映画『私をくいとめて』(12月18日全国公開)の舞台挨拶が11月5日(木)に行われ、のん、林 遣都、橋本愛、大九明子監督が登壇した。
第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020」部門の出品された本作は、おひとりさまの生活に慣れきり、脳内に相談役Aが誕生した31歳みつ子と年下男子の「多田くん」による、あと10センチ近づけないふたりを描いた共感度100%の崖っぷちロマンス。みつ子にのん、多田くんが林、イタリアに嫁いだ親友・皐月を橋本が熱演。綿矢りさの同名小説を大九が映像化し、『勝手にふるえてろ』のタッグが再び実現した。
本記事では、およそ30分の会見で交わされた質疑応答を余すところなくお届けする。
――まずは一言お願いします。
のん:黒田みつ子を演じさせていただきました、のんです。みなさん今日はお集まりいただきありがとうございます。映画を上映できる日を迎えられて、めちゃくちゃうれしく思っています。
林:多田くんを演じさせていただきました、林 遣都です。何日か前に完成した映画を観させていただいて、すごく面白くて、高揚した状態で、今日を迎えることを楽しみにしていました。映画を愛する方々、映画作りに関わる方々と今日の時間を共有できて幸せに感じています。
橋本:のんさん演じるみつ子の親友役の皐月を演じました橋本愛です。綿矢さんと大九さんの再タッグ作品に自分が携わることができて本当に幸福、幸運でした。映画を観て、ポップでチャーミングですごく面白くて、これからみなさんに観ていただけるのかと思うと、ものすごくワクワクします。ぜひ楽しんでいってください。
大九:監督、脚本を担当しました大九明子です。まずは東京国際映画祭をお客様をお入れする形で開催していただいたことに、世界中の映画人が敬意や感謝、いろいろな想いを持って今を迎えていると思います。大変感動しましたし、感謝申し上げたいと思います。ありがとうございます。そして、その中にこの映画を選んでいただいたことも大変光栄に思います。おかげさまでこの映画は、この日(5日)が初お披露目となります。色々なことがあった1年の映画祭ですので感慨もひとしおです。ありがとうございます。
――(大九へ)綿矢りさと再タッグとなった本作。どんな部分に魅力を感じて映画化したのか。
大九:『勝手にふるえてろ』を仕上げている頃だったと思いますが、いろいろな人から「綿矢さんの新作を読みました? とんでもないことになっていますよ」と言われました。私が『勝手にふるえてろ』をお預かりして、主人公のモノローグの文体で書かれている小説を会話劇に開いて演出したんですが、そのことがすでに行われている、脳内のAという人と喋っていると聞きまして、すぐに書店に走りました。色に溢れたとてもカラフルで楽しい読書体験をさせていただきました。最初は映画にするつもりもなく読んでいたのですが、他の人がこれを映画にして、私が好きな綿矢文学の世界が、私の期待しているものとは違う映画になったら嫌だなと思って、すぐにシナリオを書いてしまいました(笑)。
――(のんへ)脳内相談役がいるという珍しい役でしたが、撮影はいかがでしたか。どのように役作りをしましたか。
のん:すごく楽しい時間でした。みつ子の痛みはどこにあるのかというのを台本や原作を読みながら探っていきました。原作を片手に台本を読んで、大九監督の書かれたセリフとともに、そこに流れるみつ子の感情を探るため、原作を攻略本にして台本を読むように解釈していきました。みつ子が買いそうなカフェ巡りや旅行とかの雑誌を買って、それを読みながら、みつ子好きそうなものに丸をつけたり、ドッグイヤーをして“おひとりさまを楽しむ”実感みたいなものをつかむ作業をしました。
――(林へ)のんさんとは初共演ということで撮影はいかがでしたか。多田くんというキャラクターをどのように想像して役を作り上げていきましたか。
林:のんさんとは初めてお会いして、一緒にお芝居をしてすごく楽しかったです。普段の穏やかな印象からお芝居が始まって、本番のスタートがかかったときに一気に目の色から変わるというか、吸引力みたいなものがあって、常に突き動かされていました。大事に大事に細かい瞬間を共有できている感覚があってとても楽しかったです。多田くんは、原作からは割と膨らんでいる役でした。設定が僕とかけ離れていたので、新たに作っていくという思いがありました。脚本はなかなかヒントが少なくて、自分なりに想像して膨らませていきましたね。あとは大九監督の演出を楽しみたいなという思いで現場に臨みました。序盤のうちに自分の浅はかな想像を超えた演出が毎日のように飛んでくるので、それが楽しくてたまらなくて、監督の演出のもとでもっと演じたいという想いがピークに達しているところで撮影が終わってしまいました。(監督に向かって)僕、もっといろいろやりたいのでお願いします。
