J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)のワンコーナー「SHOWA SHELL SEKIYU ROAD TO INNOVATION」。5月17日(金)のオンエアでは、元ソニー社長でクオンタムリープ株式会社 代表取締役 ファウンダー&CEO 出井伸之さんが登場。インターネットやスマートフォンの台頭を予測していたエピソードなどを語りました。
■興味があることは勉強する
出井さんについて、「多くの人は“トップとしての出井さん”をイメージする」と述べる川田。これに出井さんは、ソニー社員だった頃を振り返ります。
川田:働き方のお話をしたいと思います。出井さんは表でサラリーマンをしながら、裏の仕事もされていたそうですね。
出井:裏というのは、自分が興味あることをどんどん勉強することです。
川田:ほとんどの方は自分が興味あることでも謹んでしまうのでは?
出井:アーティストで考えれば、仕事とそうでない時間は区別しづらいじゃないですか。サラリーマンだけ仕事が終わったら“終わり”というのはあり得ないですよね。そういう意味で、「自分の人生の生き方」を持つべきだと思います。
川田:経営者からの視点からみて、自分の意見を持つ社員は有り難いですか?
出井:有り難いですよ。会社から言われたことはやるけど、自分の意見を言う人は少ないですね。言っちゃいけないのかな? 僕はそういう意味で、ソニーの社員だったころ、ソニーにとって一番よいものを考えて意見を持っていましたが、必ずしも会社の意見と一致するわけではなく、ぶつかって飛ばされたこともありましたね。
川田:定期的にレポートを書いて、経営層に提出されていたそうですね。
出井:ソニーという会社が好きだから。社員の8割が理系で、文系が2割もいないソニー本社の環境で、理系をマネジメントしてリーダーシップを発揮するのがいいと自ら判断し、当時業績があまりよくなかったオーディオ事業部を立て直すため、事業部長に立候補しました。自分がソニーですべきことは何かを考え、マネジメント業務に挑戦したのです。
■「社長を辞退します」と手紙を書いたけど…
出井さんに訊きたかったことをピックアップして持ってきていた川田は、ソニー社長に就任したときのエピソードについて質問を投げかけます。
川田:会社の代表に大抜擢されたときのことをお聞かせください。
出井:(笑)。「あなたが次の社長だ」と言われたときに、冗談だと思ったんですよね。その頃にはもう50歳も過ぎていたから、10年前くらいに言ってくれればよかったのに、と(笑)。
川田:普通の人だったら大抜擢されたら「僕なんて……」という雰囲気で、「務めさせていただきます」と言いそうですけど。
出井:僕も「こんな冗談を言っておかしいな」と思って、辞退しますと手紙を書いて出張に行っちゃったんです。でも、全く無視されて着々と進んでいきました。
川田が出井さんについて印象的だったのは、1994年という早い段階で、現在のインターネット社会を予測するようなことをレポートに書いていたことでした。
出井:それは、当時コンピューター事業部長をやっていたからですね。IT業界の人と付き合いが広かったので、情報が山のように入ってきたんです。そのころ米国が発表した「情報スーパーハイウエイ構想」について、1993年に副大統領アル・ゴア氏が行ったスピーチを聞きに行きました。1980年代、貿易で日本にずっと負けていたアメリカが、「戦後、軍事技術のインターネットを商用化する」と発表したことに、隕石が落ちてきたかのような衝撃を受けて、企業は変わらなきゃいけないと思い、レポートを書きました。
川田:でも、それは「Windows 95」が出る前ですよね。
当時、出井さんがまとめたレポートには「メディアはマスではなく、個の時代になる」と明言されていました。
出井:マスメディアは一方通行で、今どう思っているかは入ってこない。でも、インターネットはそういうものではないから、メディアが非常に変わると予見しました。アメリカには地上波はもちろん、ケーブルテレビ局もあり、さまざまな手段があったわけです。そこにITが加わるとどうなるか、とアメリカ側から考えるとわかりやすかったです。
■スマートフォンは大きな半導体みたいなもの
また、スマートフォンが台頭していることも、出井さんは予見していました。
出井:そこで、スウェーデンの通信機器メーカー・エリクソンとソニーが合弁をやったわけです。アメリカの決めるものとヨーロッパの決めるものは特許があって、特許の費用がかかるため日本は非常に不利なんです。だから、エリクソンを買収するのではなく、それぞれ子会社を合併するということで、僕は「ソフト・アライアンス」という言葉を使いました。それでロンドンに電話の会社を作ったんです。
