J-WAVEで放送中の番組『RADIO SWITCH』。この番組は【Listen to the Magazine, Reading the Radio 雑誌を聴く、ラジオを読む。】をコンセプトに、カルチャーマガジン『SWITCH』、旅の雑誌『Coyote』、新しい文芸誌『MONKEY』の3つの雑誌とゆるやかに連動しながらお送りしています。
1月5日(土)のオンエアでは、『SWITCH』編集長・新井敏記さんを進行役に、糸井重里さんと写真家・梅 佳代さんの対談をお送りしました。
■梅 佳代「私、もう子どもじゃない」
以前ふたりが対談したのは2010年。糸井さんは当時、梅さんに「愛はあるけど情がない」と言ったそうで……。
糸井:でも増えたね、情が。対象に対して「いいな」「おもしろいな」「かわいいな」はあってもね、粗末に扱ってたのよ。
梅:よくぞわかりますね。
糸井:あの頃は「冷たい」とはまた違うんだけど、まあ子ども同士だから乱暴だよね。
梅:そういうことです。子ども同士っていうのは自分でもかなり思ってたんです。私、もう子どもじゃない。大人になったから、あんな写真は一生撮れないんですけど。
その当時は「残酷さしかおもしろくない」と思っていたと梅さん。そのため、周りの人がいいと言った写真でも、発表しなかったと言います。
糸井さんは、梅さんの写真を初めて目にしたとき「素人に見えるんだけど、絶対に素人にはできない」と感じたと振り返ります。しかし、「プロが素人のフリをして撮っているとも思えないため、そういうところこそが梅さんの持ち味」とも。「唯一無二の存在」として梅さんに興味を持ち、写真集が出るたびに購入するようになったと明かします。
糸井:文学作品の作者を想像するみたいに写真を見るようになりました。あと、被写体との関係とかね。それは掘っても掘っても掘りきれないみたいなところがあって、それがおもしろい。会ったら、自分が撮ってる写真を「報道写真だ」って言ったんですよね。あれはもう自分で考えたセリフとしては、最高の名セリフ。これを先に聞いといたら、もうちょっとわかったかもしれないなと思いました。
実はこのとき、梅さんが言った「報道写真発言」が、さまざまなメディアで見出しとして出されてしまい、「恥ずかしくなってきて、本当の報道写真の人に気まずい。本当の報道写真家は見ないでくださいという気持ちになった」と、梅さんは当時を振り返ります。
しかし、糸井さんは「人間が生きたことを誰かに伝えたい、ということを報道だと考えればいいわけ」と話し、梅さんの「報道写真発言」に納得したと、当時の感想を述べました。
■梅 佳代の写真のすごさ
また、糸井さんは「写真が嫌いだった」と明かします。理由は、団体で旅行に行った際、みんなで盛り上がりながらいいテンポで行動していても、遅れてくるからだと言います。
糸井:構えて山なんかを撮ってるのを見ると、「何してるんだよ」みたいな感じになっちゃう。「あいつ、呼んだっけ?」みたいな感じになるわけ。「ちょっと待って」っていうのが、とにかくめんどくさい。
写真に収めなくても、「覚えておかなきゃダメだよ」と思っていた糸井さんは、「カメラに対して敵意さえあった」と笑いながら話します。
糸井:“いい写真”というものを信頼してなかった。
梅:それはわかります!
