J-WAVEの番組『TAKRAM RADIO』(ナビゲーター:渡邉康太郎)。東京とロンドンを拠点に、人工衛星から和菓子まで幅広くものづくりに取り組むデザインファームTakramの渡邉康太郎が、未来を切り開くインスピレーションを伝える番組。9月12日(木)のオンエアでは、新潮文庫nex編集長・高橋裕介が登場。新しいストーリーとの出会い方や日本の出版市場について語った。
■新しいストーリーとの出会い方
渡邉は"面白い本との出会い方のヒント"として、海外での斬新な出会いを紹介した。
渡邉:去年だったかな。西海岸のナパバレーあたりのワイナリー訪問をしていたんです。建物のなかに、可愛らしい自動販売機のようなものが置いてありました。「1」「3」「5」と書いてあって、「なんだろう?」と思ったら「1分」「3分」「5分」という意味で、ボタンを押すとレシート状の紙が出てきて、そこにショートストーリーが書かれています。1分間、3分間、5分間で読み切れるものがオンラインに5万とおりくらいあって、そこからランダムに選ばれたものが勝手に印刷されてくるんです。「Short Edition」という会社がフランスにあって、このサービスは各国の言語で展開してるらしいんです。
高橋:じゃあ、いろいろな国でやっているんですか?
渡邉:そうみたいです。フランスだったら駅のプラットフォームに置いてあって、遅延があたり前の文化ですから、ちょっと待つ間にストーリーを印刷する。何かを待っているとき、もしくはお酒を飲んでるときに物語が差し込まれる。人生のある瞬間に物語が届けれらる。これはもしかしたら新しいストーリーとの出会い方なのかもしれない。駅の人ととして、お客さんの満足度が少しでも上がるように、待ち時間が有効になるように設置すると、きっとみんな幸せになる。かつ、作り手を応援することでもあって、1回読まれるごとに少しずつロイヤリティが著者にも分配される仕組みらしいです。
■日本の出版市場
高橋は「これは僕の仮設なんですけど、日本で『Short Edition』のようなサービスがあまりない理由のひとつは、本が売れている国だったということがある」と指摘した。
高橋:出版市場の大きさって1位はアメリカ、2位は中国、日本は3位とかなんですよ。あらゆる文学・文芸は、イギリス、フランス、ドイツとか、ヨーロッパから生まれてきたイメージがあるから、市場も大きい出版先進国なんじゃないかという潜在意識を持っている人もいるかもしれないです。でも市場統計でみると日本は3位とかの規模なんです。日本のひとり当たりの出版市場って世界でもほぼトップといってもいいくらいなんですよね。日本はすごく出版先進国で、書店数も多くてみんなが本を買う。薄利多売の「多」がすごい国だったんです。今でもすごいんですけど。そうなると何が起きるかというと、大きく売れることにシステムとして慣れちゃってると思うんです。個々の編集者や作家じゃなくて、システムとしてみんながパーツとして動いているなかで、いっぱい売れているから、そのシステムが回っていることに慣れている。そうすると、ひとつの取り組みが生み出す利益って、そのシステムが生み出す利益と比べたら「手間のほうが大変だよね」っていって、多くの企画が潰れていったんじゃないかなと思うんですよね。
「もうちょっと市場が小さければ『この取り組みもいいじゃん』となるんですけど、『そういう取り組みをするんなら、このシステムに乗せようよ』みたいな議論が出る」と続ける。
高橋:これまではそれでよかったんですけど、そのポイントが段々ズレてきている。どこで利益があるべきかとか、"どこで読まれる"という体感をどこに置くべきかというポイントがズレてきているなという気がします。だから今、本が売れない、売れない本があるという感じになっちゃってるわけです。
『TAKRAM RADIO』の放送は毎週木曜の26時30分から。お楽しみに!
【番組情報】
番組名:『TAKRAM RADIO』
放送日時:毎週木曜 26時30分-27時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/takram/
■新しいストーリーとの出会い方
渡邉は"面白い本との出会い方のヒント"として、海外での斬新な出会いを紹介した。
渡邉:去年だったかな。西海岸のナパバレーあたりのワイナリー訪問をしていたんです。建物のなかに、可愛らしい自動販売機のようなものが置いてありました。「1」「3」「5」と書いてあって、「なんだろう?」と思ったら「1分」「3分」「5分」という意味で、ボタンを押すとレシート状の紙が出てきて、そこにショートストーリーが書かれています。1分間、3分間、5分間で読み切れるものがオンラインに5万とおりくらいあって、そこからランダムに選ばれたものが勝手に印刷されてくるんです。「Short Edition」という会社がフランスにあって、このサービスは各国の言語で展開してるらしいんです。
高橋:じゃあ、いろいろな国でやっているんですか?
渡邉:そうみたいです。フランスだったら駅のプラットフォームに置いてあって、遅延があたり前の文化ですから、ちょっと待つ間にストーリーを印刷する。何かを待っているとき、もしくはお酒を飲んでるときに物語が差し込まれる。人生のある瞬間に物語が届けれらる。これはもしかしたら新しいストーリーとの出会い方なのかもしれない。駅の人ととして、お客さんの満足度が少しでも上がるように、待ち時間が有効になるように設置すると、きっとみんな幸せになる。かつ、作り手を応援することでもあって、1回読まれるごとに少しずつロイヤリティが著者にも分配される仕組みらしいです。
■日本の出版市場
高橋は「これは僕の仮設なんですけど、日本で『Short Edition』のようなサービスがあまりない理由のひとつは、本が売れている国だったということがある」と指摘した。
高橋:出版市場の大きさって1位はアメリカ、2位は中国、日本は3位とかなんですよ。あらゆる文学・文芸は、イギリス、フランス、ドイツとか、ヨーロッパから生まれてきたイメージがあるから、市場も大きい出版先進国なんじゃないかという潜在意識を持っている人もいるかもしれないです。でも市場統計でみると日本は3位とかの規模なんです。日本のひとり当たりの出版市場って世界でもほぼトップといってもいいくらいなんですよね。日本はすごく出版先進国で、書店数も多くてみんなが本を買う。薄利多売の「多」がすごい国だったんです。今でもすごいんですけど。そうなると何が起きるかというと、大きく売れることにシステムとして慣れちゃってると思うんです。個々の編集者や作家じゃなくて、システムとしてみんながパーツとして動いているなかで、いっぱい売れているから、そのシステムが回っていることに慣れている。そうすると、ひとつの取り組みが生み出す利益って、そのシステムが生み出す利益と比べたら「手間のほうが大変だよね」っていって、多くの企画が潰れていったんじゃないかなと思うんですよね。
「もうちょっと市場が小さければ『この取り組みもいいじゃん』となるんですけど、『そういう取り組みをするんなら、このシステムに乗せようよ』みたいな議論が出る」と続ける。
高橋:これまではそれでよかったんですけど、そのポイントが段々ズレてきている。どこで利益があるべきかとか、"どこで読まれる"という体感をどこに置くべきかというポイントがズレてきているなという気がします。だから今、本が売れない、売れない本があるという感じになっちゃってるわけです。
『TAKRAM RADIO』の放送は毎週木曜の26時30分から。お楽しみに!
【番組情報】
番組名:『TAKRAM RADIO』
放送日時:毎週木曜 26時30分-27時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/takram/