【J-WAVE『SONAR MUSIC』から最新音楽情報をお届け】
J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。10月より「音楽を愛する全ての人と作り上げる「(超)進化型音楽番組」として大幅リニューアルを遂げた。
番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。10月5日(月)のオンエアでは、前半にGLIM SPANKYの松尾レミ、後半に音楽ライターの朝日順子がゲストに登場。ジョン・レノンについて掘り下げて紹介した。
あっこゴリラ:レミさんは、どんなきっかけでジョン・レノンにハマったんですか?
松尾:ジョン・レノンを自分の表現として意識し出したのは、中学2年生のとき。学校で『Stand by Me』を歌ったことがきっかけです。ザ・ビートルズやジョン・レノンの作品をいろいろ聴いたときに、ジョン・レノンのちょっと歪みがかった声が、自分の持っていた歪みと重なる瞬間があって。それまでは「自分の声ってなんかガラッとしてるな」って思っていたんですけど、それでビビッときたんですよね。その頃はジョン・レノンっていうよりも、ザ・ビートルズを取り巻くカルチャーにハマっていました。
あっこゴリラ:なるほど~。レミさんの思い入れのある一曲は?
松尾:『Happy Xmas』です。中学生の頃にギターをやろうと思い、初めて練習した曲です。クリスマスの曲でもあるんですけど、反戦歌でもあって、めちゃくちゃ愛の歌です!
【John Lennon『Happy Xmas』をradikoで聴く】
松尾:ジョン・レノンってロックンロールだったりポップだったり、いろいろな要素がすべてあるというのが重要だと思います。あとは人間関係や育った環境など歴史をいろいろ調べていくと、孤独な部分が多かったからこそ人への愛情、人類愛がとてもあった人だなって個人的には感じています。平和や愛を訴えたいというポリシーって、やっぱりどの時代にも通ずるメッセージだと思うんです。芯の部分で時代にとらわれない普遍性を持っていたというのが、廃れない一つのポイントかなと思います。
あっこゴリラ:今回ジョン・レノンを初めて知るという若いリスナーもいると思いますが、初めて聴くという方に何かアドバイスはありますか?
松尾:今の歌を聴いてる人が、いきなりザ・ビートルズやジョン・レノンを聴くと、「古臭い」って思うかもしれません。そういうこと関係なく楽曲だけ聴いたときに、ジョン・レノンのやっていたテイストやフレーズを取り入れている人って今もたくさんいるので、メロディだったりポップなところから聴いていくと取っつきやすいかなって思います。
あっこゴリラ:朝日さんご自身、このニュー・ベスト・アルバムのリリースを期に、ジョン・レノン(の楽曲)を聴き直したそうですね!
朝日:全作品を聴き直して、新たな魅力をたくさん発見しました。それをみなさんと共有できるのがうれしいです。
ザ・ビートルズ解散後、ジョンはニューヨークに拠点を移し、妻オノ・ヨーコと活動を共にする。ここからは、ソロ時代の6曲の歌詞に焦点を当てた。
初ソロアルバム『ジョンの魂 - Plastic Ono Band』(1970)から『Mother』
あっこゴリラ:かなり衝撃的な歌詞ですよね。
朝日:まず出だしの鐘の音にびっくりしますよね。それで「マザー!」って始まるってかなり衝撃的で、狙ったとしか思えないですよね。ザ・ビートルズとは全く違って、こんな風に作風を変えた人って珍しいと思います。この曲は、プライマルス・クリーム心理療法というセラピーを受けて、そこから生まれた曲です。子どもの頃に受けた傷を、泣いたり叫んだりして吐き出すことによって癒されるっていう治療法です。ジョンには、生まれてすぐに両親の元から叔母へ預けられたという生い立ちがあります。そして、ティーンエイジャーの頃にお母さんを事故で亡くしてしまいます。そんな自分のトラウマと向き合い、その呪縛からの決別を歌った曲になっています。一回壊して新しいものを一から作るという、表現者としてすごく貴重な存在だと思います。
ソロアルバム2作目『imagine』(1971)から『Gimme Some Truth』
朝日:この曲は、1971年、ベトナム戦争中のアメリカが背景にあります。その最中にいたジョンが、反戦運動を歌った曲です。主に政治家に対して「真実だけをくれ!」と怒っている曲なんですよね。時代によって内容は変化するんですけど、ジョンは自分の考えを柔軟に更新していったアーティストです。戦う愛と平和の戦士としてのジョンって、一時期ちょっと古臭いイメージになっちゃったときがあったんです。でも、最近のMeToo運動やBlack Lives Matterなど見てると、そのころの「Love & Peace」がリアルに響くようになったなと思います。
『imagine』(1971)から『imagine』
あっこゴリラ:『Imagine』は、ジョンの最も有名な曲ですよね。