会場:(笑)
大九:こちらこそです。
林:映像を観たときに間違いなく、今まで自分が観たことのない表情をしていたり、観たことのない自分がいた気がしたので、それがとてもうれしかったです。
――(橋本へ)のんと7年ぶりの共演ですが、久々の再会はいかがでしたか。皐月というキャラクターをどのように作り上げていきましたか。
橋本:7年ぶりということで、久しぶりにお会いしました。私が入った初日が、のんさんとのラストシーンの撮影だったんです。その頃には役どころの関係性はエンディングを迎えているのに、私たちは久しぶりすぎてめちゃくちゃ照れて、ヘラヘラしながら段取りして(笑)。全然段取りにならなくて。しかもセリフがない、アドリブで作り上げなければいけないシーンだったんです。お互いニヤニヤしながら……大九さんには段取りにならない段取りを見せてしまって申し訳なかったです。
大九:とんでもないです。
橋本:そのあと、ふたりで軽く本読みしただけなのに、ものすごいスピードでふたりの関係が埋まっていく実感がありました。シーンにもなんとか間に合って「あ、すごい! 魔法だな」と。久しぶりのお芝居は、玲奈ちゃんの瞳からものすごく色んな感情や情報がたくさん入ってきて、セリフ以上の心の言葉っていうのをやり取りする時間を毎シーン毎シーン感じていて快感でした。本当に楽しく撮影していました。
――(のんへ)橋本愛との再会はいかがでしたか。
のん:めちゃくちゃうれしかったです! うれしくて、撮影の前の日に「明日、愛ちゃんとだ!」ってワクワクしていたんですけど、実際に顔を合わせてみると、すっごい恥ずかしくて、緊張して、目も合わせられないぐらいドキドキして。映像で観てはいたけど、数年ぶりに実際に会ってみると「やっぱり美しさが増してる!」ってドキドキしちゃって、呼吸がしづらくなっちゃった(笑)。待ち時間になったら控室で(呼吸を整えて)「はー、息してなかった」って(笑)。でも、愛ちゃんが本読みに誘ってくれて、みつ子と皐月として心を通わすことができて、演技を始めたら自分の中では愛ちゃんと演技を交わしているという状況が自然なことで何の抵抗もなかったので、すごく楽しかったです。
――最後に一言メッセージを。
橋本:みつ子がある幸せを見つけるんですが、それはみつ子にとっての一つの幸せの形であって、この世のすべて女性の幸せだと謳っている映画ではありません。人と関わることがどれだけの努力が必要で、どれだけの苦しみや痛みを乗り越えて人と人が繋がっているんだということを改めて感じてもらえればいいなと思いますし、頑張るみつ子の姿に勇気をもらってほしいと思います。
林:僕はまだ一度しか観ていないですが、本作には一度では味わいきれない面白さがあると思います。大九監督ワールドはユーモアと遊び心が満載で、何度も観ていただきたいと思っています。……明日も元気にお過ごしください。(観客爆笑)
のん:今日いらしてくださったみなさんの中にも、みつ子的な部分を持っている方がいるんじゃないかなと思います。世の中にたくさんいるみつ子さんに共感していただける映画かと思います。自分のみつ子的な部分を全肯定してくれる、観終わったあと気分よく劇場を出ていっていただける作品だと思うので、ぜひじっくりご覧ください。
大九:この状況のなか、私どもの映画を選んで劇場まで来ていただいたみなさま、本当にありがとうございます。みなさまの130分が素敵なものであることをすごく祈るような気持ちです。みつ子という人は多田くんと出会って恋をするというラブストーリーの面もありますが、海外にわたって妊娠する皐月がいたり、上司の澤田という人がいたり、いろんな人との出会いや別れの中で、Aと一緒に脳内を旅するような、冒険のようなスケール感のある旅をしていただきたいという想いも込めて作りました。いろんなことがあって撮影も中断しました。今日という日を迎えられて大変うれしいですし、みつ子とお客さんをローマに連れていくんだ!という意地のような思いで作ったので、旅するような気持ちで映画をお楽しみください。
映画『私をくいとめて』は、12月18日(金)より全国公開。公式サイトはコチラ。