川田:僕はこんなにスマートフォンが流行るかなと思ってたんですけどね。
出井:スマートフォンってハードじゃないんですよ。当時、Appleはマイクロソフトにやられていて、OSではダメだったわけでしょ。そこでAppleは、OSをインターネットの上に持っていったってことです。iOSとかね。そういう意味で、スマートフォンはハードではなくて、ソフトが乗っかっている大きな半導体みたいなものですよね。
■「ベンチャーじゃなくて、アドベンチャーをしよう」
出井さんが2015年に監修した書籍『角川インターネット講座11 進化するプラットフォーム グーグル・アップル・アマゾンを超えて』(KADOKAWA / 角川学芸出版)があります。
出井:この本も含め、これからIT時代を超えて、ブロックチェーンとかAI(人工知能)とか、いろいろ技術が出てくると思います。
川田:その面で日本は遅れをとっている感覚がありますよね。
出井:そうですね。
川田:これってどうしたらいいんですかね。
出井:遅れているところだけ強調するからそう思うだけで、進んでいるところもある。日本は悪いところばかり見つけて自己批判が多いけど、日本の未来はこれからだから。今後はアジアの時代であり、日本はど真ん中にいるわけだから元気を出していかないと。日本人ってくよくよして「ダメだ」とか言うじゃないですか。でもこれからみんな新しい時代に入っていくわけだからね。日本は過去にたくさんの素晴らしい技術をため込んできたから、若い人たちにどんどんベンチャーを興してもらえれば。
最後に出井さんは「日本は失敗してはいけない雰囲気があって元気がない」と話しながらも「『ベンチャーじゃなくて、アドベンチャー(冒険)をしよう』という社会運動を広げていきたい」と意気込みを伝えました。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD』
放送日時:毎週金曜 20時-22時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/
■興味があることは勉強する
出井さんについて、「多くの人は“トップとしての出井さん”をイメージする」と述べる川田。これに出井さんは、ソニー社員だった頃を振り返ります。
川田:働き方のお話をしたいと思います。出井さんは表でサラリーマンをしながら、裏の仕事もされていたそうですね。
出井:裏というのは、自分が興味あることをどんどん勉強することです。
川田:ほとんどの方は自分が興味あることでも謹んでしまうのでは?
出井:アーティストで考えれば、仕事とそうでない時間は区別しづらいじゃないですか。サラリーマンだけ仕事が終わったら“終わり”というのはあり得ないですよね。そういう意味で、「自分の人生の生き方」を持つべきだと思います。
川田:経営者からの視点からみて、自分の意見を持つ社員は有り難いですか?
出井:有り難いですよ。会社から言われたことはやるけど、自分の意見を言う人は少ないですね。言っちゃいけないのかな? 僕はそういう意味で、ソニーの社員だったころ、ソニーにとって一番よいものを考えて意見を持っていましたが、必ずしも会社の意見と一致するわけではなく、ぶつかって飛ばされたこともありましたね。
川田:定期的にレポートを書いて、経営層に提出されていたそうですね。
出井:ソニーという会社が好きだから。社員の8割が理系で、文系が2割もいないソニー本社の環境で、理系をマネジメントしてリーダーシップを発揮するのがいいと自ら判断し、当時業績があまりよくなかったオーディオ事業部を立て直すため、事業部長に立候補しました。自分がソニーですべきことは何かを考え、マネジメント業務に挑戦したのです。
■「社長を辞退します」と手紙を書いたけど…
出井さんに訊きたかったことをピックアップして持ってきていた川田は、ソニー社長に就任したときのエピソードについて質問を投げかけます。
川田:会社の代表に大抜擢されたときのことをお聞かせください。
出井:(笑)。「あなたが次の社長だ」と言われたときに、冗談だと思ったんですよね。その頃にはもう50歳も過ぎていたから、10年前くらいに言ってくれればよかったのに、と(笑)。
川田:普通の人だったら大抜擢されたら「僕なんて……」という雰囲気で、「務めさせていただきます」と言いそうですけど。
出井:僕も「こんな冗談を言っておかしいな」と思って、辞退しますと手紙を書いて出張に行っちゃったんです。でも、全く無視されて着々と進んでいきました。
