J-WAVEで放送中の番組『GOOD NEIGHBORS』(ナビゲーター:クリス智子)。4月17日(水)のオンエアでは、編集者やコメンテーターなどマルチに活躍する山田五郎さんをゲストにお迎えし、西洋絵画を鑑賞するときのヒントや、巨匠たちの意外な素顔、西洋絵画史でいちばん面白い100年についてお訊きしました。
■美術は教養ではない?
先日、『知識ゼロからの近代絵画入門』(幻冬社)を上梓した山田さん。キャッチコピーは「西洋絵画史でいちばん面白い100年間」となっています。本書の「100年」とは、19世紀初頭から20世紀初頭。西洋絵画の古典は15世紀のルネサンス時代に確立され、それ以降、400年ほど基本的なことは変わっていません。しかし、19世紀に入ってからの100年で「まるっきり変わった」と山田さんは言います。まずはその説明に入る前に、「みんな美術を勉強だと思いすぎ」と山田さん。
山田:近代に美術館というものができたでしょ? 美術館というのは、もともと王様とかが持ってた美術品を持ってきて、国民の共有財産としてみんなに見せたわけです。そのことは、すごく良いじゃないですか。誰でも見られるようになるのは。でも逆にそれは、王様たちの寝室とかにあった絵を持ってきて、美術館でガラスの向こうに入れちゃったわけですよ。そのことによって、暮らしの中で楽しむものじゃなくって、わざわざガラス越しに見て、勉強するものになっちゃったっていうことがあるんですね。
今でこそ、自分の日常とは関係のない“教養”になってしまった印象のある美術作品。しかし、そもそもは身の回りにあって、暮らしを豊かにしてくれるもの。そう立ち返ってみると楽な気持ちで見られるかもしれません。
■400年間変わらなかった西洋絵画が変わった理由
モネ、ルノアール、セザンヌ、ゴッホ、ピカソなど、誰もが名前を知る画家たちを、ロマン主義、表現主義、キュビスムなどに分け、歴史やその変遷をわかりやすくまとめている『知識ゼロからの近代絵画入門』。15世紀から400年も変わらなかった西洋絵画が、どうして変わったのでしょうか。
山田:まずひとつは市民革命があったわけです。王様とか教会がスポンサーでなくなったんです。それまで西洋絵画っ、て宗教画家、歴史画家がいちばん偉かったでしょ? だけど、それは王様とか教会がスポンサーだったからで、市民がスポンサーになったらそういう絵は流行らない。今のことを描こうよっていうのが出てくる。それから写真が出てくる。そうすると、そっくりリアルに描いてるだけじゃしょうがない、絵にしかできない表現ってなんだろう? というのが出てくる。そういう中でどんどん変わっていくんですよね。
特にフランスでいろんなムーブメントが生まれた理由のひとつに、1804年にナポレオンが戴冠してから1870年の普仏戦争でナポレオン3世が失脚するまでの約70年間に、フランスでは、帝政、共和制、王政など6回も政体が変わりました。激動の時代だったために、様々な主張が生まれてきたというのもある、と山田さん。
本書の隠しコンセプトには「ふたつの流れで捉えよう」というのがあります。ひとつは、写実主義や印象派など「目に見えるものを描いていこう」というもの。それに対して、象徴主義など、自分の中にある目に見えない観念や心情を「目に見えるものとして描いていこう」という流れ。このふたつの流れで見ていくと、いろいろと西洋絵画の歴史がわかりやすいのだとか。
■下手すぎて逆に評価された巨匠画家とは?
紹介している画家の中で、山田さんが特におもしろいと言うのがセザンヌ。「歴史上で初めての、絵が下手な巨匠」と言い切る山田さん。
山田:呆れるほど絵が下手なんですよ、セザンヌって。だから最初は笑われる。実はセザンヌって印象派展の立ち上げメンバーなんですよ。だけど、みんなに笑われて国に帰っちゃうんです(笑)。
南フランスに帰り、親の遺産を糧にずっと絵を描き続けるのですが、それでも上手くならず、国の展覧会に応募しても一度も受からなかったセザンヌ。しかし、ずっと描き続けているうちに時代が変わり、若者たちがセザンヌの絵を「逆におもしろい!」と言い出すように。
山田:続けるってすごいんですよ(笑)。「そっくりに描いても、うまく描いてもしょうがなくない?」みたいな。セザンヌの絵に「どうやったらこうなるの!?」みたいな。「なんで布もリンゴも石も質感が同じなの!?」みたいな(笑)。
クリス:(笑)。
そのため、逆にピカソら絵のうまい人は「俺にはこれは描けない」と白旗をあげてしまいます。
クリス:ピカソはうますぎていろいろやるわけですもんね。
山田:でも、うまいだけじゃ飯が食えなかったわけですよ。で、どうしようかって悩んでたときに、セザンヌとアンディ・ルソーとアフリカ彫刻を見て、「これだ!」と思うわけですよ。
山田さんらしい、わかりやすくておもしろい解説で、終始笑いの絶えなかった西洋絵画の歴史。『知識ゼロからの近代絵画入門』は、西洋絵画は自分には難しい、と感じていた方には特にオススメの一冊です!
