。
TJO:ファンも聴いてて、お約束みたいな感じで安心しますよね。ちょっと変わったものだと、ファレル・ウイリアムスの曲は4カウントで始まるんですが、これもある種のシグネチャーサウンドです。
TJO:諸説あって、時期は90年代後半〜2000年初頭に使い始めた人が多いです。最も印象的な人を一人挙げるとしたら、プロデューサーのJust Blazeです。僕は、彼がイントロで名前をシャウトするのを聴いてから意識的に聴くようになりました。自分が作ったことをアピールしたり、そのアーティストが所属してるクルーやレーベルなどをレペゼンするのも多かったですね。
あっこゴリラ:HIP HOP界隈では、プロデューサー名やシグネチャーサウンドだけじゃなく、レーベル名をスタンプにしているものもありますよね。
TJO:初期だと、Puff Daddy率いる「Bad Boy Records」やIrv Gotti率いるレーベル「Murder Inc.」ですね。ファレル・ウイリアムスのプロデュースユニット、ネプチューンズのレーベル「STARTRAK」もそうです。一番痺れたのは、レーベル初期のClipseの『When The Last Time』です。
あっこゴリラ:このイントロは、みなさんもわかりやすかったんじゃないですか。
TJO:もうシャウトですよね。
工藤:言い方が洒落てますね~。
あっこゴリラ:こういうのって、どういう想いでやってるんですか?
TJO:自己アピールやトラックを作ってくれているトラックメイカーやレーベルのレペゼンもあると思うんですけど、本質的には楽曲のアーティスト本人だけでなく、その舞台裏で活躍した人たちへのリスペクトも込めたものだと思っています。そのためのシャウト、「ありがとう」なのかなって思います。
あっこゴリラ:間違いない! プロデューサーってもっと注目されるべきだと思います。リスナーにとっても、そのアーティストだけでなくプロデューサーやレーベルなどを知っていくと音楽をより楽しめますよね。
あっこゴリラ:トラックメイカーが自分のトラックを販売し、それをラッパーやアーティストが購入して作品を作るカルチャーがあるということですが、詳しく教えてもらえますか?
TJO:俗に「Type Beat」と呼ばれるカルチャーです。意味は「〇〇っぽいビート」です。例えば“Drakeっぽいビート”ならYouTubeなどで「Drake Type Beat」と検索してみるとたくさん出てきます。今では、こういったビートを専門で販売する「Type Beat」というサイトも出てきています。今、ラッパーになりたい人が増えていて、でも曲は作れない。権利的に人のトラックを勝手に使ってリリース出来ない。それと同時にDTMの発展でビートを作る人も増えているんです。そこを繋ぐために発展したカルチャーが「Type Beat」です。
あっこゴリラ:若手のラッパーも、けっこうType Beat多いですね。
TJO:やっぱりそうなんですね。今ではDrakeやAriana GrandeをプロデュースするMurda Beatzも、Type Beatからキャリアをスタートさせたと言っています。
あっこゴリラ:本当にすごい時代だよね。
工藤:デモテープ作ってるみたいな感覚なんでしょうね。
あっこゴリラ:ラッパーやアーティストが気になった曲を購入して作品を作ることができるということですが、プロデューサータグが入ったものもあるんですか?
TJO:試しにYoutubeでType Beatを検索して聴いてきたんですが、ほとんど入ってました(笑)。なので、もうプロデューサータグを入れるのは主流になっているんだと思います。
あっこゴリラ:売れたら売れた分、プロデューサーに還元されるんですか?
TJO:非商用ならフリーもあったりするけど、基本は購入型でレベルに応じて値段も変化します。プロデューサーは、独占で買われなければ同じビートを100人に売ることも出来るので、それだけ自分の資産になります。
ここでLil Nas X『Old Town Road』をオンエアした。
あっこゴリラ:昨年、ビルボード連続1位の歴代記録を更新したLil Nas Xの『Old Town Road』も、Type Beatだったんですか!?
TJO:オランダのプロデューサー・Young Kioがナイン・インチ・ネイルズをサンプリングして、「Beatstars」ってサイトで販売していたビートを30ドルでお買い上げしたものです(笑)。
あっこゴリラ:あはははは! ヤバいよ。本当コスパが良いんですよ。
TJO:試しに作ってみるっていう冒険もできますよね。もちろん、このYoung Kioも有名になったので、すごく夢がありますよね。他にもDesiignerの『Panda』なんかもType Beatで、元々「Meek Mill Type Beat」として売られていたものです。この曲の大ヒットで、2016年以降Type Beatの注目がさらに上がったとも言われています。
あっこゴリラ:このカルチャーは、今後どうなっていくと思いますか?
