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幸せな人生より「納得できる人生」を目指そう―アジカン・後藤正文×予防医学研究者・石川善樹が考える、これからの戦略

幸せな人生より「納得できる人生」を目指そう―アジカン・後藤正文×予防医学研究者・石川善樹が考える、これからの戦略

人生100年時代を迎えるにあたり、ライフスタイルをイノベーションするヒントとは? 予防医学研究者の石川善樹とともに、充実した人生をデザインするための方法を考えた。

石川がゲスト出演したのは、5月10日(日)にオンエアされた、J-WAVEのPodcast連動プログラム『INNOVATION WORLD ERA』のワンコーナー「FROM THE NEXT ERA」。同番組の第二週目のナビゲーターであるASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文と語り合った。新型コロナウイルス感染症の状況を鑑み、今回の放送はリモートで収録された。


■「孤独」が健康を害する要因は?

石川は、「僕は、間(ま)というものに興味がある」と話し始める。“仲間”“空間”“時間”という「3間」から人間を理解したいと考え、まず“仲間”について研究した石川は、著書『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法』(マガジンハウス)も刊行した。

石川:21世紀の予防医学には「孤独はタバコよりも健康を害する」という大発見があります。20世紀までは、タバコがある意味で健康を害する一番の悪者でした。ところが21世紀になって、「孤独ではない=仲間がいる」ほど健康寿命が延びることがわかってきました。

孤独である場合、何か困ったことがあっても、物質的・精神的に誰かに助けを求めることができない。人と会うことがないため、外出回数も減って、体を動かさなくなる。そして、頭を使わなくなるのだ。

石川:たくさんの仲間がいたほうが頭を使うのでボケにくいみたいです。人は歳を取るほど気の合った仲間としか話さないようになるので、頭を使わなくなるんですよね。だから、老夫婦が2人だけで暮らしていると、言葉を使わなくても通じ合うからどんどんボケてしまう。その視点だと、イヤな人ともちゃんと付き合っていたほうが頭は活性化するんですよね。

“空間”も、健康に影響を与える要素のひとつだ。私たちの多くは都市などの人口空間で暮らしているが、その環境は自然と全く異なるものだ。本来、人は自然のなかにいることが心地よく作られている。人口空間で過ごすことで、さまざまな弊害が生じる。

石川:光の色ひとつとっても、自然の中だと朝・昼・夜で色が変わります。でも、室内の光は一定の強さで煌々と照っているので、生態リズムを乱し、健康を害してしまうことがあります。
後藤:僕のスタジオは地下なので、最悪ですね(笑)。
石川:究極の人口空間ですね。


■人生が花開くのは50歳から―世の中の複雑化で“修行”が伸びた

石川は4月、著書『フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略』(NewsPicksパブリッシング)を上梓した。人生100年時代が到来し、75歳くらいまで働くであろう私たちに、いま必要な「戦略」について綴られている。

この本を読んだ後藤は「僕は石川さんが考えるようなマインドで人生を考えないで、ミュージシャンらしく行き当たりばったりでやってきた」と話しつつ、こう続ける。

後藤:自分が死んだあとの世代から僕の表現や活動を見たときに、どういう風に評価されるかという視点だけは持っておこうと思って。毎週のヒットチャートには左右されず生きようと思っています。

後藤は著書にある、「人生が花開くのは50歳からで、そこまではその準備期間」という石川の主張を興味深いと感じたという。どういう意味なのだろうか。

石川:世の中がどんどん複雑化しているので、本当の意味で次の世代に長いインパクトを起こすには修行がかなり必要になってきました。たとえば、僕たち研究者の世界だと、昔は20代とか若い時期に花開く人が多かったんですよ。でも、最近はノーベル賞級の発見をする人たちって平均で50歳前後なんです。

今も若くして世に出ることはあるものの、どうしても“今”という時代に寄り添い過ぎるものになってしまう、と石川は懸念している。

石川:時代に寄り添うことと、新しい時代をつくることは全く違う気がしています。僕は新しい時代をつくることに興味があります。たとえば、研究では今の時代に寄り添おうと思うと、人工知能とか脳科学とか、そういうことをやればいいんです。でも、すでにその分野の時代が来ているから、そこに飛び込んでも遅いんですよね。せっかく寿命が延びて、腰を据えて何かをやろうと思ったときに、やっぱり50歳くらいまでは修行期間がいるなと思ったんですよね。