朝日:この曲は、人間を隔てる様々なものをなくして、世界が一つになることを歌っています。隔てるものがなくなれば争いはなくなる、というジョンの想いが込められています。歌詞はオノ・ヨーコの『グレープフルーツ』を下敷きに書かれていて、この『imagine』も“想像すること”という、本当にシンプルな訳が合っていると思います。決して押し付けではない。優しさや思いやりって、結局は相手のことを想像できるか、それが一番大事だと思うんですよね。
あっこゴリラ:『imagine』の世界への連帯を呼びかけるメッセージが、このコロナ禍で再び注目されていますよね。
朝日:この曲は、ヨーコとの出会いを歌ったラブソングです。ジョンはヨーコに出会ったことで子どものときからずっと探していた答えを見つけ、ヨーコと一緒になることで新しい自分を手に入れます。弱さをさらけ出すジョンもまた魅力的ですよね。順風満帆だった二人ですが、1973年にジョンとヨーコは別居状態になります。この期間は「失われた週末」と呼ばれ、1975年にニューヨークに戻るまで1年数ヶ月続きます。「Love & Peace」の神格化されているイメージとは程遠い、ダメな部分や人間的な弱さも持ち合わせていたんです。
『Double Fantasy』(1980)から『Watching the Wheels』
朝日:別居後にジョンとヨーコは元に戻り、1975年にはショーンという子どもが生まれます。そして、ジョンは表立った活動をやめて育児に専念します。当時すごく革新的なことでした。周りからはいろいろ言われましたが、この曲の歌詞では、ロックスターとして次々とヒット曲を生み出さなければいけない重圧から解放されて、満ち足りた心情が歌われています。このアルバムはジョンの遺作となりましたが、生き急いだような、まるで自分の死期を悟っていたかのような、本当に老年という感じの満足した姿が思い浮かぶんですよね。
『Double Fantasy』(1980)から『(Just Like) Starting Over』
朝日:1980年11月、育児生活から復活したジョンが復帰作としてリリースしたのが『Double Fantasy』です。この曲は、その活動復帰したジョンの気持ちがよくわかる一曲になっています。
あっこゴリラ:そして、このアルバムリリースからわずか1ヶ月後の12月8日、まさにこれからというときに自宅前でファンを名乗る男に拳銃で打たれて亡くなります。
朝日:ジョンは過激な言葉を使ったり、キャッチフレーズみたいなものを生み出すのがすごく上手でした。そのやり方はアメリカの芸能界に大きな影響を与えたと私は思っています。ジョンとヨーコは一貫して、愛を売り込もうとしていたというところが、すごくユニークだなって思います。
あっこゴリラ:ソロ時代の曲の歌詞を辿るだけで、彼がどんな人生を歩んできたか良くわかりますよね。ジョン・レノンは、どんな人間だと思いますか?
朝日:正直で思っていることを言うことを恐れない、すごく勇気がある人だなって思います。
あっこゴリラ:なかなかできないですよね。本当にすごいことだと思います。最後に、なぜジョンの曲は時代や国境を越えて、今もなお多くの人の心に響くのでしょうか?
朝日:ジョンは「ドアを常に開けておく」という言い方をしていました。敵も味方もなく常に対話を求めていて、曲に表れている寛容さが世界の人々に共通して響くんじゃないかなって思います。
J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。10月より「音楽を愛する全ての人と作り上げる「(超)進化型音楽番組」として大幅リニューアルを遂げた。
番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。10月5日(月)のオンエアでは、前半にGLIM SPANKYの松尾レミ、後半に音楽ライターの朝日順子がゲストに登場。ジョン・レノンについて掘り下げて紹介した。
「ジョン・レノンの歌声が、自分の歪みと重なる瞬間があった」
ジョン・レノン生誕80周年記念のニュー・ベスト・アルバム『ギミ・サム・トゥルース.』が、レノンの誕生日にあたる10月9日にリリースされる。番組前半では、GLIM SPANKYの松尾レミとともジョン・レノンのスゴさに迫った。あっこゴリラ:レミさんは、どんなきっかけでジョン・レノンにハマったんですか?
松尾:ジョン・レノンを自分の表現として意識し出したのは、中学2年生のとき。学校で『Stand by Me』を歌ったことがきっかけです。ザ・ビートルズやジョン・レノンの作品をいろいろ聴いたときに、ジョン・レノンのちょっと歪みがかった声が、自分の持っていた歪みと重なる瞬間があって。それまでは「自分の声ってなんかガラッとしてるな」って思っていたんですけど、それでビビッときたんですよね。その頃はジョン・レノンっていうよりも、ザ・ビートルズを取り巻くカルチャーにハマっていました。
あっこゴリラ:なるほど~。レミさんの思い入れのある一曲は?
松尾:『Happy Xmas』です。中学生の頃にギターをやろうと思い、初めて練習した曲です。クリスマスの曲でもあるんですけど、反戦歌でもあって、めちゃくちゃ愛の歌です!