TJO:さっきあっこさんも言っていたように、コスパが良いのでどんどん大きくなっていくと思いますし、逆に有名プロデューサーがここでいろいろチャレンジするっていうこともありえるのかなって思います。だから、「新しい遊び場」として、どんどん大きくなっていくと思います。
最後に、この「プロデューサータグ」とは一体何のためにやっているものなのか訊いてみた。
TJO:曲が売れても注目されるのはアーティストが多いですが、このタグ一つを乗せることによって、プロデューサーの自己主張だったり、地位向上になっているんじゃないかと思います。「プロデューサータグ」が浸透するぐらい、ラッパー以上のスター性や知名度のあるプロデューサーは増えていますが、同時に不利な契約やラッパーより表に出づらいという現状もあります。だから、タグは一つのサウンドってだけじゃなく、その名前を高らかに上げることによって、プロデューサーの地位向上にも貢献しているとも言えると思います。
2020年11月9日(月)のオンエアでは、DJ/音楽プロデューサーのTJOとDa-iCEの工藤大輝をゲストに迎え、「プロデューサータグ」について掘り下げて紹介した。
「プロデューサータグ」とは
知らない間に耳にしていることも多い「プロデューサータグ」。一体どんな役割があるのか、TJOが説明した。TJO:HIP-HOPやR&Bを聴いてると、よくイントロに声ネタが入ってたりしますよね。それぞれ違うアーティストの曲でも、聞き馴染みのある声ネタだったりすることがあると思います。それが、その曲を作ったプロデューサーの名前を表すネームタグ的なもの、「プロデューサータグ」です。
あっこゴリラ:これを今まで知らなかった人は、これから好きな曲を聴くとき気付くかもしれないですよね。プロデューサータグ以外にも、「シグネチャーサウンド」「サウンドロゴ」「ネームタグ」などの呼び方があるということですが、意味合いはちょっと変わってきますよね。
TJO:「プロデューサータグ」だと人の名前であることが多いです。「シグネチャーサウンド」は名前というより特徴的な音になるので、それぞれ使い分けている感じだと思います。
あっこゴリラ:やり方は、いろいろあるってことですね。
TJO:有名なところで言うと、Khaledの楽曲に必ず入っている「we da best music DJ Khaled」という決めゼリフですね。このシャウトは、彼が運営しているレーベル「We the Best Music Group」のことで、自分の名前だけじゃなくて、自分の会社やレーベルのこともレペゼンしているんです。
あっこゴリラ:実は海外だけでなく、みんなが知っているJ-POPの曲にもプロデューサータグが潜んでいるんですよね。三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの『R.Y.U.S.E.I』にも入ってるんですか?
TJO:冒頭の「プゥォーン」という音ですが、これはこの曲の作曲者のSTYというプロデューサーのシグネチャーサウンドになります。
あっこゴリラ:言葉じゃなくて、音で自分を表現されてるんですね。
あっこゴリラ:ここで1曲、プロデューサータグが入ってる曲を工藤さんがセレクトしてくれました。
工藤:Michael Jackson、Destinys Childなどを手掛けているDarkchildがプロデュースした宇多田ヒカルさんの曲です。イントロ部分、よく聴いててください!
あっこゴリラ:あはははは! ちなみにこのDarkchildて、どんなプロデューサーなんですか?
TJO:Darkchildは、 90年代後半~2000年代を代表するR&B名プロデューサーです。ロドニー・ジャーキンスという名義でも活躍されていて、本当にいろんな名曲を手掛けています。
あっこゴリラ:他のDarkchildの楽曲で、どんな曲にプロデューサータグが入ってますか?
TJO:例えば、Destiny's Childの『Say My Name』やMichael Jacksonの『You Rock My World』です。最近の邦楽やHIP HOPだと、AwichやkZmなどを手掛けるChaki Zuluさんも、自分の名前だけじゃなくて、自身のスタジオの名前である「ハスキースタジオ」も入れたりしてます。
あっこゴリラ:私たちも知らない間に色々聞いてたんですね。やっぱり自分なりのラインや場所を言うっていうのもありますよね。
TJO:ファンも聴いてて、お約束みたいな感じで安心しますよね。ちょっと変わったものだと、ファレル・ウイリアムスの曲は4カウントで始まるんですが、これもある種のシグネチャーサウンドです。
「プロデューサータグ」の起源
そもそも「プロデューサータグ」とは、どういうきっかけで生まれたのだろうか。「プロデューサータグ」の起源についても解説した。TJO:諸説あって、時期は90年代後半〜2000年初頭に使い始めた人が多いです。最も印象的な人を一人挙げるとしたら、プロデューサーのJust Blazeです。僕は、彼がイントロで名前をシャウトするのを聴いてから意識的に聴くようになりました。自分が作ったことをアピールしたり、そのアーティストが所属してるクルーやレーベルなどをレペゼンするのも多かったですね。
あっこゴリラ:HIP HOP界隈では、プロデューサー名やシグネチャーサウンドだけじゃなく、レーベル名をスタンプにしているものもありますよね。
TJO:初期だと、Puff Daddy率いる「Bad Boy Records」やIrv Gotti率いるレーベル「Murder Inc.」ですね。ファレル・ウイリアムスのプロデュースユニット、ネプチューンズのレーベル「STARTRAK」もそうです。一番痺れたのは、レーベル初期のClipseの『When The Last Time』です。
TJO:もうシャウトですよね。
工藤:言い方が洒落てますね~。
あっこゴリラ:こういうのって、どういう想いでやってるんですか?