(文・写真:北瀬由佳梨)
第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020」部門の出品された本作は、おひとりさまの生活に慣れきり、脳内に相談役Aが誕生した31歳みつ子と年下男子の「多田くん」による、あと10センチ近づけないふたりを描いた共感度100%の崖っぷちロマンス。みつ子にのん、多田くんが林、イタリアに嫁いだ親友・皐月を橋本が熱演。綿矢りさの同名小説を大九が映像化し、『勝手にふるえてろ』のタッグが再び実現した。
映画『私をくいとめて』本予告
――まずは一言お願いします。
のん:黒田みつ子を演じさせていただきました、のんです。みなさん今日はお集まりいただきありがとうございます。映画を上映できる日を迎えられて、めちゃくちゃうれしく思っています。
林:多田くんを演じさせていただきました、林 遣都です。何日か前に完成した映画を観させていただいて、すごく面白くて、高揚した状態で、今日を迎えることを楽しみにしていました。映画を愛する方々、映画作りに関わる方々と今日の時間を共有できて幸せに感じています。
橋本:のんさん演じるみつ子の親友役の皐月を演じました橋本愛です。綿矢さんと大九さんの再タッグ作品に自分が携わることができて本当に幸福、幸運でした。映画を観て、ポップでチャーミングですごく面白くて、これからみなさんに観ていただけるのかと思うと、ものすごくワクワクします。ぜひ楽しんでいってください。
大九:監督、脚本を担当しました大九明子です。まずは東京国際映画祭をお客様をお入れする形で開催していただいたことに、世界中の映画人が敬意や感謝、いろいろな想いを持って今を迎えていると思います。大変感動しましたし、感謝申し上げたいと思います。ありがとうございます。そして、その中にこの映画を選んでいただいたことも大変光栄に思います。おかげさまでこの映画は、この日(5日)が初お披露目となります。色々なことがあった1年の映画祭ですので感慨もひとしおです。ありがとうございます。
――(大九へ)綿矢りさと再タッグとなった本作。どんな部分に魅力を感じて映画化したのか。
大九:『勝手にふるえてろ』を仕上げている頃だったと思いますが、いろいろな人から「綿矢さんの新作を読みました? とんでもないことになっていますよ」と言われました。私が『勝手にふるえてろ』をお預かりして、主人公のモノローグの文体で書かれている小説を会話劇に開いて演出したんですが、そのことがすでに行われている、脳内のAという人と喋っていると聞きまして、すぐに書店に走りました。色に溢れたとてもカラフルで楽しい読書体験をさせていただきました。最初は映画にするつもりもなく読んでいたのですが、他の人がこれを映画にして、私が好きな綿矢文学の世界が、私の期待しているものとは違う映画になったら嫌だなと思って、すぐにシナリオを書いてしまいました(笑)。
――(のんへ)脳内相談役がいるという珍しい役でしたが、撮影はいかがでしたか。どのように役作りをしましたか。
のん:すごく楽しい時間でした。みつ子の痛みはどこにあるのかというのを台本や原作を読みながら探っていきました。原作を片手に台本を読んで、大九監督の書かれたセリフとともに、そこに流れるみつ子の感情を探るため、原作を攻略本にして台本を読むように解釈していきました。みつ子が買いそうなカフェ巡りや旅行とかの雑誌を買って、それを読みながら、みつ子好きそうなものに丸をつけたり、ドッグイヤーをして“おひとりさまを楽しむ”実感みたいなものをつかむ作業をしました。
――(林へ)のんさんとは初共演ということで撮影はいかがでしたか。多田くんというキャラクターをどのように想像して役を作り上げていきましたか。
林:のんさんとは初めてお会いして、一緒にお芝居をしてすごく楽しかったです。普段の穏やかな印象からお芝居が始まって、本番のスタートがかかったときに一気に目の色から変わるというか、吸引力みたいなものがあって、常に突き動かされていました。大事に大事に細かい瞬間を共有できている感覚があってとても楽しかったです。多田くんは、原作からは割と膨らんでいる役でした。設定が僕とかけ離れていたので、新たに作っていくという思いがありました。脚本はなかなかヒントが少なくて、自分なりに想像して膨らませていきましたね。あとは大九監督の演出を楽しみたいなという思いで現場に臨みました。序盤のうちに自分の浅はかな想像を超えた演出が毎日のように飛んでくるので、それが楽しくてたまらなくて、監督の演出のもとでもっと演じたいという想いがピークに達しているところで撮影が終わってしまいました。(監督に向かって)僕、もっといろいろやりたいのでお願いします。
