J-WAVEの番組『DIALOGUE RADIO-in the Dark-』(ナビゲーター:志村季世恵/板井麻衣子)。この番組は、暗闇のソーシャルエンターテイメント『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』を主催するバースセラピストの志村季世恵が、暗闇のバーに毎回ゲストを迎え、一切、光のない空間で語り合う。
10月13日(日)のオンエアでは、バイオリニストの葉加瀬太郎をゲストに迎え、暗闇の空間で感じたことやポピュラー音楽との意外な出会い、夢中になることの大切さなどを語った。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月20日28時59分まで)
■音楽家は目を閉じている時間が長い?
暗闇のバーに迎え入れられた葉加瀬は、その感覚をこう表現する。
葉加瀬:目を閉じたり開けたりしているんだけど、その違いが面白いなと思って。目を開けると、目の前の5メートルくらい先に、すごく素敵な黒いジョーゼットがかかっているように見えます。ベルベットのような。
志村:ちょっと厚みのあるような。
葉加瀬:そうね。でも目を閉じるとそれがなくなる。音楽をやっていると目を閉じて集中したいと思うときが多いので、わりと音楽家は人生の中で目を閉じている時間が長いと思いますよ。本番中とか演奏が始まったらほとんど目を閉じます。そのほうが集中できるので。
■音楽家の使命は、音楽を自分でチョイスして紹介すること
幼い頃からバイオリンを弾き続け、音楽漬けの日々を過ごしていた葉加瀬だが、大学で上京してからポピュラー音楽に目覚め、そこから人生が180度変わったと振り返る。
志村:どう変わったんですか?
葉加瀬:それまではクラシック以外は音楽に聴こえてなかったんです。小学校のときからクラシック音楽が好きで、レコードを買い漁り、コンサートに行っては自分でバイオリンを弾いている子だったので。でも、東京の大学でパンクロックに心惹かれて、ちゃんとザ・ビートルズも聴いたことがなかった18歳の僕が、ポピュラー音楽を勉強しました。そこからは音楽が広がりました。
それまでは、たとえテレビで松田聖子が歌っていたとしても、それは音楽として聴こえていなかったという。
葉加瀬:同じようにザ・ビートルズのレコードがどこかで流れたとしても、音楽っぽく思わなかったんですよ。自分としてはチャイコフスキー、ベートーベン、ブラームスが好きだったので、歌謡曲とかポピュラー音楽はわからなかった。
その音楽遍歴があったからこそ、葉加瀬の音楽は、あまりクラシックに馴染みのない人とクラシックの架け橋になっていると志村は言う。
葉加瀬:クラシックと言ってもいろんな音楽があるから、その全てが好きってわけでもないんです。でも僕が好きな、200年前に書かれたとても上質な音楽のよさを伝えてあげたいと思っても(なかなか難しい)。「ブラームスのシンフォニーを聴いてみて」と言っても、40分もの曲を聴くのは疲れますよね。しかも、この曲はとっても暗いし重い。その分、彼の手紙の内容がたくさんこもっているからね。そういう曲を聴く機会を与えてあげたいと思ったら、僕が1度咀嚼して「こんなものなんですよ」って説明するのもいいし、「こういうふうな曲なんだよ」って簡単にわかるように演奏してあげるというのも、ひとつの方法かなと思います。
歌舞伎やオペラなど、伝統芸能的に残っているものは、すぐに理解しようとしても難しく、いろいろな情報が入ることで、初めてそれが面白いと感じることができると葉加瀬は続ける。
葉加瀬:たまたま僕は小さいときからそういうものばかり聴いてきたから、そういうものの楽しみ方は、ちょっと知っているはずだから、それは紹介したいなと思う。音楽家の使命のひとつは、いい音楽を自分でチョイスして、音楽をやっていない人にちゃんと紹介してあげることだと思っているんです。芸術は、キュレートすることがすごく大切ですよね。
■誰にも負けないぐらいの「好き」があると人生は楽しい
葉加瀬は「何でもいいから、ひとつでも夢中になれるものがあることが、人生にとってものすごく大切」と語る。
