音楽、映画、エンタメ「ここだけの話」
音楽で「Black Lives Matter」を振り返る。ソウルミュージックの原点のような楽曲も

Netflixオリジナル『HOMECOMING:ビヨンセ・ライブ作品』

音楽で「Black Lives Matter」を振り返る。ソウルミュージックの原点のような楽曲も

J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「MORNING INSIGHT」。12月9日(水)のオンエアには、音楽評論家・プロデューサーの藤田 正さんがリモートで出演。今年再び大きな広がりを見せた「ブラック・ライヴス・マター(Black Lives Matter)」の歴史を音楽とともに紹介した。

世界的な運動に広がりつつある「ブラック・ライヴズ・マター」

藤田は、『歌と映像で読み解く ブラック・ライヴズ・マター』(シンコーミュージック)の著者。今年、アメリカを中心に大きな広がりを見せた「ブラック・ライヴズ・マター(BLM)運動」について、どう感じているのだろうか。

藤田:これはもうアメリカ国内だけの問題ではなく、世界的な動きに広がりつつあります。その原点が5月25日に起きた、ジョージ・フロイドさんが警察官によって殺された事件です。(BLM運動は)全てといっていいくらいに歴史と重なっています。そして、音楽や映画といった、文化的表現ともすごく密接に関わっているんです。本を書かせていただいたのは、そのあたりのことをしっかりと語らないと、BLM運動が見えてこないと思ったからです。

音楽から見る「ブラック・ライヴズ・マター」

この日は、ブラック・ライヴズ・マターに関わるさまざまな楽曲を聴きながら、藤田がその楽曲の背景を語った。はじめに流れたのは、ビリー・ホリデイの『奇妙な果実』(1939)。

藤田:『奇妙な果実』というタイトルの「果実」が何かというと、「人間」のことなんです。かつてアメリカでは、黒人の方々は常にリンチや恐怖というものと隣り合わせに暮らしていました。このことをジャズシンガーの筆頭と言われているビリー・ホリデイが歌っています。これがBLM運動の歌としての原点ということになりますね。
別所:つまり、リンチに遭って虐殺されて、木に吊り下げられている黒人の方の死体を見て、「これが何とも奇妙な果実である」と歌っているということですね。
藤田:そうです。これが許せないからというところから、黒人の方だけでなく色んな人たちが立ち上がって、ようやく今のようになってきたわけです。

続いて紹介した曲は、The Neville Brothers『Sister Rosa』。

藤田:黒人の方々は差別を受け続けていて、かつては白人の方々と一緒に席を同じくしてはいけないという決まりもあり、バスにも乗れなかった。それを打ち破り、「私が一緒に座っていて何が悪い」と言ったのが(公民権運動の母を呼ばれた)ローザ・パークスという女性です。The Neville Brothersは1989年、ローザ・パークスに対するトリビュートとして、「彼女がいたからこそ僕らがいる」という歌を発表しました。

1955年、アラバマ州モンゴメリーの公営バスで、運転手の命令に背いて白人に席を譲ることを拒否した「モンゴメリー・バス・ボイコット事件」。ローザ・パークスは、白人乗客に席を譲ること拒み、逮捕された。この事件が、公民権運動につながっていった。

3曲目に紹介したのは、1964年にリリースされたSam Cooke『A Change Is Gonna Come』。

藤田:ボブ・ディランやジョーン・バエズというフォーク歌手たちが歌った公民権運動の曲で『We Shall Overcome(勝利を我らに)』という有名な歌があります。この歌を超えて今や公民権運動の象徴となり始めているのが、この『A Change Is Gonna Come』という歌です。ソウルミュージックの原点となる1曲だと僕は思っています。
別所:まさに変化がやってくるんだと。
藤田:黒人の虐殺事件がきっかけでこの歌が作られました。人間の未来や希望を込めた曲として非常に広く歌われています。映画(『マルコムX』)でも使われていますね。

藤田が思う「ブラック・ライヴズ・マター運動」の未来

歌、そして映像からブラック・ライヴズ・マター運動の歴史を読み解く藤田。最近はアメリカのシンガーソングライター、ビヨンセの活動にも関心を寄せているという。

藤田:ビヨンセは、誰もが知るアメリカ芸能のトップの1人です。この人の発言は、非常に重要です。アメリカのバイデン次期大統領の組閣で女性やLGBTQ、有色人種の方々などを起用するというのと、ブラック・ライヴズ・マター運動には関係があります。ビヨンセはその象徴のような存在でもあるんです。歌を歌って人気があるよ、ということではなくて、人気がある背景に自分たちが何をすべきか、何を訴えるべきか、女性であることはどういうことなのか、自分のルーツは何なのかということまで含めて考えている。彼女は偉い人だなと思います。

藤田は著書の中で、音楽と共に映像にも触れている。NetflixやAmazonプライム・ビデオといったVODの登場で大きく変化する映像・映画の世界。ブラック・ライヴズ・マター運動を理解するうえで、サブスクモデルの配信サービスの重要性をどのように捉えているのだろうか。

藤田:サブスクはずいぶん前から試しているんですけど、今年のコロナでつくづくわかりました。ネット環境があれば、ひとりでラジオや配信を低価格、下手したら無料で聞くことができる。だいたい映画というとハリウッドとかが多いんですけど、(VODでは)本当に開かれて、色んな人たちの色んなものが見ることができる。そのときに、「あぁ、世界はこんなに広いんだ」っていうのが逆にこの環境でわかるようになりました。これはブラック・ライヴズ・マターの1つの側面でもあるんじゃないかと思っています。
別所:今後、ブラック・ライヴズ・マター運動はどのように進んでいくでしょう?
藤田:ポジティブとは言い切れないところもあります。アメリカ国内だけでは、ジョー・バイデンが(選挙で)勝ったとはいえ、トランプと僅差なんですよね。アメリカの100年、200年の歴史の中で繰り返されるものすごく強力な対立というのは、明日・明後日で簡単に解決できるとは僕は思いません。だからこそ、ロックやソウル、ヒップホップなどの意識ある人たちは、注意を喚起するっていうのがずっと繰り返されると思います。

ブラック・ライヴズ・マター運動を映像・音楽から読み解く藤田さんの著書。ぜひ手に取り、BLM運動の歴史を、文化と共に学んでみては。

『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のワンコーナー「MORNING INSIGHT」では、あらゆる世界の本質にインサイトしていく。放送は月曜~木曜の6時30分頃から。お楽しみに!

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