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社会は今後「99パーセントの普通の人」の幸せを模索すべき…働く男女の平等を、常見陽平が考える

社会は今後「99パーセントの普通の人」の幸せを模索すべき…働く男女の平等を、常見陽平が考える

世界経済フォーラムが毎年発表している「グローバルジェンダーギャップ指数」で日本は2019年、G7の中で121位。諸外国と比較し、ジェンダー平等が非常に遅れていることがたびたび指摘されている。どうすれば、多くの人が「平等だ」と感じられる社会になるのか?

持続可能な開発目標「SDGs」達成に向けて無理なくできる9つの「選択」を提案する特別番組『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL THE CHOICE IS...』が、2月11日(火)にオンエア。時間帯によってリレー形式でナビゲーターが交代する特番で、12時から15時は「WORK」をテーマに、サッシャ、LiLiCoが番組をお届けした。12台に千葉商科大学専任講師で労働社会学者の常見陽平をゲストに迎え、日本で「働く」上での男女平等問題を深掘りした。


■ジェンダーギャップ指数は、女性政治家の数が影響する

常見は、社会のジェンダー平等を実現することと、このジェンダーギャップ指数のスコアを上げることは似て非なると言う。

常見:日本がこれだけ下がった理由は、政治の部分が大きいんですよ。
サッシャ:政治の分野で圧倒的に低くなっていますもんね。
常見:(日本は)韓国と他の分野で同じくらいなんだけど、韓国は政策として閣僚女性の割合を増やしているから108位と日本よりスコアが上でした。つまり、安倍さんが閣僚の数を、意志を持って増やさなかったことが悪いんですよ。女性官僚が片山さつきさんだけという時代もあった。もしこのスコアを上げたいなら、女性の皆さんが今から政治家か管理職か経営者を目指し、娘さんがいらっしゃる方はそのために旧帝大や早慶などの難易度の高い大学か海外の大学に入れてくださいね、となります。これ言ったら、炎上すると思うんですよ。
サッシャ:しますね(笑)。
常見:炎上するし、「そこまでしないといけないの?」ということですよね。つまり、この指標では政治家の数や管理職の割合がものを言うわけです。


■男女問わず政治家になりたくない国

常見は「果たして女性が政治家になりたいと思うような状態なのか」と疑問を呈した。

常見:ここ30年くらいの話ですが、女性の四年制大学の進学率上昇や企業の積極的な女性採用のおかげで、今では女性管理職は増えてきているし、今後ももっと増えると思います。でも政治家に関しては違う。「女性のみなさん、政治家になりたいですか?」と。
サッシャ:だって、男性だってなりたい人少ないですよね。僕は個人的にはなりたくないけど(笑)。
LiLiCo:私もなりたくない(笑)。
サッシャ:そこに男女差はあるんですか?
常見:女性の場合、「(政治は)男社会だから(政治家に)なろうという気力が起きない」という意味では男女差はあると思います。だって議会に子どもを連れてきたら大炎上するし、良くも悪くも小泉進次郎さんが育休を取ると言ったら賛否を呼ぶような社会。また「ジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄)」の問題もあるし、国会中継を見ていても日本語が通じない、噛み合わない会話が起きている。一生懸命頑張って、男社会の未知の世界に行きたいかという話です。まさに「未知の旅へ」です。
サッシャ:「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」 ですね(笑)。
常見:それにこの国は公文書が偽造されてデータが不適切な統計されて。そんななかで、「女性政治家を増やさないといけないなら、私なりたいです!」は無理ゲーだと思いますよ。

さらに常見は「女性に限らず、民主主義のために政治家は多様な人がなるべき」と持論を展開。また女性政治家に絡めて東大や理系大学、社会科学系の大学などの男女比率にも言及。「女の子はこれぐらいでいい」という社会全体の先入観や偏見が、優秀な女性の進学や社会での活躍を妨げているのではないかと語った。


■日本は「個人が頑張って、会社がそこそこ頑張って、社会がサボってきた」

そして話は、夫婦共働き夫婦における育児の問題について及んだ。「『イクメン』『キャリアウーマン』という言葉がなくならなければ。育児をする男性も働く女性もずっと異端」と語る常見は、日本の会社のアンバランスさを指摘する。