【John Lennon『Happy Xmas』をradikoで聴く】
平和や愛は、どの時代にも通ずるメッセージ
今もなお多くのミュージシャンに影響を与えているジョン・レノン。松尾が感じる、彼の普遍性とは?松尾:ジョン・レノンってロックンロールだったりポップだったり、いろいろな要素がすべてあるというのが重要だと思います。あとは人間関係や育った環境など歴史をいろいろ調べていくと、孤独な部分が多かったからこそ人への愛情、人類愛がとてもあった人だなって個人的には感じています。平和や愛を訴えたいというポリシーって、やっぱりどの時代にも通ずるメッセージだと思うんです。芯の部分で時代にとらわれない普遍性を持っていたというのが、廃れない一つのポイントかなと思います。
あっこゴリラ:今回ジョン・レノンを初めて知るという若いリスナーもいると思いますが、初めて聴くという方に何かアドバイスはありますか?
松尾:今の歌を聴いてる人が、いきなりザ・ビートルズやジョン・レノンを聴くと、「古臭い」って思うかもしれません。そういうこと関係なく楽曲だけ聴いたときに、ジョン・レノンのやっていたテイストやフレーズを取り入れている人って今もたくさんいるので、メロディだったりポップなところから聴いていくと取っつきやすいかなって思います。
歌詞からみるジョン・レノンの本質
ここからは『ビートルズは何を歌っているのか?』の著者でもある音楽ライターの朝日順子が登場。世界のトップで活躍するロックミュージシャンを始め、国境を越えて今もなお影響を与えているジョン・レノン。そんなジョンが残した数々の名曲の歌詞を通じて、彼がどんなことを考え、何を伝えようとしたのか。ジョン・レノンのリリックを紐解いていった。あっこゴリラ:朝日さんご自身、このニュー・ベスト・アルバムのリリースを期に、ジョン・レノン(の楽曲)を聴き直したそうですね!
朝日:全作品を聴き直して、新たな魅力をたくさん発見しました。それをみなさんと共有できるのがうれしいです。
ザ・ビートルズ解散後、ジョンはニューヨークに拠点を移し、妻オノ・ヨーコと活動を共にする。ここからは、ソロ時代の6曲の歌詞に焦点を当てた。
初ソロアルバム『ジョンの魂 - Plastic Ono Band』(1970)から『Mother』
朝日:まず出だしの鐘の音にびっくりしますよね。それで「マザー!」って始まるってかなり衝撃的で、狙ったとしか思えないですよね。ザ・ビートルズとは全く違って、こんな風に作風を変えた人って珍しいと思います。この曲は、プライマルス・クリーム心理療法というセラピーを受けて、そこから生まれた曲です。子どもの頃に受けた傷を、泣いたり叫んだりして吐き出すことによって癒されるっていう治療法です。ジョンには、生まれてすぐに両親の元から叔母へ預けられたという生い立ちがあります。そして、ティーンエイジャーの頃にお母さんを事故で亡くしてしまいます。そんな自分のトラウマと向き合い、その呪縛からの決別を歌った曲になっています。一回壊して新しいものを一から作るという、表現者としてすごく貴重な存在だと思います。
ソロアルバム2作目『imagine』(1971)から『Gimme Some Truth』
『imagine』(1971)から『imagine』
朝日:この曲は、人間を隔てる様々なものをなくして、世界が一つになることを歌っています。隔てるものがなくなれば争いはなくなる、というジョンの想いが込められています。歌詞はオノ・ヨーコの『グレープフルーツ』を下敷きに書かれていて、この『imagine』も“想像すること”という、本当にシンプルな訳が合っていると思います。決して押し付けではない。優しさや思いやりって、結局は相手のことを想像できるか、それが一番大事だと思うんですよね。
あっこゴリラ:『imagine』の世界への連帯を呼びかけるメッセージが、このコロナ禍で再び注目されていますよね。
オノ・ヨーコと出会い、新しい自分を手に入れた
『Mind Games』(1973)から『Out The Blue』『Double Fantasy』(1980)から『Watching the Wheels』
『Double Fantasy』(1980)から『(Just Like) Starting Over』
あっこゴリラ:そして、このアルバムリリースからわずか1ヶ月後の12月8日、まさにこれからというときに自宅前でファンを名乗る男に拳銃で打たれて亡くなります。
ジョン・レノンが時代を超えて愛される理由
ジョンの人生を辿りながら楽曲を紹介してきたが、改めて朝日順子が思うジョン・レノンのリリックの面白さとは。朝日:ジョンは過激な言葉を使ったり、キャッチフレーズみたいなものを生み出すのがすごく上手でした。そのやり方はアメリカの芸能界に大きな影響を与えたと私は思っています。ジョンとヨーコは一貫して、愛を売り込もうとしていたというところが、すごくユニークだなって思います。
あっこゴリラ:ソロ時代の曲の歌詞を辿るだけで、彼がどんな人生を歩んできたか良くわかりますよね。ジョン・レノンは、どんな人間だと思いますか?
朝日:正直で思っていることを言うことを恐れない、すごく勇気がある人だなって思います。
あっこゴリラ:なかなかできないですよね。本当にすごいことだと思います。最後に、なぜジョンの曲は時代や国境を越えて、今もなお多くの人の心に響くのでしょうか?
朝日:ジョンは「ドアを常に開けておく」という言い方をしていました。敵も味方もなく常に対話を求めていて、曲に表れている寛容さが世界の人々に共通して響くんじゃないかなって思います。
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