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【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/
■美術は教養ではない?
先日、『知識ゼロからの近代絵画入門』(幻冬社)を上梓した山田さん。キャッチコピーは「西洋絵画史でいちばん面白い100年間」となっています。本書の「100年」とは、19世紀初頭から20世紀初頭。西洋絵画の古典は15世紀のルネサンス時代に確立され、それ以降、400年ほど基本的なことは変わっていません。しかし、19世紀に入ってからの100年で「まるっきり変わった」と山田さんは言います。まずはその説明に入る前に、「みんな美術を勉強だと思いすぎ」と山田さん。
山田:近代に美術館というものができたでしょ? 美術館というのは、もともと王様とかが持ってた美術品を持ってきて、国民の共有財産としてみんなに見せたわけです。そのことは、すごく良いじゃないですか。誰でも見られるようになるのは。でも逆にそれは、王様たちの寝室とかにあった絵を持ってきて、美術館でガラスの向こうに入れちゃったわけですよ。そのことによって、暮らしの中で楽しむものじゃなくって、わざわざガラス越しに見て、勉強するものになっちゃったっていうことがあるんですね。
今でこそ、自分の日常とは関係のない“教養”になってしまった印象のある美術作品。しかし、そもそもは身の回りにあって、暮らしを豊かにしてくれるもの。そう立ち返ってみると楽な気持ちで見られるかもしれません。
■400年間変わらなかった西洋絵画が変わった理由
モネ、ルノアール、セザンヌ、ゴッホ、ピカソなど、誰もが名前を知る画家たちを、ロマン主義、表現主義、キュビスムなどに分け、歴史やその変遷をわかりやすくまとめている『知識ゼロからの近代絵画入門』。15世紀から400年も変わらなかった西洋絵画が、どうして変わったのでしょうか。
山田:まずひとつは市民革命があったわけです。王様とか教会がスポンサーでなくなったんです。それまで西洋絵画っ、て宗教画家、歴史画家がいちばん偉かったでしょ? だけど、それは王様とか教会がスポンサーだったからで、市民がスポンサーになったらそういう絵は流行らない。今のことを描こうよっていうのが出てくる。それから写真が出てくる。そうすると、そっくりリアルに描いてるだけじゃしょうがない、絵にしかできない表現ってなんだろう? というのが出てくる。そういう中でどんどん変わっていくんですよね。
特にフランスでいろんなムーブメントが生まれた理由のひとつに、1804年にナポレオンが戴冠してから1870年の普仏戦争でナポレオン3世が失脚するまでの約70年間に、フランスでは、帝政、共和制、王政など6回も政体が変わりました。激動の時代だったために、様々な主張が生まれてきたというのもある、と山田さん。
本書の隠しコンセプトには「ふたつの流れで捉えよう」というのがあります。ひとつは、写実主義や印象派など「目に見えるものを描いていこう」というもの。それに対して、象徴主義など、自分の中にある目に見えない観念や心情を「目に見えるものとして描いていこう」という流れ。このふたつの流れで見ていくと、いろいろと西洋絵画の歴史がわかりやすいのだとか。
■下手すぎて逆に評価された巨匠画家とは?
紹介している画家の中で、山田さんが特におもしろいと言うのがセザンヌ。「歴史上で初めての、絵が下手な巨匠」と言い切る山田さん。
山田:呆れるほど絵が下手なんですよ、セザンヌって。だから最初は笑われる。実はセザンヌって印象派展の立ち上げメンバーなんですよ。だけど、みんなに笑われて国に帰っちゃうんです(笑)。
南フランスに帰り、親の遺産を糧にずっと絵を描き続けるのですが、それでも上手くならず、国の展覧会に応募しても一度も受からなかったセザンヌ。しかし、ずっと描き続けているうちに時代が変わり、若者たちがセザンヌの絵を「逆におもしろい!」と言い出すように。
山田:続けるってすごいんですよ(笑)。「そっくりに描いても、うまく描いてもしょうがなくない?」みたいな。セザンヌの絵に「どうやったらこうなるの!?」みたいな。「なんで布もリンゴも石も質感が同じなの!?」みたいな(笑)。
クリス:(笑)。
そのため、逆にピカソら絵のうまい人は「俺にはこれは描けない」と白旗をあげてしまいます。
クリス:ピカソはうますぎていろいろやるわけですもんね。
山田:でも、うまいだけじゃ飯が食えなかったわけですよ。で、どうしようかって悩んでたときに、セザンヌとアンディ・ルソーとアフリカ彫刻を見て、「これだ!」と思うわけですよ。
山田さんらしい、わかりやすくておもしろい解説で、終始笑いの絶えなかった西洋絵画の歴史。『知識ゼロからの近代絵画入門』は、西洋絵画は自分には難しい、と感じていた方には特にオススメの一冊です!
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【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/