葉加瀬:僕の場合はバイオリンを弾いてることだったり曲を書くことだったりしただけで、これは人によって違うわけ。その人によって違うことが、この世の中の素晴らしさなんだよね。
志村:ほんとですね。
葉加瀬:「誰にも負けない」のではなくて「誰にも負けないぐらいこれが好き」というものがあると、人生って楽しいですよ。だって、何もいらないんだもん。僕は音楽を始めたらなにもいらないから、別にご飯も食べなくていい。本当にお腹が空いたら食べるよ。でも、それまでは極力いま夢中になってることを続けたいんですよね。そういうものがあると人生はとてもいいんです。
志村:夢中になると時間が進むのが早いですからね。
葉加瀬:それはこの暗闇の空間と似ています。集中できる。その世界に入ったときが面白いです。
葉加瀬は暗闇のバーに入る前に一瞬不安になったと明かし、その感覚がスキューバダイビングに似ていると感じていた。
葉加瀬:僕はスキューバダイビングが好きで何度もやっています。ところが毎回エントリーするたびに怖いんですよ。海に潜ってから心がすっと落ち着いたあと、夢が始まるんですよ。海の中は宇宙だからとても美しいんです。いつもと違う空間に入っていくので、その前に人は緊張して不安を感じるんですね。だから今日この部屋に入った瞬間にそれがあったんです。でも、すっと心が解き放たれる瞬間があるわけ。
この感覚はステージに立つ前の心境とも似ているという。
葉加瀬:僕は30年くらい年間100本ほどのコンサートをやっているけど、いまだにステージに上るときは不安で怖くて帰りたくなるんですよ。それは、それまでにいたところと全く違うところだから。何千人の目が僕を見る、耳が僕の音を聞く。それは普段とは違うんですね。そこに1歩入るときっていうのは、この暗闇の部屋に入るときと一緒、海の中に入るときと一緒で、怖いんですよ。ところが入ったあとは心地いいですね。
志村との対話をとおして、暗闇の心地よさを感じる葉加瀬だった。みなさんも、光のない空間で過ごすことで、新たな感覚が見つかるかもしれない。
葉加瀬が影響を受けてきたクラシックや愛してきた楽曲のカバーを全12曲新録した最新作『Dal Segno 〜Story of My Life』も、ぜひ手に取ってほしい。また、葉加瀬がナビゲーターを務める番組『ANA WORLD AIR CURRENT』(毎週土曜日19:00-19:54)も要チェック!
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月20日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『DIALOGUE RADIO-in the Dark-』
放送日時:毎月第2日曜日25時-26時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/dialogue/
10月13日(日)のオンエアでは、バイオリニストの葉加瀬太郎をゲストに迎え、暗闇の空間で感じたことやポピュラー音楽との意外な出会い、夢中になることの大切さなどを語った。
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月20日28時59分まで)
■音楽家は目を閉じている時間が長い?
暗闇のバーに迎え入れられた葉加瀬は、その感覚をこう表現する。
葉加瀬:目を閉じたり開けたりしているんだけど、その違いが面白いなと思って。目を開けると、目の前の5メートルくらい先に、すごく素敵な黒いジョーゼットがかかっているように見えます。ベルベットのような。
志村:ちょっと厚みのあるような。
葉加瀬:そうね。でも目を閉じるとそれがなくなる。音楽をやっていると目を閉じて集中したいと思うときが多いので、わりと音楽家は人生の中で目を閉じている時間が長いと思いますよ。本番中とか演奏が始まったらほとんど目を閉じます。そのほうが集中できるので。
■音楽家の使命は、音楽を自分でチョイスして紹介すること
幼い頃からバイオリンを弾き続け、音楽漬けの日々を過ごしていた葉加瀬だが、大学で上京してからポピュラー音楽に目覚め、そこから人生が180度変わったと振り返る。
志村:どう変わったんですか?