後藤は石川に同調しつつ、ミュージシャンとしての考えを述べた。

後藤:ミュージシャンの場合は、ある種アスリート性もあるので、身体的なピークと知的なピークの両輪で悩む部分があると思います。ミュージシャンが50歳になれば、50歳なりの体の動きしかできないはずなので、そうなったときに何を積み重ねておくべきか……技術をしっかりハンドリングできる思想や知性がなかったら、20代は暴走列車のように「ロックンロール!」みたいな感じでどこにでも行けたかもしれないけど、歳を取ればそうはいかなくなりますからね。

石川は、寿命が延びている一方で「若い期間も延びているとも言える」と補足した。


■目的も役割も責任もない時間が幸せな状態を生み出す

後藤は、『フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略』で語られる「Well-being」と「Well-doing」の視点も興味深かったと感想を述べた。一般的には聞きなれない言葉、概念だ。

石川:よくわからない概念を理解するにあたっては、逆の概念を考えることが一番のアプローチだと思います。僕は「Well-being」の逆が「Well-doing」だと思っていて、「Well-doing」は何か目標を持って、それに向かって一生懸命にやること。世の中はこの「Well-doing」が多すぎるんです。「夢や目標を持って頑張れ!」みたいことが多い。でも、これってすごく疲れると思うんです(笑)。一方で「Well-doing」の逆、「Well-being」は目的も役割も責任もないって状態なんです。それがすごく大事なんじゃないかと思います。

みんなでたき火を囲んで会話する時間やラジオを聴く時間は「Well-being」だ。後藤は「音楽も『Well-being』側ですね」と付け加える。

石川:たき火やラジオ、音楽に共通するのは、自分という概念が溶けてみんなと一体化している状態。昔から仏教などいろんな宗教で言われていることですが、みんなと一体になる感覚は極めて幸福じゃないかと。私はその状態を「Well-being」と名付けました。

「Well-being」が度を過ぎると人生が破綻してしまうため、バランスの取り方が大事だと石川は語った。

後藤は「今は社会が『Well-doing』を要請している雰囲気がある」と指摘。その要因は、工業の時代になったことだ。

石川:機械と共に生きるってなった瞬間に「Well-doing」になっちゃったんですよね。機械ってやればやるほど成果が上がるから。でも、今の新型コロナウイルス感染症の状況から、生き方をもう一度考え直そうという時代になると思うんですよね。僕らは何にリズムを合わせて生きていていったらいいのだろうか、と。

石川は『フルライフ』を書く過程で、「幸せな人生ってよくわからない」という発見があったそうだ。

石川:幸せな人生を目指すのはかなり難しそうだとも改めてわかりました。それよりも、いかに納得できる人生にできるかを目指す方が確実だなと思いました。答えを与えられるのはいい成果が出るかも知れないけど、納得しきれない。各個人が面倒くさいけど、いろいろ試してみるしかないと思います。人は習慣の生き物なので試すことは面倒くさくて、同じことをやっていたい。でも、「本当にこれでいいんだろうか?」という疑問がどこかに残ると思うんです。不確実な時代は目標を立てにくいから、目の前にあることに対して納得を重ねていくことが、今の時代の生き方のような気がします。

今回、石川が話した「フルライフ」の内容は、『フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略』でさらに詳しくそのメソッドや概念が紹介されている。ぜひ手に取ってみては。

デジタル音声コンテンツ配信サービス 「SPINEAR」の他、Apple PodcastsやSpotifyなど各ポッドキャストサービスでは、今回のオンエアのノーカット版を配信中。

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同番組は、各界のイノベーターが週替りでナビゲートする。第1週目はライゾマティクスの真鍋大度、第2週目はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文、第3週目は女優で創作あーちすとの「のん」、第4週目はクリエイティブディレクター・小橋賢児。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年5月17日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD ERA』
放送日時:毎週日曜 23時-23時54分/SPINEAR、Spotify、YouTubeでも配信
オフィシャルサイト:https://spinear.com/shows/innovation-world-era/

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