川田が出井さんについて印象的だったのは、1994年という早い段階で、現在のインターネット社会を予測するようなことをレポートに書いていたことでした。
出井:それは、当時コンピューター事業部長をやっていたからですね。IT業界の人と付き合いが広かったので、情報が山のように入ってきたんです。そのころ米国が発表した「情報スーパーハイウエイ構想」について、1993年に副大統領アル・ゴア氏が行ったスピーチを聞きに行きました。1980年代、貿易で日本にずっと負けていたアメリカが、「戦後、軍事技術のインターネットを商用化する」と発表したことに、隕石が落ちてきたかのような衝撃を受けて、企業は変わらなきゃいけないと思い、レポートを書きました。
川田:でも、それは「Windows 95」が出る前ですよね。
当時、出井さんがまとめたレポートには「メディアはマスではなく、個の時代になる」と明言されていました。
出井:マスメディアは一方通行で、今どう思っているかは入ってこない。でも、インターネットはそういうものではないから、メディアが非常に変わると予見しました。アメリカには地上波はもちろん、ケーブルテレビ局もあり、さまざまな手段があったわけです。そこにITが加わるとどうなるか、とアメリカ側から考えるとわかりやすかったです。
■スマートフォンは大きな半導体みたいなもの
また、スマートフォンが台頭していることも、出井さんは予見していました。
出井:そこで、スウェーデンの通信機器メーカー・エリクソンとソニーが合弁をやったわけです。アメリカの決めるものとヨーロッパの決めるものは特許があって、特許の費用がかかるため日本は非常に不利なんです。だから、エリクソンを買収するのではなく、それぞれ子会社を合併するということで、僕は「ソフト・アライアンス」という言葉を使いました。それでロンドンに電話の会社を作ったんです。
川田:僕はこんなにスマートフォンが流行るかなと思ってたんですけどね。
出井:スマートフォンってハードじゃないんですよ。当時、Appleはマイクロソフトにやられていて、OSではダメだったわけでしょ。そこでAppleは、OSをインターネットの上に持っていったってことです。iOSとかね。そういう意味で、スマートフォンはハードではなくて、ソフトが乗っかっている大きな半導体みたいなものですよね。
■「ベンチャーじゃなくて、アドベンチャーをしよう」
出井さんが2015年に監修した書籍『角川インターネット講座11 進化するプラットフォーム グーグル・アップル・アマゾンを超えて』(KADOKAWA / 角川学芸出版)があります。
出井:この本も含め、これからIT時代を超えて、ブロックチェーンとかAI(人工知能)とか、いろいろ技術が出てくると思います。
川田:その面で日本は遅れをとっている感覚がありますよね。
出井:そうですね。
川田:これってどうしたらいいんですかね。
出井:遅れているところだけ強調するからそう思うだけで、進んでいるところもある。日本は悪いところばかり見つけて自己批判が多いけど、日本の未来はこれからだから。今後はアジアの時代であり、日本はど真ん中にいるわけだから元気を出していかないと。日本人ってくよくよして「ダメだ」とか言うじゃないですか。でもこれからみんな新しい時代に入っていくわけだからね。日本は過去にたくさんの素晴らしい技術をため込んできたから、若い人たちにどんどんベンチャーを興してもらえれば。
最後に出井さんは「日本は失敗してはいけない雰囲気があって元気がない」と話しながらも「『ベンチャーじゃなくて、アドベンチャー(冒険)をしよう』という社会運動を広げていきたい」と意気込みを伝えました。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD』
放送日時:毎週金曜 20時-22時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/
関連記事
- 乃木坂46・池田瑛紗、藝大への進学を諦めずにいられた「後押し」とは? 広がる活動への想いを聞く
- ダイソン、27億5000万ポンド(約4372億円)投じて技術開発! 「野望」を同社の女性エンジニアに聞く
- ラジオのリスナーへの感謝をNFTに! 新サービス「J-WAVE LISTEN+」はどんな仕組み?
- スポーツで地域はどのように拡張できる? Jリーグ 京都サンガF.C.のフロントスタッフと語るオンライン講義を実施!学生5名様をご招待 乃木坂46 早川聖来も参加
- テクノロジーで身体はどう変化する?身体の不思議やテクノロジーがもたらす可能性に迫るオンライン講義に学生5名様をご招待!乃木坂46 早川聖来も参加