映画『ミッドナイト・スワン』音楽は“神経質な音”を目指した―渋谷慶一郎が明かすこだわり

公開中の映画『ミッドナイト・スワン』で、渋谷慶一郎が音楽を担当している。11年ぶりにピアノソロアルバム『ATAK024 Midnight Swan』もリリースした渋谷が9月28日(月)、J-WAVEで放送中の番組『STEP ONE』のワンコーナー「MUSIC+1」(ナビゲーター:サッシャ・増井なぎさ)に登場した。音作りのこだわりとは?

11年ぶりのピアノソロアルバムが発売

音楽家・渋谷慶一郎は2002年に音楽レーベルATAKを設立。先鋭的な電子音楽作品からピアノソロ、オペラ、オーケストラ、映画音楽、サウンドインスタレーションなど多岐に渡る活動を続けている。9月25日は11年ぶりのピアノソロアルバム『ATAK024 Midnight Swan』をリリース。番組内で渋谷は楽曲の制作秘話を語った。

サッシャ:アルバムがものすごく売れているとお聞きしました。
渋谷:CDが売れていて、すごくビックリしています。配信でもリリースしているのですが、音が一番いいのは実はCDなんですよ。
増井:音質が違うんですね。
渋谷:そうですね。CDの音は圧縮していないので。今回のマスタリングはロンドンのメトロポリス・スタジオでジョン・デイヴィスに手掛けてもらいました。彼はレッド・ツェッペリンやU2のマスタリングをやった超大物なんですよ。彼のおかげ“ピカピカ”の音が生まれました。なので、ぜひアルバムをCDで聴いてほしいです。

視線の動き、心の近づき方と音がリンク…映画音楽のこだわり

『ATAK024 Midnight Swan』は、映画『ミッドナイト・スワン』のために書き下ろされたアルバムだ。

<あらすじ>
トランスジェンダーとして身体と心の葛藤を抱える凪沙(草彅 剛)は、母に捨てられた少女と出会い、母性に目覚めていく。「母になりたかった」人間が紡ぐ切なく衝撃のラブストーリー。
公式サイトより)

渋谷:音楽はご好評いただいているみたいで、エンドロールが終わっても立ち上がれない方がいらっしゃるそうですよ。
増井:映画『ミッドナイト・スワン』で使用された14曲を、ピアノソロに再構成されたのが『ATAK024 Midnight Swan』なんですね。
サッシャ:制作期間は1週間だったそうですね。
渋谷:そうなんですよ。死ぬかと思いましたよ(笑)。ヘッドフォンで映画の音楽を聴きながら編集作業を進めました。他の仕事も忙しい時期でしたので、なんとか1週間で仕上げました。映画は主人公の女の子がバレエを目指している、非常にエモーショナルな内容です。そこに、死や愛、トランスジェンダーというテーマが組み込まれています。実際の親子ではない関係に「どうやって愛が生まれるか」「どう出会ってどう別れるか」が描かれているから、神経質な音づくりを意識しましたね。時間はなかったですが、めちゃくちゃ計算して楽曲を制作しました。
増井:心の近づき具合と音楽が連動しているんですね。
渋谷:はい。あと、映画内の登場人物たちの視線の動きにも注目しました。ピアノの旋律だと、それに対応できるんですよ。普通の日本の映画ってワンシーンで音が終わるんだけど、スリーシーンぐらい跨っている音を作ったりするんですよね。そんなときは監督を「うーん!」って困らせてしまいますけれど(笑)。
サッシャ:編集しちゃうと音がズレちゃいますもんね。
渋谷:あと、セリフに音を被せないことも意識していますね。フェーダーで音を下げることもできるのですが、それをやるとわざとらしくなっちゃうんですよ。なので、セリフの間はピアノの演奏を待ちます。
サッシャ:アルバムを聴いていると、独特な間がたしかにありました。あれはセリフの間だったんですね。
渋谷:セリフもあるし、ピアノの音が伸びている時間にも美しさってあるんですよ。音の余韻をどう活かしていくかを意識して作曲しましたね。
増井:映画音楽って奥が深いですね。
渋谷:そうですね。やっていておもしろい仕事です。

スタジオでは、『Midnight Swan』のスタジオライブも披露。radikoで2020年10月5日(月)まで聴くことができる。

【radikoで聴く】渋谷慶一郎『Midnight Swan』

J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「MUSIC+1」では、ゲストとして毎回話題のミュージシャンが登場する。放送は月曜~木曜の12時30分頃から。
radikoで聴く
2020年10月5日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
STEP ONE
月・火・水・木曜
9:00-12:30

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