TJO:自己アピールやトラックを作ってくれているトラックメイカーやレーベルのレペゼンもあると思うんですけど、本質的には楽曲のアーティスト本人だけでなく、その舞台裏で活躍した人たちへのリスペクトも込めたものだと思っています。そのためのシャウト、「ありがとう」なのかなって思います。
あっこゴリラ:間違いない! プロデューサーってもっと注目されるべきだと思います。リスナーにとっても、そのアーティストだけでなくプロデューサーやレーベルなどを知っていくと音楽をより楽しめますよね。
「Type Beat」と呼ばれるカルチャーの発展
続いては、「Type Beat」について解説した。あっこゴリラ:トラックメイカーが自分のトラックを販売し、それをラッパーやアーティストが購入して作品を作るカルチャーがあるということですが、詳しく教えてもらえますか?
TJO:俗に「Type Beat」と呼ばれるカルチャーです。意味は「〇〇っぽいビート」です。例えば“Drakeっぽいビート”ならYouTubeなどで「Drake Type Beat」と検索してみるとたくさん出てきます。今では、こういったビートを専門で販売する「Type Beat」というサイトも出てきています。今、ラッパーになりたい人が増えていて、でも曲は作れない。権利的に人のトラックを勝手に使ってリリース出来ない。それと同時にDTMの発展でビートを作る人も増えているんです。そこを繋ぐために発展したカルチャーが「Type Beat」です。
あっこゴリラ:若手のラッパーも、けっこうType Beat多いですね。
TJO:やっぱりそうなんですね。今ではDrakeやAriana GrandeをプロデュースするMurda Beatzも、Type Beatからキャリアをスタートさせたと言っています。
あっこゴリラ:本当にすごい時代だよね。
工藤:デモテープ作ってるみたいな感覚なんでしょうね。
あっこゴリラ:ラッパーやアーティストが気になった曲を購入して作品を作ることができるということですが、プロデューサータグが入ったものもあるんですか?
TJO:試しにYoutubeでType Beatを検索して聴いてきたんですが、ほとんど入ってました(笑)。なので、もうプロデューサータグを入れるのは主流になっているんだと思います。
あっこゴリラ:売れたら売れた分、プロデューサーに還元されるんですか?
TJO:非商用ならフリーもあったりするけど、基本は購入型でレベルに応じて値段も変化します。プロデューサーは、独占で買われなければ同じビートを100人に売ることも出来るので、それだけ自分の資産になります。
ここでLil Nas X『Old Town Road』をオンエアした。
TJO:オランダのプロデューサー・Young Kioがナイン・インチ・ネイルズをサンプリングして、「Beatstars」ってサイトで販売していたビートを30ドルでお買い上げしたものです(笑)。
あっこゴリラ:あはははは! ヤバいよ。本当コスパが良いんですよ。
TJO:試しに作ってみるっていう冒険もできますよね。もちろん、このYoung Kioも有名になったので、すごく夢がありますよね。他にもDesiignerの『Panda』なんかもType Beatで、元々「Meek Mill Type Beat」として売られていたものです。この曲の大ヒットで、2016年以降Type Beatの注目がさらに上がったとも言われています。
あっこゴリラ:このカルチャーは、今後どうなっていくと思いますか?
TJO:さっきあっこさんも言っていたように、コスパが良いのでどんどん大きくなっていくと思いますし、逆に有名プロデューサーがここでいろいろチャレンジするっていうこともありえるのかなって思います。だから、「新しい遊び場」として、どんどん大きくなっていくと思います。
最後に、この「プロデューサータグ」とは一体何のためにやっているものなのか訊いてみた。
TJO:曲が売れても注目されるのはアーティストが多いですが、このタグ一つを乗せることによって、プロデューサーの自己主張だったり、地位向上になっているんじゃないかと思います。「プロデューサータグ」が浸透するぐらい、ラッパー以上のスター性や知名度のあるプロデューサーは増えていますが、同時に不利な契約やラッパーより表に出づらいという現状もあります。だから、タグは一つのサウンドってだけじゃなく、その名前を高らかに上げることによって、プロデューサーの地位向上にも貢献しているとも言えると思います。
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