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「東京が新視点で見える本」をブックディレクターに聞く。六本木「文喫」で企画展が開催中

「東京が新視点で見える本」をブックディレクターに聞く。六本木「文喫」で企画展が開催中

J-WAVEでは現在、新たな視点で、東京を面白くする音楽やアート、それを生み出す人にフォーカスをあてるキャンペーン「東京新視点」を開催中だ。取り組みのひとつとして、渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の展覧会「東京好奇心 2020 渋谷」にて、J-WAVEで活躍するジョン・カビラ、クリス智子、ハリー杉山、マリエの4人が音声ナビゲートを担当している。

そのスピンアウト企画として、六本木の本屋・文喫では、本と写真から東京をみつめる「東京新視点〜都市の読み方」企画展を開催中。その様子をお伝えしよう。

街並みから、暮らしから…さまざまな角度で東京を見る選書

ドアを開くと、立体的に組み上げられた本棚、そして写真が出迎えてくれる。

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置かれている本は、小説、マンガ、写真集と種類を問わず、内容も、料理、ファッション、音楽、都市論など幅広い。

“新視点”と掲げられているが、現在や未来の東京を描いたものばかりを扱っているわけではない。「古いものが新しい、ということもありえますよね」と話すのは、文喫を手がける日本出版販売YOURS BOOK STOREのブックディレクター・有地 和毅さん。

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「例えば、『江戸城のインテリア』(河出書房新社)という本や、もっと前の東京の地層について解説した本も置いています。『江戸の異性装者たち―セクシュアルマイノリティの理解のために』(勉誠出版)という本は、トラディショナルなものは多様性とかけ離れているイメージがあるかもしれませんが、今と違う形でさまざまな実験がされていることがわかります。多様性に関する議論が盛んになる今、ヒントが得られるのではないでしょうか」(有地さん、以下同)

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写真集では、マンホールの蓋を写した『マンホールのふた 日本篇』(林 丈二/サイエンティスト社)、部屋の窓から東京を捉えた『東京窓景』(中野正貴/河出書房新社)などがある。

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有地さんに漫画でおすすめを訊くと、『電話・睡眠・音楽』(川勝徳重/リイド社)や『サザンウィンドウ・サザンドア』(石山さやか/祥伝社)を紹介してくれた。

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「川勝さんは、つげ義春のような『ガロ』のタッチを持った漫画家です。表題作は、渋谷のクラブで夜を過ごして朝になる過程を描いています。夜遊びのあとの朝日がまぶしい、といったディテールが描かれていて印象的でした。描かれているクラブは実在の場所なのでわかる人はわかるんじゃないかなと思います。『サザンウィンドウ・サザンドア』は、団地に暮らす人の群像劇。いろんな人がそれぞれの暮らしを送りながら、関わるようで関わらない。都市のあり方が見えてくるように思います」

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歌集『メタリック』(短歌研究社)は、オープンリーゲイとして生きる小佐野 彈によるもの。「ゲイとして社会の中で生きることの感覚が、短歌というフレームを通して再生される感じがする。すっと入ってくるような身体的な言葉です」と有地さん。

他の都市について書かれた本も、東京を見る視点を変えるのではないかという意図で選ばれている。さらに、ジョン・カビラ、クリス智子、ハリー杉山による選書のコーナーも。

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これらの本はすべて文喫で購入が可能。売れたものから補充を行うため、ラインナップは随時変わっていく。入れ替わっていく売り場のあり方でも、都市が表現されているのだ。「建物は変わっていくけど渋谷は渋谷、という感じで、アイデンティティが作れたらいいなと思っています」。

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写真の展示方法にも工夫がある。入り口横の階段には、人々の足元を写した写真。反対側の壁には街の写真。店内に進んでいくと、東京の人々と声の象徴のように、ジョン・カビラ、クリス智子、ハリー杉山、マリエのポートレートが飾られている。街を歩くと、だんだん人の気配がしてくる……というストーリーになっているのだ。

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また、隣り合った写真は無関係のように見えて実は色がリンクしているなど、細やかなこだわりも。写真そのものだけでなく、展示のされ方も含めて楽しんでほしい。

「読む」だけではない本の価値

本と出会うための本屋「文喫」は2018年のオープン以降、多くの読書家に愛されている。ここまで紹介した「東京新視点〜都市の読み方」企画展のエリアは誰でも立ち入ることができ、入場料を払えば「選書室」「喫茶室」「閲覧室」「研究室」にわかれた中2階が利用可能に。本をじっくり吟味するだけでなく、仕事などの作業をする人も多く、多様な過ごし方ができるスペースだ。有地さんによると、一度で4時間ほど滞在する人が多いという。

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「毎日、200冊ほどある新刊にも目を通して選書しています。ひとつの基準は、ここにある理由を説明できるかどうか。なんとなく、では置かないようにしています。また、検索機はあえて置いていません。検索よりも探索をということで、本棚の中に迷い込む体験をしていただければ」

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本に囲まれる空間そのものも、文喫の価値だ。例えば2冊並んだ本を見て、「違うジャンルだけど、どちらも青い表紙だ」といったような文脈を人それぞれ見い出せる。「言葉では表せないような情報量の多さを受け取ってもらえると思います。その人にしか見えないつながりを紡いでもらうのが楽しいのかな」と有地さん。

本を買うだけであれば、電子書籍や通販などの選択肢も選べる時代になった。しかし、本の山の中に自分の身を置くことで見えてくるものもある。新型コロナ以降、「わざわざ行く理由はあるか?」と考える人が多くなった今、これが文喫の愛されるひとつの理由と言えるだろう。

「東京新視点〜都市の読み方」企画展は11月23日(月・祝)まで。

(取材・文=西田友紀、撮影=北瀬由佳梨)

■文喫の企画展「東京新視点〜都市の読み方」
会期:2020/10/20(火)~11/23(月・祝)
Open 9:00-21:00(L.O.20:30)
入場無料
会場:文喫(東京都港区六本木6-1-20 六本木電気ビル1F)
https://bunkitsu.jp/

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