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転勤が大迷惑! 断る若者増加…制度をなくす上で働き手に必要な「覚悟」とは

新年度を前にした3月は、会社員にとっての一大事、人事異動が発表されるタイミングだ。急な遠方への転勤に、「ええー!?」と困惑する人も少なくないだろう。独身でも困るが、家庭がある場合は、パートナーの転職や子どもの転園・転校など大きな影響を受ける。転勤が受け入れられずに仕事を辞めてしまう、“転勤離職”も増加しているという。なぜ、転勤の辞令はなくならないのか?

J-WAVEで放送中の番組『STEP ONE』のワンコーナー「BEHIND THE SCENE」(ナビゲーター:サッシャ・増井なぎさ)では、この問題にフォーカスを当てた。オンエアは3月4日(火)。ビジネスニュースサイト「BUSINESS INSIDER JAPAN」の副編集長・滝川麻衣子さんをゲストに招いた。


■転勤を断る若者が増えている

引っ越しを伴う企業の転勤事情について、滝川さんが解説をおこなった。

サッシャ:会社員の転勤自体は、現在増えているのでしょうか?
滝川:長い目で見たトレンドとしては、減ってきていると思います。「転勤制度を廃止します」というアナウンスを出す大手の損保会社もありますね。また、異動はあるけれどエリア内のみに留めるという、エリア職というものを設けるケースもあります。
増井:転勤がある会社を選ばない人はいそうですね。
滝川:若い人たちが、転勤がある会社を望まないという傾向はハッキリと出ています。
サッシャ:「BUSINESS INSIDER JAPAN」では、2019年に転勤問題に関するアンケート調査をおこなったそうですね。どんなことが見えてきましたか?

【BUSINESS INSIDER JAPAN】転勤で引き裂かれる家族、失う仕事、こんな社会でいいの?

滝川:「理不尽な転勤に人生を振り回された」という声が、たくさん集まりまして。たとえば、お子さんが産まれて保育園が決まったばかりなのに、転勤になってしまったケースがありました。他には家を建てて新生活がスタートするというタイミングで、転勤が決まってしまったケースもありましたね。「家庭の事情が一切顧みられていない」という声を、たくさんいただきました。
サッシャ:転勤の辞令というのは、「この人しか適任はいない」と思ってお願いしているのでしょうか?
滝川:ここ最近の傾向では、若者世代は転勤の辞令を断っています。会社に対する忠誠心というものが、年代によって違ってきていまして。若者が断った転勤話を、40代以上の方が「当たり前のものだから」と引き受ける流れがあるようです。
増井:若者世代は「辞めることになってもしかたないか」と思って、転勤話を断っているのでしょうか?
滝川:そうですね。20代の転職は引く手あまたの時代なので。新型コロナウイルスの影響で今度はわからないですが、ここ数年は売り手市場なので、「転勤すればいいや」という感覚を持つ20代から30代前半の人もいますね。

子どもが産まれたり、家を買ったりしたタイミングで転勤を命じられるのは、銀行などかたい会社によく見られる傾向だという。

増井:断れないですね……。
サッシャ:もう黙っておこう! 子ども、産まれません! 家、買いません! って(笑)。
滝川:(笑)。


■転勤は共働きが多い時代に合わない制度

ここで番組がオンエアしたのは、ユニコーン『大迷惑』。家を買ったあとに転勤を命じられ断れず、「逆らうと首になる」「帰りたい 帰れない」と嘆く楽曲だ。この曲の歌詞通り、大迷惑だと感じる人もいる転勤。共働きや働き方の多様化に伴い、今の時代に合っていないと滝川さんは指摘する。

サッシャ:昔はお父さんが働き、お母さんが家にいるというスタイルの家庭も多かったですが、共働きが当たり前の時代には合わないですよね。
滝川:まさにそうです。私たちが会社の転勤のエピソードを集めていくと、会社側は奥さんが働いていない前提で話を進めているケースが多かったんです。働いていたとしても、キャリアはあまり考えていないことを前提に、辞令を出していますね。夫と妻が共働きをして、一緒に子育てをしている家庭にとっては、転勤は大きな問題になります。「ついて行きたくない」となった場合、一生一緒に暮らせない可能性も出てくる。
サッシャ:「ひとりの稼ぎだけで家庭を支えられる給料が出るなら、まだいいけど」と思ったとしても、そうではないですもんね。
滝川:日本の経済成長を見るに、(共働きを)望まなかったとしても、そうしないと、子どもを育てていくのは難しいと思います。
サッシャ:それに、女性がキャリアを積んでいくのは、当然の権利ですもんね。
滝川:そうですね。時代に合わなくなっているのは薄々感じてはいても、転勤制度自体はそのままというケースが、一番多いパターンだと思います。


