サカナクション・山口一郎×川谷絵音が語る、ミュージシャンのメッセージの伝え方

J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい”音楽をつくるクリエイターが“WOW”と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる。

6月のマンスリープレゼンターは、ギタリスト、キーボーディスト、音楽プロデューサーなどさまざまな活動をおこなう川谷絵音。6月12日(金)のオンエアでは、サカナクションの山口一郎がゲスト出演。ここでは、ふたりの出会いや、SNSについて語った部分をお届けする。

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■川谷はずっとサカナクションのファンだった

6月5日(金)の同番組で、川谷はサカナクションについて「マスにもウケるし、音楽のコアなファンにもウケるから、それ以上のバンドっていないなって思う」と話していた。音楽シーンの第一線で活躍するふたりの出会いは『ミュージックステーション』(テレビ朝日)での共演だったが、山口は全く覚えていないそうだ。

山口:ぜんぜん覚えてないんだよなあ。
川谷:そこが初共演だったかはわからないですけど。
山口:あ、思い出した! 一緒だったけどぜんぜん話さなかったよね。
川谷:トークのときにちょっと話したぐらいですかね。
山口:そこで仲良くなってはいないよね?
川谷:そうですね(笑)。
山口:『ミュージックステーション』って、終わったあとにタモリさんの楽屋にあいさつに行くっていう恒例のやつがあるじゃない。CDを渡しに行って、そのあと出演者同士のCD交換みたいな。そのときにちょっと話したのかな?
川谷:そうですね。タモリさんにCDを渡したあとに、誰かの着替え待ちとかで、出演者がグチャってなるじゃないですか?
山口:なるなる(笑)。
川谷:僕たちは「それよりも早く帰りましょう」みたいなタイプだった。でも、サカナクションは本当に好きだったので、スタッフに「サカナクションに渡しに行きたいです」って話をしたのは覚えてますね。
山口:マジでサカナクションが好きだったの?
川谷:だいぶ昔からですよ。デビュー当時くらいから聴いてます。
山口:うそ! めちゃくちゃうれしい。
川谷:ライブもです。「SWEET LOVE SHOWER」に、indigo la Endがインディーズのときに出て、サカナクションがメインステージのトリで出ていて、俺は最前列で観ました。
山口:マジで(笑)!?
川谷:そのときに、俺はまだインディーズで、ふわっとやっていたんですよ。「ちゃんとこういうデカいステージに出られるようになろう」と思ったのが、そのときのライブなんです。
山口:へえ。すごくうれしい。


■山口が、「音楽業界のジャーナリズムは死んでいる」と思った理由

川谷はかつて、山口が司会を務めるスペースシャワーTVのレギュラー番組『サカナクションのNFパンチ』に出演したことがある。そのとき山口は、川谷がワイドショーに頻繁に取り上げられていたことに触れていた。

山口:ごめんね、あれ。ちょっとイジっちゃって(笑)。あの一件があったときに、俺は本当に音楽業界のジャーナリズムは死んでいるんだなと思ったんだよね。
川谷:鹿野(淳)さんにその話をしていましたよね。
山口:だって、ああいうときにワイドショーってテレビでガヤガヤ言うじゃない。音楽側の目線でちゃんと語れる人が音楽業界側に誰もいないんだなと思ってさ。そういったことは過去にもあったし、今のSNSという状況がそれをそうさせただけ。いい曲を作ってきて、それで感動させてきたことを、音楽業界の観点の話をちゃんとジャーナリストが言わなきゃだめなのに。「結局、音楽ジャーナリストはひとりもいないんだな」と思って。でもあれ以降、僕は俄然、絵音くんに興味を持ったけどね。あのことに対して誰が何を言っているかとか、自分の周りのことも見るようになりましたね。震災のときも、今回のコロナの件も、ジャーナリズムが足りないんだなと言う気は今でもしてる。


■ミュージシャンだからこそできるメッセージの伝え方

川谷は、サカナクション『エンドレス』の話題にふれた。同曲は2011年にリリースされた曲だが、山口は2020年5月23日にTwitterでYouTubeのURLを投稿している。これはちょうどリアリティ番組『テラスハウス』に出演していたプロレスラー・木村 花さんが亡くなった頃のことだった。