糸井:写真雑誌で「これはいい写真だ」って出るじゃない? あるいは新聞なんかにもあるよね。祭りで子どもがなんかしてたり、ホースで水を撒いて「わー」なんてしてたり、「何それ?」って思ってたんです(笑)。「いい写真だろう」っていう感じが、感じ悪いんだよ。「いい写真」に向かって写真を撮ってるから。演技なんかでも「いい演技」に向かって演技してる。結果的にいい演技になったんじゃなくて、「これがいい演技なんだろうな」と思って決めてる、みたいな。
いま、カメラマンが街の人を撮ることが、とても難しくなってきている時代。糸井さんは、「梅さんの写真のすごさ」を改めて語ります。
糸井:無名の人がこっちを向いて、写るつもりで写っている。いわば、日常のなんでもないものを逆手に取って、こっちを向かせてるわけだよね。いつも関係が描かれている。通りすがりの小学生でも、梅 佳代とその小学生の関係って、決して盗み撮りをしてないわけ。あれはとにかく、やれないよ。
糸井さんらしい考え方や視点、梅さんの写真のすごさが感じられるオンエアとなりました。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『RADIO SWITCH』
放送日時:毎週土曜23時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radioswitch/about.html
1月5日(土)のオンエアでは、『SWITCH』編集長・新井敏記さんを進行役に、糸井重里さんと写真家・梅 佳代さんの対談をお送りしました。
■梅 佳代「私、もう子どもじゃない」
以前ふたりが対談したのは2010年。糸井さんは当時、梅さんに「愛はあるけど情がない」と言ったそうで……。
糸井:でも増えたね、情が。対象に対して「いいな」「おもしろいな」「かわいいな」はあってもね、粗末に扱ってたのよ。
梅:よくぞわかりますね。
糸井:あの頃は「冷たい」とはまた違うんだけど、まあ子ども同士だから乱暴だよね。
梅:そういうことです。子ども同士っていうのは自分でもかなり思ってたんです。私、もう子どもじゃない。大人になったから、あんな写真は一生撮れないんですけど。
その当時は「残酷さしかおもしろくない」と思っていたと梅さん。そのため、周りの人がいいと言った写真でも、発表しなかったと言います。
糸井さんは、梅さんの写真を初めて目にしたとき「素人に見えるんだけど、絶対に素人にはできない」と感じたと振り返ります。しかし、「プロが素人のフリをして撮っているとも思えないため、そういうところこそが梅さんの持ち味」とも。「唯一無二の存在」として梅さんに興味を持ち、写真集が出るたびに購入するようになったと明かします。
糸井:文学作品の作者を想像するみたいに写真を見るようになりました。あと、被写体との関係とかね。それは掘っても掘っても掘りきれないみたいなところがあって、それがおもしろい。会ったら、自分が撮ってる写真を「報道写真だ」って言ったんですよね。あれはもう自分で考えたセリフとしては、最高の名セリフ。これを先に聞いといたら、もうちょっとわかったかもしれないなと思いました。
実はこのとき、梅さんが言った「報道写真発言」が、さまざまなメディアで見出しとして出されてしまい、「恥ずかしくなってきて、本当の報道写真の人に気まずい。本当の報道写真家は見ないでくださいという気持ちになった」と、梅さんは当時を振り返ります。
しかし、糸井さんは「人間が生きたことを誰かに伝えたい、ということを報道だと考えればいいわけ」と話し、梅さんの「報道写真発言」に納得したと、当時の感想を述べました。
■梅 佳代の写真のすごさ
また、糸井さんは「写真が嫌いだった」と明かします。理由は、団体で旅行に行った際、みんなで盛り上がりながらいいテンポで行動していても、遅れてくるからだと言います。
糸井:構えて山なんかを撮ってるのを見ると、「何してるんだよ」みたいな感じになっちゃう。「あいつ、呼んだっけ?」みたいな感じになるわけ。「ちょっと待って」っていうのが、とにかくめんどくさい。
写真に収めなくても、「覚えておかなきゃダメだよ」と思っていた糸井さんは、「カメラに対して敵意さえあった」と笑いながら話します。
糸井:“いい写真”というものを信頼してなかった。
梅:それはわかります!
糸井:写真雑誌で「これはいい写真だ」って出るじゃない? あるいは新聞なんかにもあるよね。祭りで子どもがなんかしてたり、ホースで水を撒いて「わー」なんてしてたり、「何それ?」って思ってたんです(笑)。「いい写真だろう」っていう感じが、感じ悪いんだよ。「いい写真」に向かって写真を撮ってるから。演技なんかでも「いい演技」に向かって演技してる。結果的にいい演技になったんじゃなくて、「これがいい演技なんだろうな」と思って決めてる、みたいな。
いま、カメラマンが街の人を撮ることが、とても難しくなってきている時代。糸井さんは、「梅さんの写真のすごさ」を改めて語ります。
糸井:無名の人がこっちを向いて、写るつもりで写っている。いわば、日常のなんでもないものを逆手に取って、こっちを向かせてるわけだよね。いつも関係が描かれている。通りすがりの小学生でも、梅 佳代とその小学生の関係って、決して盗み撮りをしてないわけ。あれはとにかく、やれないよ。
糸井さんらしい考え方や視点、梅さんの写真のすごさが感じられるオンエアとなりました。
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【番組情報】
番組名:『RADIO SWITCH』
放送日時:毎週土曜23時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radioswitch/about.html