■転勤制度をなくす“ジョブ型”採用

なぜ、制度を変えないままのか。日本企業のあり方を紐解くと、答えが見えてくる。

滝川:前提として、転勤制度は現在、過渡期に入っていると思います。日本は、いわゆる“日本型雇用”、終身雇用制度をなんとか維持しようとしている企業が多いんですね。解雇規制も厳しいので、40年近く同じ人を雇う場合もある。新しい事業を開始したり、古い事業を終えたり……と、ビジネスを変化させるなかで、新しい人を入れることが難しいとなると、社内で人員をやりくりする必要が出てきます。社内の事業を振り分ける際に、転勤の伴う異動が発生してしまうんですね。
サッシャ:うーん。これは、学校のあり方から変えないといけないですよね。新卒を一括で採用して、会社で専門性を会得するのが、社会の仕組みになっていますから。これが、例えばヨーロッパとかだと、営業職で入った場合に違う部署に異動すると、キャリアがリセットされるので、基本的には給料が下がるんです。だから転勤がない。それを望むのかという話にもなりますが……。
滝川:そうですね。終身雇用と転勤はセットですよね。転勤制度がなくなるということは、自分の専門性が活かせる仕事が会社の中になくなると、転職せざるを得なくなります。
増井:職を失うことにもなると。
滝川:そうです。だから、働き手はそこを受けれないといけない。
サッシャ:あとは、学生が大変ですね。入るときに専門性を持っていることが前提となりますから。先ほど例に挙げたヨーロッパとかだと、学生のうちにインターンをして、“どのくらいやったか”が名刺になって、雇ってもらう。あいたところに入るから、いつ入れるかわからない。
滝川:職種によっては“ジョブ型”と呼ばれる採用も始まっています。エンジニアやデータアナリストなど、学生のときに専門性を身につけた人が会社に採用され、仕事がなくなったら次にいくという。




■転勤制度がなくなると…40代が煽りを受ける?

今後、時代の変化につれて、転勤制度がなくなる可能性はあるか。

滝川:じゅうぶんにあり得ると思います。入社時にエリアや職種を明記しておき、会社でそのポジションがなくなれば転職する。そのかわり、望まない転勤はなくなります。
サッシャ:(採用の形式が)移行すると、終身雇用だと思って入った世代が、いちばん煽りを食らうということ?
滝川:今、そうですね。去年、まさに40代のリストラが続出しました。
サッシャ:僕らの世代は就職氷河期で、入ってもこういうことになって……。
滝川:激動の……過渡期を生きてらっしゃると思います。私もそうなんですけど。
サッシャ:どうですか、20代。
増井:いやー……私は、新しい考え方にならざるを得ないんだろうなと、受け入れてはいます。理不尽なことを受け入れてまでは、(同じ企業に)いなくていいのかなという考えです。

滝川さんによると、「転勤制度がない」と表明した損害保険会社は、募集人数の10倍の応募がきたという。増井は自身の学生時代を振り返り、「遠くに行きたくないと言う子が多かったので、納得です」と述べた。


■望まない転勤を命じられたら、どうしたらいい?

家を買ったり、子どもが小さかったりする人が転勤を命じられたら、どう対処すればいいのか。

滝川:訴訟になったケースもありますが、判例は、会社の転勤命令を認めるケースが多かったです。ただ、「だったら辞めます」という若手も増えていますし、会社も転勤制度を貫き続けると離職率がすごく上がることを肌感として知っている。だから、交渉をしてみるのはひとつの手です。それでもだめだったら……転職覚悟ですね。転勤で転職するパターンは非常に多いです。

パートナーや子どもがいると、容易には決断できないが、転職をすることになっても大丈夫だと思えるスキル、キャリアを磨いていくことが大切だ。あるいは、「新しい生活が始まるのだ」と思考を切り替えるのもいいだろう。

J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「BEHIND THE SCENE」では、気になるニュースをその裏側から光を当て、様々な視点から紹介する。放送は月曜~木曜の10時10分頃から。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年3月11日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『STEP ONE』
放送日時:月・火・水・木曜 9時-13時
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/stepone

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