川谷:(曲のテーマが)SNSの誹謗中傷みたいな。俺もいろいろあったときに『エンドレス』をよく聴いてたんですよ。すごく響く歌詞だから。
山口:あれはYouTubeとかがメインになりはじめたときに書いたんです。コメントに対してみんながコメントをする時代がきたじゃん? 自分が何を感じたかではなく、誰かの意見に対して自分の意見をすりよせていくというか、人の意見を聞いてから自分の意見をまとめていく時代になってきたな、ということを歌にしたんです。「あの歌詞を書いたときと今の日本のSNSの状況って変わってないんだな」と思って。SNSリテラシーの議論も、どうせ一時的なものだし、むなしいなって。でも、僕らって何かを言うと、それに対して何か言われるじゃない?
川谷:そうですね。
山口:だから、自分はあのときにああいう曲を作っておいてよかったなと思った。言葉じゃなく曲で説明ができるというか。
川谷:それはすごくいいなと思いました。だから僕も、自分がそのときに書いた『影ソング』をInstagramのStoriesにポンと載せて、それだけっていう。



山口:本来、ミュージシャンというのは、そういうところなんだよね。


■SNSで「どんな人が応援してくれているか」を理解し…山口のファンへの思い

今は、ミュージシャンに限らずSNS運用が上手な人が注目を浴びる傾向にある。山口は「それが続く限りは、音楽の正当な評価のされ方もぜんぜん違ってきているし、組み込まれちゃっている部分もあるんだよね」と述べ、SNSの使い方の話に。

川谷:King Gnuの井口(理)くんも、音楽性がいいのはもちろんですけど、SNSの使い方も非常にうまかったですよね。売れていない頃からジャスティン・ビーバーにリプライを送っていて(笑)、それがあとで発掘されて話題になったりとか。

山口は先日、「山口一郎のレア画像がほしい」とTwitterで呟いたファンに対し、自ら「大きな魚を釣り上げたときの写真」「ヘアサロンで施術中の写真」などを送り、大きな話題となった。川谷がそのことに触れると……。

山口:(笑)。あれは、その日、嫌なことがあったんだよね。

山口はもともと、メールより電話やビデオ通話など、会話ができるツールでのコミュニケーションを好んでいるが、その日は「メールですごい怒られた」のだという。

山口:メールだと、長文がきて、長文を返して……って、あれってすっごく無駄な時間だなと思って。それでイライラしながら、寝ようと思いつつちょっとエゴサしてたときに「レア画像をください」っていうツイートが出てきて。レア写真、いちばん持ってるの俺じゃん!と思って。
川谷:あはは! そりゃそうですよね(笑)。
山口:一時間くらいかけてセレクトして(笑)。
川谷:そんなことがあったんですね(笑)。

山口のSNS利用はプロモーションがメインだが、自分たちを応援してくれているのはどんな人たちかを理解するためにも使っているという。

山口:何を言っても、自分をフォローしたり、支持してくれているのがどういう人かによって(反応が)変わるじゃない? 突拍子のないことを言っても「まあまあ」と言ってくれるのか、「おらぁ!」と言ってくれるのかで、ぜんぜん見え方が違う。
川谷:どっちが多いですか?
山口:僕らは本当にファンに支えられてる。叱ってもくれるし、つらいときは支えてもくれて。コロナが起きてから、Instagramライブを前より頻繁にやるようになって、いい意味で友だちみたいになっているというか。Instagramライブを終えるときに間違って「また連絡します」って言っちゃうくらい(笑)。
川谷:ははは!
山口:そのくらい距離感が近いけど、音楽でちゃんと繋がれている。この感覚は今っぽいなと思うし、新しい感じがしてるね。

番組の序盤から、大いに盛り上がる二人だった。オンエアではその後も、音楽づくりの原点などたっぷりトークを繰り広げた。次回、6月19日(金)も引き続き、川谷と山口が音楽談義を繰り広げる。放送は金曜24時30分から。

深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』はJ-WAVEと、MUSIC FUN !のコラボ。『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。

・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ
https://www.youtube.com/c/musicfun_jp

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年6月19日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『WOW MUSIC』
放送日時:金曜24時30分-25時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/wowmusic/

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