会場:(笑)
大九:こちらこそです。
林:映像を観たときに間違いなく、今まで自分が観たことのない表情をしていたり、観たことのない自分がいた気がしたので、それがとてもうれしかったです。
――(橋本へ)のんと7年ぶりの共演ですが、久々の再会はいかがでしたか。皐月というキャラクターをどのように作り上げていきましたか。
橋本:7年ぶりということで、久しぶりにお会いしました。私が入った初日が、のんさんとのラストシーンの撮影だったんです。その頃には役どころの関係性はエンディングを迎えているのに、私たちは久しぶりすぎてめちゃくちゃ照れて、ヘラヘラしながら段取りして(笑)。全然段取りにならなくて。しかもセリフがない、アドリブで作り上げなければいけないシーンだったんです。お互いニヤニヤしながら……大九さんには段取りにならない段取りを見せてしまって申し訳なかったです。
大九:とんでもないです。
橋本:そのあと、ふたりで軽く本読みしただけなのに、ものすごいスピードでふたりの関係が埋まっていく実感がありました。シーンにもなんとか間に合って「あ、すごい! 魔法だな」と。久しぶりのお芝居は、玲奈ちゃんの瞳からものすごく色んな感情や情報がたくさん入ってきて、セリフ以上の心の言葉っていうのをやり取りする時間を毎シーン毎シーン感じていて快感でした。本当に楽しく撮影していました。
――(のんへ)橋本愛との再会はいかがでしたか。
のん:めちゃくちゃうれしかったです! うれしくて、撮影の前の日に「明日、愛ちゃんとだ!」ってワクワクしていたんですけど、実際に顔を合わせてみると、すっごい恥ずかしくて、緊張して、目も合わせられないぐらいドキドキして。映像で観てはいたけど、数年ぶりに実際に会ってみると「やっぱり美しさが増してる!」ってドキドキしちゃって、呼吸がしづらくなっちゃった(笑)。待ち時間になったら控室で(呼吸を整えて)「はー、息してなかった」って(笑)。でも、愛ちゃんが本読みに誘ってくれて、みつ子と皐月として心を通わすことができて、演技を始めたら自分の中では愛ちゃんと演技を交わしているという状況が自然なことで何の抵抗もなかったので、すごく楽しかったです。
――最後に一言メッセージを。
橋本:みつ子がある幸せを見つけるんですが、それはみつ子にとっての一つの幸せの形であって、この世のすべて女性の幸せだと謳っている映画ではありません。人と関わることがどれだけの努力が必要で、どれだけの苦しみや痛みを乗り越えて人と人が繋がっているんだということを改めて感じてもらえればいいなと思いますし、頑張るみつ子の姿に勇気をもらってほしいと思います。
林:僕はまだ一度しか観ていないですが、本作には一度では味わいきれない面白さがあると思います。大九監督ワールドはユーモアと遊び心が満載で、何度も観ていただきたいと思っています。……明日も元気にお過ごしください。(観客爆笑)
のん:今日いらしてくださったみなさんの中にも、みつ子的な部分を持っている方がいるんじゃないかなと思います。世の中にたくさんいるみつ子さんに共感していただける映画かと思います。自分のみつ子的な部分を全肯定してくれる、観終わったあと気分よく劇場を出ていっていただける作品だと思うので、ぜひじっくりご覧ください。
大九:この状況のなか、私どもの映画を選んで劇場まで来ていただいたみなさま、本当にありがとうございます。みなさまの130分が素敵なものであることをすごく祈るような気持ちです。みつ子という人は多田くんと出会って恋をするというラブストーリーの面もありますが、海外にわたって妊娠する皐月がいたり、上司の澤田という人がいたり、いろんな人との出会いや別れの中で、Aと一緒に脳内を旅するような、冒険のようなスケール感のある旅をしていただきたいという想いも込めて作りました。いろんなことがあって撮影も中断しました。今日という日を迎えられて大変うれしいですし、みつ子とお客さんをローマに連れていくんだ!という意地のような思いで作ったので、旅するような気持ちで映画をお楽しみください。
映画『私をくいとめて』は、12月18日(金)より全国公開。公式サイトはコチラ。
(文・写真:北瀬由佳梨)
この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。