葉加瀬:それまではクラシック以外は音楽に聴こえてなかったんです。小学校のときからクラシック音楽が好きで、レコードを買い漁り、コンサートに行っては自分でバイオリンを弾いている子だったので。でも、東京の大学でパンクロックに心惹かれて、ちゃんとザ・ビートルズも聴いたことがなかった18歳の僕が、ポピュラー音楽を勉強しました。そこからは音楽が広がりました。
それまでは、たとえテレビで松田聖子が歌っていたとしても、それは音楽として聴こえていなかったという。
葉加瀬:同じようにザ・ビートルズのレコードがどこかで流れたとしても、音楽っぽく思わなかったんですよ。自分としてはチャイコフスキー、ベートーベン、ブラームスが好きだったので、歌謡曲とかポピュラー音楽はわからなかった。
その音楽遍歴があったからこそ、葉加瀬の音楽は、あまりクラシックに馴染みのない人とクラシックの架け橋になっていると志村は言う。
葉加瀬:クラシックと言ってもいろんな音楽があるから、その全てが好きってわけでもないんです。でも僕が好きな、200年前に書かれたとても上質な音楽のよさを伝えてあげたいと思っても(なかなか難しい)。「ブラームスのシンフォニーを聴いてみて」と言っても、40分もの曲を聴くのは疲れますよね。しかも、この曲はとっても暗いし重い。その分、彼の手紙の内容がたくさんこもっているからね。そういう曲を聴く機会を与えてあげたいと思ったら、僕が1度咀嚼して「こんなものなんですよ」って説明するのもいいし、「こういうふうな曲なんだよ」って簡単にわかるように演奏してあげるというのも、ひとつの方法かなと思います。
歌舞伎やオペラなど、伝統芸能的に残っているものは、すぐに理解しようとしても難しく、いろいろな情報が入ることで、初めてそれが面白いと感じることができると葉加瀬は続ける。
葉加瀬:たまたま僕は小さいときからそういうものばかり聴いてきたから、そういうものの楽しみ方は、ちょっと知っているはずだから、それは紹介したいなと思う。音楽家の使命のひとつは、いい音楽を自分でチョイスして、音楽をやっていない人にちゃんと紹介してあげることだと思っているんです。芸術は、キュレートすることがすごく大切ですよね。
■誰にも負けないぐらいの「好き」があると人生は楽しい
葉加瀬は「何でもいいから、ひとつでも夢中になれるものがあることが、人生にとってものすごく大切」と語る。
葉加瀬:僕の場合はバイオリンを弾いてることだったり曲を書くことだったりしただけで、これは人によって違うわけ。その人によって違うことが、この世の中の素晴らしさなんだよね。
志村:ほんとですね。
葉加瀬:「誰にも負けない」のではなくて「誰にも負けないぐらいこれが好き」というものがあると、人生って楽しいですよ。だって、何もいらないんだもん。僕は音楽を始めたらなにもいらないから、別にご飯も食べなくていい。本当にお腹が空いたら食べるよ。でも、それまでは極力いま夢中になってることを続けたいんですよね。そういうものがあると人生はとてもいいんです。
志村:夢中になると時間が進むのが早いですからね。
葉加瀬:それはこの暗闇の空間と似ています。集中できる。その世界に入ったときが面白いです。
葉加瀬は暗闇のバーに入る前に一瞬不安になったと明かし、その感覚がスキューバダイビングに似ていると感じていた。
葉加瀬:僕はスキューバダイビングが好きで何度もやっています。ところが毎回エントリーするたびに怖いんですよ。海に潜ってから心がすっと落ち着いたあと、夢が始まるんですよ。海の中は宇宙だからとても美しいんです。いつもと違う空間に入っていくので、その前に人は緊張して不安を感じるんですね。だから今日この部屋に入った瞬間にそれがあったんです。でも、すっと心が解き放たれる瞬間があるわけ。
この感覚はステージに立つ前の心境とも似ているという。
葉加瀬:僕は30年くらい年間100本ほどのコンサートをやっているけど、いまだにステージに上るときは不安で怖くて帰りたくなるんですよ。それは、それまでにいたところと全く違うところだから。何千人の目が僕を見る、耳が僕の音を聞く。それは普段とは違うんですね。そこに1歩入るときっていうのは、この暗闇の部屋に入るときと一緒、海の中に入るときと一緒で、怖いんですよ。ところが入ったあとは心地いいですね。
志村との対話をとおして、暗闇の心地よさを感じる葉加瀬だった。みなさんも、光のない空間で過ごすことで、新たな感覚が見つかるかもしれない。
葉加瀬が影響を受けてきたクラシックや愛してきた楽曲のカバーを全12曲新録した最新作『Dal Segno 〜Story of My Life』も、ぜひ手に取ってほしい。また、葉加瀬がナビゲーターを務める番組『ANA WORLD AIR CURRENT』(毎週土曜日19:00-19:54)も要チェック!
【この記事の放送回をradikoで聴く】(2019年10月20日28時59分まで)
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『DIALOGUE RADIO-in the Dark-』
放送日時:毎月第2日曜日25時-26時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/dialogue/
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