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佐藤琢磨「本人が自覚しないと物事が動かないし理解できない」 次世代選手に伝えたいメッセージ

佐藤琢磨「本人が自覚しないと物事が動かないし理解できない」 次世代選手に伝えたいメッセージ

J-WAVEで放送中の番組『BRIDGESTONE DRIVE TO THE FUTURE』(ナビゲーター:ピストン西沢・松嶋初音)。1月19日(日)のオンエアでは、「東京オートサロン2020」のブリヂストンブースで行われた佐藤琢磨選手とのトークショーの模様をお届けした。


■ポールポジションを獲得した2019年を振り返る

F1を経てインディカー・シリーズに参戦して、今年で早10年目を迎える佐藤選手。2019年シーズンは年間9位に終わったが、2勝しポールポジションも獲得した。

佐藤:シーズン序盤にずっと夢見ていたポールトゥウィンを、ようやく飾ることができました。その週末、完全制覇ですから。
西沢:ね。その日、一番速かった男ですからね。
佐藤:それをロードコースで示すことができた。シーズン序盤も3位から5位の間で戦えたのは、自分にも自信がつきました。最後のほうは落ちちゃったけど逆転優勝もあり、2勝もできたのは10年の中ではベストシーズンだったと言えます。最終戦まで5位、6位までいられたのはこれまでなかったですね。でも、そこまでに取りこぼしたのが多かった。18位とか15位とかけっこうあったので、2020年は取りこぼしをなくしてシングルフィニッシュにしなければいけないですね。

佐藤選手は、2017年に日本人で初めてインディアナポリス500(インディ500)で優勝。優勝前と優勝してからのこの3年は、大きな違いがあるという。

佐藤:ドライバーにとっては、どのレースで優勝しても特別。でも、3年前とか6年前のロングビーチ(グランプリ・オブ・ザ・ロングビーチ)で優勝したことなんて、覚えている人はいるけど、わざわざ「2013年ロングビーチウィナー!」とは紹介しません。でも、インディ500は違う。勝った直後はわからなかったんですが、いろいろな人に「これから一生死ぬまで言われ続けるよ」と聞いて。たしかに3年経ってもいろいろなイベントやアピアランスで「インディ500チャンピオン」と紹介されますね。
西沢:それを成し遂げたということで。でも欲張りを言うと、もう一回ほしいですよね。
佐藤:ほしいですね。


■佐藤琢磨の脳内はドーパミンがだだ洩れ?

モータースポーツは1秒で100m進むという、トップスピードの世界で戦う。佐藤選手は時速360kmという驚異のスピードの世界で必要な能力について語った。

西沢:普通は「あ!」と思ってブレーキを踏んでもタイムラグがある。この人たちは、脳から信号が行って足が動くまで筋肉が柔らかいから繋がるんですよね。スポーツドクターも言ってましたよ。
佐藤:そうでしょうね。この間、脳の検査をしたんですよ。そうしたら、マルチタスクの傾向がすごく強いらしいんです。コップの中の水が10あるとすると普通は7や8しか使えなくて、あとは他のことに使うんだけど、僕は「ひとつのことに10使えるような電気信号が流れている」と聞きました。それはスポーツ選手でもあんまりないデータだと。
西沢:やっぱり先天的に向き不向きがあって、それが恵まれていた?
佐藤:なんでも練習すればできるわけではないけど、ただトッププロになるためには自分が得意とする分野も磨いていかないと、あっという間に置いていかれちゃいます。
西沢:今も琢磨はベラベラと喋ってますが(笑)。ドクターに訊いたら、人は頭の中に興奮物質が分泌されないとたくさん喋れないんだけど、普段からドーパミンが多めに出ている人はそれを自分で興奮材料として繋げることができるそうですよ。だから、佐藤琢磨は頭の中でドーパミンがだだ漏れ(笑)。つまり、自分を高めることで体がよく動く。モータースポーツに向いてるんだと思いますよ。
佐藤:でも、何事もそうだと思います。ポジティブに考えることのよさはそこ。楽しさや自信はポジティブに考えなきゃできないですよね。
西沢:普段のレース中では喋るほう?
佐藤:いや、喋らないです。でも興奮してますね。チームオーナーからはシーズンの最初は「いけいけ!」と言うんだけど、シーズン半ばになると「とにかく落ち着け」と言われます。
西沢:とすると、小学生のときに通信簿に「落ち着きがない」と書かれた?
佐藤:書かれましたね(笑)。
西沢:希望が持てるね。