【関連記事】「男性が育休さえとれば世の中が変わる」は幻想。本当に必要な理解と支え合いは(ゲスト・常見陽平)

常見:女性活躍の罪深さは、女性は「産めよ増やせよ働けよ」と言われ続けていることにもあります。
LiLiCo:う~ん。
サッシャ:子どもは増やして欲しいけど女性も働いてほしい。それで制度はどうバランスとるんですか、という話ですよね。
常見:そうです。そして男性はバリバリ働く状況から降りられないから破綻しますよね。

日本社会を「個人が頑張って、会社がそこそこ頑張って、社会がサボってきた」と評する常見。「子どもは夫婦で育てよう」と言うが、共働き前提の中で自治体などの公的なサービスやスマホ上で簡単に使えるマッチングサイトなどで育児を分担する必要性を訴えた。

LiLiCo:うちは親が共働きだったので、「デイマザー」といって他人の家族に預けられてきました。下のきょうだいが生まれる9歳まで1人っ子だったので、その家族の娘さんと“分け合う”とか“勝負で負ける”とかを学びました。
常見:「分け合う」ってすごく大事だと思いますね。

日本は6パーセントという男性の育児休業取得率の低さから、育休取得義務化の方向に話が進んでいる。一方で男性の育休については会社側のポイント稼ぎに利用されている側面や、育休を取得していながら実際には育児にまったく参加しない“取るだけ育休”なども問題も山積している。

常見:「そもそも育休がない国もあるんだから、日本の育休制度自体は充実している」という見方があるんですが、ここまで取得率が低いということは制度自体に欠陥があると見なくてはいけないと思います。それに、育児はその後のほうがずっと長い。
サッシャ:20歳くらいまでね。
常見:先日、友人と元上司と食事をしたら、「ずっと育児を嫁に任せていたら、息子に不登校の時期があったことを最近知った」と笑いながら話していました。そういうことが起きちゃうわけです。


■「バリバリ働く正社員」と「不安定な非正規の中間」を模索するべき

自身も小さな子どもを持つ常見は、男女関係なく働き方を模索する必要性を説く。

常見:正社員の過度なバリバリと、非正規の不安定な状態の中間の働き方を模索することがすごく大事だと思います。もっと言うと、奥さんより稼いでいない男性を社会がどれだけ寛容に受け止めるか。僕は今、“兼業主夫”と自分で呼んでいるのですが、今は子育てにシフトしていて「そのうちバリバリ働くぞ」という状態。今は忘れられない程度に仕事をしています。
LiLiCo:忘れられない程度に(笑)。
常見:だって、どうせ人生長いしどうせ100年生きる。上がったり下がったり曲がりくねったりする道を歩む覚悟を持って、男女で支え合わなければいけないと思います。また、女性の政治家や経営者、管理職増加を早く実現するには、女性をえこひいきすることも必要だと思います。ただ、そういう“バリバリ働く女性”を皆がウェルカムなのか、という議論もしっかりしなければいけない。
サッシャ:日本人ってすごく真面目だから「ここでいい」を認めない社会ですよね。たとえば部活も大会に優勝ことは目標にしても、人間的成長を目標にしにくい。優勝しなかったらダメ、出世しないとダメ。でも人にはそれぞれのペースがあるはず。これは格差社会に繋がるかもしれないけど、そういう自分なりの幸せを設定していいと思いますね。 常見:みんなが「自分はガンダムだ」「俺はアムロだ」と思っているんだけど、たいていがジムなんですよ。
サッシャ:つまり、雑魚キャラね。
常見:主役以外の、その他大勢99パーセントの普通の人の幸せを模索しなければいけないし、逆に言うと日本は1パーセントのエリートがふがいない。普通の人が「自分はガンダムだ」と思わされて、死ぬほど働かされているのが不幸だなと思いますね。

常見陽平

誰しもが超人ではないし、超人である必要もない。自分にとっての幸せとは何かを考え、それぞれが実現できる社会になることが大事だと言える。

【この記事の放送回をradikoで聴く】(2020年2月18日28時59分まで)
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【番組情報】
番組名:『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL THE CHOICE IS...』
放送日時:2020年2月11日(火)9時-17時55分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/holiday/20200211/

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