■「こいつをチャンピオンにしてやろう」とチームに思わせること

若手育成にも携わっている佐藤選手は、若いドライバーに向けて「まずはオーバルトラック全開で行ってこい」と伝えたいという。

西沢:行けると思いますか?
佐藤:行けないと思います。行ったらむしろすごい。行ったらぶつかっちゃうと思うけど、それくらいの奴のほうが成功すると思うよ。気持ち的にそれくらいやるんだという証明になる。
西沢:いきなり壁を超えるくらいの奴じゃないと大物にはなれない。
佐藤:そうですね。知らない土地の中で自分という存在をどう証明していくかという話。

佐藤選手は、初めてイギリスに渡ったときには英語がまったく話せなかったそう。エンジニアと会話ができなかったが、身振り手振りでなんとか自分で伝えていく中で「その人と一緒に過ごす時間がコミュニケーション。言葉は関係ない」という持論に至ったという。そして、そのコミュニケーション能力は、チームのモチベーションアップにも繋がるそうだ。

佐藤:世界どこ行っても上には上がいて、車の運転が上手い奴は五万といる。その中でチームを自分の方向に持っていける求心力がないと、ドライバーとして最終的に上に行けないですよね。チームが助けてくれないと速い車にならないから。
西沢:琢磨の車は琢磨がリーダーなわけですよね。それができる若いドライバーはいない?
佐藤:まあ、若いうちは難しいですよ。僕もできなかった。でも、タイヤ洗いやってくれる若いお兄ちゃんさえ「こいつをチャンピオンにしてやろう」という気持ちにさせないと。少なくともそう思わせるような走りや言動がないと、みんなの力がひとつにならない。
西沢:アマチュアの世界でさえ、「俺のレースは俺の好きなようにやらせろ」とはなかなかいかない。それがプロの世界はもっとシビア。さらにアメリカやイギリスですから。
佐藤:まずは「郷に入れば郷に従え」じゃないけど、やってみてその中でいろいろなアイデアをテーブルに出して次に来たときに「これ、どう?」と出す。それまでは彼らの言っているやり方でまずやるのがすごく大事。でもやってダメだったら、もう自分でやるしかない。若いうちはなかなかできないんだけど、それができたらすごく速いと思いますよ。


■「若いからしょうがない」にさせないことが、その後の伸びに大事

佐藤選手はジュニア世代へもメッセージを送った。

佐藤:やっぱり本人が自覚しないと物事が動かないし理解できない。「こうしろよ」と教えたところで、右から左に抜けていっちゃう。自分もそうだったけど、若いときはしょうがない。でも、それを「しょうがない」で終わらせない。自分が置かれている立場や必要なことは、失敗して悔しい思いをしてできない現状を見て初めて悟るもの。それをできるだけジュニアの時期にやるかが、その後の伸びにすごく大事になってきます。
西沢:運転が速いのも体力を付けるのも大事だけど、視野が大きくないと、この世界では勝てないというのは僕も外から見ていて思います。

最後に、佐藤選手は2020年シーズンの抱負を「2019年を超える3勝以上、タイトル争いに加わる。そして最終目標はチャンピオン」と語った。ここだけでしか聴けないトップレーシングドライバーの話をたっぷりお届けした1時間。その様子は、ぜひradikoをチェックしてほしい。

『BRIDGESTONE DRIVE TO THE FUTURE』では、クルマやドライブ、そして地球との新しい&楽しい付き合い方を提案する。オンエアは毎週日曜19時から。

【この記事の放送回をradikoで聴く】2020年1月26日28時59分まで
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『BRIDGESTONE DRIVE TO THE FUTURE』
放送日時:毎週日曜 19時-19時54分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/original/drivetothefuture/

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